サービス取組み事例紹介
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秋田市・社会福祉法人秋田県厚生協会 福祉型障害児入所施設若竹学園

障害を抱えている子どもの生活の自立を目指して

 福祉医療機構では、地域の福祉医療基盤の整備を支援するため、有利な条件での融資を行っています。今回は、その融資制度を利用された秋田市にある福祉型障害児入所施設「若竹学園」を取りあげます。同施設は、急傾斜地崩壊危険区域に所在していたため、平成27年10月に施設を移転改築し、耐震化整備を行いました。移転の経緯や実践する支援の取り組みについて取材しました。

地域に根ざした障害福祉、介護サービスを提供


 秋田市にある社会福祉法人秋田県厚生協会は、昭和40年5月の設立以来、地域に根ざした障害福祉・介護サービスを提供してきた法人である。現在、秋田市内に福祉型障害児入所施設「若竹学園」(入所定員30人)をはじめ、救護施設「玉葉荘」(入所定員150人)、特別養護老人ホーム「高清水寿光園」(入所定員110人)、「南寿園」(入所定員50人)、障害者支援施設「雄高園」(入所定員80人)、ケアハウス「弥生が丘」(入所定員15人)のほか、放課後等デイサービス4カ所を運営している。
 「若竹学園」は、昭和37年4月に無認可の通園施設として開所し、39年4月に精神薄弱児施設の認可を受け、知的障害児施設を経て、現在に至る。児童福祉法および障害者総合支援法に基づき、知的・身体・精神・発達面にハンディキャップを抱えている児童を預かり、保護するとともに生活自立の支援、訓練を目的としている。家庭的な養育環境のなか、子どもたちの人格と個性を尊重しながら、将来的に子どもたちの自己の能力や特性に応じた社会生活を送れるようになることを目指して支援している。
 同園の入所定員は30人となっており、ショートステイ(併設型2人+空床型)や日中一時支援、相談支援事業を行うほか、敷地内に小・中・高校生を対象にした放課後等デイサービスを開設し、通所支援にも力を入れている。
 平成23年に開設した放課後等デイサービスは高いニーズがあり、現在は市内4カ所に事業所を拡大している。入所施設を運営していることで、ショートステイや日中一時支援をあわせて利用できることが、利用者と家族にとって安心感につながっているという。


18歳以上の利用者の進路調整が課題に


  「若竹学園」の利用者の状況について、施設長の淀川昌之氏は次のように語る。
 「入所対象者は、知的・身体・精神・発達障害のある児童となりますが、現在の利用者は知的・発達障害をもつ学齢期の子どもたちが中心となっており、そのほかにも18歳以上の経過的利用者が2人います。児童施設の場合、平成30年度から18歳以上は利用できなくなる制度に切り替わる予定でした。しかし、18歳以上の進路としての行き場は非常に少なく、その調整が難しいことから、3年間の経過措置が設けられたものの、退所後の進路先を調整していくことは児童施設の大きな課題となっています。当施設を利用している18歳以上の利用者については、昨年度中に進路が決まったため、今年度からは利用者全員が18歳以下の学齢児という位置づけでの利用となっています」(以下、「 」内の発言は淀川施設長の説明)。
 利用者の日中の過ごし方としては、学齢期の子どもは全員が連携する特別支援学校に通っており、18歳以上の利用者については、成人施設に入所するために必要な生活訓練を行うとともに、こだわりの強い利用者の生活改善に向けた支援に取り組んでいる。
 高等部3年生の進路先としては、県内の成人施設の受け入れ先がないことから、障害程度が重度の利用者については県外の施設に入所しており、比較的障害程度が軽度であった2人の利用者は自宅からそれぞれ就労継続支援A型、B型事業所に通い、仕事をしながらグループホームの入所待ちをしている状況だという。
 生活自立に向けた支援の取り組みでは、調理や清掃、洗濯などの自活訓練のほか、バスや電車などの公共交通手段を利用し、生活に必要な買い物などを行う外出訓練を行っている。
 支援体制では、児童指導員をはじめ、保育士や介護福祉士、社会福祉士、看護師、児童発達支援管理責任者などの多職種で構成している。人員配置は、入所定員30人に対し、児童発達支援管理責任者を含め、基準(4・3対1)を大きく上回る14人のスタッフを配置する手厚い支援体制を整備しており、各職種が専門性を活かしながら、子どもたちの養育や生活自立をサポートしている。


