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—大阪府和泉市・社会医療法人生長会府中病院—

官民一体で挑む地域医療の革新。泉州北部、3病院の新たなかたち

大阪府和泉市の府中病院は、将来の医療需要を見据えた持続可能な医療提供体制を構築するため、公立病院と再編統合し、医療機能の分化を行っています。再編統合を実施した経緯や機能分化の内容について取材しました。
▲ 施設の外観

地域に根ざしたトータルヘルスケアを実践

 社会医療法人生長会(理事長:亀山雅男氏)は、「愛の医療と福祉の実現」という法人理念のもと、地域に根ざしたトータルヘルスケアを実践している。
 法人の沿革としては、昭和30年に大阪府和泉市に府中病院を開設したことにはじまる。昭和39年に医療法人生長会を設立し、特定医療法人への改組を経て、平成21年に社会医療法人の認定を受けている。
 現在は、大阪府の堺・泉州地域において、府中病院を含む5カ所の病院をはじめ、複数のクリニックや検診センター、介護老人保健施設、グループホーム、サービス付き高齢者向け住宅、看護小規模多機能型居宅介護、訪問看護ステーション、訪問介護事業所のほか、看護・介護専門学校を運営している。
 さらに、関連法人の社会福祉法人悠人会では、特別養護老人ホームや老健、在宅サービス、認定こども園などを運営しており、両法人で多岐にわたる保健・医療・福祉・介護サービスの提供体制を構築することにより、地域住民が住み慣れた地域で暮らし続けることをサポートしている。
 法人の中核施設となる府中病院の病床数は、高度急性期病棟168床、急性期病棟186床、回復期リハビリテーション病棟26床の計380床で、救急・高度急性期医療に特化した病院として長年にわたって地域医療を支えてきた。


公立病院と再編結合し、機能分化を図る

 同院は、所属する泉州2次医療圏の地域医療構想に基づき、令和6年12月に同じ急性期病院となる泉大津市立病院と再編統合し、機能分化を図った。
 再編統合に伴い、府中病院は回復期医療、地域包括ケア、泉大津市立病院は小児・周産期医療に特化した病院に医療機能を変更するとともに、新たに救急・高度急性期、災害医療を担う泉大津急性期メディカルセンターを開設し、3病院に機能分化している。
 公立病院との再編統合を行った経緯について、院長の西川慶一郎氏は次のように説明する。
 「府中病院が立地する北泉州地域は、人口が約25万人で、当院のほか、泉大津市立病院、和泉市立総合医療センターの3つの急性期病院があり、急性期病床が過剰であるのに対し、回復期機能をもった病院が少ない状況がありました。さらに、泉大津市立病院とは直線距離で2.3キロと近く、医療機能が類似・重複していたことに加え、公立病院の経営が厳しいこともあり、適切な役割分担と将来を見据えた住民本位の医療提供体制を構築するため、今回の再編統合が計画されました。関西圏では、公立病院と民間病院の再編統合の実績があり、当法人としても平成23年から同じ医療圏で阪南市民病院の指定管理を受けていたこともあり、比較的スムーズに合意に至りました」。
 病院の再編統合にあたっては、令和3年6月に同法人と泉大津市による地域医療連携推進法人泉州北部メディカルネットワークを設立し、地域における持続可能な医療提供体制を構築するための協議を行った。
 なお、新設した「泉大津急性期メディカルセンター」は、同法人が市から指定管理を受託している公設民営で、それぞれの役割を明確化し、3病院の連携により地域の医療ニーズに応える体制を構築した。



