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| ▲ 施設の外観 |
地域課題の解決に向けた多様な福祉事業を展開
平成13年に設立された社会福祉法人福祉楽団(法人本部:千葉市)は、「すべての人の可能性を広げる」という使命のもと、地域課題の解決に向けた多様な福祉事業を展開するとともに、地域共生社会の実現を目指している。
現在は、千葉県と埼玉県に10カ所の拠点を展開し、介護サービスでは特別養護老人ホーム、認知症グループホーム、デイサービス、訪問介護、居宅支援事業所など、障害福祉サービスでは、就労継続支援A型・B型事業所、放課後等デイサービス、相談支援事業所などを運営。各拠点では介護・障害福祉サービスにとどまらず、生活困窮者自立支援制度に基づく各種事業や、こどもの学習支援、地域食堂、企業主導型保育事業、居住支援事業など、地域の課題やニーズに対応した福祉サービスに取り組んでいる。
同法人は、令和7年3月に千葉県習志野市において、複合施設「実籾パークサイド」を開設した。
同施設は、児童養護施設、認知症グループホーム、看護小規模多機能型居宅介護、就労継続支援B型事業所、放課後等デイサービスのほか、児童家庭支援センターや一時保護所などを併設した複合型の福祉拠点となっている。
複合型福祉拠点を開設した経緯について、理事長の飯田大輔氏は次のように説明する。
「千葉県の児童養護施設に設置された一時保護所をみる機会があったのですが、定員を超える受け入れをしていることが常態化していることを知り、何かできることはないかと思ったことがきっかけでした。そのようなときに、千葉県から児童養護施設の整備・運営に関する公募事業がありました。応募にあたっては、こどもだけでなく、高齢者や障害がある人、若者が集まる仕掛けが必要だと考え、福祉分野を横断した複合施設の開設を提案したところ、採択されました」。
なお、看護小規模多機能型居宅介護は、習志野市の公募事業に採択されたもので、同法人・同市ともに初めての開設となった。
「開設地については、県内にある児童養護施設23カ所のうち、20カ所は土地を確保しやすい千葉市から東に集中しており、一時保護所が常に定員に達している千葉市から東京寄りの地域に開設することを目指しました。土地探しは非常に苦労しましたが、遊休農地であった土地を確保して開設に至りました」(飯田理事長)。
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| ▲ 「実籾パークサイド」は、約5,700uの広大な敷地内に児童養護施設をはじめ、多様な福祉事業所を併設 |
▲ 建物間には小路を設け、街並みを意識した環境をつくった |
多様な人たちが気軽に行き交う施設
実籾パークサイドの敷地面積は約5,700uで、児童養護施設、一時保護所、こどものショートステイが入る「実籾パークサイドハウス」、認知症グループホーム、看護小規模多機能型居宅介護、放課後等デイサービス、就労継続支援B型事業所が入る「実籾パークサイドテラス」、児童家庭支援センターや地域交流スペース、親子訓練室、事務所が入るオフィス棟からなっている。さらに、オフィス棟には他の医療法人と連携し、在宅療養診療所のサテライトにテナントとして入ってもらうことで、医療連携の体制を整備した。
施設のコンセプトと環境について、施設長の木亜希子氏は次のように説明する。
「当施設は『高齢者の臨終と子どもの育ちがクロスする』をコンセプトとしており、施設周辺は、自然豊かな公園があり、高校に隣接するなど多様な人たちが行き交う環境があります。施設の周囲にフェンスや塀を設けないことで地域の人たちが気軽に立ち寄れる場所を目指しています。また、地域交流スペースとともに、敷地内には地域の方が誰でも利用できるバスケットコートを設置しました。昼休みや放課後の時間帯には多くの高校生が利用しており、多世代が交流する場面も生まれています」。
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| ▲ 社会福祉法人福祉楽団 実籾パークサイド 施設長 木 亜希子氏 |
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| ▲ 施設内には、バスケットコートと地域交流スペースを設置し、地域の多様な人たちが利用している |
自宅と変わらない生活環境を提供
定員36人の児童養護施設は、1棟に6人のこどもが生活する2階建ての建物が6棟あり、それぞれの建物に玄関を設けることで自宅と変わらない生活環境を提供している。1階はリビング、ダイニングキッチン、浴室、トイレなどの共有スペースが入り、2階部分が居室となっている。居室は全室個室で兄弟・姉妹で入所する際には、仕切りを外して2人部屋として使用できる設計とした。
「児童養護施設は、地元産のスギを柱に用いて木の温もりを感じられる設計にするとともに、建物間には小路を設けるなど、街並みを意識することにより、できるだけ自宅と変わらない環境をつくることにこだわりました。こどもたちは学校に行けば、友達がいるわけですが、その友達を自分の家に気軽に呼べることは社会関係をつくるうえで重要なことだと思っています。実際に、自分の家に友達を呼んで遊ぶことが日常の光景となっています」(飯田理事長)。
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| ▲ 児童養護施設を退所したこどもが里帰りできる部屋を設置。今後は、学生向けにシェアハウスとして貸し出し、多世代交流につなげることを構想している |
児童福祉事業を一体的に運営
定員6人の一時保護所では、虐待や家庭環境の問題など、さまざまな理由で保護を必要とするこどもを一時的に預かり、児童相談所と連携しながら、こどもや家庭に対する支援内容を検討し、方針を決めている。児童養護施設、一時保護所、児童家庭支援センターを一体的に運営することにより、円滑な連携が可能になっている。
また、定員6人のこどものショートステイは、保護者の病気や出産、育児疲れなどのレスパイトケアに活用されており、高いニーズがあるという。
法人では初めての開設となる看護小規模多機能型居宅介護は、「通い」、「泊まり」、「訪問介護」、「訪問看護」を一体的に行い、多様なニーズに対して柔軟に対応している。
