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外来機能報告制度

外来機能報告制度
1.外来機能報告ガイドライン

2021(令和3)年5月に「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」が成立・公布されました。同法において、地域の医療機関の外来機能の明確化・連携に向け、データに基づく議論を地域で進めるため、外来機能報告等が医療法に位置づけられ、2022(令和4)年4月より施行されました。外来機能報告の実施主体は、「病床機能報告対象病院等」であって外来医療を提供するものの管理者です。病床機能報告対象病院等とは、「病院または診療所であって療養病床または一般病床を有するもの」です。また、患者を入院させるための施設を有しない診療所(「無床診療所」といいます。)の管理者も、外来機能報告を行うことができます。

外来機能報告ガイドラインでは、@対象医療機関が都道府県に対して、外来医療の実施状況を報告すること(外来機能報告といいます。)、A当該報告を踏まえて、「地域の協議の場」において、外来機能の明確化・連携に向けて必要な協議を行うこと、B「医療資源を重点的に活用する外来」を地域で基幹的に担う医療機関として、「紹介受診重点医療機関」を明確化すること、の3つのガイドラインが示されています。ここで、医療資源を重点的に活用する外来とは、次の@〜Bのいずれかの外来をいいます。@医療資源を重点的に活用する入院の前後の外来(悪性腫瘍手術の前後の外来等)、A高額等の医療機器・設備を必要とする外来(外来化学療法、外来放射線治療等)、B特定の領域に特化した機能を有する外来(紹介患者に対する外来等)の3つです。

2. 外来機能報告制度導入の背景

この制度導入の背景としては、患者が医療機関を選択するに当たり、外来機能の情報が十分得られず、また、患者にいわゆる大病院志向があるなかで、一部の医療機関に外来患者が集中し、患者の待ち時間や勤務医の外来負担等の課題が生じていること、また、人口減少や少子高齢化、外来医療の高度化が進むなか、かかりつけ医機能の強化とともに外来機能の明確化・連携という課題があるためです。以上のことから、患者の流れの円滑化を図るため、医療資源を重点的に活用する外来の機能に着目し、紹介受診重点医療機関を明確化することにより、病院の外来患者の待ち時間の短縮や勤務医の外来負担の軽減、ひいては医師の働き方改革に寄与することを目指しています。

3. 紹介受診重点医療機関の明確化

紹介受診重点医療機関の明確化については、医療機関が都道府県に対して外来医療の実施状況や紹介受診重点医療機関となる意向の有無等を報告し、当該報告を踏まえて、「地域の協議の場」において協議を行い、協議が整った医療機関を都道府県が公表することとしています。地域の協議の場においては、紹介受診重点医療機関の取りまとめに加えて、紹介元・逆紹介先となる地域の「かかりつけ医機能を担う医療機関」など、地域の外来機能の明確化・連携の推進のために必要な事項について報告を受け、データに基づく議論を行う必要があります。このため、NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)で把握できる項目のうち、地域の外来機能の明確化・連携の推進のために必要な外来・在宅医療・地域連携の実施状況について、医療機関から都道府県に報告を行うこととされています。

地域の協議の場の議題は、@紹介受診重点医療機関の取りまとめに向けた協議、A外来機能の明確化・連携に向けた協議となっています。2022(令和4)年度は、外来機能報告等の施行初年度であり、紹介受診重点医療機関の明確化に資する協議を中心に行っています。地域の協議の場の参加者は、医療法上の規定に則って、郡市区医師会等の地域における学識経験者、代表性を考慮した病院・(有床)診療所の管理者、医療保険者、市区町村等です。これらの参加者に加えて、紹介受診重点医療機関の取りまとめに向けた協議を行う場合、次の@、Aの医療機関の出席を求め、意見を聴取することとされています。@紹介受診重点医療機関の医療資源を重点的に活用する外来に関する基準に該当するものの、外来機能報告において紹介受診重点医療機関としての役割を担う意向を有しない医療機関、A紹介受診重点医療機関の医療資源を重点的に活用する外来に関する基準に該当しないものの、外来機能報告において紹介受診重点医療機関としての役割を担う意向を有する医療機関となっています。また、地域の協議の場における外来機能の明確化・連携に向けた協議を行う場合、協議をより効果的・効率的に進める観点から、都道府県は、議事等に応じて、追加的に参加を求める関係者を選定するなど、柔軟に協議の場を運営するとともに、地域の協議の場については、医療法上、地域医療構想調整会議を活用することも可能です。

