これまでの介護保険制度の改正の経緯と平成27年度介護保険法改正の概要について
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Tこれまでの介護保険法の改正について

 2000(平成12)年4月に施行された介護保険法は、これまで次のような改正を行ってきました。

○ 2005(平成17)年改正(2006〔平成18〕年4月施行)

 介護保険は、施行から5年後を目途に、必要な見直しを行うこととされていました。ついては、社会保障審議会介護保険部会にて、「制度の持続可能性」「明るく活力のある超高齢社会の構築」「社会保障の総合化」を基本的視点として検討を重ね、法改正により主に以下の通り見直しを行いました。


・「予防重視型システムへの転換」

 要介護者への介護給付と分けて、要支援者への給付を「予防給付」として新たに創設しました。そして、要支援者のケアマネジメントを、「地域包括支援センター(介護予防支援事業所)」で実施。また、市町村が、介護予防事業や包括的支援事業などの「地域支援事業」を実施するようになりました。

・「施設給付の見直し」

 介護保険施設など施設等の食費・居住費を保険給付の対象外(全額自己負担)にしました。一方、所得の低い利用者への補足給付を設けました。

 その他、地域密着型サービスの創設や、介護サービス情報の公表、負担能力を細かく反映した第1号被保険者の保険料の設定などを行いました。


○2011(平成23)年改正(2012〔平成24〕年4月施行)

 施行後10年が経過し、サービスの利用者数が、制度創設当初の約3倍になるとともに、重度の要介護者や医療ニーズの高い高齢者の増加、介護力の弱い単身世帯や高齢者のみ世帯の増加などへの対応と、これを支える介護人材の確保等が緊急の課題となりました。そこで、高齢者が地域で自立した生活を営むことができるようにするために、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスを切れ目なく提供する「地域包括ケアシステム」の実現を図ることとなりました。ついては、社会保障審議会介護保険部会にて検討を重ね、法改正により主に以下の通り見直しを行いました。


・「医療と介護の連携の強化等」

 重度や単身の要介護者等に対応できるよう、定期巡回・随時対応型訪問介護看護や複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)を創設しました。また、予防給付と生活支援サービスの総合的な取り組みである「介護予防・常生活支援総合事業」を、地域支援事業の一環として、市町村の判断で実施可能としました。

・「介護人材の確保とサービスの質の向上」

 介護福祉士や一定の教育を受けた介護職員等による痰の吸引等の実施を可能としました。また、介護サービス事業所における労働法規の遵守を徹底し、事業所指定の欠格要件及び取消要件に労働基準法等違反者を追加しました。

・「高齢者の住まいの整備等」

 サービス付き高齢者向け住宅の供給を促進。有料老人ホーム等における前払金の返還に関する利用者保護規定を追加しました。

・「認知症対策の推進」

 市民後見人の育成及び活用など、市町村における高齢者の権利擁護を推進するとともに、市町村の介護保険事業計画において、地域の実情に応じた認知症支援策を盛り込むこととしました。

・「市町村(保険者)による主体的な取り組みの推進」

 介護保険事業計画と医療サービス、住まいに関する計画との調和を確保。地域密着型サービスについて、公募・選考による指定を可能としました。

上記を経て、今般の2014(平成26)年改正(以下、平成27年度介護保険法改正)に至っています(図表1)。

図表1.これまでの介護保険制度の改正の経緯

出典:厚生労働省資料を改編

U 平成27年度介護保険法改正について

 平成27年度の改正(見直し)は、2008(平成20)年1月に、当時の福田内閣が設置した社会保障国民会議の報告により、同年12月に「持続可能な社会保障構築とその安定財源確保に向けた中期プログラム」が閣議決定されたことに端を発します。以降、政府・与党における検討がなされ、2012(平成24)年8月に、社会保障制度改革推進法が成立。年金、医療、介護、少子化の4分野での改革の基本方針が明記され、介護保険については、「介護サービスの効率化・重点化、保険料負担の増大の抑制を図る」とされました。
 改革の推進を審議する組織として、社会保障制度改革国民会議が設置され、その報告を踏まえた「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律(プログラム法)」が、2013(平成25)年12月に成立。そして、制度改革の全体像と進め方を示したプログラム法を具体化するものとして、「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(以下、医療介護総合確保推進法)」が、2014(平成26)年6月に成立したのです。
 医療介護総合確保推進法は、介護保険法や医療法など19の法律を一括して改正するもので、「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律に基づく措置として、効率的かつ質の高い医療提供体制を構築するとともに、地域包括ケアシステムを構築することを通じ、地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するため、医療法、介護保険法等の関係法律について所要の整備等を行う」ことを趣旨としています(図表2)。平成27年度介護保険法改正は、この法律によるものです。

