厚生労働省の「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」(座長=野口晴子・早稲田大学政治経済学術院教授)の第4回会合が、2025年12月17日に開催された。在宅医療および医療・介護連携にかかる現在運用中の第8次医療計画(前期)の進捗状況と、昨今の在宅医療・介護を取り巻く状況、さらには同ワーキンググループ(以下「WG」と表記)で交わされてきた議論の内容と、それらを踏まえた「第8次計画(後期:2027〜2029年度)で対応するポイント」を掲げた“とりまとめ案”(在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループにおける意見及び対応の方向性のとりまとめ(案))が厚生労働省事務局から提示され、WGとしての総括的質疑が行われた。
とりまとめ案には、24時間体制が困難な地域での対応の方向性や手順、小児や医療的ケア児に対する在宅医療など従前の在宅医療圏域で完結が困難な事例への対応、オンラインによる医療提供で注力すべきポイント、ICTの導入・利活用を円滑に進めるための留意事項、医療と介護の連携を通じた「適切な管理」による高齢患者等の重症化予防、発災後も患者への医療提供を途切れさせないための取り組み――などが列記されている。
委員からは、一部文章の修正や今後の施策展開上の注文などの発言があったが、全体として反対意見はなく、とりまとめは座長一任とされた。
6年を一期とする医療計画のなかで、「在宅医療」は中間年(つまり3年ごと)に見直しを行うこととされている。2027年度の改定に向けて、2026年度初頭から各都道府県で滞りなく作業に入れるように、国は今年度内に目指すべき方向、求められる医療機能、現状把握〜課題抽出〜数値目標設定〜施策立案などの留意事項を記した指針=「在宅医療指針」を発出することとしている。WGでのとりまとめ内容は、この指針に反映されることとなる(用語解説参照)。
【用語解説】
「医療計画」と「指針」
「医療計画」とは、医療法(第30条)に基づき、地域の実情に応じた医療提供体制を確保する目的で、都道府県が6年間を一期として策定する計画のこと。医療資源の地域的偏在の是正と医療施設の連携を推進するため、昭和60年の医療法改正により導入された。現在運用中の計画は2024年度〜29年度の「第8次医療計画」。
医療計画には、医療圏を設定して基準病床数が定められ、かつ、圏域ごとの医療資源や連携体制等に関する現状および課題分析と、目指すべき方向性、数値目標、実現のための施策などが記載されている。特に、地域医療の質の向上のために重点的整備が必要とされる「5疾病・6事業※および在宅医療」については、疾病・事業ごとにそれぞれの現状・目標・施策が記載されている。さらに2018年医療法改正により、「医師確保」と「外来医療」にかかる事項も計画に収載することとされ、現在に至る。
都道府県は、医療計画の改定にあたって、国の定める「基本方針」(大臣告示)や、「医療計画作成指針」(局長通知)、「疾病・事業及び在宅医療指針」(課長通知)といった“技術的助言”を参照するものとされ、国はこれらの方針・指針を「医療計画改定の前々年度末」メドで発出することが慣例となっている(それをもとに都道府県は最大1年を使って次期計画を策定する)。
医療計画の計画期間は前述のとおり6年だが、「在宅医療」「医師確保」「外来医療」の3項目に限っては中間年(つまり3年ごと)に見直しを行うルールとなっている。これら3項目に関して、国は2027年度からの「第8次医療計画(後期)」に向けて指針改定のための検討を重ねてきた。そのための会議体となったのが、「地域医療構想及び医療計画等に関する検討会」(医師確保と外来医療を担当)と、「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」(在宅医療)である。
※5疾病:@がん、A脳卒中、B心血管疾患、C糖尿病、D精神疾患
6事業:@救急、A災害、Bへき地、C周産期、D小児、E新興感染症対応
