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福祉医療分野の制度・施策動向ウォッチ
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2025年8月22日

【厚生労働省】第26回特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会(令和7年6月25日開催)

特定機能病院の役割と承認要件、見直しへ
「医師派遣」の役割を追加、2段構えの評価基準に再編

 医療をめぐる情勢変化に見合った「特定機能病院の役割と承認要件」について検討を重ねてきた厚生労働省の「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」(座長=松田晋哉・福岡国際医療福祉大学ヘルスデータサイエンスセンター所長/教授)は、6月25日に総括的質疑を終え、概ねとりまとめに至った。

 医療をめぐる情勢変化に見合った「特定機能病院の役割と承認要件」について検討を重ねてきた厚生労働省の「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」(座長=松田晋哉・福岡国際医療福祉大学ヘルスデータサイエンスセンター所長/教授)は、6月25日に総括的質疑を終え、概ねとりまとめに至った。

 同省事務局が示した「とりまとめ案」は、特定機能病院に求められる役割として、従来の@高度の医療の提供、A高度の医療技術の開発及び評価(研究)、B高度の医療に関する研修(教育)、C医療における高度の安全確保(医療安全)の4本柱に加えて、新たに「地域への医師派遣」という役割を加える。そして、承認要件について、(1)すべての特定機能病院が満たすべきベースラインの「基礎的基準」と(2)それを上回る各病院の取り組みを上乗せで評価する「発展的基準」を組み合わせた、“2段構え”の評価体系に再編する――という内容。

 検討会では異論はなく、この日の議論の内容で若干の文言調整のうえ、書面による“持ち回り開催”を経て正式にとりまとめる。その後、関係法令や通知の改正に着手する流れとなる。

高度な医療を実施する体制・能力を備えた88の病院診療報酬上の優遇、患者は紹介制

 特定機能病院は、医療法第4条の2の要件を満たして厚生労働大臣の承認を受けた「高度な医療を実施する体制・能力を備えた病院」のこと。病床数が400床以上あり、高度な医療機器・施設が備わっていて、かつ、原則として内科、外科、精神科、小児科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科又は産科及び婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、放射線科、救急科、脳神経外科、整形外科、歯科、麻酔科(標榜診療科)をカバーし、医師が通常の2倍以上(半数は専門医)配置されていて、高度医療の提供・評価・開発・研修・医療安全の確保が実践できていること――などの基準を満たす必要がある。これらの機能や体制の維持が可能なように、特定機能病院の診療報酬点数は、特別に高く設定されている。

 紹介制を原則としており、紹介状を持たずに直接受診に訪れる患者や、他院への紹介を断って受診を続ける患者に対しては、「追加負担」(初診時選定療養費または再診時選定療養費)を徴収するべき“義務”が、特定機能病院には課せられている(健康保険法第70条第3項、療養担当規則第5条第3項)。

 現在、特定機能病院に承認されているのは、大学病院本院(79施設)のほか、国立国際医療研究センター病院、国立循環器病研究センター、国立がん研究センター中央病院など9施設を加えた合計88施設である。


ぼやける特定機能病院の“輪郭”
高まる「医師派遣」「最後の砦」への期待

 特定機能病院の制度創設(平成5年4月〜)からすでに30年余経過するが、その間、医療をめぐる情勢は大きく様変わりしてきた。高度医療を実施する病院は特定機能病院以外にも広がりを見せ、また「地域医療支援病院」「臨床研究中核病院」「難病診療連携拠点病院」「がんゲノム医療拠点病院」など別途の病院類型も続々と設けられ、相対的に特定機能病院の位置づけが曖昧化している。

 その一方、今後の本格的な人口減少や人口構成の変化に対応しうる持続可能な医療提供体制を構築するうえで、@医師偏在を是正するための「医師派遣機能」、A希少性・複雑性が高い症例への対応や三次救急を担う「広域の診療機能」(いわゆる「最後の砦」としての機能)、B医師やその他の医療従事者を育成・供給する「医育機能」が要請されるようになってきた。


