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連載コラム
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トラブルに学ぶリスク対策

介護現場で起きた事例を踏まえ、原因とその防止策のポイントをお伝えしていきます。



<執筆>
株式会社安全な介護 代表取締役
山田 滋(やまだ しげる)
<プロフィール>
介護現場で積み上げた実践に基づくリスクマネジメントの方法論は、「わかりやすく実践的」と好評。著書に『安全な介護』(筒井書房)、『介護施設の災害対策ハンドブック』(中央法規)など多数

事例@:特別養護老人ホームにおける誤えんリスク対策

こんな事故が起きました!

H さん(82 歳男性)は、半年前に特別養護老人ホームに入所された要介護4の利用者で、左半身麻痺は軽度ですが認知症が重い利用者です。えん下機能に問題はなく食事も自立していますが、時々手づかみで口に詰め込むので見守りをしています。ある日、H さんは昼食に提供された肉団子を丸ごと飲み込み喉に詰まらせ、病院に救急搬送されましたが窒息で亡くなりました。施設では事故直後に「えん下機能に問題はなく、食事は普通食と介護計画書にも書いてあるので施設の過失ではない」と主張しましたが、家族は訴訟を起こしました。

事故原因と防止対策

認知症の利用者の誤えんリスクは、えん下機能や摂食機能の低下だけではありません。認知症の利用者は認知機能の低下によって安全な食べ方ができなくなり、あえて危険な食べ方をすることによって誤えんや窒息事故を起こします。危険な食べ方の典型は「早食い」、「詰め込み」、「丸呑み」です。また、カステラやパンなどのパサパサして飲み込みにくい食べ物に対しても、飲み込みやすくするために飲み物を一緒に摂るという配慮もできません。ですから、認知症の利用者に対しては、小分けにして喉に詰まらないようにするなどの配慮や、パサパサの食べ物は小分けにして牛乳に浸すなどの配慮が必要になります。

上記の事例では、直径3センチくらいの肉団子を小分けにせずに丸ごと提供していますから、認知症の利用者への誤えん防止の安全配慮を欠いており過失があると考えられます。肉団子はハンバーグなどに比べて中身も表面も硬いうえに形が丸くトロミがついていますから、丸呑みしやすいうえに喉に詰まった時の対処も難しくなります。丸呑みした肉団子は咽頭口部という喉頭蓋(気管の蓋)がある場所に引っかかって取れなくなってしまうので、吸引などの対処ができず死亡事故につながるのです(図)。

施設では、このような認知症の利用者固有の誤えんリスクへの配慮として、喉に詰める危険のある食材を切り分けて提供しなければなりません。介護職が食事介助時に切り分けてもよいのですが、切り分けようとしたら手で掴み丸呑みされてしまったというケースもありますから、厨房で一律に切り分けてしまう方が安心です。認知症の利用者が丸呑みしやすく窒息の危険が高い食べ物は次のようなものです。

里芋の煮物、肉ジャガ、一口大にカットした蒟蒻、南瓜、白玉、もち、団子、大福、ゆで卵、パン、ハンバーグ、焼売、柔らかくなってない煮物の人参、一口がんも、クワイ、黒飴、ベビーカステラ
トラブルを避ける事故対応

本事例で訴訟という最悪のトラブルになった原因は、施設側の家族対応にあります。死亡事故のような重大事故では、施設側の誤った過失判断が大きなトラブルにつながります。とくに誤えん事故の過失判断は極めて難しいとされていますから、事故直後に無過失を主張するのは極めて軽率な行為です。「現時点では私ども施設の過失責任について判明しておりませんので、詳細な調査を行ったうえで改めて正式な説明をさせていただきます」と伝えて、専門家の意見も聞き慎重な判断をすべきでした。

※ この記事は月刊誌「WAM」平成27年4月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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