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社会福祉法人るうてるホーム

軽費老人ホームからケアハウスへの転換  社会福祉法人るうてるホーム

平成20年から軽費老人ホームA型・B型は経過的施設となり、既存施設の建て替えの際にケアハウスへ転換されることになったが、全国的には建て替えがあまり進んでいない状況にある。大阪府四條畷市にある社会福祉法人るうてるホームは、平成25年に既存事業を一体化した施設の新築移転を伴い、大阪府で2例目となるケアハウスの転換を実施している。その取り組みを取材した。

※ この記事は月刊誌「WAM」平成27年2月号に掲載されたものです。

大阪府民間第1号の軽費老人ホームを開設


 大阪府四條畷市にある社会福祉法人るうてるホームは、キリスト教主義に立ち、「聖書の教えに従って高齢者を敬い、お仕えする」を理念に掲げ、昭和39年に設立された。翌年、大阪府の民間第1号となる軽費老人ホームを開設した後、特別養護老人ホームのほか、通所介護、訪問介護、訪問看護などの在宅サービスを展開。地域に根ざした介護サービスを提供してきた法人である。
 軽費老人ホームは、平成20年6月から、従来のA型、B型およびケアハウスの3つの類型がケアハウスの基準に統一され、A型・B型の施設は「経過的軽費老人ホーム」として、施設の建替えの際にはケアハウスへ転換されることになった。しかし、建替え費用が居住費に反映されるため低所得の入居者の支払いが困難になることや、大規模修繕や建替え資金の積み立てを確保できないなどの理由から、全体的には転換が進んでいない状況にある。
 また、平成25年10月現在の軽費老人ホームA型・B型の耐震化率(※)はそれぞれ68.2%、59.1%と、高齢者関係施設の平均92.8%と比べて大幅に低いこともあり、入居者の安全確保の観点からも早急な建替えの必要性が指摘されている。
 そのような状況のなか、同法人は平成25年に既存事業を一体化した施設の新築移転を伴い、軽費老人ホームからケアハウスの転換を実施している。


▲ ケアハウスるうてる 施設外観

 ケアハウスへの転換を実施した経緯について、同法人常務理事の石倉智史氏は次のように語る。
 「昭和40年に建築された軽費老人ホームの建替えについては、当法人では築後35年を経過した平成12年ごろから検討していました。しかし旧基準で建てられた施設のため、現行の建築基準法の施設基準にあわせると建築面積が増え、同じ場所での建て替えができないことや、資金面での折り合いがつかないなどの理由から実現に至りませんでした。そのようななか、特別養護老人ホームも耐震診断の結果、補強工事が必要であることがわかり、利用者の安心・安全な暮らしを提供するために建て替えることを決断しました。また、ケアハウスへの転換に対する補助金も削減されていく状況のなかで、今のうちに転換しておかなければという考えもありました」。
 ※厚生労働省「平成25年社会福祉施設等の耐震化状況調査」より


 すべての事業を一体化した施設の建て替えを計画


 建て替え計画は、四條畷市内に新たな土地を購入し、同法人のすべての事業を一体化した施設とする内容だった。そこで同時に軽費老人ホームからケアハウスへの転換も実施することとなった。
 その後、法人事務局が中心となり土地の選定を進めるなかで、休眠中であった約1300坪の農地をみつけることができたものの、地主との価格交渉で折り合いがつかず土地取得の交渉だけで約2年を費やしたという。なかなか交渉がまとまらず、あきらめかけていたときに、社会福祉法人に土地を売却した場合に税制面の優遇措置が受けられる『租税特別措置法』があるという助言を受けたことで、難航していた交渉を進展させることができたという。
 「土地購入の目途が立ったあと、次に問題となったのは隣接地で稲作を行っていたため、農閑期に開発工事をしなくてはならないことでした。そのためには土地を先行取得し、大阪府から移転事業を補助金対象事業として認めてもらう必要がありました。大阪府は『本当に建つかどうかもわからないのに、土地取得しただけで補助金は出せない』というのが最初の反応でした。行政としては当然の反応だと思いますが、私たちはこの土地しかないと考えていましたし、農閑期に開発工事をしなければ建て替えができないということもあり、何度も事業計画を練り直していくなかで『何とか土地だけでも先に購入させてほしい』とねばり強く交渉して最終的に許可をいただき、福祉医療機構の融資を受けて土地を購入することができました。先に土地を購入して、あとから建物の融資を受けたというのは、大阪府でも例のないケースだといわれましたが、大阪府と福祉医療機構のご理解をいただけたことは非常に助かりました」(石倉常務理事)。
 なお、同法人のある地域では、開発工事の際には文化財発掘の調査を行う必要があった。これにかかる費用は開発者の負担となっており、負担した調査費用総額は800万円にのぼったという。


