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DPCデータを活用した経営改善策

全6回にわたって、病院内のさまざまな部署で、そのようにDPCデータを活用し経営につなげていくかをみていきます。


<執筆> NPO法人病院経営支援機構  藤井 将志

第2回:DPCデータを地域連携活動に活用するには


重要性が高まる地域連携業務


 DPC病院の多くは急性期病院であり、地域連携の重要性は説明するまでもないでしょう。診療報酬でも地域連携を促進させ、在院日数を短縮化させる仕組みがいくつも設けられています。そもそも、在院日数が延びることで日当点が逓減していくDPCそのものが、在院日数を短縮させることを誘導する仕組みでもあります。
 このような状況では、地域連携室を中心とした前方・後方連携の重要性は高まる一方です。今回は、地域連携の活動をするうえで、DPCデータを活用する事例をみていきます。本稿を参考に医事の担当者と協力しながらデータを提供してもらってください。

入院情報から前方連携の戦略を練る


 DPCデータの中には入退院に関する情報が「様式1」というファイルに入っています。医師や看護師、事務職員が協力し、退院したDPC対象患者のすべてについて入力しています。
 まず、入院に関する情報では「他院よりの紹介の有無」という項目で、当該患者が紹介されたのかどうかがわかります。さらに、「自院の外来からの入院」では、自院の外来を受診した後に入院したのか、直接入院したのかがわかります。「予定・救急医療入院」では、予定された入院であるかどうか、「救急車による搬送の有無」では、救急車で運ばれてきた患者であるかどうかがわかります。
 この情報だけでも、紹介された入院患者の割合、外来からの入院患者の割合、予定外の入院患者の割合、救急車による入院患者の割合を分析すれば、自院の入院患者はどの経路からの入院が多いのかがわかります。さらに、DPCデータには患者住所(郵便番号)、診療科、疾病、収益といった情報も含まれているので、これらの情報と先の情報をあわせて集計すると、いろいろなことが調べられます。
 例えば、紹介される患者と患者住所をあわせることで、どの地域からの紹介が多いのか・少ないのかがわかります。少ないエリア向けに、市民講座や開業医訪問をすることで、患者増につなげることができるかもしれません。診療科や疾病情報をあわせると、さらに詳細に、ある診療分野はこの地域から患者を多く集めているが、別の診療分野では少ない、といったことが調べられます。当該診療科の医師たちと分析結果をもとに話し合いをすれば、新たな連携の形が見つかるかもしれません。
 「Dファイル」にある収益情報(行為点数)とあわせることで、どのような入院患者が高収益なのか、という分析もできます(図表1)。


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 一般的に「救急車搬送の緊急入院>紹介による入院>自院の外来からの入院」という順で入院患者の収益が高いといわれていますが、自院でも本当にそうなのか調べられます。分析の結果、それぞれのもたらす収益はあまり大差がなく、紹介や自院外来からの患者の割合が高い、という結果になったとしましょう。「急性期病院なので、断らない救急が重要である」とメッセージを出しても、忙しくはなるが収益的にはあまりインパクトがない、ということにもなり得ます。
 こうした患者の入口の情報をもとに、どを増やせ!」という曖昧な号令ではなく、より戦略的に患者を増やす計画を立てることができます。

退院情報から後方連携の戦略を練る


 次に、退院に関わる情報をみていきます。「退院先」という項目で「0:院内の他病棟への転棟」「1:家庭への退院(当院に通院)」「2:家庭への退院(他の病院・診療所へ通院)」「3:家庭への退院(その他)」「4:他の病院・診療所への転院」「5:介護老人保健施設に入所」「6:介護老人福祉施設に入所」「7:社会福祉施設、有料老人ホーム等に入所」「8:終了(死亡等)」「9:その他」を選択することになっており、転院先がどこなのかがわかります。地域連携の一環で、逆紹介を促進している医療機関は多いと思います。診療科や疾病の情報とあわせると、どの診療科や疾病で逆紹介が多い(退院先が2〜7)のかがわかります。疾病によっては逆紹介が難しいものもありますが、病院全体に「逆紹介をしてください」と指示するよりは、逆紹介できそうな疾患にも関わらずしていない診療科を中心に促すこともできるでしょう。
 「患者住所」とあわせると、どの地域で逆紹介が進んでいないのかも確認できます。連携先とのパイプが弱いエリアでは、やはり逆紹介件数も少なくなります。後方連携先を開拓する地域を絞り込み、戦略的に活動することができるでしょう。
 在院日数の情報とあわせると、さらに有益な分析ができます。様式1には入院日と退院日の情報があるので、そこから在院日数を算出すれば、在院日数が長い患者がどこに退院したのか、退院できなくて長引いたのかがわかります。
 平成26年度の診療報酬改定では、それまでは10対1や7対1入院基本料の在院日数計算式から除かれている「90日以上の特定除外の患者」が除外できなくなっています。そこで、90日を超えている患者に限定し、どの診療科や疾患で多いのか、退院先はどこなのかが分析できます。


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 また、DPCにはそれぞれ入院期間がT〜Vまで設定されており、そのうち全国の平均に該当するのが入院期間Uです。この期間を超えると、日当点も大きく下がり、収益的にもマイナスの状況になります。この情報は、Dファイルに含まれている「診断群分類番号」と、DPCの電子点数表(*)をリンクさせることで導き出せます。そうすると、入院期間Uを超えて退院している疾病は何か、どこの診療科か、退院先は転院なのか自院外来なのか、がわかるようになります。


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 退院先が自院外来なのに在院日数が入院期間Uを超えている患者が多い場合は、「退院先が不足しているから」ではなく、「医師の退院判断基準が全国の傾向より長くなっている」可能性が疑われます。こうした状況をデータで示し、担当する医師から意見を収集することで、在院日数を短くしていくことができるでしょう。
 「在院日数を短くしろ!」と号令をかけただけでは、なかなか短くならない場合もあるでしょう。そうした際は、上記のような方法でしっかりとデータで指示しながら、具体的な改善策を提示した方が現実的です。

*DPC の電子点数表(厚生労働省):
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000039920.html

※ この記事は月刊誌「WAM」平成25年11月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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