地域で連携して24時間体制、ACSCへの取り組み、地域BCPなど
WGの「とりまとめ案」の章建ては以下の通り。
@在宅医療の提供体制について
A「在宅医療において積極的役割を担う医療機関」及び「在宅医療に必要な連携を担う拠点」について
BICTの活用等を通じた多職種連携・生産性向上の取組について
C介護との連携について
D災害の発生に備えた在宅医療のあり方について
Eその他
@の「在宅医療の提供体制について」では、24時間体制が困難な地域での対応について、主治医のみに対応を委ねるのではなく、「夜間・休日における輪番制」「病院からの往診・訪問診療」「急変時の受入病床の明確化」などを通じて、地域で“面”として在宅医療の提供を支える体制を整備する必要があるとして、その手順を示している。
また、小児や医療的ケア児に対する在宅医療に関して、各圏域における提供状況を把握するよう求め、課題を有する地域がある場合は、「在宅医療の圏域にこだわらず、隣接する圏域や、二次医療圏全体での提供体制を構築することも検討しながら、各地域に対して必要な在宅医療を提供する医療機関を把握する」ことが必要だとしている。
さらに、効率的な在宅医療の提供体制を構築できるよう、「D to P with N※を含むオンライン診療」「在宅療養患者のバイタル等の遠隔モニタリング等」を推進する必要があるとしている。
※患者が看護師等といる場合のオンライン診療
Aに関しては、第8期医療計画(前期)で在宅医療圏域内に1か所以上指定するべきこととされた「在宅医療において積極的役割を担う医療機関」と「在宅医療に必要な連携を担う拠点」(=用語解説参照)について、指定すること自体が目的ではない旨を強調したうえで、有効に機能するように、
・それぞれの機関が地域で担っている役割について、定期的に把握すること
・制度の趣旨に合致しない指定の在り方を速やかに見直すこと
・連携に課題があると考えられる地域に対して関係構築の介入を行うこと
などの対応を都道府県に求めている。
Bに関しては、在宅医療にかかわる関係職種が多職種との連携強化が奏功する場面を具体的に列挙して取り組みを促すとともに、課題として「医療機関ごとに異なるICTシステムを導入しているため、薬局や訪問看護ステーションにおいて、全てのシステムに対応する必要がある」といった指摘があることを紹介し、解決策として「例えば、地域の中で導入するICTシステムの運用ルールをあらかじめ決めておく等、ICTの導入・利活用を円滑に進めるための体制整備を地域で検討していくことが必要」と例示して、対応を求めている。
Cに関しては、医療機関と介護施設等の連携体制構築や情報共有等を通じた「肺炎、尿路感染症、心不全、脱水等に対する適切な管理」によって、状態悪化を防ぐとともに、必要時には円滑な入院につなげることが重要であるとして、ACSC(Ambulatory Care-Sensitive Conditions=適切な外来診療で入院を防げる可能性のある状態)の概念にも言及したうえで、国に対して好事例の収集・周知を進めるよう促している。
Dに関しては、在宅医療には対象患者として人工呼吸器や血液透析等に係る医療機器を使用している患者なども含まれることから、「発災後も安否確認を含めた事業の継続が必要」であるとして、BCP策定の重要性を強調。また、被災によって在宅医療の提供継続が困難となった場合への備えとして、「在宅療養患者の被災状況等の把握・共有について自治体と連携する方策を検討すること」「在宅療養患者の発災時の受け入れ先について、自治体とともに予め検討すること」を求めている。
さらに、在宅医療は在宅療養患者を取り巻く様々な職種や機関等の連携で成り立っていることから、自施設のBCPのみならず関係機関を含めた地域全体のBCPが重要であるとして、第9次医療計画に向けて作成主体、記載事項、連携すべき関係者等について検討を行うものと整理している。
【用語解説】
「在宅医療において積極的役割を担う医療機関」
