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連載コラム
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トラブルに学ぶリスク対策

介護現場で起きた事例を踏まえ、原因とその防止策のポイントをお伝えしていきます。



<執筆>
株式会社安全な介護 代表取締役
山田 滋(やまだ しげる)
<プロフィール>
介護現場で積み上げた実践に基づくリスクマネジメントの方法論は、「わかりやすく実践的」と好評。著書に『安全な介護』(筒井書房)、『介護施設の災害対策ハンドブック』(中央法規)など多数

事例S:利用者の口からガラスの破片が

こんな事故が起きました!

その日、特養の昼食はカレーでした。ある利用者の食事介助をしていた職員が、利用者の口の中から大きなガラス片(2p× 2p)を発見しました。幸いケガはありませんでしたが、管理者は重大な事故とみて厨房での異物混入を調べました。すると、調理中に大きなミキサーを床に落として割ってしまったことが判明、その破片が調理中のカレー鍋に混入し、そのまま盛り付けられたと思われます。厨房の責任者は「調理済みの食事からは3 m以上離れていたので混入するとは思わなかった」と話しましたが、施設長は、外部委託の給食業者に連絡して厳重に抗議をしました。

事故原因と防止対策

異物混入が確認されれば誰でも調理済みの食事は廃棄します。しかし、異物の混入が確認できていない時点ではどのように対処したらよいでしょうか? 調理済みの食事は目で見てもなかなか確認できません。異物が混入しているかもしれないし、混入していないかもしれないのです。この時点で万が一の異物混入事故を想定して、食事をすべて廃棄したら大きな損害になりますから、厨房の責任者は安全を優先せず「きっと混入はないだろう」と都合よく甘い判断をしてしまうのです。

不思議なことに、厨房内では食器や調理器具の破損は割と頻繁に起きているのに、「今日は厨房内で事故があったので食事の提供はできません」という日はまったくありません。実は、厨房内では破損事故が起きても「目でチェックして混入が確認されなければそのまま提供する」ことが一般的ですから、いつかこのような事故が起こる危険性があります。厨房内の破損事故は防げないことを前提に、その時点でどのような対処をするのかルールがないことが問題なのです。次のルールは、ある施設の管理者が決めたルールです。

食器やガラス類が破損したら(床への落下でも)、破損場所から3m以内の食材と料理を廃棄する。3m以上離れた食材や料理は目視で厳重にチェックし、混入が確認されたらすべての食材と料理を廃棄する。調理台より高い位置で破損が起こった場合は、厨房内の食材と料理をすべて廃棄する。厨房内事故により食事の提供が不可能な場合、レトルト食品などで代用する。

利用者の口からガラスの破片が

たとえ十分なルールでなくても、このように一定のルールがあれば他のケースについても、このルールに沿って対応することが可能です。厨房に限らず部門の責任者は、自分の部署で事故が発生した時、損害につながる可能性が不明な場合、最悪の事態を想定した対応をすることができません。例えば、施設の火災報知器のベルが鳴った場合、まず誤作動を疑って機械を確認しますが、不明だった場合はどうすれば良いでしょう。万一の最悪の事態を想定して利用者を避難させる施設はありません。「最悪の想定をして大騒ぎしたが何も起きなかった」という、“空振り”を怖がるからなのです。まずは、ルールを作り、全職員が空振りを許容することで最悪のケースを想定した対処が可能になるのです。

トラブルを避ける事故対応

この異物混入事故では、家族に連絡を入れなかったために、後に事実が判明して家族からのクレームにつながりました。背景には、「給食業者が起こした事故だから施設の責任ではない」という管理者の甘えがあるのです。給食業者は外部委託先ですが、すべての業務について施設が管理責任を負っていますので、お客様に対しては施設が事故の責任を負わなくてはなりません。外部委託の事故では、管理者は往々にして「業者に厳重に抗議しました」などと、あたかも施設の責任ではないような発言をします。外部委託が増えるなか、事故発生時の対応は施設の責任ある対応が求められます。

※ この記事は月刊誌「WAM」平成28年11月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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