トップ背景

トップ

高齢・介護

医療

障害者福祉

子ども・家庭

知りたい

wamnetアイコン
検索アイコン
知りたいアイコン
ロックアイコン会員入口
トップアイコン1トップ |
高齢アイコン高齢・介護 |
医療アイコン医療|
障害者福祉アイコン障害者福祉|
子どもアイコン子ども・家庭
アイコン



勤怠管理システム・勤務シフト作成支援システム
福祉医療広告

高齢・介護
医療
障害者福祉
子ども・家庭

サービス取組み事例紹介
トップ

株式会社やさしい手

地域包括ケアシステムの実現に向けてサ高住併設型の定期巡回・随時対応サービス事業所を展開  株式会社やさしい手

株式会社やさしい手は、平成8年に東京都世田谷区の委託事業として行った24時間巡回型訪問介護の経験を生かし、平成24年4月から定期巡回・随時対応型訪問介護看護を全国に先駆けてスタート、現在サービス付き高齢者向け住宅に併設した形態での事業展開を進めている。その取り組みを取材した。

※ この記事は月刊誌「WAM」平成26年7月号に掲載されたものです。

利用者の「住み慣れた家で最期まで生きる」を支える


 平成24年度より「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」が新たな介護保険サービスとして導入された。同サービスは、可能な限り住み慣れた自宅での生活を支えるという観点から、地域包括ケアシステムの中核的サービスと位置づけられるが、平成26年3月時点の保険者数は196保険者、事業者数は434カ所、利用者数6792人と、厚生労働省の掲げる目標を大幅に下回り、参入が進んでいない状況にある。
 東京都目黒区にある「株式会社やさしい手」は、昭和39年に「大橋サービス」として看護師・家政婦の紹介所を創業した後、平成5年に在宅介護事業を中心とした同社を設立。「住み慣れた家で、最期まで生きる」を理念に掲げ、利用者の豊かな在宅生活を支えるサービスを提供してきた。
 全国で訪問介護事業所51カ所、居宅介護支援事業所34カ所、通所介護事業所17カ所などの居宅介護サービスをはじめ、サービス付き高齢者向け住宅運営事業を12カ所運営するほか、平成8年に東京都世田谷区の委託事業として行った24時間巡回型訪問介護の経験を生かし、全国に先駆けて平成24年4月から「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」(以下、定期巡回・随時対応サービス)のサービス提供を開始。現在11事業所にまで事業を拡大している。
 同社は、サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)の運営事業にも力を注いでいるが、サ高住に定期巡回・随時対応サービス事業所を併設した形態の事業展開を進めており、11ある定期巡回・随時対応サービス事業所のうち、8事業所がサ高住との併設となる。
 今回取材した昨年8月オープンの「サービス付き高齢者向け住宅センチュリーテラス新柏」(千葉県柏市)も、併設型モデルとなっている。


▲ 平成25年8月に開設したサ高住「センチュリーテラス新柏」は、定期巡回・随時対応サービス事業所を併設する。

入居者の8割が同サービスを利用


  「センチュリーテラス新柏」は、JR柏駅から東武野田線で1駅目の新柏駅より徒歩5分に位置し、近隣にスーパーやドラッグストアがあるなど交通アクセスと生活利便性を兼ね備えた好立地にある。居室数は全51戸で、1人部屋タイプが37戸、2人部屋タイプが14戸と、ニーズの高い夫婦での入居希望にも対応している。入居者の大半が80歳代で、平均要介護度は2.2だという。

                
 ▲ 2 人入居が可能な居室(36平米・1DK)は、夫婦での入居ニーズに応えるため14 戸を用意する。 ▲ 1 階の食堂スペース。オープンテラスにつながっており、イベントで使用することもある。

