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サービス取組み事例紹介
子ども・家庭

− 鹿児島県大島郡・社会福祉法人ハレルヤ福祉会 幼保連携型認定こども園 ハレルヤこども園 −

保育にとどまらない地域福祉への貢献

 福祉医療機構では、地域の福祉医療基盤の整備を支援するため、有利な条件での融資を行っています。今回は、その融資制度を利用された鹿児島県大島郡与論町にあるハレルヤこども園を取りあげます。

 同園は、子育て支援の拠点として地域の保育ニーズに対応しています。実践する保育内容や地域への取り組みについて取材しました。


キリスト教精神に基づいた保育事業を実践


 鹿児島県の最南端に位置する与論島は、奄美群島の一つでエメラルドグリーンの海とサンゴ礁に囲まれた「東洋の真珠」と称される自然豊かな島。沖縄本島まで23qの距離にあり、琉球文化と融合した独自の文化がある。年間気温は平均21・6度と1年を通して温暖な気候で、主な産業はサトウキビをはじめとする農業や観光業である。
 大島郡与論町にある社会福祉法人ハレルヤ福祉会は、キリスト教精神に基づく全人教育を実践し、自然、伝統文化、世界に目を向けた体験活動を中心とした個性豊かな人間養育を目指してきた。開設施設は、昭和55年3月にハレルヤ保育園を設立したことに始まり、その後、子育て支援センターや児童福祉センター、ハレルヤ幼稚園を運営し、平成25年4月に幼保連携型の認定こども園の認可を受けている。
 与論島の地域特性や子育て環境について、同法人理事長のコ永哲秀氏は次のように語る。
 「与論町の人口は約5200人で、高齢化率は33%(平成31年10月時点)と人口減少と高齢化が進行しています。島には中学校と高校が1校ずつあるものの大学はないため、高校進学のタイミングで大半の若者が島を離れるという環境です。地域全体で子どもを見守り、育てるという習慣が残り、子育て環境としては恵まれています。しかし、祖父母世代が現役で働いていたり、共働きや単身家庭が増え、こども園に対するニーズも多様化してきています。与論島には当園のほか、公立のこども園が3カ所ありますが、当園は島内の園児の約半数を受け入れています。当園の特別保育事業への期待の表れだと思います」(以下、「 」内はコ永理事長の説明)。
 同園は、子育て支援の拠点として、敷地内に島内で唯一の子育て支援センターや放課後児童クラブを併設する児童福祉センターを運営するほか、保育事業では一時保育や延長保育(夜間延長保育は最長21時)、休日保育、病児保育を実施。さらに障害児保育を取り入れるなど地域の保育ニーズに応えている。


施設の建て替えに伴い、入園定員を増員


 同園は、開設から40年近くが経ち、建物の老朽化も進み、耐震化の整備が必要であったことから、平成29年12月から約1年半の工期を経て、同一敷地内に建て替えを行い、入園定員を95人から128人に増員した。
 新園舎は「地域に開放できる施設」をコンセプトにし、施設の2階に地域行事やイベントに活用できる大規模なホールを設けた。
 「地域の高齢者や障害者が施設を訪れる際の配慮としてエレベーターを設置するとともに、与論島は台風被害が大きいことから避難場所としての機能をもたせています。また、スタッフが保育しやすい環境をつくるため、子どもたちとノーコンタクトタイムをとれるアメニティルームを設置し、1階の広いスペースのエントランスの奥に、調理室に面したランチルームを設けることで、スタッフの負担軽減を図りました」。
 そのほかにも、臨床心理士を配置した相談室を設け、保護者から子どもの発達や子育てに関する相談を受けている。また、地域の小・中学校にもスクールソーシャルワーカーとして派遣している。


▲▼ 敷地内にあるプレーパーク(冒険広場)。全面芝で豊富な遊具やスロープがあり、子どもたちの体力づくりにも欠かせない広場になっている ▲ 開放感があり広々としたスペースの1階のエントランスホール。ランチルームとしても活用する

▲ 2歳児の保育室。同園は島内の園児の約半数を受け入れている

▲ 園舎の2階には大規模なイベントホールを設けた。園内のイベントのほか、地域行事で活用することを想定し、高齢者用エレベーターも設置した


遊びと創作活動の環境をつくり子どもの創造する力を醸成


 子どもたちの遊びの環境としては、園庭のほか、広々としたプレーパーク(冒険広場)を設け、日中の活動やイベントなどに活用している。全面芝のプレーパークは、遊具コーナーやスロープがあり、子どもたちの体力づくりとともに、自由な発想で遊びを創造することにつながっている。休日には、地域の子育て世帯にプレーパークを開放し、多くの利用があるという。
 園庭には夢広場が付随し、郷土の出身の陶芸家に手によるモニュメントを設置し、近くには泥んこ遊びと砂場を別々に配置し、「子ども達の造形活動の広がりを期待している」とコ永理事長は語る。
 教育・保育の方針として、養護と教育を一体的に捉え、年齢に即した遊びと学びを提供し、子どもの成長と可能性を最大限に引き出す保育・教育環境を提供している。
 芸術や創作活動にも力を入れ、創作活動の際に使用するアトリエのほか、敷地内には写真家のコレクションルームを併設し、別棟には音楽教室と文化教室を設けている。
 音楽教室では、キーボードやドラムなどの楽器を揃えており、和室の文化教室は必要な礼儀作法を身につけられるよう、礼法を学ぶ場所となっている。
 「施設内には絵画やモニュメントなどの作品を展示しています。与論島には美術館がありませんので、展示物を通して本物の芸術に触れる体験をしてもらいたいと考えています」。