図表2.医療介護総合確保推進法による主な法改正と施行時期

施工期日 改正事項
@公布の日 ○診療放射線技師法(業務実施体制の見直し)
○社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正する法律(介護福祉士の資格取得方法の見直しの期日の変更)
A平成26年4月1日又は
 この法律の公布の日の
いずれか遅い日
○地域における公的介護施設等の計画的な整備等の促進に関する法律(厚生労働大臣による総合確保方針の策定、基金による財政支援)
○医療法(総合確保方針に即した医療計画の作成)
○介護保険法(総合確保方針に即した介護保険事業計画等の作成)
B平成26年10月1日
○医療法(病床機能報告制度の創設、在宅医療の推進、病院・有床診療所等の役割、勤務環境改善、地域医療支援センターの機能の位置づけ、社団たる医療法人と財団たる医療法人の合併)
○外国医師等が行う臨床修練に係る医師法第十七条等の特例等に関する法律(臨床教授等の創設)
○良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律(持分なし医療法人への移行)
C平成27年4月1日
○医療法(地域医療構想の策定とその実現のために必要な措置、臨床研究中核病院)
○介護保険法(地域支援事業の充実、予防給付の見直し、特養の機能重点化、低所得者の保険料軽減の強化、介護保険事業計画の見直し、サービス付き高齢者向け住宅への住所地特例の適用)
※なお、地域支援事業の充実のうち、在宅医療・介護連携の推進、生活支援サービスの充実・強化及び認知症施策の推進)は平成30年4月、予防給付の見直しは平成29年4月までにすべての市町村で実施
○歯科衛生士法、診療放射線技師法、臨床検査技師等に関する法律(業務範囲の拡大・業務実施体制の見直し)
○歯科技工士法(国が歯科技工士試験を実施)
D平成27年8月1日
○介護保険法(一定以上の所得のある利用者の自己負担の引上げ、補足給付の支給に資産等を勘案
E平成27年10月1日 ○医療法(医療事故の調査に係る仕組み)
○看護師等の人材確保の促進に関する法律(看護師免許保持者等の届出制度)
○保健師助産師看護師法(看護師の特定行為の研修制度)
F平成28年4月1日まで
 の間にあって政令で定
 める日
○介護保険法(地域密着型通所介護の創設)
G平成30年4月1日 ○介護保険法(居宅介護支援事業所の指定権限の市町村への移譲)
出典:厚生労働省資料を改編

 平成27年度介護保険法改正の概要は次の通りです。

 
 ○地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化
(1)在宅医療・介護連携の推進などの地域支援事業の充実とあわせ、予防給付(介護予防訪問介護、介護予防通所介護)を地域支援事業に移行し、多様化
(2)特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)について、在宅での生活が困難な中重度の要介護者を支える機能に重点化
(3)低所得者の保険料軽減を拡充
(4)一定以上の所得のある利用者の自己負担を2割へ引上げ
(5)低所得の施設利用者の食費・居住費を補填する補足給付の要件に資産などを追加


 上記にかかる具体的な内容は、主に以下の通りです。


(1)在宅医療・介護連携の推進などの地域支援事業の充実とあわせ、予防給付(介護予防訪問介護、介護予防通所介護)を地域支援事業に移行し、多様化
 1)在宅医療・介護連携の推進(2017〔平成29〕年度末までに全市町村で実施)