 同住居のコンセプトについて、センチュリーテラス新柏支配人の前田和世氏は、次のように語る。
 「当住居は『住まい』、『介護』、『医療』の部分を3社に分けて運営していることが大きな特徴となっています。住まいは住宅メーカーが事業主体となり賃貸借の契約や建物の管理業務を担当し、当社は建物内のサービス提供業務全般を請け負う運営主体となります。医療については、看護師が常駐しているサ高住はあまりないと思いますが、地域の病院と提携し入居者の往診だけでなく、看護師に日中の9時〜18時まで365日常駐してもらい、転倒など必要時に対応していただくことで入居者の方の安心・安全につなげています。当社ではこのような事業スキームを多くのサ高住で採用しています」。


▲ 館内に併設する定期巡回・随時対応サービス事業所。オペレーターや随時対応を行うスタッフを24時間365日体制で配置。

 また、定期巡回・随時対応サービス事業所をサ高住に併設するメリットについて、株式会社やさしい手経営企画室の西村智氏は、「入居者の方が生活するうえで安心を感じていただけるということもありますが、入居される方の大半が定期巡回・随時対応サービスを利用されますので、事業所の立ち上げ当初の利用者の確保がしやすいこともメリットとなります。また、地域のフラッグシップとなるイメージ的な役割もあると考えています」と説明する。
 ほかにも利用者が館内にいるため、通常の訪問介護では見落としがちになる些細な状態の変化などもつかむことができるという。
 同住居は開設から8カ月経つが、現在ほぼ満室となっている。入居時に定期巡回・随時対応サービスを受けられることを知って入居先に選ぶ人も多く、入居者の8割以上が同サービスを利用している。


定期巡回のスタッフは登録制のヘルパーで対応


 定期巡回・随時対応サービス事業所のスタッフの配置については、オペレーターと随時対応・定期巡回をする訪問介護スタッフを24時間体制で配置するほか、計画作成責任者が必要となる。夜間・深夜帯における訪問介護スタッフの確保が困難といわれているが、同社では長年24時間巡回型訪問介護を行ってきた経験から、定期巡回のスタッフは登録制のヘルパーを中心に対応するなど、比較的スムーズに人員体制を整備することができたという。しかし、オペレーターの資格要件は、看護師、介護福祉士、社会福祉士、ケアマネジャーなど厳格なため、どんなに経験があってもヘルパー2級の者を配置することができないことは苦しい点だとしている。
 同サービスの利用者には携帯端末(みまもりケータイ)を渡し、いつでもオペレーターにつながるようになっており、通報を受けたオペレーターは利用者の状態把握や随時対応の必要性を判断し、訪問介護スタッフの手配を行う。定期巡回で1日数回入っていることや、転倒など随時対応が必要なケースはそれほど多くないため、実際に訪問対応するのは10回のコールに対して2回程度だという。
 なお、定期巡回・随時対応サービス事業所は、1つの事業所で訪問介護と訪問看護を一体的に提供する「一体型」と、訪問介護を行う事業者が地域の訪問看護ステーションと連携する「連携型」の2つの形態があるが、同社では1事業所を除き、同事業所も含めて「連携型」が中心となる。連携先の訪問看護ステーションを探すことは困難な状況にあるという。
 「そもそも24時間体制の訪問看護ステーション自体がそう多くはありません。夜間や緊急時以外は土・日曜の訪問看護を行っていないところも多く、体制が整っていている事業所を探して、説得し連携してもらうことは非常に大変です。また、圏域が広い場合、事業所ごとに訪問するエリアが限られていますので、複数の連携先を確保することも必要になります。柏市は比較的訪問看護ステーションがあるため、現在5カ所と連携していますが、訪問看護が充実しているエリアでなければ、連携先を確保することは難しいと思います」(前田支配人)。