平成27年10月に施設の移転改築を実施


 同園は耐震化整備と効率的な支援を提供していくため、平成27年10月に施設の移転改築を実施している。
 移転改築した経緯としては、施設の開設から50年以上が経ち、建物の老朽化が進むとともに、バリアフリー対応でなかったこと、さらに秋田県が告示した急傾斜地崩壊危険区域に所在していたことから、利用者の安全を確保するために施設の移転改築を計画し、あわせて耐震化とバリアフリー対応の整備を行った。
 新たな土地の確保では、移転先に適した土地がみつからず、候補地の地域との話しあいのなかで障害児施設の移転に難色を示されるなど土地探しで苦労したものの、独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)を介して旧施設から約6qの距離にある土地を確保することができた。
 その後、新たな土地に施設を建築し、着工から竣工まで約8カ月の期間を経て、平成27年10月に新施設を完成させている。
 「移転先は住宅地のなかにあり、近隣には大型ショッピングモールや商業施設が立ち並ぶ、県内でも非常に人出の多い地域になります。旧施設は敷地内に体育館などがあり、施設内での活動が中心となっていましたが、移転後はこちらから地域に出向き、社会資源を活用しながら、子どもたちの社会性を高めていくことを目指しています」。
 また、近年は家庭的養護の実現に向けた小規模ケアが推進されるとともに在宅サービスが充実し、施設に入所しなくても在宅で生活することが可能になり、入所の希望者が減少傾向にあるという。そのため、同園では、ピーク時は60人であった入所定員を段階的に減らし、今回の移転改築にともない、40人から30人に変更している。
 入所希望者が減少傾向にある一方、同園に限らず県全体で障害児の入所定員数が減少していることから、入所希望者はこれまでの市内中心から県内全域に広がっているという。


▲調理や季節行事など、さまざまなイベントを開催


小規模施設で家庭的養護と職員の負担軽減を図る


 完成した新施設は、男子棟と女子棟の2棟からなる木造平屋建てで、木の温もりが感じられる生活環境をつくった。施設設計では、施設を「家」としてとらえ、自然光を取り入れ、風通しをよくすることで家庭的な空間でありながらプライバシーを確保する工夫をした。
 敷地面積は旧施設の約半分となり、施設全体がコンパクトになったことでスタッフは仕事がしやすく、動線が短くなったことにより子どもたちに目が行き届くなど、ケアの質を高めることにつながっている。
 また、以前は急傾斜地に立地していたため、特別支援学校への送迎の際、スクールバスが施設まで上がってくることができず、歩いて5分以上かかる空き地でスタッフが乗降車をサポートしていたが、移転後は施設前にバスをつけることが可能となったことから、天候に左右されることがなくなり、スタッフの負担が軽減されたという。
 「居室については、すべて個室にすることも考えましたが、共有することで協調性を学ぶことも生活のなかでは必要だろうと考え、個室、2人部屋、4人部屋の3タイプを用意しました。部屋の編成は子どもの適性や本人・家族との話しあいで決めていきますが、例えば多床室は年齢的にも能力的にも同じレベルの子どもたちを集めることなどにより、相乗効果で互いのよい面が出て成長につながりやすいと感じています」。
 また、各棟には共有スペースとして、リビングやプレイルーム、リラックス効果のあるミラーボールなどを備えたリラクゼーションルームを設置し、子どもたちが兄弟・姉妹のようにふれあいながら余暇活動に利用している。


▲施設内は、木の温もりを感じることができ、利用者にやすらぎを提供している ▲玄関の隣に設置した待合スペース。通学時などに活用することでスタッフの負担軽減につながっている
▲各棟にあるリビングは、余暇活動などに利用されている ▲女子棟の4 人部屋。そのほかにも個室と2人部屋の3 タイプを用意
▲施設内で最も日当たりのよい場所にある食堂は、天井が高く開放的な空間


