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人材確保難時代の経営戦略について

 全6回に渡って、「人材」をテーマにお届けします。


<執筆>
 社会福祉法人伸こう福祉会 理事長 足立聖子 氏
米国ウィスコンシン大学社会学老年学専攻B.A卒業後、製薬会社勤務を経て、2000年社会福祉法人伸こう福祉会(神奈川県)に入職。「特別養護老人ホーム クロスハート栄・横浜」施設長、「横浜市屏風ヶ浦地域ケアプラザ」所長等を経て、2010 年同法人理事長に就任。2014 年優れた社会企業家を発掘・支援する「シュワブ財団」による「社会企業家2014」に同法人創業者とともに選出。


第3回:採用と育成について考える

はじめに

 現在、高齢者介護業界がどれほど人材不足という課題を抱えているか、そして「人材が不足している」という言葉の背景には、異なるパターンがあるということを過去2回でお伝えしました。
 人手不足に陥ってしまう直接の原因としては、「新規採用ができない」ことや、「職員が定着しない」をあげる経営者の方が多いようです。今回はこの「採用と育成」について、考えてみましょう。

中途採用の利点と注意点

 人材採用には、大きく分けて2つの方法があります。ひとつは「中途採用」、すなわち福祉業界を含む社会人経験のある方々を中心に採用する方法です。通年で採用が可能であり、社会人としての知識や常識は身につけているため、教えることは自社の理念が中心であり、介護未経験者の場合はそれに加えて介護技術があるぐらいで、比較的早く独り立ちできるという利点があります。
 ただし、過去の経験を通じて培われた「自身の仕事のやり方」に固執するあまり、周囲との軋轢を生じさせる方、処遇や条件に過度なこだわりを持つ方もいます。新規開設の施設で、即戦力の職員を求め、他法人での経験の長いスタッフを数多く採用した結果、仕事のやり方をめぐってスタッフ間の意見の衝突が起こり、施設長はその解決に追われて他の業務が滞ってしまったという話を聞くこともあります。
 ですから中途採用では、介護未経験者も積極的に検討していただきたいと思います。とくに地域在住の定年退職後や脱サラした方、子育てが一段落した方などに注目しましょう。
 私の法人では、介護経験や資格に関係なく、必ず5割以上は近隣から採用するという方針をとっています。なぜなら、福祉施設にとっては、災害時などいざという時に頼りになるのは近隣の方々だからです。施設と近隣の繋ぎ役となってくれますし、地域のなかで施設の広報役を務めてくださるなど、多くの附帯効果が期待できます。
 中途採用の採用ルートは多岐にわたります。ほぼ費用がかからないハローワークから始まり、インターネットやフリーペーパーなどがよく利用されている媒体かと思います。以前は紙媒体が中心でしたが、最近はインターネットが中心となっています。紙媒体では、一つの紙面に複数の介護施設の求人が並ぶということも珍しくなかったので、どうしても条件のよいところ、広告のサイズが大きいところに目が留まりやすくなります。インターネットの場合は「検索ワード」が求職者の目に留まることが大切ですので、「駅近」、「残業なし」、「研修充実」など、求職者の立場に立ったときに魅力と感じるポイントを求人票に折り込み、アピールすることが重要です。
 また、地域密着で採用をしたい場合、地元の回覧板やスーパーの掲示板、新聞販売店に自作のチラシを持ち込んで折り込み広告として入れてもらうことも有効です。中途採用の方は法人の掲げる理念や施設の方針を重要視する傾向がありますので、求職者になったつもりでしっかりとホームページをチェックして下さい。

