最終回である第10回目は、平成22年度決算の事業活動収入に占める各費用の割合をまとめた「収支の状況」についてです。なお、当機構の経営分析参考指標では、ケアハウスを「一般型」及び「特定施設」に分類し、それぞれ次のように定義しています。
一 般 型 :ケアハウスであって、特定施設入居者生活介護の指定を受けていない施設
特定施設 :ケアハウスであって、特定施設入居者生活介護の指定を受けている施設
記載内容の参考資料として
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@ 一般型
事業活動収入に対する事業活動支出の割合では、「人件費率」は38.3%(前年度
37.2%)で、前年度から1.1ポイント増加し、「経費率」は49.0%(同48.1%)と前年度
から0.9ポイント増加しました。
人件費は「従事者数×給与単価」となりますが、どちらが人件費総額に影響したか
をみると、入所者10人当たり従事者数(=職員配置)は、第2回で説明したとおり前年
度から0.03人僅かに増加しております。一方で、「従事者1人当たり人件費」は3,903
千円(同3,856千円)と、前年度から47千円増加していますので、人件費総額に影響
を与えたのは、給与単価の要因の方が大きかったのではないかと考えられます。
このように、収入よりも支出の増加が影響し「事業活動収入対経常収支差額比率」
は、3.3%(同5.0%)と前年度から1.7ポイント減少する結果となりました。
A 特定施設
事業活動収入に対する事業活動支出の割合では、「人件費率」は51.6%(同49.9%)
で、前年度から1.7ポイント増加し、「経費率」は31.4%(同31.3%)と前年度から0.1ポイ
ント増加しました。
ここで一般型と同様に、従事者数と給与単価どちらが人件費総額に影響したかをみ
ると、入所者10人当たり従事者数(=職員配置)は、前年度から0.34人増加しましたが、
「従事者1人当たり人件費」は3,559千円(同3,448千円)と、前年度から111千円も増加
していることをみると、一般型同様に従事者数の増加よりも給与単価の方が人件費総
額に影響を与えたといえます。
このように、収入よりも支出の増加が影響し「事業活動収入対経常収支差額比率」
は、8.2%(同8.7%)と前年度から0.5ポイント減少する結果となりました。
以上、@A両方のタイプにおいて、給与単価の増加による人件費総額への影響がみてとれましたが、特に特定施設の給与単価の増加が顕著だった理由として処遇改善交付金の影響が考えられます。つまり、処遇改善交付金の算定要件を満たすために、職員の俸給表を改正した法人が少なからず存在している結果といえるのではないでしょうか。
今後は、介護報酬改定の動向を踏まえると、収入の大幅な増加は期待できないと思われ、コスト管理に対して財務・収支両面でどのようにバランスをとるかが、ケアハウスを経営する上で重要な鍵になると考えられます。
次回は、ケアハウスの「収支の状況」について報告します。
なお、本コラムで報告しました各数値および経営指標につきましては、当機構より毎年度発行しております冊子
「軽費老人ホーム(ケアハウス)の経営分析参考指標2011‐平成22年度決算分」に掲載しています。本コラムの内容についてのお問い合わせや冊子のご購入につきましては
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【参考資料】

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