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「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築」の経緯と概要について

「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築」の経緯と概要について
T 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築の背景と経緯

わが国の地域精神保健医療福祉については、1950(昭和25)年、精神障害者に対する適切な医療・保護の提供を目的に、「精神衛生法」が制定されました。そして、1965(昭和40)年に同法の改正が行われ、通院医療費制度が創設され、1987(昭和62年)の改正ではその名称が「精神保健法」に改められました。1993(平成5)年には、同法の改正により、グループホーム制度が法定化されています。その後、1995(平成7)年には、同法の名称を「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)と改め、自立と社会参加の促進のための援助という福祉の要素を盛り込み、従来の保健医療施策に加え、精神障害者の社会復帰等のための福祉施策の充実についても位置づけが強化されることとなりました。1999(平成11)年の改正においては、精神障害者地域生活支援センターや、ホームヘルプサービス、ショートステイ等の福祉サービスが法定化されました。

2004(平成16)年には、いわゆる社会的入院等の課題について、その計画的かつ着実な推進を図るため、「精神保健医療福祉の改革ビジョン」が取りまとめられ、「入院医療中心から地域生活中心へ」という基本方針が示されました。同方針では退院可能な約7万人の入院患者について、10年後の解消を図ることや精神保健医療体系に再編などが示されています。

さらに、2006(平成18)年に障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)が施行したことに伴い、身体・知的・精神の三障害に対する福祉理念やサービス体系が一元化されました。

2014(平成26)年の精神保健福祉法改正においては、精神障害者の医療の提供を確保するための指針(厚生労働大臣告示)の策定、保護者に関する規定の削除、医療保護入院の見直し等を盛り込みました。

指針の策定については、2013(平成25)年7月より「精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会」を開催し、指針案をとりまとめた上で2014(平成26)年3月に指針を公表しました。この指針は「入院医療中心の精神医療から精神障害者の地域生活を支えるための精神医療への改革」という基本理念に沿ったもので、精神障害者に対する保健医療福祉に携わる全ての関係者が目指すべき方向性を定めています。

近年、精神疾患を有する患者の数は増加傾向にあり、2017(平成29)年には約420万人となっており、傷病別の患者数をみると脳血管疾患や糖尿病を上回るなど、国民にとって身近な疾患となっています。

こうしたなか、2017(平成29)年2月には「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」報告書において、精神障害の有無や程度にかかわらず、誰もが地域の一員として安心して自分らしい暮らしをすることができるよう、医療、障害福祉・介護、住まい、社会参加(就労)、地域の助け合い、教育が包括的に確保された「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築を目指すことを新たな理念として明確にしました。

厚生労働省においては、2017(平成29)年度より、長期入院精神障害者地域移行総合的推進体制検証事業における取組も踏まえた、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築推進・支援事業」を立ち上げ、精神障害者にも対応した地域包括ケアシステムの構築に向けた都道府県等の取組に対して財政的な補助や技術的な支援等を行っています。

2018(平成30)年度からは、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築推進の実施主体が拡大され、地域生活支援促進事業に位置付けられました。

また、2020(令和2)年3月より、有識者や当事者等を構成員とした「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会」を開催し、2021(令和3)年3月に報告書を取りまとめました。報告書では、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築について、日常生活圏域を基本として、市町村などの基礎自治体を基盤として進めること等について盛り込まれ、今後、この報告書を踏まえ、必要な諸制度の見直し等具体的な取組について検討し、その実現を図ることとされました。 

U 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築推進(構築支援)事業の実施

2017(平成29)年度から、都道府県等自治体に対する補助事業(構築推進事業)(地域生活支援促進事業)と都道府県等自治体の取組を支援する委託事業(構築支援事業)の2つの予算事業を実施することにより、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に向けた取組を行っています。

(1) 構築推進事業(地域生活支援促進事業)

障害保健福祉圏域ごとの保健・医療・福祉関係者による協議の場を通じて、精神科病院等の医療機関、地域援助事業者、自治体担当部局等の関係者間の顔の見える関係を構築し、地域の課題を共有化した上で、包括ケアシステムの構築に資する取組を推進します。

<実施主体> 都道府県・指定都市・特別区・保健所設置市

【事業内容】

@ 保健・医療・福祉関係者による協議の場の設置

A 精神障害者の住まいの確保支援に係る事業

B ピアサポートの活用に係る事業

C アウトリーチ支援にかかる事業

D 措置入院者及び緊急措置入院者の退院後の医療等の継続支援にかかる事業

E 入院中の精神障害者の地域移行に係る事業

F 精神障害者の家族支援に係る事業

G 精神障害者の地域移行関係職員に対する研修に係る事業

H 包括ケアシステムの構築状況の評価に係る事業

I 普及啓発に係る事業(※平成31年度新規)

