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社会福祉法人弘道福祉会 明石二見特別養護老人ホームラガール

自由で家庭的な暮らし、利用者の生活スタイルを継続 明石二見特別養護老人ホームラガール

兵庫県明石市にある「明石二見特別養護老人ホームラガール」は、“日常の継続”が認知症等の進行抑制に有効であるという医学的な報告から、できる限り自宅にいたときの生活環境を提供することを方針としている。その取り組みを取材した。

※ この記事は月刊誌「WAM」平成27年5月号に掲載されたものです。

法人では初のユニット型特養を開設


 平成16年に設立された社会福祉法人弘道福祉会(法人本部:大阪府守口市)は、「安心・信頼・貢献」を理念に掲げ、地域に根ざした介護サービスを提供してきた法人である。法人施設には、特別養護老人ホーム5カ所(兵庫県明石市・洲本市、大阪府茨木市、奈良県宇陀市)をはじめ、小規模多機能型居宅介護事業所4カ所、グループホーム3カ所を運営しており、特別養護老人ホームを中心に地域密着型サービスの小規模多機能型居宅介護事業所やグループホームを組みあわせた事業展開を行うことで、利用者の状態に応じて最適なサービス提供ができる体制を整備している。
 同法人では、平成24年4月に5カ所目の特養となる「明石二見特別養護老人ホームラガール」を兵庫県明石市に開設した。入所定員100人のユニット型の特養(10人×10ユニット)で、ショートステイ(20人)、通所介護事業所(定員30人)、訪問介護事業所、居宅介護事業所等を併設する。


▲ 社会福祉法人弘道福祉会 明石二見特別養護老人ホームラガールの外観

 施設開設の方針について、「明石二見特別養護老人ホームラガール」施設長の大谷周造氏は次のように語る。
 「これまで当法人の運営する特養はすべて従来型でしたが、当施設は法人としては初のユニットケアを導入しています。従来型の場合、日々のスケジュールが決まっていることも多く、個別対応が難しいところがありましたが、ユニットごとの各専従スタッフが入居者一人ひとりのライフスタイルを大切にしたケアを提供することで、ある程度自由な時間帯での食事や入浴にも個別対応が可能になり、入居者の生活の質の向上につなげています」。
 また、同法人理事長の生野雅昭氏は、「もちろん従来型にもよい点があり、なかには集団プログラムを実施し、施設側で生活のリズムをつくっていくことが必要な入居者の方もいるわけです。明石市内には、近隣に10年前から運営する定員70人の従来型特養もあり、新設の特養と『あわせて170床』と考えて運営しています。入居先として選ぶ際に『自宅から近いから』や『空きがあるから』という理由ではなく、入居者の状態や性格などをみて、『この方にとってはユニットケアの方が適している』、『この方は集団生活が適している』というように、選択できる環境がつくれたと考えています」と指摘する。


 施設での看取りを希望する入居者にも対応


 入居者の健康管理においては、医師である大谷施設長が常駐することは、入居者の安心な生活につながっている。看取りを希望する入居者への対応もしており、開設から3年間で看取り件数は10件にのぼるという。
 「入居時に、ご家族に対して救急事態に陥った際にどのような処置を希望するか調査をしていますが、近年は施設での看取りを希望するケースが非常に増えています。どうしても介護スタッフは看取りに対する不安感をもっているので、経験を重ねた看護師がいることが一番心強いのですが、人材確保はなかなか難しい状況にあります。そのため、看取りに関する研修にこれまで以上に取り組んでいくことが必要だと感じています」(大谷施設長)。
 医療との連携については、関連法人として大阪府守口市を拠点に5つの病院やクリニック、介護老人保健施設等を運営する社会医療法人弘道会があり、同病院の理学療法士や作業療法士が各施設を巡回し、入居者の身体リハビリや嚥下機能のチェックを実施している。施設側のメリットだけでなく、病院側にとっても退院後の患者の状況がわかることや、退院先の一つである特養の環境をよく知ることで、どのようなサポートをしていく必要があるかを学べるなど、双方のメリットになっているという。


