メニューをスキップして、このページの本文へ

退職手当共済事業

平成30年度 退職手当共済制度からみた福祉施設職員の状況

平成30年度退職手当共済制度加入福祉施設職員の従業状況

福祉医療機構が運営する退職手当共済制度(以下「共済制度」という。)では、共済契約法人(共済契約者)から毎年4月1日時点の職員の従業状況についてご報告いただいています。

今回はその報告の集計資料から、福祉施設職員の従業状況、とくに保育士の従業状況に焦点をあててご報告します。

 

共済契約者数1万7,046件 加入職員数85万7,705人

図表1は共済契約者数および加入職員数について昭和36年の制度発足時から現在までの推移を示しています。

共済契約者数は平成30年度では1万7,046件となり、昭和36年度の制度発足当時と比較し約4倍の契約件数となっています。なお、共済契約者の97.9%(1万6,690件)が社会福祉法人となっていますので、本稿に示す職員の状況はおおむね、社会福祉法人に従事する福祉施設職員の状況を示しています。

 

共済契約者数、加入職員数

 

 加入職員数は、平成30年度では85万7,705人となり、前年度から約1万5千人の増加、制度発足当初と比較すると約28倍もの加入職員数となっています。

 なお、図表では平成19年度に加入職員数が減少していますが、これは平成18年度に制度改正が行われ介護保険関係施設への公的補助が廃止されたことに伴い共済契約者の掛け金負担が増加したため、制度改正以後の新規加入を止める選択をした施設があったためです。同様に平成28年度にも制度改正が行われ障害者総合支援法関係施設の公的補助が廃止されていますが、同時期に児童関係施設の従事者が増加したため、全体数では減少しませんでした。

 図表2は施設区分別の加入職員数の推移です。近年は児童関係施設の職員が増加しています。平成30年度の加入職員の増加分についてはそのほとんどが児童関係施設のものとなっています。

 

加入職員数の推移(施設区分別)

1共済契約者あたりの加入職員数

図表3は1共済契約者あたりの加入職員数を示しています。加入職員数が50人未満の共済契約者が全体の約73%、100人未満では全体の89%を占めます。

なお、制度改正が平成18年度と平成28年度に行われ、介護保険関係施設および障害者総合支援法関係施設については、制度改正以後新規加入をしないという選択をしている施設があること、「*1申出施設」については共済制度への加入が任意であることから、必ずしも「加入職員数=従業員数」とはなりませんので、ご参考としてください。

 

共済契約者あたりの加入職員数

 

 

*1…共済契約者となった社会福祉法人が経営する社会福祉施設等および特定介護保険施設等以外の施設・事業

職種別職員数、退職者数、退職率、本棒月額、在籍期間

保育士の加入が前年比で増加

 図表4は職種ごとの加入職員数、退職者数、退職率を示しています。

 職種別の職員数でみると、保育士が最も多く25万人、次いで介護職員の20万人です。この2職種で全体の過半数を占めています。加入職員数の増加数は全体で約1万5千人ですが、職種別では保育士の増加数が約1万人となっています。

 退職率は全体で10.82%と前年の11.01%を0.19ポイント下回っています。職種別でみると介護職員は10.74%(前年度11.14%)と前年度から0.4ポイント減少、保育士は11.62%(同11.88%)と前年度から0.26ポイント減少しています。

 なお、退職手当金の支給者数は平成29年度は76,098人で平成28年度の75,891人とほぼ同じとなっています。

 

職種別職員数、退職者数、退職率

図表5は職種ごとの平均本俸月額と平均在籍期間を示しています。本俸月額は俸給表に定める格付本俸と特殊業務手当などの俸給の調整額を加算した額のことで、賞与等は含まれていません。

 平均本俸月額は全体で前年度と比較し2,712円の増加、介護職員は2,262円、保育士は4,331円の増加となっています。

 平均在籍期間は前年度と比較し全体は1カ月の増、介護職員は3カ月、保育士は1カ月の増となっています。

 

職種別平均本俸月額、平均在籍期間

 

退職率について

退職率は4年連続して低下

 図表6は加入職員全体の退職率と保育士と介護職員の退職率の経年の推移を示したものです。

 加入職員全体では平成26 年度から4年連続で退職率が低下しています。平成11年度から20年度までは介護職員が保育士の退職率を上回っていましたが、その後急減し、平成21年度以降は保育士の退職率が上回りました。平成29年度には介護職員の退職率は全体の退職率を下回るまでになりました。

 保育士の退職率は平成26年度以降経年で低下していますが、全体と比較するといまだ高い状態にあります。

退職手当共済制度加入職員退職率の推移

 

共済契約者ごとの退職率

図表7は平成29年度の共済契約者ごとの退職率を示しています。

 一般に福祉施設の退職率は人材が定着する事業所とそうでない事業所とに2極化するといわれています。

 退職率0%(平成29年度中に退職者がいなかった)の法人が全体の約15%ある一方、退職率が20%以上の共済契約者が全体の約13%存在しています。退職の要因はさまざまなため単年の数値では一概にいうことはできませんが、退職率が高い状態が数年続いている場合は、何らかの取り組みが必要になっていると考えられます。

 

共済契約者ごとの退職率(平成29 年度)

 

年齢区分別退職率

図表8は年齢区分別の退職率を示しています。保育士の退職率は25〜29歳で16.6%、30〜34歳11.9%となっており、当該年齢区分において介護職員の同年齢区分の退職率を大きく上回っています。

