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耐火木造による高齢者福祉施設づくりの最新情報


全6回に渡って、耐火木造を用いた高齢者福祉施設づくりについて お届けします。


<執筆>
金沢工業大学環境・建築学部建築デザイン学科 教授
A/E WORKS専務理事 栗田 紀之

第3回:軸組構法による耐火木造A スパビレッジ・ホリカワ 〜ほりかわ癒しの湯〜


最大規模の軸組構造


 今回は、延床面積5000uを超え、軸組構法では国内最大規模となる住宅型有料老人ホーム「スパビレッジ・ホリカワ」(以下、ホリカワ)を取り上げる。ボード張り工事の真っ最中の9月、福岡県久留米市の工事現場を訪れた。 設計者の西出直樹氏(住友林業木化営業部)、現場責任者の中村修氏(同)、事業者の堀川周一氏(医療法人社団堀川会理事長・堀川病院院長)にお話をうかがった。
 ホリカワは、RC造3階建ての中央棟を挟み、耐火木造3階建ての東棟、準耐火木造2階建ての西棟の、3つのエリアから成っている(図1)。これらは別棟と解釈されるため、西棟は準耐火建築物(45分耐火)とすればよい。東棟は3000u以下に収まるが、3階を老人ホームの用に供するため、耐火建築物とする必要がある(法27条)。
 外観は、急勾配の大きな屋根に、さらに急勾配の直交する切妻屋根が載り、その高さに圧倒される(写真1)。木造で軒の高さ9・9m、最高高さは16mを超えている。
 したがって、構造設計はルート3で、「構造計算適合性判定(適判)」を受けている。一般には、構造や規模に制約を課して適判を回避することがよくあるが、ホリカワの場合、そうした考えは最初からなかったという。それよりも、周辺を圧倒するデザインと、構造計画の先進性が優先された。


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画像拡大 ▲写真1 北側外観(工事現場)

木造とした経緯


 事業者の堀川会は、堀川病院(383床)を中核に、介護老人保健施設、就労支援施設等を展開する医療法人である。堀川理事長は、これまで多くの建築に関わってきた。とくに平成8年開設の介護老人保健施設「サンダイヤル」(全個室100床)では、著名建築家を起用し、広いアトリウムのある、非常に満足のいく建築ができたという。しかし曰く、「素晴らしいのだけれど、温かみに欠ける」と。
 RC造のような平らな屋根ではなく、屋根を強調したデザインの建物を造りたい。3階建ても建てられる。堀川理事長はこう考え、今回の老人ホームは木造で建築することを選択した。
 ならば住宅メーカーだとまず思いつき、ホームページを見て住友林業の西九州支店(久留米市)の住宅部署に飛び込みで電話をかけた。ところが木造とはいえ大規模案件、支店の手には余って、東京の本社にSOS。幸いにも、大規模木造、耐火木造、老人ホーム等に実績がある木化営業部に繋がった。

木造建築技術先導事業


 設計者は、広い空間のある木造建築を、「補助金も一緒に」提案してくれたのだという。ホリカワは、平成25年度の木造建築技術先導事業に採択され、国土交通省の補助を受けている。
 計画当初、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とするか、住宅型有料老人ホームとするかの選択肢があった。面積等の設置要件が異なるが、前者だと建設費の10%の補助があり、後者にはない。また先導事業だと、用途によらず補助率は実質15%となるが、「構造・防火面で先導性に優れた大規模建築物」であることが評価の要件になる。
 ホリカワでは、医療機関が事業を行い、踏み込んだ介護サービスをアピールできる住宅型有料老人ホームとして差別化を図り(温泉も付く)、木造建築技術先導事業に挑戦することとした。

耐火木造の先導的技術


 木造耐火建築物の東棟は、基本的には在来軸組構法であり、※1メンブレン(被覆)型耐火構造である。これに加え、以下のような先導的な技術を導入している。
@ 戸境壁を利用した、※2せい1層分、スパン14mの※3平行弦トラスの使用(図2、写真2)。
A スギ耐火集成材(FRウッド)を※4あらわしで使用。
B 簡素・軽量な耐火構造外壁仕様(薬剤処理石膏ボード等を使用し独自に大臣認定)
 一般に老人ホームの事業者が木造を避ける理由のひとつとして、空間内に柱等の障害物が出てくることがよくあげられる。ホリカワでは、東棟1階に50人のデイサービスが併設されているが、ここに@の平行弦トラスを使用し無柱の大空間を確保している。このトラスは、老人ホームでの利用を念頭に、立体解析や振動実験等による開発を進めていたもので、今回初めて使用された。
 1階に大空間を設け、高倍率の耐力壁(16倍相当)を用いたことに伴い、2、3階床面を強固に固める必要が出てくる。当初設計の合板張りでは不十分とされ、適判で再計算が要求された。空間内に方杖を付加する案まで提示されたが、それでは先導性に疑問符がつき、補助金の減額も懸念された。無柱空間を貫くため、結局、床構面に※5ターンバックルブレースを入れることとしたが、確認が約2カ月遅れてしまった。
 設計者の西出氏によると、耐火木造に必ずしも価格優位性はなく、また設計ハードルも高いという。そして最後に、部材開発の重要性を強調された。

画像拡大 ▲写真2 平行弦トラス

※1 メンブレン(被覆)型耐火構造… 石膏ボード等の不燃材料で、木部を耐火被覆することで、木材が燃焼・炭化しないようにする構造。メンブレン(membrane)は「膜」の意味
※2 せい… 梁などの部材断面で上端から下端までの高さ
※3 平行弦トラス…トラス(truss)は、三角形に組み合わされた部材を単位とする構造骨組。トラスの上弦材と下弦材が平行に配置されたものが、平行弦トラス
※4 あらわし…普通は仕上げ材によって隠蔽してしまう構造部分を、露出させる仕上げのこと
※5 ターンバックルブレース…ターンバックル(turn buckle、ねじによる引き締め金具)を用いた、鋼製の筋かい

※ この記事は月刊誌「WAM」平成26年12月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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