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| ▲ 施設の外観 |
東京都初の社会福祉連携推進法人を設立
令和4年4月に創設された社会福祉連携推進法人制度は、社会福祉法人などが社員となり、福祉サービスを行う法人同士の連携・協働を図るための取り組みを行う法人制度となっている。制度の活用により、福祉・介護人材の確保や経営基盤の強化、地域共生の取り組みの推進などが期待されており、令和7年12月現在で全国の33法人が認定を受けている。
平成4年11月に設立された社会福祉連携推進法人一五戸共栄会は、東京都八王子市の一誠会、岐阜県中津川市の五常会、北海道函館市の戸井福祉会の社会福祉法人3法人が参画している。人口動態の変化に伴う地域福祉の多様化・複雑化・福祉人材の労働需給のタイト化などの環境変化に対し、スケールメリットや相互の長所を活かしたシナジー効果を発揮させ、地域福祉に貢献することを目的としている。
社会福祉連携推進法人を設立した経緯について、社会福祉法人一誠会常務理事(一五戸共栄会会長付き特別補佐兼スーパーバイザー)の水野敬生氏は次のように説明する。
「もともと3法人は、創設者が同じで法人規模は異なるものの、それぞれの地域で特別養護老人ホームを中心とした介護事業を展開してきました。そのようななか、平成30〜令和2年にかけて全国各地で自然災害が頻発し、広域の支援ネットワークを構築するため、令和2年2月に3法人で災害時の相互応援協定を締結したことがきっかけでした。その後、社会福祉連携推進法人が創設されることになり、災害時の支援体制とともに経営基盤の強化を図るために、社会福祉連携推進法人を設立しました」。
設立に至るまでの流れとしては、令和4年9月に一般社団法人共栄会を設立し、同年11月に全国で5番目、東京都では初の社会福祉連携推進法人として認可を受け、令和5年5月に現在の法人名に変更している。法人本部は一誠会が拠点とする東京都八王子市に設置し、理事長には五常会理事長の土屋大二郎氏が就任した。
なお、法人名は3法人の頭文字をとったもので、それぞれの地域で地域福祉に尽力する法人・職員が共に栄えるという想いが込められている。
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| ▲ 一五戸共栄会は、社会福祉法人3法人が参画する社会福祉連携推進法人として令和4 年11月に設立された。写真左は岐阜県中津川市の五常会、写真右は北海道函館市の戸井福祉会 |
5つの連携業務に取り組む
同法人は、社会福祉連携推進法人の認定基準で定められている6つの業務のうち、「地域福祉支援業務」、「災害時支援業務」、「経営支援業務」、「人材確保等業務」、「物資等業務」を実施している。
「地域福祉支援業務」は、人口動態などを踏まえた地域住民の生活課題のニーズ調査、ニーズを踏まえた取り組みの企画立案・支援ノウハウの提供、取り組みの周知・広報などの支援を目的としている。
「地域福祉支援業務」の取り組みについて、社会福祉法人一誠会・特別養護老人ホーム「偕楽園ホーム」施設長の鷹野賢一氏は次のように説明する。
「もともと一誠会では、地域住民を対象にした介護教室や医療・福祉・保健などをテーマにした講座を行う地域交流会を毎月開催するとともに、介護ケアの実践研究発表会を毎年開催していました。実践研究発表会は、地域交流会とあわせて開催することで、地域住民にも参加していただいていましたが、令和5年から3法人合同で開催しています。合同研究発表大会では、各法人が介護等に関する研究をはじめ、地域福祉ニーズの発掘からサービス導入に至るプロセスを発表し、支援ノウハウを共有しながら水平展開を行うことを目指しています」。
「災害時支援業務」の取り組みでは、各地域で大規模災害を想定した通常の防災訓練と、連携推進法人による災害支援調整訓練を同時に実施している。
「合同防災訓練は、毎年持ち回りで3地域で実施しています。例えば、一誠会がホストとなった令和6年は、運営する特養が川沿いに立地していることから大雨による水害を想定した防災訓練を実施しました。水が引くまでに2日以上がかかるといわれるなか、連携推進法人による災害支援調整訓練を同時に行うことで、物資の運搬や人材派遣の方法・調整などの最適化を図るとともに、それぞれの法人が策定するBCPの検証を行いながら見直しをしています」(水野常務理事)。
備蓄品は、保管場所の確保が困難なこともあり、基本的に3日分の備蓄となっているが、災害発生時に参加法人2法人から物資の提供や人材の派遣を受けられることは安心感があり、広域で連携することで大規模災害にも対応できることは大きなメリットだとしている。
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▲ 社会福祉法人一誠会 特別養護老人ホーム 偕楽園ホーム
施設長 鷹野 賢一 氏
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| ▲ 合同研究発表大会を開催し、福祉ニーズの発掘からサービス導入に至るプロセスを共有している |
▲ 合同防災訓練では、各地域で大規模災害を想定した防災訓練と、連携推進法人
による災害支援調整訓練を同時に実施した
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経営情報の共有により経営改善を図る
社会福祉事業の経営に関する知識・ノウハウの共有を図るための支援を行う「経営支援業務」では、一誠会の事務局長(現スーパーバイザー)が各法人の理事会を定期的に巡回し、SWOT分析*により各法人の経営課題を抽出し、事業計画に反映させている。
そのほかにも、介護報酬改定に関する情報提供や対策などのアドバイスを行い、経営改善を図っている。
「法人経営は、コスト削減はもちろん、収入を増やして経営状況を改善することが重要となります。なかには加算が取れるにも関わらず見落としているケースがあるため、加算算定調整表を作成し、法人間で共有するとともに加算の算定に向けた情報提供や人材配置の工夫などを伝えています。コスト削減の一例としては、夜間配置加算を取ると、宿直を配置しなくてもよくなりましたが、これまでの慣習や情報を把握していないことから配置し続けていることがありました。これを見直すだけでも年間300万円近くのコスト削減となり、収益に影響します。このような小さな積み重ねにより、3法人とも社会福祉連携推進法人の設立以降、収益が上がり経営が改善しています」(水野常務理事)。
