まず、堀田氏が講義の中で冒頭に強調されていたことは、「キャリアパスというものは作ったら終わりではなく、どう運用・行動していくかが問題。そのためには経営者の『思い』が必要となる」ということです。つまり、キャリアパス作成の前に、経営者は職員の知りたがっていることを整理し、明示する必要があるということです。職員に明示すべきこととは、法人は何を目指しているのか(目的・目標)、そのために今何をしているのか(計画・プロセス)、自分はどんな役にたてるのか(責任・権限)、どんな見返りがあるのか(金銭的・非金銭的報酬両方で)といったような、理念、価値観、行動規範というものです。
このことは、まさに組織で働く職員が経営者に対し最も知りたいと思う内容そのものであると思います。
キャリアパスの作成にあたっては、階層ごとに求められる役割責任を明確化し、職責ごとに権限を明確化する必要があります。堀田氏によれば、なるべく職位の下の人々に権限を移譲していくことが重要であり、職位の上の人々は新しい仕事をつくる、そうすることで職場全体のレベルアップを図ることができるとしています。
また、等級・報酬・処遇制度を明確化することや、法人の価値観に基づいた人事考課制度を作成し、必ずハンドブックなどの形あるものにし、経営者が職員一人ひとりと面談・面接をして説明することで、職員はその内容や思いを初めて理解することになります。
堀田氏が講義の中で繰り返しお話されたことでとても印象的であったことは、人事考課や教育制度体制の構築といった難しい制度作りよりも、経営者自身のちょっとした工夫が大切だということでした。
例えば給与明細に、理念やメッセージを書いた手紙を入れる、上司が毎日挨拶に加えて一言付け加える。一つ一つは大したことがないようでも、それを繰り返し積み重ねていくことで、確実に職場の風土は変わっていくのだと思います。できて当たり前、という姿勢は知らず知らずのうちに人のやる気を失わせ、やり甲斐をなくしてしまいます。ちょっとしたことでも上司に誉めて貰ったり、声を掛けて貰うだけでやる気が出る。このことは組織を活性化する秘訣ではないかと思います。
キャリアパス制度を作成し、運用していくにあたっては、このような職員の気持ち(ハート面)における内容も留意することが重要なのだということを強調されていました。
経営とは「意志決定」と「実行」の繰り返しです。重要なのは、まずやらなければならないことの一覧を書き出し、優先順位をつけて整理することです。目標は書くことで計画になります。また、できないことはできない理由を考え、計画は実行することで現実となっていくのです。このことは、キャリアパス作成、福祉の分野に関わらず、どんな仕事においても大変重要なことであると思います。
80分間終始熱意にあふれた堀田氏の講義に、受講いただいたお客様のアンケート結果からも「非常にわかりやすかった」、「勇気づけられた」等のご意見をいただき、キャリアパスの運用に留まらず、これからの施設経営を見直す大きな一助となったのではないかと考えています。
経営支援室では、これからも、福祉・医療の経営に関するトピックをテーマに、学識経験者、現場の実践者などを講師に迎え、経営セミナーを開催させていただきます。
今後の開催予定は、
http://hp.wam.go.jp/guide/keiei/seminar_information/tabid/667/Default.aspx です。
お申込みは、WEBからも可能ですので、是非、ご検討ください。