回復期・地域包括ケアを担う病院に転換

 機能分化した3病院は、令和6年12月に「泉大津急性期メディカルセンター」を新設するとともに、旧市立病院は「泉大津市立周産期小児医療センター」に改称して医療機能を変更した。府中病院は、既存病棟で80床の運営を維持しながら院内の改修を行い、令和8年4月にリニューアルオープンしている。
 病院の改修について、管理部部長の田代保広氏は次のように説明する。
 「当院と旧市立病院は、それぞれ同じ場所で建物を改修してリニューアルオープンしており、当院は病床削減に伴い、旧棟を解体したため、延べ床面積は半分ほどとなっています。また、新設した『泉大津急性期メディカルセンター』の開設地は、府中病院から400mほどの距離にあり、敷地全体の7割は当法人が所有していた土地で、残りは公園があった場所です。建築費については市との折半となっています」。
 全体の病床数は、再編統合前の2病院の計610床から、3病院で計549床にダウンサイジングした。府中病院は、再編統合前の380床から、回復期リハビリテーション病棟73床、地域包括ケア病棟78床、ナスバ委託病床16床の計167床とし、これまでの急性期を中心とした医療体制から回復期医療、地域包括ケアを担う病院へと転換した。
 「再編統合にあたっては、病床全体の1割をカットし、61床を削減していますが、指定管理を含めると当法人が運営する病床数は実質的には増加しています。医療機能の変更にあたっては、もともと回復期リハビリテーション病棟がありましたし、法人内でも回復期に特化したリハビリ病院を運営していたため、それほど苦労はありませんでした」(西川院長)。
 また、新たに開設したナスバ委託病床は、自動車事故による脳損傷で重度の後遺症が残る患者に適切な治療や看護、リハビリを提供する専門病床となるが、泉大津市立病院が運用していた病床を事業承継している。


 ▲ 令和8年4月にリニューアルオープンした府中病院の受付

リハビリと療養環境の改善を図る

 リニューアルオープンした府中病院は、医療機能の変更にあたって療養環境の改善を図った。
 「施設設計の特色としては、病院らしくない配色とし、病棟の床を木目調にすることにより、入院患者が落ち着いた雰囲気のなかでリハビリに取り組むことのできる療養環境をつくりました。各病棟の病室は、個室、2人部屋、4人部屋を同じ割合で設置しており、2人部屋のベッドは、横並びではなく互い違いのZ型に配置し、患者同士の目線が合いにくくすることでプライバシーを保ち、感染症の対応もしやすいように工夫しました」(西川院長)。
 患者が意欲的にリハビリに取り組むための環境としては、1階に650uあるリハビリテーション室を設置し、最新のリハビリ機器を取りそろえるとともに、あらゆる日常生活を想定した生活訓練室を併設している。各病棟にもリハビリテーション室を設置することで、1階に降りてこなくてもリハビリに取り組める環境をつくった。
 さらに、今後の展望を考え、誤嚥性肺炎などの高齢者救急を受け入れられるように、1階にさまざまな検査室を集約したほか、地域に点在していた訪問看護ステーションや介護相談センターを院内に併設することにより、退院後の在宅療養につなぐ連携を図りやすくしている。


 ▲ 病棟の床は、木目調で落ち着いた雰囲気の療養環境をつくった
 ▲ 2人部屋のベッドは、横並びでなく互い違いに配慮することにより、患者のプライバシーを保ち、感染症の対応がしやすい設計とした
 ▲ 生活訓練室を設けたリハビリステーション室は650uあり、最新のリハビリ機器を取り揃える
 ▲ 最上階の7階には、職員専用の休憩室を設置