J  その他、包括ケアシステムの構築に資する事業

(2) 構築支援事業

国において、地域包括ケアシステムの構築の推進に実践経験のあるアドバイザー(広域・都道府県等密着)から構成される組織を設置します。

@都道府県・指定都市・特別区は、広域アドバイザーのアドバイスを受けながら、都道府県等密着アドバイザーと連携し、モデル障害保健福祉圏域等 (障害保健福祉圏域・保健所設置市)における、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築を推進する。

A関係者間で情報やノウハウの共有化を図るため、ポータルサイトの設置等を行う。

V 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの考え方と内容
1 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの基本的な考え方

精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会報告書(厚生労働省、2021(令和3)年)では、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの基本的な考え方として、

  • 精神障害の有無や程度にかかわらず、誰もが安心して自分らしく暮らすことができるよう、重層的な連携による支援体制を構築する。
  • 「地域共生社会」は、制度・分野の枠や、「支える側」と「支えられる側」という従来の関係を超えて、人と人、人と社会のつながり、一人ひとりが生きがいや役割を持ち、助け合いながら暮らしていくことのできる包摂的なコミュニティや地域社会を創るという考え方であり、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」は「地域共生社会」を実現するための「システム」「仕組み」である。
  • 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの考え方や実践は、地域共生社会の実現に資する各種の取組との連携を図り、地域住民の複雑・複合化した支援ニーズに対応する包括的な支援体制の構築にも寄与するものであり、地域共生社会の実現に向かっていく上では欠かせないものである。

以上の点を挙げています。

2 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムを構成する要素

そして、これに対応する要素として、次の点を挙げています。

(1) 地域精神保健及び障害福祉

@市町村における精神保健に関する相談指導等について、制度的な位置付けを見直す。

A長期在院者への支援について、市町村が精神科病院との連携を前提に、病院を訪問し利用可能な制度の説明等を行う取組を、制度上位置付ける。

(2)精神医療の提供体制

@ 平時の対応を行うための「かかりつけ精神科医」機能等の充実を図る。

A 精神科救急医療体制整備をはじめとする精神症状の急性増悪や精神疾患の急性発症等により危機的な状況に陥った場合の対応を充実する  

(3)住まいの確保と居住支援

@ 社会的な孤立を予防するため、地域で孤立しないよう伴走し、支援することや助言等をすることができる支援体制を構築する。

A 入居者及び居住支援関係者の安心の確保が重要。

B 協議の場や居住支援協議会を通じた居住支援関係者との連携を強化する。

(4) 社会参加

@ 社会的な孤立を予防するため、地域で孤立しないよう伴走し、支援することや助言等をすることができる支援体制を構築する。

A 精神障害を有する方等と地域住民との交流の促進や地域で「はたらく」ことの支援が重要。

(5) 当事者・ピアサポーター

@ ピアサポーターによる精神障害を有する方等への支援の充実を図る。

A 市町村等はピアサポーターや精神障害を有する方等の、協議の場への参画を推進。

(6) 精神障害を有する方等の家族

@ 精神障害を有する方等の家族にとって、必要な時に適切な支援を受けられる体制が重要。

A 市町村等は協議の場に家族の参画を推進し、わかりやすい相談窓口の設置等の取組の推進。

(7) 人材育成

「本人の困りごと等」への相談指導等や伴走し、支援を行うことができる人材及び地域課題の解決に向けて関係者との連携を担う人材の育成と確保が必要。

3 精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築に係る各機関の役割の整理

精神障害にも対応した地域包括ケアシステムは、地域共生社会の実現に向かっていく上では、欠かせないものであり、精神障害の有無や程度にかかわらず、誰もが安心して自分らしく暮らすことができるよう、重層的な連携による支援体制を構築することが必要です。

その構築に際しては、精神障害者や精神保健(メンタルヘルス)上の課題を抱えた者等への支援を、日常生活圏域を基本として、市町村などの基礎自治体が取り組む必要があります。また、精神保健福祉センター及び保健所は市町村との協働により精神障害を有する方等のニーズや地域の課題を把握した上で、障害保健福祉圏域等の単位で精神保健医療福祉に関する重層的な連携による支援体制を構築することが重要となっています。

こうした動向を受けて、2021(令和3)年度の障害者総合支援法の障害福祉サービス等報酬改定では、自立生活援助事業者の夜間の緊急対応・電話相談の評価や地域移行実績の更なる評価、可能な限り早期の地域移行支援などがなされ単価アップが図られています。

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						<p class=出典:厚生労働省資料

執筆者
山本雅章 静岡福祉大学福祉心理学科特任教授
調布市社会福祉事業団業務執行理事