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| ▲ 各法人の理事会で経営分析結果を公表し、中長期経営計画への反映や経営改善につなげている
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3法人合同の職員研修を開催
社会福祉事業の従事者の確保・育成のための支援を行う「人材確保等業務」では、各法人の課題となっていた管理者育成を目的とした合同職員研修を実施した。
「職員研修はこれまで、1法人だけではテーマごとに講師を招くことが難しかったのですが、参加法人で費用を出しあうことで、2期にわたって全4回の管理者研修を実施し、3法人から15人の職員が受講しました。管理者研修は各地域で開催することで他施設を見学することができ、研修でスキルや知識を身に着けることにとどまらず、多くの学びを得る機会となっています」(鷹野氏)。
そのほかにも、一誠会では、地域福祉研修を年3回実施しており、研修を単独で開催することが難しい事業所も少なくないため、八王子市内の法人・事業所に案内を出して他法人にも参加してもらっていたが、現在は五常会、戸井福祉会もリモートで受講しているという。
地域福祉研修では、制度改正に即した講座をはじめ、利用者への虐待防止や職員間のパワハラ、利用者・家族による職員へのカスハラなど、あらゆるハラスメント対策を学ぶ研修を実施しているという。
また、職員交流の取り組みとして、各法人から職員を出しあい、合同の駅伝チームをつくり、各地域で開催される駅伝大会に参加している。
「駅伝チームは、一誠会からは20代の職員を出していますが、とくに若手職員は普段外に出ることが少ないので、各地域に出向いて交流する機会をつくりたいという思いがありました。選手だけでなく、応援に来る職員も多く、職員交流を図ることにつながっています」(水野常務理事)。
スケールメリットを活かした物資・システム等の一括調達・共同購入を行う「物資等供給業務」については、各地域で適正価格の調査を行っている段階であり、価格の比較をするだけでも見直しにつながる効果があるとしている。
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| ▲ 職員交流の取り組みとして、3法人で合同チームをつくり、各地域の駅伝大会に参加 |
法人に対する信頼度が高まる効果も
「社会福祉連携推進法人を設立したメリットとしては、人材育成で合同職員研修を開催できることが大きいと思います。広域での災害支援の協力体制があることは安心感がありますし、経営に関する情報も収集しやすくなっています。また、人材確保でいえば、全国規模で求人を出すことで、例えば『東京で採用したけれど、北海道で働いてみたい』などといった、さまざまなパターンを考えることができます。そのようなことを見越したうえで合同での採用募集についても考えていきたいと思います。法人規模が大きければよいというわけではありませんが、法人に対する信頼度が高まるところもあるのではないかと感じています」(水野常務理事)。
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| ▲ 人材育成では、テーマ別の合同職員研修会を開催 |
参加法人を増やし、運営ノウハウを共有
今後の展望としては、参加法人を増やすとともに、互いにもつ強みや運営ノウハウを共有し、経営基盤を強化しながら地域福祉に貢献していきたいとしている。
「一誠会としては、法人内で地域包括ケアシステムを構築することを目指し、特養をはじめとした多様な介護事業や企業主導型保育所を運営してきましたが、新たに障害福祉事業を展開することで、地域共生社会の実現に近づくことができると思っています。障害福祉に特化した法人に社会福祉連携推進法人に参加してもらい、運営ノウハウを共有させてもらいながら、こちらからは介護事業のノウハウを提供していく。将来的にはそのような連携・協働ができればと考えています」(水野常務理事)。
広域での地域福祉連携推進法人を設立し、経営基盤の強化とともに災害支援体制の整備を行う同法人の今後の取り組みが注目される。
連携・協働の取り組みを発信社会福祉法人一誠会 常務理事
社会福祉連携推進法人一五戸共栄会
会長付き特別補佐兼スーパーバイザー
水野 敬生 氏

障害、介護、子育て、生活困窮などといった福祉の課題は、地域の暮らしと切り離すことはできません。法人の未来の羅針盤となる「ネクストビジョン2035」を策定し、「暮らしの質の向上」、「経営資源の有効活用」、「創造性の発揮」を軸に、制度の垣根を超えた包括的支援と人材育成を進めています。
また、農福連携や工福連携など、地域資源と結びついた実践は、利用者が「支えられる側」から「支える側」へと変わる契機となりました。今後も孤独・孤立や災害対応など複雑化する地域生活課題に挑み、地域の誰もが担い手となる共生・共助の輪を広げていきたいと思います。
<< 施設概要 >>
| 理事長 |
土屋 大二郎 |
| 病院開設 |
令和4 年11 月 |
| 参加法人 |
社会福祉法人一誠会、社会福祉法人五常会、社会福祉法人戸井福祉会
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| 住所 |
〒192-0005 東京都八王子市宮下町983
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| URL |
https://kyoeikai.or.jp/ |
| TEL |
042−691−2830 |
FAX |
042−691−8288 |
■ この記事は月刊誌「WAM」2026年2月号に掲載されたものを一部変更して掲載しています。
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