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戦略的医療経営について


 全6回に渡って、経営戦略理論を用いた医療機関経営についてお届けします。


<執筆>
国際医療福祉大学大学院教授 羽田 明浩 氏


第3回:地域医療構想における自院のドメインを考える

 地域医療構想における病床機能の見直しと医療機関の連携強化は、自院の経営戦略を見直したうえで、新たな経営戦略の策定に伴い、ドメインの見直しも必要になります。

ドメインとは

 ドメイン(domain)とは、@領地、領域、A ネットワーク上のコンピューターをグループ化して個々の識別を行うための概念、B企業などの組織が事業展開する際の領域(大辞林)のことです。本稿で述べるドメインとは、B企業などの組織が事業展開する際の領域を指しています。
 経営学では、ドメインを「諸環境のなかで企業が行う事業活動の展開領域」としています。そしてドメインを定義することは、「企業が自ら競争相手と戦っていく土俵を定めること」になります。さらに「現在の事業領域という意味に加えて、まだ事業化されていない潜在的な事業領域」も含まれます。これは、企業を取り巻く環境は常に変化しているため、ドメインの定義は不変ではなく環境にあわせて変化していくことを表わしています。
 医療機関にとって、ドメインを定義することは、医療を行うのか、あるいは介護を中心に行うのか、医療のなかでも急性期医療を行うのか、慢性期医療を行うのかを決定し、その決定したドメインに応じて資金や医療機器、人材などの経営資源を配分することに繋がります。さらに、医療機関が当初定めたドメインは、環境変化に応じて変化させる必要があります。

ドメインを定義する意義について

 ここでは、なぜ組織がドメインを定義するのかについて述べます。組織がドメインを定義するのは次のような意義があるからです。
 第1に、経営資源の蓄積と配分方針の決定のためです。ドメインが定義されることで、事業展開に必要な経営資源が明らかになります。そこで必要な経営資源(ヒト・モノ・カネなど)の蓄積と同時に資源配分の方針が決定されます。
 第2に、組織メンバーに意思決定の指針を与えるためです。ドメインの定義を組織内外に伝えることで、組織としての進むべき方向性を示すことができるからです。
 そして、組織の一体感の醸成のためです。ドメインを定義することで、組織の土俵(活動範囲)を定めることになり、組織全体で目標の共有が可能になり組織に一体感が醸成されることにつながるからです。

ドメインの定義方法について

 ドメインの定義方法には、物理的定義と機能的定義によるドメイン定義と、顧客層と技術と顧客機能によるドメイン定義があります。
 ドメインの物理的定義とは、製品やサービスの視点から事業領域を定義したものをいいます。ドメインの定義で一番簡単な定義方法です。しかし、製品やサービスなどの事業の羅列からは将来の成長の方向性を見出すことはできません。一方、ドメインの機能的定義とは、製品やサービスそのものでなく、その製品やサービスが「どのような機能を提供するか」という視点に立って定義したドメインのことで、これによって組織の将来にわたる展開方向を示すことで、新たな事業の広がりも見えてきます。
 このように物理的定義と機能的定義を提起したのはレビット1960)であり、米国の鉄道会社が衰退した理由は、自社の事業を輸送事業でなく鉄道事業と考えたために顧客を他に追いやってしまったためと指摘しています。同様に、米国の映画産業はエンタテイメント産業と考えずに映画製作産業と考えたので危機に直面したと述べています。ここで製品や技術は結局、陳腐化するのであるから、より長期的に持続する市場の基本的ニーズに関連させて事業を定義する方がよいと主張しています。
 顧客ニーズの多様化によって、ドメインの定義の次元も高度化するようになってきました。ドメイン定義に、顧客層と技術に顧客機能を加えた3つの次元でドメインを捉える方法を唱えたのはエイベル(1980)です。顧客層と技術と顧客機能によるドメイン定義とは、どのような顧客に焦点を当て(Who)、どのようなノウハウを持って(How)、顧客のどのようなニーズに応えるのか(What)、を考えることでドメインを定義するものです。顧客層による定義とは、市場や顧客をグループ化して対応する製品やサービスの提供をドメインとするもので、セグメント基準として、地理的基準、ライフスタイル、人口動態基準などがあります。技術による定義とは、企業の中核技術を中心に将来の発展の方向性をドメインとするものです。顧客機能による定義とは、顧客に対してどういう満足や便益、価値を提供しようとするのかという顧客に提供する機能のことです。

医療機関におけるドメインの定義について

●物理的定義と機能的定義によるドメインの定義

 物理的定義としての医療機関のドメインは、診療機能にあわせて、高度急性期医療、急性期医療、回復期リハビリテーション医療、慢性期医療等の医療事業の領域、あるいは介護事業の領域と定義することができます。これは、現在提供している診療機能あるいは将来の機能分化や連携強化によって担う診療機能をドメインとする定義方法です。一方、機能的定義としての医療機関のドメインは、地域医療に貢献して地域住民の健康を守ることや介護リハビリテーションの充実により地域住民の介護予防に貢献する、などと定義することもできます。この定義によれば診療機能の分化によって取扱い領域を狭めることなく、広く住民の健康や介護予防に貢献するものと捉えることができます。

●顧客層と技術と顧客機能によるドメイン定義

診療機能において医療機関のドメインを定義すると、たとえば高度急性期医療の場合、高度急性期疾患を患っている患者層に対して、最先端の高度診療技術をもって低侵襲によって治療するとすれば、顧客層と技術と顧客機能によるドメインを定義することができます。

容易ではないドメインの定義

 ドメインを物理的に定義すると組織の活動範囲は狭い領域に限定されやすく、そのために外部環境が大きく変化した場合の対応が難しくなります。一方、ドメインを機能的に定義することで組織の活動領域は広くなり、将来に備えた事業構想も描きやすくなります。ただし、あまりに広がりすぎたドメイン定義では組織内外の人々にその組織が何をしているのかを理解してもらうのが難しくなります。
 組織のドメインに関して組織内外の関係者間の合意を「ドメイン・コンセンシャス(domainconsensus)」と呼びます。組織を取り巻くさまざまな利害関係者にドメイン・コンセンシャスを理解していただくためには、組織は継続的にメッセージを発信し続ける必要があります。
 網倉・新宅(2011)は、日本企業を取り巻く経営環境が厳しくなっていくなかで、有効な企業戦略を策定するためには、企業ドメインを正面から検討する必要性が高まっていると述べています。
 医療機関においても、地域医療構想を踏まえた自院の役割と連携強化の過程にあって、自院のドメインを物理的定義から機能的定義へ見直すことと、提供すべき診療機能や介護機能ほかを顧客、技術、顧客機能の観点からの見直しを図ることも必要であると思われます。




<参考資料>
・Levitt,T (1960) Marketing Myopia Harvard Business Review July-August1960
・Abell,D (1980) DEFINING THE BUSINESS(石井淳三訳(2012)『事業の定義』碩学社)
・羽田明浩(2017)『ナースのためのヘルスケアMBA』創成社
・石井淳蔵・奥村昭博・加護野忠男・野中郁次郎(1997)『経営戦略論』有斐閣
・網倉久永・新宅純二郎(2011)『経営戦略入門』日本経済新聞社出版社

※ この記事は月刊誌「WAM」平成29年6月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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