 建築委員会を立ち上げ施設設計に現場の声を反映


 施設を設計する際には、各事業所の代表者で構成される「建築委員会」を立ち上げて、現場の声を反映させた。
 「福祉施設の建て替えは、施設長や経営者といった法人幹部が建築士と話しあって設計しているところが大半だと思います。しかし、私の経験からいうと、現場の職員の声が反映されていない施設が使いやすかったことはありませんし、職員には自分たちの施設に対する思い入れをもってほしいという考えから、『建築委員会』を立ち上げました。職員は自主的に近隣の施設へ見学に出向き、介護に適した浴槽や手すり・コンセントの位置といった細部にまでこだわった提案をしてくれました」(石倉常務理事)。

                
 ▲ ケアハウスの各ユニットにあるリビング。入居者同士でほしい家具や調度品について話しあい、調達したという。 ▲ ケアハウスの居室(居室面積21.3u)。夫婦での入居を想定し、部屋をつなぐことのできる居室も2組用意している。

 さらに新築移転する際には、特養や軽費老人ホームなどの入居者約100人と荷物を含めた大規模な引っ越しが必要となることから、建築委員会のなかに「引っ越しプロジェクト」を設けたという。市内で大規模な移転経験のある法人から話を聞き、とくに配慮しなければならない入居者への対応をはじめ、必要な車の台数やボランティア人数などを参考にしたという。また、入居者の生活の場面が分かれるほど両方に職員を置く必要があるが、対応可能な最低限の人員配置を何度もシミュレーションすることで、2日間で移転を完了させることができた。


 1人の利用者にすべてのサービスで支える施設


 平成25 年10 月に完成した施設は地上4階建てで、「1人の利用者に対してすべてのサービスで支えること」を施設のコンセプトにしている。1階に訪問介護事業所、訪問看護事業所、居宅介護支援事業所、通所介護事業所、多機能型障害福祉事業所、地域包括支援センターを併設。1〜2階にケアハウス、3〜4階に特別養護老人ホームとショートステイが入っており、ケアハウスと特養はともに10 人・5ユニットの定員50 人となっている。
 なお、特養が同一施設内にあり、訪問介護や訪問看護などの在宅系サービスも併設していることから、特定施設入居者生活介護の指定を受けずに一般型ケアハウスとして転換している。
 「当法人はキリスト教主義の法人のため、礼拝に使用できる集会室も設けています。実際にそのような場所があることから入居先に選んでくれる方も多く、ケアハウスと特養の入居者のうち30 人ほどが毎朝礼拝をしています。特定施設入居者生活介護の指定をあえて受けなかった理由のひとつには、利用者を限定することなく、多くの人に最後まで生活する場所として当施設を選んでもらいたいという想いもありました」と石倉常務理事は語る。


        
 ▲ デイサービスで過ごす利用者 ▲ デイサービスの浴室。利用者が自分に適応する浴槽を選択できるよう、さまざまなタイプをそろえる

 併設する在宅サービスと連携し利用者の安心した生活を支える


 現在、ケアハウスは満室となっており、50人の入居者のうち33人が要介護認定を受けている。ケアハウスの少ない職員配置だけでは入居者全員に十分なケアをすることは難しい面があり、開設当初は介護スタッフが足りずに苦労があったという。現在では併設する訪問介護や訪問看護とシームレスな連携を図ることができるようになり、利用者には安心して生活してもらえる環境となった。


▲ 訪問看護と訪問介護の事務所を一体化させたことで、シームレスな連携が可能となった。

 ケアハウスではユニットケアを導入したことで、以前は配膳などもスタッフが行わなければならないケースがあったが、それぞれのユニットのなかで入居者同士が協力し助けあう光景が日常的にみられるようになったという。
 また、同法人では施設をつくるにあたり、介護保険サービスのみを行う施設ではなく、地域のニーズにあった事業展開をしていきたいという想いから、多機能型障害福祉事業所を併設している。市内にはもともと障害者福祉サービスが少なく、そこをカバーすることを目指して主に身体障害者の生活介護と知的・精神障害者の就労継続支援B型の事業を行っている。
 「就労継続支援B型では、施設内や福祉車両の清掃を利用者に行ってもらっていますが、入居者や職員たちと交流するなど、人との関わりをもつことを大切にしています。介護に興味のある方には介護体験をしていただいており、将来的には当法人や近隣の施設でケアスタッフとして雇用できる方を養成していくことを考えています」(石倉常務理事)。


