福祉のしごとがますます注目されるワケ
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今後、さらに拡充が必要な社会保障や福祉サービス

 周知のように、日本は戦後、短期間のうちに戦災復興と高度経済成長を遂げ、GDP(国内総生産)がアメリカに次いで世界第二位となり、国際社会から奇跡といわれました。

 しかし、その後、石油危機やバブル崩壊、リーマンショック、経済のグローバル化、デフレ不況に伴い、2010(平成22)年、GDPは中国に追い越されて世界第三位となりました。同時に、本格的な少子高齢社会と人口減少を迎え、今後、社会保障や福祉サービスを必要とする人たちがさらに増えると予想されています。

 現に、総人口は2017(平成29)年10月現在、1億2,671万人で、このうち、65歳以上の高齢者は3,515万人となっており、高齢化率は27.7%です。しかも、高齢者は今後、2045年まで微増するのに対し、総人口は2055年に9,744万人と1億人を切り、2065年には8,808万人に減少し、高齢化率は2055年に38.0%、2065年には38.4%に上昇すると見込まれています。

 これに対し、高齢者を支えていくべき15〜64歳の生産年齢人口は2029年に6,951万人と7,000万人を割り、2065年には4,529万人、また、次代を担う0〜14歳の年少人口は2055年、1,012万人、2065年には898万人に減少すると推計されています(図表)。


図表 高齢化の推移と将来推計

高齢化の推移と将来推計

 一方、2017(平成29)年3月現在、身体障害 児者は約436万人、知的障害児者は同108万人、精神障害者は同392万人、また、幼稚園児は同127万人、幼保連携型認定こども園児は同50万人、保育園(所)児は同255万人、小学生は同645万人、中学生は同333万人、特別支援学校生は同14万人となっていますが、特別養護老人ホームや保育所(園)などに入所、あるいは預けられない待機者は高齢者が同36万人、保育園児が同2万6,000人(潜在的には同85万人)、障害児者もデータはないものの、かなりの人数に上っているとみられます。その意味でも社会保障や福祉サービスを必要とする人たちが今後、ますます必要となっていきます。

さまざまな職場と資格

 そこで、政府は1989(平成元)年、社会保障や福祉サービスの新たな財源として消費税を導入し、その後、3%から5、8%と段階的に引き上げ、2019年10月には10%に再引き上げを予定しています。そして、これを財源として1990年代にゴールドプランや障害者プラン、エンゼルプランを実施したのち、2000(平成12)年以降、介護保険法や障害者自立支援法(現障害者総合支援法)、次世代育成支援対策推進法などを制定・施行しました。また、自治体や社会福祉法人、社会福祉協議会(社協)、福祉公社・社会福祉事業団、福祉系企業・事業所、福祉NPO法人事業所などと連携し、高齢者や障害児者、幼稚園・保育園児などの職場や資格を増やし、社会保障や福祉サービスの整備・拡充を図っています。

 具体的な福祉の職場は特別養護老人ホームや老人保健施設、介護療養型医療施設(療養病床)を介護保険施設とするほか、地域包括支援センターや訪問看護事業所、老人短期入所施設、グループホーム、自立訓練(生活訓練)事業所、就労継続支援事業所、共同作業所(小規模作業所)、精神科病院、保育園、認定こども園、放課後等デイサービス事業所、さらに有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、福祉系企業・事業所などです。

 一方、資格では社会福祉士や介護福祉士、精神保健福祉士のほか、介護職員初任者研修修了者(訪問介護員:ホームヘルパー)や介護支援専門員(ケアマネジャー)、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、保健師、看護師、医療ソーシャルワ―カー(MSW)、偽装装具士、障害児者居宅介護従業者(ホームヘルパー)、ガイドヘルパー、保育士、児童の遊びを指導する者(児童厚生員)、福祉住環境コ−ディネーター、健康運動訓練士、福祉用具専門相談員などがあります。

