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福祉医療分野の制度・施策動向ウォッチ
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2025年8月6日

【厚生労働省】第147回社会保障審議会障害者部会(令和7年6月26日開催)

地域移行の肝は「緊急時・困難事例への対応」
次期障害福祉計画の「成果目標」設定をめぐり議論

 厚生労働省の第147回社会保障審議会障害者部会(部会長=菊池馨実・早稲田大学理事・法学学術院教授)が6月26日に開催され、(1)次期障害福祉計画の基本指針策定に盛り込む「成果目標」のあり方、(2)療育手帳にかかる運用の統一化に向けた検討の進め方などについて、議論が交わされた。

 厚生労働省の第147回社会保障審議会障害者部会(部会長=菊池馨実・早稲田大学理事・法学学術院教授)が6月26日に開催され、(1)次期障害福祉計画の基本指針策定に盛り込む「成果目標」のあり方、(2)療育手帳にかかる運用の統一化に向けた検討の進め方などについて、議論が交わされた。

実態に見合った「地域の受け皿」が不可欠。入所待機者の扱いも焦点に

 3月に開催された第146回会合では、次期障害福祉計画について各委員がそれぞれの関心や専門性に沿って適宜意見を述べ合うフリーディスカッションの形式が取られたが、今回は「成果目標の設定のあり方」に絡めた検討が行われた。厚生労働省事務局からは、議論の素材として、第6期障害福祉計画(令和3〜5年度)の目標値とその達成状況(実績)をまとめた資料が配布され、以下のような説明がなされた。

【地域生活移行者の増加】

・ 「令和元年度末時点の施設入所者の6%以上が地域生活へ移行」という当初目標に対し、実績は4.6%で、目標をやや下回った

【施設入所者の削減】

・ 「令和元年度末時点の施設入所者数から1.6%以上削減」という当初目標に対し、実績は2.3%で、目標を上回った

【精神病床における1年以上長期入院患者数】

・ 「令和5年度末の精神病床における1年以上長期入院患者数=10.6万人〜12.3万人」という当初目標に対し、実績は「15.6万人」と、目標とは乖離が見られた

【精神病床における早期退院率】

・ 「『入院1年後の退院率=92%以上』という目標値を満たす都道府県が44」という当初目標に対し、実績として目標値を満たした都道府県は1にとどまった

【就労定着支援利用比率】

・ 「就労移行支援事業等を通じて一般就労に移行する者のうち、70%が就労定着支援事業を利用する」という当初目標に対し、実績は37.6%にとどまった

抜粋

 委員からは、施設入所者の地域移行が目標に届かなかったことについて、「施設入所者の重度化や高齢化が影響している」「地域の受け皿の問題や、地域での生活が可能となるだけの十分な収入が得られないなどの背景も考えられる」などとして、実態把握のうえ要因に対応した取り組みを求める声が上がった。

 また、別の切り口から、「障害者の地域移行・定着を拡大できるかは『緊急時や困難事例への対応』が機能するかどうかにかかっている。たとえば、地域住民との間に生じたトラブルにも適切に対応できるスタッフをどうやって確保し、養成し、研修を進めていくか。そこが抜け落ちているから、地域移行が進まないのではないか」との指摘もあった。

 “入所待機者”を施設需要として勘定に入れるかどうかについて、現状では待機者を把握している市町村が5割にとどまり、把握していても待機者の定義や把握方法にばらつきがあることから(家族のみが入所を希望している場合も待機者として扱うのか/複数施設に申し込んでいる場合はどうカウントするのか、などが一様ではない)、「実態を正確に反映しているとはいえず、単に入所施設の整備拡大に正当性を与えてしまいかねない」と慎重な取り扱いを求める声が上がった。その一方で、「国が主体となって正確に待機者数を把握するべき」との意見も出された。

“にも包括”推進に向けて目標追加を/就労定着支援は制度の見直しが必要

 また、新たな成果目標として、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」(いわゆる“にも包括”)のカテゴリーに、以下のような切り口での評価を可能とする指標について検討を求める意見が出された。