際限なく増えるサービス量をいかに調整するかがポイント


 地域包括ケアシステムの要として位置づけられているにもかかわらず、参入が進んでいない要因については、24 時間の訪問介護を行っている事業所が少なく、これまで日中の訪問介護しか行っていなかった事業所が夜間・深夜帯の人員を確保することは容易ではないことがあげられる。また、開設の意思があっても、同サービスは地域密着型サービスであるため、事業所の開設の指定権者である市町村の意向に左右されることもある。前田支配人は一番の要因として単独で採算をとることが難しいことをあげている。また、定期巡回・随時対応サービスを運営するうえでは、利用者のサービスをどのように調整していくのかがポイントだとしている。
 「同サービスの基本報酬は月額固定の包括払いのため、要介護1の方に毎日朝・昼・夜に1回ずつ来てほしいといわれると、あっという間に人件費でオーバーしてしまいます。身体介護を中心とした短時間のサービスを1日複数回プランニングし、効率よくサービス ルートを組むことが重要になります。そこを工夫して、”毎回調理“といわれている生活支援サービスを配食に変えていただくなどのご提案をしていかなければ、サービス量は際限なく増えていきますので、どのように調整していくのかがポイントになります」(前田支配人)。
 そのため、利用者からの通報を受け、状態の把握や随時対応の必要性を判断するオペレーターと、ケアプランをもとに定期巡回の訪問頻度などのスケジュールやサービス内容を決める計画作成責任者の力量が非常に重要になるという。


利用者の確保には仲介するケアネジャーへの働きかけがカギ


 また、全国的に同サービスの利用者は伸びていないといわれているが、同事業所の利用者の状況は、開設から8カ月であることもあり、サ高住の入居者が3 分の2、地域の利用者は3分の1となっている。同サービスは今後急増する中重度者の利用を対象に想定しているが、中重度者はすでに施設入所しているケースも多く、地域の利用者確保は大きな課題となる。
 「地域の利用者の確保のためには、ケアマネジャーや病院のソーシャルワーカーに対していかにアプローチしていくかがポイントとなりますが、同サービスへの理解・認知が進んでいないのが現状です。単純に定期巡回を売り込んだとしても、うまくイメージができませんので、例えば『夜間サービスや、サービスがたくさん必要で通常の訪問介護では組めない方に対して同サービスの利用はいかがですか』といった具体的なアプローチが必要です。また、それとは逆に『たくさんのサービスを使いたいが限度額を超えてしまうので同サービスをお願いします』と依頼してくるケアマネジャーも実際にいます。仲介するケアマネジャーやソーシャルワーカーに対して、同サービスの本来の使い方を理解・認知してもらう働きかけは非常に重要だと考えています」(前田支配人)。
 同サービスの利用者・家族からは、住み慣れた地域で暮らし続けられることが可能になり、助かっているという声が多く寄せられているという。しかし、なかには「毎回同じスタッフに来てほしい」や、基本的に30分以内に訪問するものの、「呼んでもすぐに来ない」といった声も聞かれることもあるという。
 「同サービスは訪問回数が多くなりますので、毎回同じスタッフが訪問することはどうしても難しくなります。このようなこともクレーム等につながる可能性があるので、利用者には事前に定期巡回・随時対応サービスがどういったサービスであるかをしっかりと説明することが重要ですが、ケアマネジャーにも説明に協力していただくことが大切だと思います。事前の説明でご理解がいただけない方います。事前の説明でご理解がいただけない方に対しては、別の方法を提案していくことも必要になります」(前田支配人)。
 なお、そのようなクレームは、要介護度1など比較的軽度者が多く、本当に毎日多くのサービスが必要な人から受けることはないのが現状だという。