「積極的役割を担う医療機関」とは、@自ら24時間対応体制の在宅医療を提供するとともに、A他の医療機関の支援も行いながら、B医療や介護、障害福祉の現場での多職種連携の支援を行う医療機関のこと。各在宅医療圏域に1か所以上設置するべきものとして、現在運用中の第8次医療計画(前期)から位置づけられている。
対象となる医療機関について、「在宅療養支援診療所や在宅療養支援病院など、地域において在宅医療を担っている医療機関の中から位置づけることが想定される」と在宅医療指針に明記されているが、実際には指定を受けた機関の3割弱が訪問看護事業所や薬局など、病院・診療所以外であったことがわかっており(2025年7〜8月時点)、制度の趣旨との不整合が指摘されていた。
【用語解説】
「在宅医療に必要な連携を担う拠点」
「在宅医療に必要な連携を担う拠点」とは、対象者の年齢・属性を問わず地域内で円滑に「退院支援」「日常の療養支援」「急変時の対応」「看取り」が受けられるように、@多職種協働による包括的かつ継続的な体制構築、A人材育成、B地域住民への普及啓発、C災害時及び災害に備えた体制構築への支援――の機能・役割を果たす機関のこと。地域の実情に応じ、病院、診療所、訪問看護事業所、地域医師会等関係団体、保健所、市町村等のなかから選定して、各在宅医療圏域に1か所以上、医療計画に位置づけることとなっている。「在宅医療において積極的役割を担う医療機関」とも重複可。第8次医療計画(前期)から本格的に制度化された。
なお、類似する機能として、介護保険法の地域支援事業の一環として実施される「在宅医療・介護連携推進事業」(高齢者を主たる対象とした在宅医療と介護の連携体制構築のための取り組みを実施する事業)がある。
「在宅医療圏は市町村単位で設定するべき」との意見
以上のようなとりまとめ案を受けて、この日のWGでは特段の異論はなく、大筋で了承された。なお、交わされた議論としては、在宅医療圏の設定に関して「現状では二次医療圏を在宅医療圏として設定しているケースが最も多くみられるが、介護と在宅医療との連携に鑑みて『市町村単位』で設定するべきではないか」という意見が出されたほか、オンライン診療の活用に関して「在宅医療領域におけるオンライン診療活用は、単に訪問診療や往診の置き換えにとどまらず、D to P with Nなどを通じてタスクシェア・タスクシフトにもつながりうる。積極的に推進されるよう指針に反映していただきたい」といった意見が出された。また、患者情報の共有に関して、「圏域内にとどまらず圏域を超えても共有が可能なようにしていただきたい」という意見が出された。
この日の議論をもって、とりまとめは「座長預かり」とされた。なお、その後、一部修文された正式な報告が、2月13日付で厚生労働省のホームページに公開されている。
→「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループにおける意見及び対応の方向性のとりまとめ」(令和8年2月13日)
医療ソーシャルワーカー業務指針改訂案を了承
この日のWGでは、もう一つの議題として、「医療ソーシャルワーカー業務指針」の改訂案が厚生労働省事務局から提示された。WGのもとに「医療ソーシャルワーカー業務指針改訂プロジェクトチーム」(座長=村松圭司・千葉大学医学部附属病院次世代医療構想センター特任教授)を設置し、3回の議論を経て、“成案”として作成されたもので、業務内容として従前の個別支援に加えて「組織内/地域における役割」が加わったことへの対応、「意思決定支援」における役割の明記、用語の見直しなどが図られた。同指針の改訂は2002年以来で24年ぶりとなる。
委員からは、「医療ソーシャルワーカーの役割は多岐にわたり、その支援の幅の拡大と質の向上の両方が求められている。福祉の視点や行政との関わりが重要となるため、社会福祉士が医療ソーシャルワーカーを担うことが望ましい」「広く研修の機会が持てるように、『認定医療ソーシャルワーカー』認定制度の研修時間や研修方法を見直してはどうか」といった意見が出された。改訂案に対する異論はなく、了承された。
指針は、医政局長通知として発出される予定。
医療ソーシャルワーカー業務指針における「業務の範囲」の対照