本物に触れる活動として農業体験にも取り組む


 さらに、本物に触れる体験として、コ永理事長は、農業法人を設立し、同園の隣接地に化学肥料や農薬を一切使わない有機栽培の農園を運営している。園児たちの日中活動として農業体験を行う「キッズファーム」を保育計画のなかに組み込んでいる。
 「農業法人では、主にマンゴーや島バナナ、パパイヤのほか、与論島の特産品で『森のアイスクリーム』と呼ばれるアテモヤという果物などを栽培しています。農園内には、サツマイモなどの野菜を栽培する子どもたち専用のビニールハウスや田んぼをつくり、種の植えつけから収穫までを一貫して行っています。収穫後は、地域交流として敬老の日などに地域の高齢者を招いた食事会を開催し、喜ばれています」。
 このような本格的な農業体験ができるのも、自然豊かな離島ならではの取り組みであり、「キッズファーム」には、こども園の園児だけでなく、放課後児童クラブの子どもたちも参加しているという。


▲ こども園に隣接する農園では、キッズファームとして園児専用のビニールハウスや田んぼがあり、農業体験を実施している

▲ 創作活動の際に使用するアトリエ ▲ 海に囲まれた離島のため、屋上には津波など災害時に避難できるスペースを確保している


卒園後も途切れない関係性を構築


 併設する子育て支援センターは、子育て支援の拠点として地域の子育て世帯の親子を対象に、子育てに関する情報提供や相談対応を行い、子ども同士や親子のふれあいの場として利用されている。
 また、2階建ての児童福祉センターの1階には体育館のように広々とした空間の遊び場があり、2階には学校の宿題などをする勉強スペースや図書室、パソコン室を設置している。併設する放課後児童クラブでは、音楽や運動などのクラブ活動をはじめ、自然体験や農業体験、国際交流活動などを実施し、同園の卒園児を中心に80人の利用登録がある。
 子どもたちは、児童福祉センターや放課後児童クラブを通じて、卒園後もボランティアとして活動に参加するなど、同法人とのつながりが途切れない関係性が特色となっている。
 そのほか、地域との関わりとしては、警察署と連携して交通安全や不審者への対応などの職員に対する講習を行うとともに、地域交流の取り組みとして介護施設や自治公民館に子どもたちが出向き、歌や踊りなどの発表を行っている。また、嘱託医の診療所とは、病児保育などで訪問診療等、柔軟に対応してもらえる関係もあるという。


▲ 遊びや勉強するためのスペース、図書室、パソコンルームなどを設けた児童福祉センター。放課後児童クラブでは、クラブ活動や自然体験、農業体験などの活動を行う


▲ 園舎とプレーパークをつなぐ通路には、アセロラやシークヮーサーの木が植えられており、子どもたちが移動中に口にすることもある


与論島の魅力が保育スタッフの確保につながる


 現在、保育スタッフの確保が厳しい状況にあるなか、同園では保育スタッフを十分に確保することができているという。
 「当園はおかげさまで、与論島というネームバリューや地の利を活かしたところがあり、職員の半数近くは島外の出身者となっています。なかには自然のなかで保育をしてみたいと神奈川県の保育所で勤務していた経験豊富な保育教諭が移住して、自然体験の活動を重視した保育・教育に取り組んでくれているケースもあります。また、当法人は非正規の職員にも賞与や各種手当を厚くして、正規・非正規に関わらず長く働き続けてもらえる職場環境となっています」。
 働く人のなかには、ワーキングホリデー感覚で2~3年して本土に戻るケースもあるが、働き甲斐を感じ、地元住民と結婚して働き続ける保育スタッフも少なくないという。
 少子高齢化や人口減少が進むなか、地域の保育ニーズにとどまらず、地域福祉に貢献する同法人の今後の取り組みが注目される。


子どもの育ちをみてとれる人材の環境が重要
社会福祉法人ハレルヤ福祉会
幼保連携型認定こども園 ハレルヤこども園
理事長 コ永 哲秀氏

 当園は、地域の子育て支援の拠点として、地域と共存しながらもトータルで地域をみていかなければならないと思っています。そのためにも、教育という面でどれだけ質を上げられるのかが課題です。子どもは環境によって育ちます。そういう意味では与論島の自然環境は最高だと思いますので、子どもたちの育ちをみてとれる人材の環境がいちばん重要になると考えています。
 また、与論島に限らず、日本全体の人口や子どもたちが減少しているなか、質の高い保育・教育をしっかりと実践していくことと並んで、地域の活性化やまちづくりにも取り組んでいくことが重要であると思います。



<< 施設概要 >>
理事長 コ永 哲秀 施設開設 昭和55年3月
園長 林 みのり
定員 128人
職員数 44人(令和元年12月現在)
法人施設 ゆんぬ子育て支援センター/ハレルヤ児童福祉センター
住所 〒891−9301 鹿児島県大島郡与論町茶花2002−1
TEL 0997−97−4285 FAX 0997−97−4284
URL https://www.yoron-hallelujah.com/


■ この記事は月刊誌「WAM」2020年1月号に掲載されたものを一部改変して掲載しています。
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