 これを受け、福祉系の大学や短期大学、専門学校はこれらの資格の取得をめざす新卒者や社会人に対し、さまざまな養成教育や就職活動の支援に努めています。また、自治体や社協は福祉人材バンクや福祉人材センターを併設、福祉の職場の相談・面接会を開催する一方、公共職業安定所(ハローワーク)も福祉人材コーナーを常設、就職のあっせんに務めています。

働きがいのあるしごと

 ところで、職業は単に生活を維持するためや収入を得るというだけでなく、しごとを通じて社会貢献ができ、かつ自己実現を図るなど、人生を有意義に過ごすための大事な要素にもなります。なかでも福祉のしごとはきわめて働きがいのあるしごとの一つです。その福祉のしごとについて、一部で公務員や会社員に比べて給与が安い、また、休みがとりにくい、過酷などと揶揄(やゆ)する声もあるようですが、公務員に準じた待遇のところも少なくありません。

 それだけではありません。同じ職場で外国人の技能実習生と従事し、異文化の理解と共生の重要性を学べる可能性もあります。

 ただし、どのように立派な職場であったり、資格を持っていてもノーマライゼーションの理念のもと、利用者を支援し、地域社会に温かく迎えなければその担い手としては失格です。「福祉は人なり」といわれるゆえんですが、災害時には福祉避難所ともなるため、対利用者だけでなく、“地域福祉の要”として、日ごろから防災、さらには防犯への心得も忘れてはなりません。

本サイトの内容と特徴

 本サイト「福祉のしごとガイド」は毎月約5万件も検索され、大好評ですが、社会保障や福祉サービスにかかわる制度や政策、事業はもとより、福祉の職場や資格も年々、拡充されています。このため、今回、2015年度版の内容を2019年度版にブラッシュアップしたほか、新たな職場として小規模多機能型居宅介護事業所や企業主導型保育所、子ども食堂、ホスピスなど10か所、同様に、新たな資格としてコミュニティソーシャルワーカー(CSW)や公認心理師、司法ソーシャルワーカーなど8種類を加えましたが、本サイトの情報を利用される際は最新の情報をご確認くださるよう、お願いします。

 いずれにしても、本サイトが今後もより多くのみなさんの参考となり、晴れて志望する福祉のしごとに就業したり、起業に成功して利用者に喜ばれるとともに、これからの長い人生をより充実したものにしていただければ幸いです。陰ながら応援しています。


2019年4月

武蔵野大学名誉教授
川村 匡由

川村 匡由(かわむら・まさよし)

武蔵野大学名誉教授・博士(人間科学)

1999年、早稲田大学大学院人間科学研究科博士学位取得。専門は社会保障・地域福祉・防災福祉。元社会福祉士試験委員、行政書士有資格、シニア社会学会・世田谷区社会福祉事業団理事、福祉デザイン研究所・地域サロン「ぷらっと」主宰など。


主  著 『社会保障(監修)』『相談援助(同)』(建帛社)、『司法福祉論(編著)』『介護保険再点検』(ミネルヴァ書房)、『権利擁護と成年後見制度(編著)』(久美出版)『現代社会と福祉(監修)』(電気書院)、『防災福祉コミュニティ形成のために 実践編』『老活・終活のウソ、ホント70』(大学教育出版)、『防災福祉のまちづくり』(水曜社)、『地域福祉とソーシャルガバナンス』『三訂 福祉系学生のためのレポート&卒論の書き方』(中央法規出版)など多数。
その他 各地で自治体、社協、社会福祉事業団、福祉NPO法人事業所などの委員や講演、研修のほか、メディアにも多数登場している。

*個人のHP http://kawamura0515.sakura.ne.jp/index.html



 この「福祉のしごとガイド」は、福祉関連の資格・職種、職場についてその概要をご理解いただくために作成したものです。記述内容には正確をきしておりますが、本サイトの情報を利用される際には最新の情報をご確認下さいますよう、お願い申し上げます。