 地域交流と情報発信が社会福祉法人の役割


 今後の展望については、積極的な地域交流を行うとともに、地域で暮らし続けられるために必要な情報提供をしていくことをあげている。
 「現在、地域交流として、当法人の空いている設備を利用し、子育て世代を対象にした子育てサークルや母親向けのプログラムを考えています。『安心して地域で暮らし続けたい』という地域住民のニーズが寄せられていますが、すでにサービスを受けている方は社会資源や介護保険についての理解が進んでいるものの、今後必要になるであろう方に対しての情報は非常に乏しいのが現状です。今の段階から地域づくりを地域住民と一緒に考え、ニーズを掘り起こしていくことが必要になりますが、そのためには私どもが地域に出向いて、必要な情報提供をしていくことが社会福祉法人としての重要な役割だと考えています。また、施設には防災拠点としての役割がありますが、地域住民との関わりを普段からしっかりもつことで、気軽にきていただける場所にしていくことも重要になります」(石倉常務理事)
 地域に根ざした介護・福祉サービスを提供する、同法人の取り組みが今後も注目される。


生活相談は信頼関係の構築が何よりも大切
社会福祉法人るうてるホーム ケアハウスるうてる 生活相談員 松下 弘志氏(社会福祉士/介護支援専門員)

 以前はデイサービスセンターで介護職をしていましたが、施設の新築移転を機にケアハウスで生活相談の業務を担当しています。生活相談員は利用者から立ち入った話を聞く機会が多いため、信頼関係を築くことが何よりも大切になります。ケアハウスの入居者は50 人いますので、毎日のように要望や訴えが寄せられますが、対応が遅れると不信感につながります。どんなに些細な相談内容であったとしても、すぐに対応することを心がけています。
 また、ケアハウス自体の職員が少ないこともあり、どうしてもケアハウスの職員だけで50人の入居者をみることは難しい面があります。施設が一体化したことで訪問介護や訪問看護と連携し、サポートしてもらえるようになったことは非常に助かっています。これは入居者の安心した生活を支えることにつながっていると思っています。
 現在、社会福祉法人には地域貢献が求められていますが、地域に根ざしたサービスを提供するとともに、地域づくりを一緒に考える機会も積極的につくっていきたいと考えています。

社会福祉法人の役割として地域に情報提供を
社会福祉法人るうてるホーム 常務理事 石倉 智史氏

 平成25 年にケアハウスへの転換を実施しましたが、大阪府では2 例目でした。単独でケアハウスへ転換する場合は、どこの自治体でも補助金が目減りしている状況にありますのでなかなか厳しいのではないでしょうか。当法人が転換に踏み切れたのも複合的に事業を行っていたため、他の事業でカバーできることが大きかったと思います。現在、社会福祉法人は特養の内部留保などが問題にあげられていますが、やはり法人の体力が必要になるのではないかと感じています。
 事業を一体化したことで、職員は自分たちの事業の枠組みを超えて、互いに協力しあいながら、1 人の利用者に対して同じ視点をもって関われるようになったことは大きなメリットになっています。
 今後は社会福祉法人の役割として、地域に対して必要な情報提供をしていきたいと考えています。幸いにも市内の法人同士は顔のみえる関係にあります。一緒になって互いにあるものをつないでいき、どのようなサービスを提供できるかという視点で取り組んでいければ、一番よいかたちになるのではないかと考えています。

<< 法人概要 >>
法人名 社会福祉法人るうてるホーム
理事長 滝田 浩之 氏
施設開設 昭和39年 職員数 123人(平成26年12月現在)
法人事業所 特別養護老人ホーム(定員50人、ショートステイ20人)/ケアハウス(定員50人)/通所介護事業所(定員35人)/訪問介護事業所/訪問看護事業所/多機能型障害福祉事業所(生活介護、就労継続支援B型)/居宅介護支援事業所/地域包括支援センター/四條畷市委託事業(配食サービス、リネンサービス、外出支援移送サービス)
電話 072−878−9371 FAX 072−878−5293
URL http://www.ruuteruhome.or.jp/


※ この記事は月刊誌「WAM」平成27年2月号に掲載されたものです。
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