当機構の経営支援室は平成23年9月28、29日の2日間、全社協・灘尾ホールにおいて、新しく社会福祉施設の開設を考えておられる方、また社会福祉施設をすでに経営されている方々を対象に「社会福祉法人経営の基盤の安定化に向けて」と題して、円滑な施設整備を進め、健全かつ安定した経営を行っていただく基盤を確立させる上で必要な情報を提供することを目的として、社会福祉施設開設・経営実務セミナーを開催しました。
最初に、日本社会事業大学専門職大学院教授の田島誠一氏から「セーフティーネットとしての社会福祉法人の経営実践」と題して、(1)大震災と福祉〜福祉とは何か、(2)社会福祉法人とは何か、(3)福祉の原点に立ったマネジメント、(4)非営利・公益性の堅持について、講演がありました。
(1)「大震災と福祉〜福祉とは何か」では、入居者との関係性を構築するためには、相手がどのような人生を歩んできたのかを理解すること、相手の今の身体の状況を踏まえて相手が人生の目標が見いだせるような理解をすることの2つが必要であると説明がありました。
具体的には、東京大空襲(昭和20(1945)年3月10、11日)、関東大震災(大正12(1923)年)、東日本大震災(平成23(2011)年3月11日)を例に挙げ、明治大正昭和の歴史を理解し、入居者が経験したことに対して「共感」できることが大切であること、また、現在両手が動かせず家事ができない主婦に対して、家事ができないという事実のみを理解するのではなく、主婦がどのような気持ちを抱えているのかを理解することが大切で、もし主婦が「家事をしたい」という気持ちを持っているのであれば、その気持ちを人生の目標につなげていけるような理解をすることが大切とのことでした。
「共感」とはともに生きること、傍らにいることとして阿修羅を例とした説明もありました。
また、セーフティーネットとは、「同情」や「介入」ではない対等な関係性を作り、徹底して寄り添うことであり、それは、パラリンピックのマラソンランナーの伴走者のようなものであり、「サービスを必要とする人の傍らに常にいて温かく見守りともに歩み続けるけど引っ張らない。」そんな存在になるために努力したいとのことでした。
(2)社会福祉法人とは何かでは、日本国憲法第25条から、福祉諸法の制定、社会福祉法人制度創設の趣旨等の説明がありました。また、ルカによる福音書、宮沢賢治の詩を引用し、社会福祉法人とはどうあるべきか、心構えについて説明がありました。
(3)福祉の原点に立ったマネジメントでは、ドラッカーの「マネジメント(エッセンシャル版)」を引用し、マネジメントとは何か、その意味について触れた後、社会福祉事業法の改正の意義などを踏まえ、利用当事者の視点に立つこと、対等な関係性の構築を目指すことの重要性を福祉の原点に立つこととして、説明がありました。
マネジメントの具体的事例では、玄関ホールの廊下におむつの箱が置きっぱなしだったことを例にあげ、どのように解決をしたか、詳細な説明がありました。
また、マネジメントには定番のプロセスとして、@ミッションの明確化、A組織を取り巻く環境の分析と把握、B戦略の立案・意思決定、C行動計画(戦術)の策定、D実行と評価があり、ミッションの明確化では経営理念の策定事例、環境の分析と把握では介護職等の離職率、実行と評価では、経営する有料老人ホームで、利用者にソフト食を毎食提供するようになった過程を事例に挙げ、説明されました。
(4)非営利・公益性の堅持についてでは、公益法人改革が行われていることに触れ、今後社会福祉法人が現行体制のまま、非課税対象などの位置づけでいられるのか、もしくは課税対象などの位置づけに変わっていくのか不透明であるので、非営利性、公益性を堅持し、社会福祉法人でなくてはできない強みを見つけてほしいとの説明がありました。
以上のような話のあと、当機構の福祉貸付事業の紹介を行い、午後からは「社会福祉法人・事業に係る税務」として宮内眞木子税理士事務所 税理士 宮内 眞木子 氏、「社会福祉施設の建築設計と法人運営」として国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部 上席主任研究官 井上 由起子 氏、「戦略的人的資源管理の考え方」として当機構の経営企画課長 千葉から、それぞれ講演を行いました。
2日目は、「災害時における社会福祉施設の役割」として特定非営利活動法人災害福祉広域支援ネットワーク・サンダーバード 代表理事 小山 剛 氏の講演の後、当機構の退職手当共済事業の紹介を行い、午後には、「社会福祉法人における施設整備のための会計と施設運営に役立つ会計」として大光監査法人 理事長 亀岡 保夫 氏、「財務諸表を活用した社会福祉法人の経営管理」として当機構の経営企画課長 千葉から、それぞれ講演を行いました。
今後の福祉・医療経営セミナーの予定は、
http://hp.wam.go.jp/guide/keiei/seminar_information/tabid/667/Default.aspx
です。