 

年齢区分別退職率(保育士、介護職員、全職種)

 

 次に保育士の年齢別退職率の経年の推移をみていきます。

 平成27年度から平成29年度の保育士の年齢別退職率について示したものが図表9です。図表中グラフの上部にある数値が平成27年度、下部にあるものが平成29年度の数値となっています。

 ここ3年でほとんどの年齢区分で退職率は低下しています。とくに25〜29歳の区分で1.4ポイント、30〜34歳の区分で1.6ポイントも退職率が低下しています。

年齢区分別退職率(保育士、平成27~平成29年度)

 

他産業との退職率比較

 

 一般の労働者の退職率との比較をみていきます。図表10は共済制度の加入職員の退職率と「雇用動向調査」(厚生労働省)、「介護労働実態調査」(公益財団法人介護労働安定センター)の退職率を比較しています。

 「雇用動向調査」は全産業で5人以上の常用労働者を雇用する事業所を無作為に調査したものです。共済制度加入者の退職率は一般の労働者よりも低い状況にあるといえます。  

 「介護労働実態調査」は介護職員と訪問介護員の合計の退職率を示しています。共済制度は契約者の97.9%が社会福祉法人ですが、介護労働実態調査の対象は民間企業が56.0%、社会福祉法人は21.9%(社会福祉協議会含む)となっています。

 社会福祉法人に従事する者の退職率は、民間を含めた介護に関わる労働者の退職率よりも低い状況にあるといえます。

 

退職率他指標との比較

退職率と有効求人倍率との連動について

図表11は加入職員の退職率と有効求人倍率(「一般職業紹介状況」(厚生労働省))の推移を示しています。

 加入職員の退職率と有効求人倍率は平成21年度まではゆるやかに連動していましたが、平成26年度以降から連動はみられなくなっています。一般に福祉分野では世の中の景気が良くなると人材を確保しにくくなり、景気が悪くなると人材を確保しやすくなると言われていますが、近年の加入職員の退職については一般の労働市場の影響が小さくなってきているものと考えられます。

 

加入職員の退職率と有効求人倍率の推移

 

 

 

保育士の入職者の年齢分布と「初任給相当額」(本俸月額)の動向について

 

次に人材確保が課題となっている保育士の新規加入の状況について詳しくみていきます。図表12は、平成30年4月1日現在で過去1年以内(平成29年4月2日から平成30年4月1日)に新たに制度に加入した保育士(新規加入職員)の加入時の年齢別の人数を示したものです。

 保育士の新規加入職員は25歳までで全体の約50%を占めています。保育に新たに従事する者は新卒者、第二新卒者に偏っていることがうかがえます。一方で26歳以上の新規加入職員も約50%あり、保育士資格を取得しながらも他分野で仕事をしていた方、他分野で仕事をしていた方で保育士資格を取得された方、保育士として従事し一度退職された方などが保育士として入職されていることがうかがえます。

 

過去1年に共済制度へ加入した保育士の加入時の年齢別人数

 

図表13は各年度過去1年以内に共済制度に加入した24歳以下の保育士の地域ごとの本俸月額を示したものです。この数値はおおよそ各地域の保育士の初任給に相当する額になります。
 平成30年4月の地域別の「初任給相当額」では全国平均で17万5,513円、南関東が最も高く18万7,484円、最も低いのは東北で16万2,017円となっており、その差は2万5,467円になります。

 増減の額は平成28年4月から平成29年4月にかけては全国で2,661円の増加、平成29年4月から平成30年4月にかけては全国で4,143円の増加となっており、直近1年の増加の幅が大きくなっています。直近1年で増加の幅が大きくなっている地域は、南関東で7,477円、沖縄で6,223円、北海道で5,962円となっています。沖縄と北海道については増額幅は大きくなっていますが、「初任給相当額」は全国平均を上回るものではありません。

 

保育士の地域区分別初任給相当額と増減額(3カ年)

地域区分

南関東地域で「初任給相当額」が高いのは東京都

増加額の多い南関東地域の保育士の都県ごとの「初任給相当額」を示したのが図表14です。東京都が19万2,396円となっており、同地域の他県より約1万円高くなっています。経年の推移をみると補助金の手厚い自治体に所在する施設の給与上昇に近隣の地域が追随していることがうかがえます。

 近年の保育士確保については自治体間での「争奪戦」ともいわれていますが、各法人ができることは、離職率を下げる職場づくりとともに、新規採用については新卒だけではなく潜在保育士等に積極的に訴えていくことも必要になると思われます。国からは各自治体に保育士の子どもが保育所等に優先的に入所できるように取組むよう通知をしていますので、これまで以上に各自治体との協力も必要になってくると思われます。

 

保育士の南関東地域区分別初任給相当額と増減額(3カ年)

 

おわりに

退職手当共済制度の加入職員数が年々増加していることは、当制度が有効な社会基盤の一つとなっているものと考えられます。

 また、加入職員の退職率が一般の退職率よりも低いということは、共済契約者の経営努力と相まって、当制度が職員の定着に一定の貢献をしているものと考えられます。

 今後も、社会福祉法人等、社会福祉施設等職員のため、都道府県の社会福祉協議会や共済会と協力して制度の運営をいたします。当レポートが共済契約者皆様の参考になりましたら幸いです。