令和8年度臨時(期中)介護報酬改定における「介護報酬の見直し案」を、厚生労働大臣が社会保障審議会会長に諮問。1月16日開催の第253回介護給付費分科会(委員長:田辺国昭・東京大学大学院法学部政治学研究科教授)で審議が行われ了承された。
加えて令和6年度介護報酬改定における効果検証と調査研究の実施内容についても検討が行われ、令和9年度介護報酬改定に向けた新たな話し合いがスタートした。
介護職員等処遇改善加算が拡充
訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援にも加算新設
介護報酬の見直し案によると、改定率は+2.03%(国費+518億円)となり、新たに介護職員だけでなく介護従事者を対象に幅広く1万円(3.3%)の賃上げを実施する。上乗せ措置として、生産性向上や協働化に取り組む事業者の介護職員を対象に、月0.7万円(2.4%)の加算区分T・Uを新設。最大月1.9万円(6.3%)の賃上げ(0.2万円の定期昇給を含め)が実現する。処遇改善の対象外であった訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援等にも今回加算が新設される。
「【資料1】令和8年度介護報酬改定について」3頁
改定のための見直し案について各委員から示された意見は、加算算定手続きにおける事務負担の軽減や算定要件を満たすためのハードルの高さの指摘、令和9年度介護報酬改定に向けた効果・検証を期待する内容が多かった(以下参照)。
〇処遇改善加算の算定構造を見ると、サービス区分と加算段階の組み合わせが複雑なため、事務手続きが煩雑になりそう。小規模零細事業所の場合、算定できないところも出てくることも予想される。全ての事業所において算定が可能となるよう、丁寧な支援を望む。
〇介護職員の上乗せ分として、最大で月1.9万円の賃上げを実現するには、「ケアプランデータ連携システムへの加入」や「生産性向上推進体制加算の取得」が要件となる。ケアプランデータ連携システムの普及状況を国民健康保険中央会のホームページで確認すると、市町村によって大きな差が見られる。また、生産性向上推進体制加算については、必要な手間に対し加算単位数が低く、取得事業者が増えていかない状況もある。このような要因についてもしっかり把握・見直しを行い、事業者への支援を検討する必要がある。
〇外部サービス利用型の特定施設入居者生活介護においては、生産性向上推進体制加算が位置付けられておらず、実質的に包括型同様のサービスを提供していても、生産性向上や協働化に伴う月0.7万円の上乗せ措置が享受できないことが問題。令和9年度介護報酬改定では格差是正のために、当該加算算定を可能にするか、あるいは訪問・通所サービスのようにケアプランデータ連携システム加入を要件とし、等しく処遇改善の恩恵が届く柔軟な配慮を望む。
〇令和8年度の特例要件を満たす場合、キャリアパス要件T〜Wと職場環境等要件は、誓約による対応で可能となるが、実際に取り組みにつながるような後押しも必要と考える。
〇今回の改定がサービスの質向上・維持にどのように結びついたか、効果検証をしっかり行ってもらいたい。
これらは当介護給付費分科会で了承、同日答申され、約1か月間のパブリックコメントをすでに終えたところ。今後、6月の実施に向け、告示・通知が発出される予定だ。
基準費用額(食費)も見直しへ
また、今回同時に、食費の基準費用額についても見直し案が出された。
近年の食材費の上昇や、令和7年度介護事業経営概況調査において食事の提供に要する平均的な費用の額と基準費用額との間に差が生じている状況等を踏まえ、令和9年度介護報酬改定を待たずに、令和8年8月より1日につき100円を引き上げる。
負担限度額についても、在宅で生活する人との公平性を総合的に勘案し、同8月から利用者負担第3段階の@に該当する人は30円/日、Aは60円/日に引き上げる。
この案については賛成が大半を占めたが、以下の意見も出された。
〇食費の値上げにより、サービスの利用を控える人が増えるのではないか懸念される。また、利用者やその家族の負担がどのぐらいになるのか、わかりやすい説明を示してほしい。
〇低所得者である第3段階の利用者の負担が若干増えるため、十分な説明とフォローアップが必要となるのではないか。
「【資料1】令和8年度介護報酬改定について」6頁
令和6年度介護報酬改定の効果検証及び
調査研究に係る調査(令和8年度調査)の実施について
続いて、令和8年度調査に関する内容が説明された。
これは、令和6年度介護報酬改定の審議報告に示された今後の課題を踏まえ、その効果検証や検討が必要とされた事項等に関し、調査研究を行うための資料を得ることを目的とする。今回の令和8年度調査では、以下の2項目について実施し、9月頃をめどに速報値の集計を目指す。
(1)高齢者施設等と医療機関の連携体制及び協定締結医療機関との連携状況等にかかる調査研究事業(案)
(2)離島・中山間地域・豪雪地帯等における各種加算等の在り方の調査・検証研究事業(案)
各委員からは、次のような意見が出た。
〇保険者として、4月から第10期介護保険事業計画の策定に向けた素案作成に入るため、この調査結果が十分活用できるように内容を検討してもらいたい。
〇協力医療機関との連携に関する場面では、料金が見合わないという理由で連携協定締結を断られる事例も出ている。医療機関側の理解と協力が得られないと、相談対応、夜間の往診対応、急変時の入院受け入れ等は可能とならない。行政による仲介や地域医療構想との整合性を持たせた関与を望む。また、そのために有用な調査としていただきたい。
〇既存の僻地・中山間地域では、すでに介護事業書が撤退していることも考えられる。また、時代が変わるなかで、新たに僻地に相当するようになった地域の把握も必要となる。一般の地図では高低差がわかりにくい、橋や川を渡るのに遠回りする必要がある、公共交通機関が撤退している等、在宅支援が困難な地域への配慮が重要となる。AI等を活用して人口動態や高低差がわかる地図を読み込ませ、サービスが届きにくい地域のあぶり出しも必要になるだろう。
これらの意見を参考にしつつ、引き続き介護給付費分科会で調査内容を精査していく予定だ。