救急・高度急性期、がん治療、災害医療に特化

 同法人が指定管理者を務める泉大津急性期メディカルセンターの病床数は、高度急性期168床、急性期132床の計300床(うちICU8床、HCU12床、SCU6床)となっている。救急・高度急性期医療、がん治療、災害医療に特化した病院として地域医療支援病院の指定を受けている。
 救急医療では、24時間365日対応の質の高い救急医療体制を構築し、とくに脳・心血管疾患の対応を強化している。また、がん治療では、手術支援ロボット「ダヴィンチ」や放射線治療装置「サイバーナイフ」など、最新鋭の医療機器を導入し、治療の負担を最小限に抑える低侵襲がん治療を実践している。
 「サイバーナイフの導入は、関西でも2例目で、がん細胞に対してピンポイントで照射する定位放射線治療により、周囲に放射線の悪影響が出にくく、体への負担が非常に少ない治療が可能となっています。また、大阪府がん診療拠点病院として治療にとどまらず、早期発見や予防、患者支援、緩和ケアにも注力しています」(西川院長)。
 さらに、泉州地域は南海トラフ地震の発生による甚大な被害が想定されているなか、建物は免震構造で、災害時に医療機能を維持できるよう電気・水道・ガスなどのライフラインを72時間確保できるシステムを整備している。
 府中病院との連携についても、同一法人で距離的にも近いことから患者の紹介・逆紹介をスムーズに行うことができ、法人内や関連法人で老健や多様な在宅サービスを運営しているため、患者の状況に応じて在宅療養を支えることが可能となっているという。


 ▲ 令和6年12月に新設された「泉大津急性期メディカルセンター」。急性期機能を集約し、救急・高度急性期、災害医療の中核を担っている

地域医療連携法人の連携

 地域医療連携推進法人の連携としては、医薬品・診療材料の共同購入やICTを活用した医療情報の共有化により、経営の効率化を図っている。また、再編統合にあたっては、公立病院から府中病院に移る場合は転籍、府中病院から公立病院に移る場合は在籍出向というかたちで医療従事者の人事交流を行っている。
 「専門職でいうと、当院からは助産師が在籍出向しており、旧市立病院からは看護師を中心に医師数人が当院に転籍しています。当院に転籍した職員数は10人ほどで、民間病院と比べて公立病院のほうが給与水準が高いこともあり、想定していたよりも多くはありませんでした。ナスバ委託病床は、法人では初めての立ち上げで経験がなかったため、市立病院で担当していた看護師に交渉し、4人に転籍してもらえたことで、円滑に病棟を運営することができています」(田代部長)。
 地域医療連携推進法人には、今年度中に新たに3病院が参画する予定となっており、すでに医師のスポット派遣などの連携を開始しているという。
 公立病院との機能分化により、将来の医療需要を見据えた医療提供体制を構築する同院の今後の取り組みが注目される。


 ▲ 社会医療法人生長会 管理部部長 田代 保広氏

地域包括ケア拠点病院として医療機能を高める
社会医療法人生長会 府中病院
院長 西川慶一郎 氏

院長  当院は、長年にわたって地域の急性期医療を担ってきましたが、公立病院との再編統合により、回復期・地域包括ケア拠点病院へと役割を変更しました。今後は、地域住民に回復期医療に特化した病院であることを認識してもらいながら、さらに医療機能を高めていかなくてはならないと思います。
 また、病院の再編統合にあたって旧棟を解体したスペースがあります。地域では独居高齢者が増え、核家族化も進んでいますので、そういった方々が安心して生活できるためにどのようなサービスが必要であるかを考え、整備していきたいと考えています。



<< 施設概要 >>
理事長 亀山 雅男
院長 西川 慶一郎
病院開設 昭和30年
病床数 167床(回復期リハビリテーション病棟73床、地域包括ケア病棟78床、ナスバ委託病床16床)
診療科 内科、肝臓内科、糖尿病センター、脳神経外科、整形外科、リハビリテーション科、眼科、泌尿器科、透析センター、放射線科
法人施設 ベルランド総合病院(477床)、ベルピアノ病院(192床)、阪南市民病院(185床)、泉大津急性期メディカルセンター(300床)、診療所3カ所、介護老人保健施設、グループホーム、サービス付き高齢者向け住宅2カ所、看護小規模多機能型居宅介護、居宅介護支援事業所4カ所、訪問看護3カ所、訪問介護2カ所、看護福祉大学校 など
住所 〒594-0076 大阪府和泉市肥子町1-10-17
URL https://seichokai.or.jp/fuchu/
TEL 0725-43-1234 FAX 0725−43−3995


※この記事は月刊誌「WAM」2026年6月号の内容を掲載しています。
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