 外出した気分になれる施設設計の工夫


 同施設では“日常の継続”が認知症等の進行抑制に有効であるという医学的な報告から、できる限り自宅にいたときの生活に近い環境をつくっている。居室には自宅で使用していた愛着ある家具や什器等を持ち込むことが可能で、居室ごとに入居者の個性が出ているという。

                
 ▲ 各ユニットにあるリビング ▲ 洗面所とトイレを完備した居室(18u)は、自宅から家具などを持ち込むことも可能

 施設設計にも工夫がされており、3階建ての同施設は2〜3階が入居部分、1階には居酒屋コーナーや理美容室、地域交流室などを設けている。お酒を飲むことや身だしなみを整えることも、入居前の生活ではごく一般的な”日常“であったという考えから設置したもので、地域交流室を利用する地域住民と交流を図ることも可能となる。また屋上には、天気のよい日には淡路島が眺望できる広い庭園がつくられており、入居者が家族やスタッフと散歩する光景も日常的にみられる。そのほかにも浴室には準天然温泉の大浴場があり、とくにデイサービスの利用者に人気がある。このような設備にした理由としては、外出が難しい入居者にも、施設内であっても“地域に出かけた気分”になってもらいたいとの考えがあったという。

                
 ▲ 淡路島も望める屋上庭園では、入居者がスタッフや家族と散歩する光景が日常的にみられる ▲ 同施設の浴室は特浴や個浴のほか、準天然温泉の大浴場があり、利用者に人気がある

 利用者同士、スタッフが語りあえる場


 また、居酒屋コーナーを使用したイベントを月2回実施している。酒類や地元の食材を用いた明石焼きなどのつまみを提供し、お酒が入ることで会話もはずむという。基本的には自由参加形式としているが、入居者の楽しみとなっており、毎回多くの入居者が参加する。

            
 ▲ 施設の1 階には、入居者とスタッフが交流を深める居酒屋コーナーや理美容室を設置。月2 回開催する居酒屋のイベントでは、酒類や明石市の食材を用いた酒肴が提供される

 イベントでは入居者だけでなく、スタッフも参加し一緒にお酒を飲むことができることが特徴となっている。日頃、利用者とスタッフの会話は業務に関する内容になりがちだが、この場では仲間として互いにお酒を酌み交わすことで関係性が深まるとともに、普段できない会話ができることは利用者の新たな一面を発見することにもつながるという。
 「利用者さんとスタッフのコミュニケーションをとることは、非常に重要なことです。普段からもっと利用者さんとコミュニケーションをとりたいと思っていても、スタッフは日常業務に追われ、その時間を確保することがなかなか難しいのが現実です。イベントでは『介護する人・される人』ではなく、仲間として会話するので、人と人との関係性をつくりやすくなります。より深い関係性に入っていけますし、入ってきてくれます。利用者の方に楽しんでいただくイベントなのですが、施設側からみても大きな意味をもつようになっています」(生野理事長)。
 多忙なスタッフ同士においても、貴重なコミュニケーションの場となっており、利用者の家族も参加可能なため、親子で楽しむ人もいるなど、家族にも好評だ。
 また、これまで運営してきた従来型特養との違いについては、「家族の面会の回数が多く、滞在時間が比較にならないほど長いことです」と大谷施設長は語る。「多床室の場合はどうしても他の入居者が気になるのですが、個室だと気兼ねすることがないですし、面会というより、その方の部屋に会いに来たという感じなのでしょう。ユニットケアのメリットとして、利用者一人ひとりにあわせた個別対応をしていくだけでなく、ご家族が面会に来やすい環境がつくられることは、何よりも入居者のためになっていると感じます」。