指導訓練室を設置し退所に向けた自活訓練に活用


 そのほかにも、ミニキッチンやトイレ、ユニットバス、就寝スペースなどを備えた指導訓練室を設置し、高等部の利用者が退所に向けた自活訓練に活用している。
 自活訓練の対象となった利用者は、自炊や市場調査としてスーパーなどに行き、値段を確認するととともに、自分で計算して必要な買い物をする訓練を行っている。高等部の利用者に限らず、洗濯はグループホームなどに入所するために必須のスキルになることから、年齢の低い利用者も早い段階から身につけているという。
 「退所後の進路で成人施設に移行できない理由としては、施設が不足していることもありますが、自傷行為や物を壊すなど周囲に影響を及ぼす行動をとる強度行動障害をもつ人が非常に多いということがあります。当園では、強度行動障害の専門的な支援を行うスタッフを計画的に養成するため、毎年2人ずつ研修に出していますが、一人ひとり特性が異なりますので、特性に応じて統一した対応をしていかなければ、なかなか改善につながりません。そのため、1人のスタッフが障害児の支援方針を作成した段階で全職員が統一した対応ができるよう、研修会を開いてその手法を確認しながら、きめ細かい支援を提供していくことが今後の課題だと考えています」。
 スタッフの確保の状況については、同園ではスタッフの年齢層が若く、定着率も非常に高いことから、比較的安定して人材を確保することができているという。
 その要因について淀川施設長は「子どもの成長を支援する仕事に対し、やりがいや誇りをもつことにつながっているのではないかと思います。ただ、最近は保育所で働く保育士の処遇が改善されてきていますので、確保対策を考えていく必要があると感じています」。
 障害を抱える子どもたちの生活自立につなげる同園の取り組みが今後も注目される。


▲リビングやミニキッチン、ユニットバス、などを備えた訓練指導室は、退所後の生活自立に向けて活用されている ▲利用者の年齢は幅広いため、子どもたちが使いやすいよう高さの異なる洗面台を設置した
▲各棟にはプレイルームのほか、リラックス効果のあるミラーボールを備えたリラクゼーションルームを設けた


退所後の進路支援に取り組む
社会福祉法人秋田県厚生協会
福祉型障害児入所施設若竹学園
施設長 淀川 昌之氏
  施設の移転改築では、近隣に商業施設が多く点在する県内でも人出の多い地域に移転したこともあり、当初は利用者への影響が不安もありました。しかし、それらの社会資源を活用して利用者の社会性を高めることや、面会に来た家族と一緒に買い物に出かけるといったことにつながっており、いまではこの地域に移転してよかったと実感しています。最近では、地域との交流も互いのイベントに参加しあうかたちで少しずつ始まっています。
 今後の展望としては、在宅で障害をもつ子どもの養育に苦しんでいる家族が多くいますので、そのような人たちに優先的に利用してもらうとともに、高等部の利用者が退所後に自分の希望する進路に進むことができるよう支援していきたいと考えています。


<< 施設概要 >>
理事長 秋山 宣二氏 施設長 淀川 昌之氏
開設 昭和39年4月(認可) 入所定員 30人(ショートステイ:併設型2人+空床型)
職員数 21人(平成30年1月現在)
法人施設 救護施設玉葉荘(定員150人)/特別養護老人ホーム高清水寿光園(定員110人)、南寿園(定員50人)/障害者支援施設雄高園(定員80人)/ケアハウス弥生が丘(定員15人)/放課後等デイサービス(若竹、たけのこ、ばんぶう、ばむぶっく)
住所 〒010−1413 秋田市御所野地蔵田2丁目15番1
TEL 018−838−0607 FAX 018−839−1300
URL http://www.akitaken-kouseikyoukai.jp/


■ この記事は月刊誌「WAM」平成30年4月号に掲載されたものを掲載しています。
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