4. 地域の協議の場

紹介受診重点医療機関の協議は、外来機能報告から整理された、医療機関ごとの紹介受診重点医療機関となる意向の有無、医療資源を重点的に活用する外来に関する基準の適合状況、外来医療の実施状況、紹介・逆紹介の状況等を踏まえて議論されます。紹介受診重点医療機関の取りまとめにおいては、当該医療機関の意向が第一となります。その上で、当該地域の医療提供体制のあり方として望ましい方向性について、関係者間で十分に協議しつつ、取りまとめに向けたすり合わせを行うこととされます。また、医療資源や医療ニーズの状況等が地域によって異なっているため、医療機関の特性や地域性を考慮する必要があり、医療資源を重点的に活用する外来に関する基準を参考にし、当該医療機関の意向に基づき、地域の協議の場で確認することにより、地域の実情を踏まえたものとなります。

具体的には、医療資源を重点的に活用する外来に関する基準を満たした医療機関であって、紹介受診重点医療機関の役割を担う意向を有する場合は、特別な事情がない限り、紹介受診重点医療機関となることが想定されます。また、医療資源を重点的に活用する外来に関する基準と医療機関の意向が合致しない医療機関については、当該地域の地域性や当該医療機関の特性等を考慮して協議が行われます。具体的には、地域の協議の場(1回目)で医療機関の意向と異なる結論となった場合は、当該医療機関において、地域の協議の場での議論を踏まえて再度検討を行い、当該医療機関の再度検討した意向を踏まえ、地域の協議の場(2回目)での協議を再度実施することとされています。

さらに、医療資源を重点的に活用する外来に関する基準と医療機関の意向が合致しない医療機関のうち、医療資源を重点的に活用する外来に関する基準を満たさない医療機関であって、紹介受診重点医療機関となる意向を有する医療機関については、地域の協議の場において、医療資源を重点的に活用する外来に関する基準に加えて、紹介率・逆紹介率等を活用して協議が行われます。医療資源を重点的に活用する外来に関する基準を満たす医療機関であって、紹介受診重点医療機関となる意向を有しない医療機関については、当該医療機関の意向が第一とされます。以上のことを踏まえつつ、当該地域の医療提供体制のあり方を協議の上、紹介受診重点医療機関の趣旨等について説明し、2回目の協議に向けて改めて意向を確認することとされています。医療機関の意向と地域の協議の場での結論が最終的に一致したものに限り、紹介受診重点医療機関とし、都道府県において、協議結果を取りまとめて公表することになります。

2022(令和4)年10月以降は、紹介受診重点医療機関のうち一般病床 200床以上の病院については、紹介状がない患者等の場合、外来受診時の定額負担の対象となることとされています。この定額負担には、定額負担の徴収を認められない救急の患者、国の公費負担医療制度の受給対象者等および徴収を求めないことができる患者が定められています。徴収を求めないことができる患者とは、紹介状なしの初診患者であって、地域に他に当該診療科を標榜する保険医療機関がなく当該保険医療機関が外来診療を実質的に担っているような診療科を受診する患者、特定健康診査・がん検診等の結果により精密検査受診の指示を受けた患者等です。地域の協議の場においては、こうした除外要件も踏まえつつ、地域に他に当該診療科を標榜する保険医療機関がない場合など、患者がまずは地域の「かかりつけ医機能を担う医療機関」を受診し、必要に応じて紹介を受けて当該紹介受診重点医療機関を受診するという受診の流れとならない場合について、医療機関の特性も含めて配慮することとされます。

外来機能の明確化・連携に向けた協議については、外来機能報告データや既存の統計調査等で明らかとなる地域の外来医療提供体制の現状と課題について、参加する関係者で認識を共有することとし、2022(令和4)年度以降の外来機能報告および地域の協議の場でのデータや議論の蓄積を踏まえて、共有することとなります。具体的な協議事項のポイントや留意点等については、改めて提示されます。

5. 住民の理解

患者の流れのさらなる円滑化のためには住民の理解が必要です。協議プロセスの透明性の確保の観点からも、都道府県において地域の協議の場に提出された資料のうち、患者情報や医療機関の経営に関する情報(一般的に閲覧可能なものは除きます。)は非公開とし、その他の資料、協議結果は住民に公表されます。

紹介受診重点医療機関は、紹介患者への外来を基本とする医療機関ですが、患者にわかるよう、広告可能となり、医療機能情報提供制度の項目に追加することとされました。特定機能病院や地域医療支援病院についても、医療資源を重点的に活用する外来に関する基準を満たし、医療機関の意向と地域の協議の場での結論が一致した場合、紹介受診重点医療機関として広告することも可能です。

外来機能報告は、紹介受診重点医療機関に関する医療機関の意向を含め、毎年度都道府県に提出されます。こうしたなかで、年によって、医療資源を重点的に活用する外来に関する基準の合致状況等が異なることもあり得ます。この場合、患者負担が急に変更されることなどにより、地域の住民に対して混乱を生じさせることがないよう、基準への合致状況が一時的なものか恒常的なものかなどを見極めつつ丁寧に協議すること、また、紹介受診重点医療機関の協議の取りまとめに当たっては、地域の住民への周知などについて十分に配慮することとされています。

執筆者
柏浦 松一社会保険労務士柏浦事務所 特定社会保険労務士