・ 精神科病院から退院を希望する患者の、退院支援の取り組みにかかる『ニーズの充足度』

・ 地域で暮らす精神障害者本人やその家族の『生活』『社会参加』を支える体制の整備状況

・ 地域で暮らす精神障害者本人やその家族の『生活』『社会参加』の“質”

・ 精神障害者本人がスティグマ(※)を持たずに地域で安心して暮らすことを可能とする地域風土(地域住民の正しい理解を促す普及啓発活動の取り組み)」


(※スティグマ…個人や集団が特徴に対して、不当な扱いや偏見や差別を受ける状態のこと)


 このほか、就労定着支援の利用比率が低調であることについて、「就労定着支援の利用率は2年目に入ると落ち込む。それは、就職して一定の収入が得られることにより、2年目から所得段階が上がって利用料負担が発生するからと考えられる(負担増を嫌って利用をやめてしまう)」「そもそも一般就労後6ヶ月経過時点から、別事業所が支援を引き継ぐのは簡単なことではない」などとして、制度・仕組みにも課題があることを指摘し、見直しを含めた検討を求める意見が出された。

療育手帳「全国統一化」へ一歩、新尺度「ABIT-CV」をモデル自治体で施行へ

 この日の部会では、もうひとつの議題として、知的障害児者に交付される障害者手帳(療育手帳)について、「全国統一的な運用」へと見直すための検討が行われた。

 現行制度において3障害の障害者手帳は、「身体障害者手帳」については身体障害者福祉法第15条に、また「精神障害者保健福祉手帳」については精神保健福祉法第45条に、それぞれ位置づけられているが、「療育手帳」については法律上の位置づけがない。厚生事務次官通知「療育手帳制度について」(昭和48年9月27日厚生省発児第156号)を根拠として、各都道府県で実施要項を定めて運用しているというのが実態となっており、そのため、検査方法等の判定方法が都道府県ごとに異なり、IQの上限値や発達障害の取扱いについてもバラつきがある。

 障害の程度にかかる区分は、半数以上で「4区分」で運用されているが、最小のところで「2区分」、最多のところで「7区分」となっている。結果、障害者本人の転居にともなって、それまで受けられていたサービスが受けられなくなるような事態も生じている。

 こうした状況を改めるべく、2022年6月の障害者部会最終報告で「運用の全国統一化」の方向が打ち出され、それを受けて厚生労働省研究班において「判定方法や認定基準の在り方」の調査研究に着手。このほど、その成果が出揃ったとのことで、事務局が概要を報告した。それによると、WHOの国際疾病分類(ICD第11版)に準拠して@知的機能、A適応行動の2軸の評価を盛り込みつつ、判定業務を担う自治体の負荷を抑えた、「ABIT-CV」という尺度の開発に成功。さらに令和7〜9年度の調査研究でモデル自治体での試行を通じて、「ABIT-CV」の検証を実地で進めていく予定であるという。

「今後の療育手帳制度の在り方」を議論する検討会を新設

 さらに厚生労働省事務局は、別途検討会を設けて、「今後の療育手帳制度の在り方」について詰めていくことを提起。運用の全国統一を図る過程で、比較的軽度な知的障害児者の利用できる支援・サービスや、税控除、特別児童扶養手当、障害者雇用率算定、公共交通機関の割引などに影響が生じる可能性があることから、幅広く関係者の意見を聴きながら制度設計の在り方を検討したい旨を説明した。

 委員からは、「運用の全国統一化」に向けたプロセスに関しては異口同音に賛意が述べられたが、その一方で、「軽度の方がそれまで使えていたサービスや助成制度を使えなくなるような不利益が生じないことを、前提としていただきたい」「IQが高いながら社会適応に困難を抱える発達障害の方などに関して、どの程度適切な評価が可能なのか。統一化による懸念点や、非該当となる対象像、人数、サービス利用の状況などを明確にしたうえで、十分なご検討をいただきたい」などの意見が出された。


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