訪問介護用のシステムを構築し情報の集約・共有を図る


 また、定期巡回・随時対応サービスでは、通常の訪問介護に比べて、訪問回数が多いことや、1人の利用者に対して複数の訪問介護スタッフで対応するため情報量が膨大になり、情報の集約・共有が大変な作業となる。そのため申し送りなどをスムーズに行えるようITを活用した取り組みも不可欠になる。
 同社では訪問介護用のシステムを自社開発しており、訪問介護スタッフが携帯端末から打ち込んだ介護記録は、オペレーターにいったん集められ、共有できる情報として集積される。IDやパスワードを入れることで自分の事業所の情報がみることができ、次回のスケジュールや申し送り事項を確認できるシステムを構築している。
 今後の展望については、住み慣れた地域で、いつまでも暮らし続けられる地域包括ケアの実現に向けて、サービス付き高齢者住宅向け住宅併設型モデルの開発だけでなく、独立型の事業所も含めて、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の展開に力を入れていきたいとしている。
 地域包括ケアシステムの実現に向けて、利用者の豊かな在宅生活を支える同社の取り組みが、今後も注目される。


サービス量の調整が大きなポイント
株式会社やさしい手 サービス付き高齢者向け住宅 センチュリーテラス新柏 支配人 前田 和世氏(社会福祉士)

 昨年8 月に開設した「サービス付き高齢者向け住宅センチュリーテラス新柏」は、「住まい」、「介護」、「医療」の3 部門を3 社に分けて運営しています。そのため、賃料や共益費は事業主体である住宅メーカーに入り、運営主体である当社は、介護保険による給付と生活支援サービス費が主な収入源となります。
 開設から間もないこともあり、地域との交流にはまだ至っていませんが、将来的には夏祭りを開催するなど地域交流にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。定期巡回・随時対応サービスについては、当社では平成8 年から24 時間巡回型訪問介護に取り組んできた経験から比較的スムーズに人員体制を整備することができましたが、非常に人手のかかる事業なので、黒字化が難しい面があります。オペレーターや計画作成責任者が中心となって、際限なく増えていくサービス量をいかに調整していけるかが非常に大きなポイントだと考えています。

「住み慣れた家で、最期まで生きる」を目指して
株式会社やさしい手 経営企画室 西村 智氏

 定期巡回・随時対応サービスは、地域包括ケアシステムの実現に向けて、重要な役割を担うサービスとなりますが、当社では、サービス付き高齢者向け住宅に併設した事業展開を進めています。
 メリットとして入居者の方の多くが同サービスを利用されるため、開設当初の利用者の確保をしやすいことがあげられます。地域の利用者確保にも積極的に取り組んでおりますが、ニーズは高いものの全国的にも利用者数が伸びていない理由として、ご利用者やケアマネジャーなど仲介をする職種に対して同サービスへの周知が十分でないことがあげられます。ご利用者・ケアマネジャーへの理解・認知度を高める働きかけをしていくことが大切だと考えています。
 当社が理念にかかげる「住み慣れた家で、最期まで生きる」を支えるために、今後もサ高住併設モデルの開発だけでなく、単独の事業所も含めて、定期巡回・随時対応サービス事業を積極的に展開していきたいと考えています。


<< 法人概要 >>
法人名 株式会社やさしい手
代表取締役会長 香取 眞恵子 氏 代表取締役社長 香取 幹 氏
法人事業所 居宅介護サービス(訪問介護51カ所、定期巡回・随時対応型訪問介護看護11カ所、訪問看護、居宅介護支援事業所34カ所、訪問入浴介護4カ所、通所介護17カ所、福祉用具貸与・販売3カ所、住宅改修、包括支援センター(委託事業)5カ所、在宅介護支援センター、短期入所2カ所/有料職業紹介事業/一般労働者派遣事業/フランチャイズ事業/訪問介護員養成学校7カ所/サービス付き高齢者向け住宅運営事業12カ所
設立時期 平成5年10月 職員数 5510人(常勤1013人、非常勤4497人)平成26年4月現在
電話 03−5433−5513 FAX 03−5433−5527
URL http://www.yasashiite.com/


※ この記事は月刊誌「WAM」平成26年6月号に掲載されたものです。
  月刊誌「WAM」最新号の購読をご希望の方は次のいずれかのリンクからお申込みください。




ページトップ