 医療と介護の両方を必要とする状態の高齢者が、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることができるよう、地域における医療・介護の関係機関が連携して、包括的かつ継続的な在宅医療・介護を提供することが重要です。このため、関係機関が連携し、多職種 協働により在宅医療・介護を一体的に提供できる体制を構築するため、都道府県・保健所の支援の下、市町村が中心となって、地域の医師会等と緊密に連携しながら、地域の関係機関の連携体制の構築を推進します。


 2)認知症施策の推進(2017〔平成29〕年度末までに全市町村で実施)

 認知症専門医による指導の下、早期診断、早期対応に向けて、以下の体制を地域包括支援センター等に整備します。
  ・認知症初期集中支援チーム:複数の専門職が、認知症が疑われる人や、認知症の人とその家族を訪問し、認知症の専門医による鑑別診断等をふまえて、観察・評価を行い、本人や家族支援などの初期の支援を包括的・集中的に行い、自立生活のサポートを行います。
  ・認知症地域支援推進員:認知症の人ができる限り住み慣れた良い環境で暮らし続けることができるよう、地域の実情に応じて医療機関や介護サービス事業所、地域の支援機関をつなぐ連携支援や、認知症の人やその家族を支援する相談業務などを行います。


 3)生活支援・介護予防サービスの充実(2017〔平成29〕年度末までに全市町村で実施)

 単身世帯等が増加し、支援を必要とする軽度の高齢者が増加する中、生活支援の必要性も増加することで、ボランティアやNPO、民間企業、協同組合等の多様な主体が、生活支援・介護予防サービスを提供することが必要となっています。
 一方、高齢者の介護予防が求められている中、社会参加や社会的役割を持つことが、生きがいや介護予防につながります。
 そこで、多様な生活支援・介護予防サービスが利用できるような地域づくりを、市町村が支援することについて、制度的な位置づけの強化を図ります。具体的には、生活支援・介護予防サービスの充実に向けて、ボランティア等の生活支援の担い手の養成、発掘などの地域資源の開発や、そのネットワーク化などを行う生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)の配置などについて、介護保険法の地域支援事業に位置づけます。


 4)新しい介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)について

 サービスの種類や内容、人員基準・運営基準、介護報酬(単価)などが全国一律となっている予防給付のうち、介護予防訪問介護、介護予防通所介護について、市町村が地域の実情に応じ、住民主体の取り組みを含めた多様な主体による柔軟な取り組みにより、効果的かつ効率的にサービスを提供できるよう、地域支援事業の介護予防・生活支援サービス事業の「訪問型サービス」「通所型サービス」として見直します(介護予防訪問介護、介護予防通所介護は、2017〔平成29〕年度末には、すべて地域支援事業に移行)。一方で、介護予防訪問介護、介護予防通所介護以外のサービス(介護予防訪問看護、介護予防福祉用具貸与等)は、引き続き予防給付によるサービス提供を継続します。
 また、地域包括支援センターによる介護予防ケアマネジメントに基づき、総合事業(介護予防・生活支援サービス事業及び一般介護予防事業)のサービスと、予防給付のサービス(要支援者のみ)を組み合わせて利用します。なお、介護予防・生活支援サービス事業によるサービスのみ利用する場合は、要介護認定等を省略して「介護予防・生活支援サービス事業対象者」とし、迅速なサービス利用を可能にします(この場合、「基本チェックリスト」にて必要性を判断します)。


(2)特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)について、在宅での生活が困難な中重度の要介護者を支える機能に重点化(2015〔平成27〕年4月1日施行)

 平成27年4月より、原則、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)への新規入所者を、要介護3以上の高齢者に限定し、在宅での生活が困難な中重度の要介護者を支える施設としての機能に重点化を図ることになりました。既に入所している者は、継続して入所が可能です。なお、要介護1、要介護2の者でも、やむを得ない事情により、特別護老人ホーム以外での生活が著しく困難であると認められる場合には、市町村の適切な関与の下、特例的に入所することが可能です。


(3)低所得者の保険料軽減を拡充 (2015〔平成27〕年4月1日施行)