新卒採用について

 もうひとつの採用方法は、「新卒採用」です。この方法は非常に多くの時間とコスト、そして労力を要します。
 新卒採用のルートは、地元の大学や専門学校と提携のうえで実習生を受け入れるというのが、これまでは一般的でした。しかし近年では福祉学部の学生自体が減っていますし、卒業後の進路も福祉以外の企業を検討する学生も少なくありません。そのような状況で、ここ数年で急激に増えてきたのが「マイナビ」や「リクナビ」などのメディアや就職相談会への参加を通じて採用する手法です。
 この方法は、福祉学部のみならず多くの学部の学生と出会える可能性がある反面、応募者を確保するためにかなりの工夫が必要となります。法人ホームページの充実はもちろんのこと、採用に特化したパンフレットの制作や施設見学ツアー、インターンなどを行っている法人もあります。
 というのも、残念ながら学生たちにとって、介護・福祉業界は、あまり魅力がない業界のようだからです。株式会社マイナビが2018年に5月に公表した「2019年卒マイナビ大学生業界イメージ調査*」では、介護・福祉業界は学生にとって「就職先として検討したことのある」業界としては全40業種中37番目でした。学生は介護・福祉業界に対して「人の役に立つ」、「将来性」というプラスのイメージは持っているものの、同時に「変革性」、「グローバル」の項目については低い評価をしており、9割以上の学生が「就職先として考えていない」と回答しています。
 しかし、介護・福祉業界は急速に変化を遂げつつあります。措置から契約に変わったことにより競争が生まれ、「利用者に選ばれる」質の高いサービスが求められるようになり、住環境や食事などの改善も進みました。また最近は外国人の採用やアジア諸国に対する「介護技術」の輸出、さらにはロボットやAIの活用など、介護業界はさまざまな専門性を持つ人材に活躍の場が用意されている、魅力的な業界なのです。そのあたりのことを積極的に発信し、また学生に伝えていかなければなりません。コストはかかりますが、なるべく一般企業と同様に合同説明会やイベントに出展したり、採用に特化したツールを制作することも施設の広報活動、ブランディングの一環として位置づけて行っていただきたいと思います。

育成の方法

 中途採用者に対しては、主に技術や知識を習得するための「教育・研修」を行いますが、これは年齢や経験、資格の有無にかかわらず、公平に提供される必要があります。
 講師は必ずしも法人内の人間である必要はなく、外部からプロを招いたり、外部研修を受講させても構いません。何よりも中途採用者に対しては、組織の理念や目指す方向性について、「伝える」ことが重要です。たとえ素晴らしい実績と資格を持っていたとしても、その方は自組織にとっては「新人」なのですから、臆することなく「法人の理念」はしっかりと教育してください。
 新卒の職員に対しては教育・研修の前に「育成」が必要です。育成にあたっては、資質や潜在的な可能性を含めて、その方を全人的に理解しなくてはなりません。弱みは受け止め、強い部分を活かして、まずは「自信をつけさせる」ことが重要です。つまり画一的な研修ではなく、個々にあった「オーダーメイド育成計画」が求められます。研修と異なり育成は法人内でしか行えません。効果は見えづらく、時間は非常に長くかかります。
 なぜ、資質の見極めからスタートするかというと、彼らが将来の自組織の存続を左右するキーパーソンだからです。
 人口がピークアウトし、介護業界の規模が縮小に転じる2040年以降に自組織が生き残れるか否かは、事業承継が成功するかどうかにかかっています。そのために今から次世代経営者の育成をスタートさせるべきです。次の経営者は外部からと割り切るのも一案ですが、その場合でも経営者を支える「番頭役」は生え抜きの職員から選ぶでしょうから、新卒は全員が経営幹部候補生と捉え、現在より困難な社会情勢のなかで仕事が行えるように育てていくのは、現経営者のもっとも重要な仕事です。
 「育成」とは、キャリアパスを明確にすること、そして若手にも経営のプロセスへの参加の機会を与え「当事者意識」を醸成することであると考えます。
 「人」が基本である介護・福祉業界において、今、私たちの多くは非常に深刻な「人材難」という問題に直面しています。しかし、多くの福祉経営者が試行錯誤しつつも互いに情報の共有を行い、組織の壁を越えて連携が図れれば、きっとこの課題もクリアできるのではないかと思うのです。
* 株式会社マイナビ:2019年卒マイナビ大学生業界イメージ調査
https://saponet.mynavi.jp/wp/wp-content/uploads/2018/05/2019image-zentai1.pdf

※ この記事は月刊誌「WAM」2019年12月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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