「利用者は、医療行為が必要なために特養や福祉施設の入所を断られるなど、医療依存度が高い方が多くなっています。利用者にとって同じ事業所で複数のサービスを一体的に受けることができ、顔なじみの職員が対応することは安心につながっていると思います。他の医療法人と連携し、医療機関があることは職員にとっても安心感があります」(木施設長)。
定員18人の高齢者グループホームは、開設後すぐに定員に達しており、平均要介護度は2・5と比較的元気な利用者が多いことから、掃除や食事の準備など、自分でできることはしてもらう方針とし、今後はこどもたちと一緒にさまざまな活動をしていく予定だという。
なお、放課後等デイサービス(定員10人)は令和8年4月、就労継続支援B型事業所(定員20人)は令和8年10月の開所を予定しており、就労継続支援B型事業では、施設周辺にある耕作放棄地を活用し、農業に取り組むことを構想しているという。
退所したこどもが里帰りできる部屋を設置
制度外の取り組みとしては、児童養護施設を退所したこどもたちが、里帰りできる部屋をつくった。
「こどもが気軽に帰れる場所をつくることにより、退所後も関係性が途切れず、長期的に伴走支援を行うことを目指しています。宿泊部屋は4室設けており、施設の近隣には大学が多いこともあり、令和8年4月からは学生向けのシェアハウスとして月6万円(食事付き)で貸し出すことを予定しています。こどもや高齢の利用者にとって専門職だけに囲まれて生活することは不自然ですし、多様な人たちがいる環境をつくることは大事だと思います。学生には家賃を安価にする代わりに、毎月ボランティア活動に参加してもらうことを要件にすることも考えています」(飯田理事長)。
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| ▲ 児童養護施設を退所したこどもが里帰りできる部屋を設置。今後は、学生向けにシェアハウスとして貸し出し、多世代交流につなげることを構想している |
職員の働きやすい環境づくりに取り組む
法人全体の取り組みとしては、職員の働きやすい環境づくりに力を入れ、さまざまな制度を導入している。
雇用形態では、職員のライフステージにあわせて、短時間勤務や週3日勤務など、多様な働き方を選ぶことができ、雇用の安定を図るため、働き方を問わず全職員を無期雇用としている。
さらに、キャリアコースでは、「マネージャー」、「マイスター」、「アンカー」などから選択することが可能となっている。
「将来、施設長を目指したい人は『マネージャー』、介護技術などを極めたい人は『マイスター』、現在の働き方を維持したい人は『アンカー』というように、それぞれの持ち味にあわせてキャリアラダーを選べるようにしています。例えば、『マイスター』でいうと、管理職にならなくても、設定した試験をクリアすることで、きちんと給与に反映される仕組みをつくっています」。
休暇制度では、入職2年目から毎年5日間のリフレッシュ休暇を付与し、有給休暇の計画的付与により、12日間以上の長期休暇を取得できる。3年目からは別途3日間の休暇を付与することにより、1週間以上の休暇を取得することができるという。
そのほかにも、福利厚生では、インフルエンザをはじめ、B型肝炎、麻疹、風疹、ムンプスなどの抗体検査や予防接種費用を法人の全額負担とするほか、令和7年12月から全職員に月額定額制の動画配信サービスの利用料金を負担している。
「公定価格で事業を運営しているため、インフレのときは給与を上げることがどうしても難しく、金銭給付よりも現物給付のほうが大事になると感じています。例えば、給与を1000円上げるより、ネット配信サービスを無料にしたほうがインパクトとして大きくなりますし、職員からとても好評です」(飯田理事長)。
今後の展望としては、児童養護施設のこどもたちが守られて生活するのではなく、当たり前の暮らしとやりたいことに挑戦できる環境を提供するとともに、多様な人たちの交流を通じてこどもの成長を支えていきたいとしている。
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| ▲ 事務所を1カ所に集約することにより、円滑な連携が可能となっている |
地域共生社会の実現に貢献社会福祉法人福祉楽団
理事長 飯田 大輔 氏

「実籾パークサイド」の総工費は、約22億円かかっていますが、開設にあたっては法人で「OUR KIDS 基金」を立ち上げ、取り組みに賛同してくれた個人や企業とともに、地元住民から多くのご寄附をいただいています。物価や金利が高騰するなか、建築費や社会的養護のこどもたちがやってみたいことの実現に向けた支援、生活サポートなどに活用しています。
今後の展望としては、まずは事業を軌道に乗せていくことが第一となりますが、福祉拠点・地域交流拠点としての役割を果たしながら、地域共生社会の実現に向けて貢献していきたいと考えています。
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| 理事長 |
飯田 大輔 |
| 病院開設 |
令和7年3月 |
| 併設施設 |
児童養護施設(定員36人)、一時保護所(定員6人)、こどもショートステイ(定員6人)、児童家庭支援センター、認知症グループホーム(定員18人)、看護小規模多機能型居宅介護支援事業所(定員29人)、就労継続支援B型事業所(20人)
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| 法人施設 |
特別養護老人ホーム、ショートステイ、デイサービス、認知症グループホーム、訪問介護、居宅介護支援、放課後等デイサービス、就労継続支援A型・B型事業所、相談支援事業所など
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| 住所 |
〒275-0003 千葉県習志野市実籾本郷23番8号
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| URL |
https://www.gakudan.org/ |
| TEL |
047−409−9696 |
FAX |
047−409−9944 |
■ この記事は月刊誌「WAM」2026年1月号に掲載されたものを一部変更して掲載しています。
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