 第1号被保険者(65歳以上)の介護保険料について、給付費の5割の公費とは別枠で公費を投入し、低所得の高齢者の保険料の軽減を強化します。
 第1弾として、平成27年4月から、市町村民税世帯全員が非課税な者(第1、第2、第3段階)のうち、特に所得の低い者(第1段階)を対象とし、保険料基準額に対する軽減割合を、現行の0.5から0.45(保険料基準額×0.45。以下同様)に引き下げました。また、平成29年4月、消費税を10%に引き上げた時に、完全実施します。具体的には、第1段階の者は、前述の0.45を更に引き下げて0.3。第2段階の者は、現行の0.75から0.5。第3段階の者は、現行の0.75から0.7に、それぞれ引き下げます。


(4)一定以上の所得のある利用者の自己負担を2割へ引上げ (2015〔平成27〕年8月1日施行)

 介護保険料の上昇を可能な限り抑えながら、制度の持続可能性を高めるため、これまで一律1割に据え置いてきた利用者負担について、相対的に負担能力のある一定以上の所得がある高齢者(第1号被保険者)の、自己負担割合を2割としました。ただし、月額上限があるため、見直し対象の全員の負担が2倍になるわけではありません。
 自己負担が2割となる水準は、合計所得金額160万円以上で、単身で年金収入のみの場合、280万円以上に相当します。ただし、合計所得金額が160万円以上でも、実質的な所得が280万円に満たないケースや、2人以上世帯における負担能力が低いケースを考慮し、「年金収入とその他の合計所得金額」の合計が単身で280万円、2人以上世帯で346万円未満の場合は、1割に戻します。なお、合計所得金額とは、収入から公的年金控除や給与所得控除、必要経費を控除した後で、基礎控除や人的控除等を控除する前の所得金額を指します。


(5)低所得の施設利用者の食費・居住費を補填する補足給付の要件に資産などを追加

   (2015〔平成27〕年8月1日施行)
 施設等にかかる費用のうち、食費及び居住費は全額自己負担が原則ですが、市町村民税非課税世帯である利用者(入所者)については、その申請に基づき、補足給付を支給し負担を軽減します。一方、市町村民税非課税世帯であっても、預貯金を保有するケースなどが見られました。そのような利用者に、保険料を財源とした給付が行われることは不公平であることから、資産を勘案するなどの見直しを行いました。具体的に、預貯金等が単身で1000万円、夫婦世帯で2000万円を超えている場合などは、補足給付の対象外となります。


(6)その他の改正事項

 今回の法改正により次の事項についても実施または施行が予定されています。
 ・地域ケア会議の推進(2015〔平成27〕年4月1日施行):地域ケア会議は、地域包括支援センター及び市町村レルの会議で、個別事例の検討を通して、ケアマネジメント支援や地域のネットワーク構築などを図ります。
  これまでは、厚生労働省の通知により行われていましたが、介護保険法で制度的に位置づけました。
 ・サービス付き高齢者向け住宅の住所地特例適用(2015〔平成27〕年4月1日施行):住所地特例は、住所地以外の市町村に所在する施設に入所した利用者に対して、住所を移す前の市町村が引き続き保険者となるものです。
  法改正により、有料老人ホームに該当するサービス付き高齢者向け住宅も住所地特例の対象となりました(2015年4月1日以降の入居者が対象)。
 ・地域密着型通所介護の創設(2016〔平成28〕年4月1日施行):都道府県が指定・監督を行う通所介護のうち、地域との連携や運営の透明性の確保のため、小規模な通所介護事業所(利用定員18人以下を予定)を、市町村が指定・監督を行う地域密着型サービスに移行します。
 ・居宅介護支援事業所の指定権限の市町村への委譲(2018〔平成30〕年4月1日施行):現在、都道府県に指定権限のある居宅介護支援事業所において、市町村の保険者としての機能を強化するため、市町村に指定権限を委譲します。

 これら法改正に関する、より具体的な内容などにつきましては、最寄りの市町村(保険者)や地域包括支援センターに、お問い合わせください。



執筆者:

  石橋亮一  介護福祉士・社会福祉士・介護支援専門員・福祉住環境コーディネーター2級
          東京電機大学工学部・未来科学部 非常勤講師(介護福祉論・生活支援工学)

  川上由里子 ケアコンサルタント。看護師・介護支援専門員・産業カウンセラー