すべての特定機能病院が満たすべき「基礎的基準」と
各病院の取り組みを上乗せで評価する「発展的基準」

 そこで、今回のとりまとめ案では、大学病院本院である特定機能病院に期待される役割について、次のように整理された。


 ○ 人口減少等がより顕著に進む2040年頃を見据えると、高度の医療提供、医師派遣機能も含め、地域医療における役割を積極的に果たすことがより一層期待される

 ○ 医療提供以外にも、医学生を含む人材育成・供給や医学の進歩にも寄与する研究開発の推進を担う機関であり、豊富な医療資源等を活用したより高度な取組も望まれる


 これにあわせて、承認要件も見直す。現行では基準を満たしているか否かが評価され、満たしていると認められれば一律に承認を受けられ、診療報酬上のメリットとも直結する流れとなっているが、とりまとめ案では、(1)すべての特定機能病院が満たすべきベースラインの「基礎的基準」と、(2)それを上回る各病院の取り組みを上乗せで評価する「発展的基準」を組み合わせた、“2段構え”の評価体系に再編することを提起している。


「総合診療科」など3科を必須化、
病院管理者が「医師派遣の全体像」を把握して報告

 「基礎的基準」については、現行の承認要件(4要件)をもとに、「医師派遣」を加えた5本柱の構成とし、中身を拡充させる(下表)。特に、診療科について、これまで標榜が求められてきた上述の診療科に加え、新たに「病理診断科」「臨床検査科」「総合診療科」の3つの設置を求め、あわせて専門研修プログラムの基幹施設となることも求めることとした(ただし一定の経過措置を設ける)。

 また、医師派遣については、病院管理者が医師派遣の全体像を把握し、地域医療構想や医師確保計画との整合に関する状況とあわせて実績報告を行うこと、派遣元が派遣先の教育体制や処遇状況についてチェック機能を果たすことを求めるものとしている。

 「発展的基準」については、医療提供・教育・研究・医師派遣の4要件で基準を設定し、それぞれの基準に照らして各病院が自主的な取り組み状況を評価のうえ、結果を公表するものとした。なお、基準の設定にあたっては、個々の病院にはいかんともしがたい地域の実情によって基準達成が著しく困難なものとならないよう留意するものとし、さらに医師が不足している“条件不利地域”で医療を提供していること自体を評価する方針を明示した。

表 基礎的基準
出典:資料1「特定機能病院のあり方に関するとりまとめ(案)」, 3P


大学病院本院以外も同様の見直し
基準を満たさなくなる病院は「改善計画提出」で当面指定続行

 大学病院本院以外の9病院(国立国際医療研究センター病院、国立循環器病研究センター、国立がん研究センター中央病院、国立がん研究センター東病院、がん研究会有明病院、静岡がんセンター、大阪国際がんセンター、愛知県がんセンター、聖路加国際病院)については、上掲の大学病院本院における見直しと「同様に考えていくことが適当」と整理された。

 承認要件の見直しの結果、基礎的基準を満たすことができなくなる病院については、即時取消ということではなく、「当面の間、改善計画の提出及び当該計画に基づく対応を求めることで、引き続き、特定機能病院として取り扱うことが考えられる」とした。


医療機能の集約化、どこが「リーダーシップ」をとる?

 この日の検討会では、「発展的基準」に関して、「基礎的基準に位置づけられた5本柱のうち、発展的基準には医療安全が明記されていない。このままでは、『医療安全は、発展的基準としては今後とも検討しない』というメッセージと受け取られてしまいかねない」と修正を求める意見が出されたほか、評価・公表の在り方について、「発展的基準に基づく自主的取り組みの評価・公表が進めば、標準化の傾向が強まるのではないか。各大学の特色のある取組が過剰に平たくならないよう、各大学の工夫が残るような制度設計を期待したい」と注文がつけられた。

 また、特定機能病院が果たすべき役割として、「急性期機能の集約化という難題を前進させるには、誰かがリーダーシップをとらなければならない。特定機能病院がどうリーダーシップを取るかということについての評価も、今後考えていただきたい」という意見が出され、これに対しては「大学病院が暴走してしまうと地域の医療提供体制の崩壊につながりかねない。それぞれの地域性も踏まえつつ、バランスをどう取るかがポイントになる」と牽制する意見が提起された。

 全体として異論・反対意見はなく、必要箇所の文言調整のうえ、書面による“持ち回り開催”を経て正式にとりまとめることとされた。

 締め括りで、厚生労働省医政局の森光敬子局長が、「特定機能病院は、それぞれの地域で一体となって医療を提供するための基盤であり、その役割は、今後ますます重要になっていく。取りまとめに向けて皆様のお力もいただきながら成案を得て、詳細な設計に進み、その後の制度改正に向けた段取りもスピーディーに進めてまいりたい」と展望を交えてあいさつを行った。


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