音声言語によって相互の意思の伝達が困難な聴覚障害者に対し、手話を用いてコミュニケーションの仲介・伝達などを図る
しごとの内容
聴覚や言語機能、音声機能の障害のため、音声言語によって意思の疎通を図るうえで支障がある身体障害者に手話通訳を行い、健聴者とのコミュニケーションを仲介します。
具体的には、聴覚障害者の各種相談や指導などの仲介、講演の際の通訳、聴覚障害者が病院や役所、裁判所、学校、企業などに出かけるときに付き添う形で手話通訳し、健聴者とのコミュニケーションの手助けを行います。このように手話通訳士は相互の意思の疎通上、重要な役割を担っているため、公正な態度や幅広い分野に関する知識と高い通訳の技術が求められます。
ただし、本業だけで生計を立てられるのはごく一部の人です。このため、通常、都道府県や市町村のボランティアセンター、派遣協会などに登録し、関係機関からの委嘱により不定期にしごとに就く場合が多いようです。
主な職場
福祉系専門学校、都道府県、市町村、病院、大学障害学生支援室、ろう学校など
将来性
「全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること」という障害者基本法第3条第3号の規定を受け、手話通訳者を含む意思疎通支援者の育成・確保は、障害者基本計画上で注力されるべき施策の1つに位置づけられています。
2022年5月に公布・施行された「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」でも基本理念として、@障害の種類や程度に応じた手段を選択できるようにする、A日常生活や社会生活を営んでいる地域にかかわらず等しく情報取得等ができるようにする、B障害者でない者と同一内容の情報を同一時点において取得できるようにするなどが謳われているところです。
したがって、今後、手話通訳士の活躍の場はさらに広がるものとみられます。
登録者数
4,075人(2023年11月現在)
出典:「手話通訳士名簿」|社会福祉法人聴力障害者情報文化センター
(http://www.jyoubun-center.or.jp/slit/list/)
勤務形態
勤務先やしごとの依頼内容によって異なるので一概にいえませんが、現状は登録制で出来高払いの時間給や日給というのが一般的です。
給与水準
講師料の場合、1回約2時間で1万5,000〜2万円、通訳料の場合、1回2〜4時間で4,500〜8,000円が相場です。
試験の概要(2023年の例)
受験資格 |
年齢が20歳(受験日の属する年度の3月末までに20歳に達する者を含む)以上の人 |
試験内容 |
<学科試験> |
@障害者福祉の基礎知識 |
B手話通訳のあり方 |
A聴覚障害者に関する基礎知識 |
C国語 |
実技試験に落ちた学科試験の合格者は本人の申請により次の1回の学科試験を免除される |
<実技試験> |
@聞取り通訳試験(音声による出題を手話で解答) |
A読取り通訳試験(手話による出題を音声で解答) |
試験日 |
年1回、学科試験を7月、実技試験を10月に分離して実施 |
試験場 |
宮城、埼玉、東京、大阪、福岡 |
受験手数料 |
22,000円 |
資格取得のルート
学歴は問われず、20歳以上で社会福祉法人聴力障害者情報文化センターが実施する手話通訳技能認定試験を受け、合格して取得します。
なお、この試験の合格率は約10%と狭き門のため、受験に際しては、手話講習会等で十分に学習する必要があります。
合格者状況
出典:「合格者概況」|社会福祉法人聴力障害者情報文化センター を元に表を作成
(http://www.jyoubun-center.or.jp/wp-content/themes/joubun/pdf/slit/1-33_transition)
資格取得のポイント
国立障害者リハビリテーションセンター学院などの手話通訳学科などに入学し、受験に備えるのが一般的です。ちなみに、同学院の手話通訳学科の修業年限は2年、募集人員は30人で、入学試験の科目は国語(古典・漢文を除く)、小論文、面接となっています。
関連団体・組織
一般社団法人日本手話通訳士協会
http://www.jasli.jp/
社会福祉法人聴力障害者情報文化センター
http://www.jyoubun-center.or.jp/