 法人で人材育成していくことに重点を置く


 現在の課題については、介護スタッフの人材確保をあげている。ユニットケアを導入し、利用者に応じた対応をしているため、スタッフの負担が大きい現状にある。人材不足は全国的な問題であるが、明石市は神戸市や大阪府などの大都市が周辺にあることから、仕事を選びやすい環境にあることも人材を集めにくい理由の一つである。
 サービスの質を向上させるために、スタッフを増やしていきたい意向があるものの、経験者の募集をしてもなかなか集まらないことから、現在は新卒やこれまで介護に興味がなかった人たちに働きかけ、法人で介護のプロフェッショナルを育てていくことに重点を置き、介護関係の専門学校だけでなく一般の高校にも訪問している。
  「職員研修のプログラムを強化するほか、法人の研修ホールに各施設からの職員に集まってもらい、介護福祉士やケアマネジャーの試験対策ゼミなども実施しています。また、教えられるだけでなく、自らが勉強しなければ身につかないと考え、関連の社会医療法人と合同の学術研究会を毎年開催しています。各施設による研究発表を行い、医療・介護に関する技術や知識を高めることにつなげています」(生野理事長)。
 今後の展望については、地域との交流を深めていくことをあげる。現在は秋祭りなどのイベントに地域住民を招待したり、自治会の会合などで施設内にある地域交流室を利用してもらっているが、地域生活における交流は不十分だという。同法人の運営する他施設では、地域や利用者の家族を対象にした介護教室を実施しており、このような取り組みをきっかけに街づくりや地域活性などの活動に対し、地域と一体になって取り組んでいきたいと考えている。
 入居者一人ひとりのライフスタイルを大切にしたケアを提供する、同法人の取り組みが今後も注目される。


利用者をより知ろうとすることが大切
社会福祉法人弘道福祉会 明石二見特別養護老人ホームラガール 介護福祉士 三木 一慶氏

 長年、他法人の従来型の特別養護老人ホームで勤務していたのですが、本格的なユニットケアの施設で働きたいという想いがあり、当施設の開設の際に入職しました。
 従来型とのケアの違いとして、利用者さんの希望に添うことが基本的な考え方としてあるので、柔軟な対応が求められます。そのためには利用者さんのことをより知ろうとすることが大切で、その人の生活スタイルやリズム、身体・精神状況などをしっかりとアセスメントしていくのですが、他施設を利用していたケースがあれば、連絡して情報を得ることも行っています。これらの情報をもとに、利用者のよりよい生活につなげていくことを日々の業務で取り組んでいます。
 また、スタッフが不足していると、利用者さんに対する十分なケアができませんので、今後は働きやすい職場の環境をつくっていくことも重要だと感じています。

これまでの日常と変わらない暮らしを提供
社会福祉法人弘道福祉会 明石二見特別養護老人ホームラガール 施設長  大谷 周造氏(医師)

 平成24 年に開設した当施設は、法人としては初のユニットケアを導入しました。入居者の日常生活には一定のリズムはあっても、それぞれの時間には幅があると思っています。しかし、従来型の特別養護老人ホームでは、日々のスケジュールが決まっていることも多く、個別対応が難しいところがありました。
 当施設で取り組むユニットケアであれば、ある程度の個別対応が可能なため、ご利用者の生活の質はこれまで以上に充実すると考えています。また、プライバシーを確保するために居室ごとにトイレ、洗面所を設置するほか、自宅で使用してきた愛着ある家具や什器を持ち込まれることを可能にするなど、これまでの日常と変わらない感覚での暮らしをしていただく環境としています。
 今後は、利用者のみならず、地域との交流を図りながら暮らしやすい地域づくりを担う活動にも取り組んでいきたいと考えています。

<< 法人概要 >>
     
法人名 社会福祉法人弘道福祉会
理事長 生野 雅昭 氏施設長 大谷 周造 氏
施設開設 平成24年4月 職員数 495人(法人全体)
入所定員 100人(長期入所80人、ショートステイ20人)
併設施設 通所介護事業所/訪問介護事業所/訪問入浴事業所/居宅介護支援事業所/配食サービス
法人施設 特別養護老人ホーム(大宇陀、洲本、明石、茨木)/小規模多機能型居宅介護事業所(洲本、明石、門真、洲本中川原)/グループホーム(大宇陀、門真、洲本中川原)
電話 078-942-9420 FAX 078-942-9421
URL http://www.koudoukai.or.jp/akashifutami/


※ この記事は月刊誌「WAM」平成27年5月号に掲載されたものです。
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