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連載コラム
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トラブルに学ぶリスク対策

介護現場で起きた事例を踏まえ、原因とその防止策のポイントをお伝えしていきます。



<執筆>
株式会社安全な介護 代表取締役
山田 滋(やまだ しげる)
<プロフィール>
介護現場で積み上げた実践に基づくリスクマネジメントの方法論は、「わかりやすく実践的」と好評。著書に『安全な介護』(筒井書房)、『介護施設の災害対策ハンドブック』(中央法規)など多数

事例㉝:浴槽で溺れかけその後死亡、遺族が刑事告訴

こんな事故が起きました!

Mさんは半身麻痺がありますが、比較的自立度の高いショートステイの利用者です。ある時、入浴中に職員が目を離した隙にMさんはよろけて溺れそうになり、ひどくむせました。職員がすぐに助けましたが、本人が「大丈夫」と言うので居室で安静にしました。ところが、数時間経ってもむせが止まらず意識混濁を起こし救急搬送され、肺水腫で亡くなりました。救急から連絡を受けた警察が事情聴取をしましたが、事件性なしと判断されました。ところが、葬儀後に家族が「事故を隠ぺいしようとして救命処置が遅れた」として、刑事告訴しました。施設長は、賠償金の上乗せを申し出ましたが、家族は受け入れません。

事故原因と防止対策

「入浴中に浴槽でよろけてお湯を飲んでむせる」ということは、誰でも経験がありそうです。なぜ、この程度の事故で亡くなってしまったのでしょうか?幼児や高齢者などが、浴槽で溺れかけた時に肺にお湯が侵入すると、雑菌で肺が炎症を起こして肺水腫となり死に至ることがあります。家庭の浴槽に比べ公衆浴場やプールの水などは、雑菌や化学物質が多く危険とされます。これを二次溺水事故と呼び、プールで溺れかけた子供が数時間後に意識混濁を起こして死に至ることもあります。

しかし、Mさんのように自立度の高い利用者が、浴槽で足を滑らせて多少お湯を飲んでむせたとしても、まさかお湯が肺に侵入したことで肺水腫を起こし死に至るとは、看護師も想像できないでしょう。Mさんが亡くなってしまったことは不幸な事故ではありますが、業務上過失致死で刑事告訴されるほど職員の過失が大きいとは思えません。

では、なぜ家族は「事故を隠ぺいしようとした」と言って、刑事告訴に踏み切ったのでしょうか?Mさんが浴槽で溺れた時、すぐに受診させていませんし、家族連絡すら入れずに居室で経過観察をしてしまいました。「溺水事故を隠す意図で経過観察としたのだろう。もっと早く受診していれば命は助かったはずだ」と家族は考えたのでしょう。つまり、悪質な事故の隠ぺい工作であると。家族連絡も入れずに安易に経過観察をする施設がたくさんありますが、経過観察中に急変し重大な結果となれば家族は「隠そうとした」と考えますから、事故直後の家族連絡と経過観察に対する家族への了解は絶対に欠かせません。

次に施設内で事故が起こり、職員が刑事告訴された時の対応について考えましょう。施設内の事故で利用者が死亡した場合など、警察に事情聴取されることがありますが、警察が事件性なしと判断すれば捜査は行われず、通常の事故と同じように遺族に損害賠償の対応をすることになります。しかし、警察が事件性なしと判断しても、遺族は刑事事件として捜査を求めて警察に刑事告訴することができます。警察が告訴を受理すれば捜査が行われ、最悪の場合職員が業務上過失致死で刑事責任を問われます。

浴槽で溺れかけその後死亡、遺族が刑事告訴

では、施設内の事故で遺族に刑事告訴されてしまった時は、施設はどのように対応すればよいのでしょうか? 遺族が刑事告訴しても、その後遺族の申し出によって告訴を取り下げることができますから、法人の理事長など役職の高い者が家族対応を行う必要があります。多くの場合、家族は職員個人に憤りを感じているので、職員個人の責任ではなく法人組織の責任として何度も謝罪に赴き、家族の悪感情を和らげることが必要なのです。

社員が業務中に交通死亡事故を起こして、家族から刑事告訴されることがありますが、経営者自ら何度も被害者の遺族のもとに足を運び謝罪することで、家族に告訴の取り下げを働きかけます。刑事罰を受ければ職員は一生を棒に振るかもしれないのですから。

※ この記事は月刊誌「WAM」2017年12月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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