独立行政法人福祉医療機構では毎年、貸付先各施設の機能性や収支の状況について調査を行っています。この程、平成22年度の各施設(病院、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、ケアハウス)における経営状況の調査結果を取りまとめました。そこで本コラムでは、全10回に渡りましてその概要を報告します。
第8回目となる今回は、平成22年度決算における軽費老人ホーム(ケアハウス)の経営状況のうち、事業活動収入の基礎となる「機能性」について報告します。
なお、当機構の経営分析参考指標では、ケアハウスを「一般型」及び「特定施設」に分類し、それぞれ次のように定義しています。
一 般 型 :ケアハウスであって、特定施設入居者生活介護の指定を受けていない施設
特定施設 :ケアハウスであって、特定施設入居者生活介護の指定を受けている施設
記載内容の参考資料として
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@ 一般型
「平均入所定員数」が39.1人(前年度39.6人)、「入所利用率」が95.0%(同95.2%)と、
いずれも前年度から減少しました。一方で、利用者単価である「定員1人当たり事業活動
収入」及び「入所者1人1日当たり事業活動収入」は、いずれも前年度から増加しておりま
す。
収入に影響する入所利用率が減少したにも関わらず、利用者単価が増加した要因の
一つとして考えられるのは、利用者単価の算式構造です。利用者単価の算式は、「事
業活動収入÷利用者数」で表されますが、分母にくる利用者数の減少ペースが、分子
にくる事業活動収入の減少ペースを上回った場合、利用者単価自体は増加することに
なります。そのような経年での数字の増減ペースが、今回の利用者単価増加に影響し
たと考えられます。
A 特定施設
「平均入所定員数」が47.4人(前年度47.9人)、「入所利用率」が95.4%(同95.5%)と、
いずれも前年度から減少しました。一方で、利用者単価である「定員1人当たり事業活動
収入」及び「入所者1人1日当たり事業活動収入」は、いずれも前年度から増加しておりま
す。
利用者単価が増加した要因の一つとして、「介護サービスを受けた入所者の割合」が
68.2%(同63.1%)と、前年度から5.1ポイント増加していることが挙げられ、介護保険関
係収入がその分増加しますので、事業活動収入自体の増加にもつながります。つまり、
利用者単価の算式より、分子の事業活動収入は増加し、分母の利用者数は減少したこ
とで、今回の利用者単価は増加したことになります。
現在、超高齢社会の中にあり、特養の待機者が増加する一方で、その受け皿的役割をケアハウスが担っているといっても過言ではない状況であると思われます。しかしながら、ケアハウスを取り巻く環境は厳しいもので、施設整備補助の大幅な縮減や、事務費補助金の地方行政への一般財源化など、経営者のインセンティブが働きにくいのが現実です。
そのような中でも、介護だけではない地域の福祉の拠点として生活支援機能をいかに発揮し存在価値を見いだしていくか、経営者に変革が求められている時代ではないでしょうか。
次回は、ケアハウスの「従事者の状況」について報告します。
なお、本コラムで報告しました各数値および経営指標につきましては、当機構より毎年度発行しております冊子
「軽費老人ホーム(ケアハウス)の経営分析参考指標2011‐平成22年度決算分」に掲載しています。本コラムの内容についてのお問い合わせや冊子のご購入につきましては
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【参考資料】

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