第7回こども家庭審議会(会長:秋田喜代美・学習院大学文学部教授、東京大学名誉教授)が1月22日開催された。各分科会・部会で調査、審議されてきた内容(2025年度の実施状況や調査結果等)を踏まえ、2026年6月を目途に策定を目指す「こどもまんなか実行計画2026」に向け意見交換を行った。
策定3回目を迎えた今年度は、
特に重点的に取り組むこども政策が示された
「こどもまんなか実行計画」は、こども基本法(令和5年4月施行)に基づくこども大綱(同年12月策定)のもと、全てのこどもや若者が、心身の状況、置かれている環境等にかかわらずウェルビーイングな生活を送ることができる「こどもまんなか社会」の実現を目指すもので、幅広いこども政策の具体的な取組を一元的に示すアクションプランだ。過去2年間(2024年度・2025年度)の内容は、こども政策全てを盛り込む網羅的なボリュームとなっていたが、今年度は位置付けを変え、政府全体として特に重点的に取り組むこども政策を示す内容となる。
第19回基本政策部会(2月20日開催)で、「こどもまんなか実行計画2026」の原案作成に向けた方針(案)が出された。本記事ではこれに沿い、審議会で話し合われた内容を整理した。
切れ目のない健やかな育ちの環境の提供・教育等の推進
保育士の処遇改善やこども誰でも通園制度開始に伴う体制整備、幼保連携型認定保育園における資格併有の促進、「はじめの100か月の育ちビジョン」の普及について以下のとおり言及された(図表@)。
幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン
(はじめの100か月の育ちビジョン)
概要版
○保育士等の処遇改善は進んでいるが、養成校が相当数潰れている危機的状況だ。保育士に求められる専門性が高度化しているなかで、保育の質を保つことが重要だ。文科省がエッセンシャルワーカーを育成する養成校支援を地域人材育成支援として打ち出しているが、保育士の養成についても、地方自治体のこども施策等のなかにぜひ盛り込んでもらいたい
○こども誰でも通園制度が全国で始まる。これに伴う保育士の不足問題等、課題満載だ。処遇改善をより進め、研修を充実していかなければならない
○幼保連携型認定こども園における保育士と幼稚園教諭免許併有促進のため、養成課程での連携・統合的な仕組みをさらにつくることが大事ではないか
○「はじめの100か月の育ちビジョン」は保育士含め、こどもにかかわる専門職ですら知らないケースが多い。どう広めていくかが課題だ
貧困、ひとり親家庭、虐待、いじめ、不登校、ヤングケアラーなどの
さまざまな困難に直面するこども・若者、子育て家庭支援への推進
顕在化しにくいこれらの課題が埋もれず、支援からこぼれ落ちないためにはどうしたらよいか、方策を考え、検討していく必要性が強調された。
○ひとり親家庭や貧困家庭といった枠組みは、困難を抱える人を把握するうえではわかりやすい。ところが婚姻関係にあり世帯収入が一定程度あっても、妻が自由にそれを使えず経済的制約が生じている家庭もあり、こどもに不利益が及んでいるケースもある。こうした状況は単純な世帯収入では可視化されないため、支援の網からこぼれ落ちやすい。家庭単位や世帯単位で線引きするのでなく、こども1人ひとりの不利益や困難に着目して必要な支援が届く制度設計が必要
○新たに児童相談所職員の待遇改善に予算が盛り込まれたことは高く評価できる。それと同時に、児童福祉司、児童心理司を含む専門人材の確保、定着、育成について、自治体の人事計画を基盤に児童相談所が組織的に取り組む必要がある
○いじめや不登校などは潜在化して見えにくい。埋もれないためのアウトリーチをもっと実行していく必要がある
○ヤングケアラーもまた潜在化しやすい。自己申告による調査に加え、福祉CS(コミュニケーションサーバ)(※)等データベースや、介護や障害のある人がサービスを受けている情報、住基データ等を突合させて対象予備群を炙り出す方法も進めていきたい
○いじめとこどもの自殺に関する指標が明確に悪化しているという認識をより深め、対策を講じる手立てが重要となる
福祉CS(コミュニケーションサーバ):
分散している福祉・健康に関する情報を収集し、一元的に管理するシステムのこと。
障害児・医療的ケア児等の特性に応じたインクルージョンの推進、
社会的養護を必要とするこども・若者に対する支援
障害があったり、医療的ケアが必要であるために、こどもが等しく受けるべき体験が受けられない現状があるため、各自の特性に応じたインクルージョンを推進すべきである、また、社会的養護を必要とするこども・若者への支援が十分でないという指摘がなされた。
○病気や障害のあるこどもたちときょうだい児は、一般のこどもたちと比べ、スポーツ、芸術、文化活動の面で参加のハードルがある。体験格差解消のための機会をより多く設ける必要がある
○医療的ケアの必要なこどもを養育している親の支援も重要だ。親が心身の健康を保ち、働いてこどもを養うために、親への就労支援も含めたさらなる家族支援策が望まれる。また、成人後も親が扶養している状況を考えると、こどもが18歳になった後も切れ目のない支援が欠かせない
○特別支援学校時代は、放課後等デイサービスに通っていたこどもが、卒業後、就労継続支援事業所に通うケースが多いが、事業所は15時か16時に終了してしまうため、居場所がないという新たな課題が生じている。こどもの居場所がないために親が働き方を変えなければならず、経済的にも厳しくなっている現状を打開することが重要である
○障害児や医療的ケア児を育てながら働いている親への両立支援制度の促進と定着を、さらに進めていきたい
○社会的養護を卒業したこどもに対するアフターケアが足りておらず、施設を出た後に親とのかかわりがうまくできないケースも多い。アフターケア専門の職員を施設に配置するなどの施策も必要だ
○乳児院や児童養護施設、母子生活支援施設等が、地域子育て支援分野のスタッフを維持するためのインセンティブが必要
○こども家庭ソーシャルワーカー(※)について、まだ全国的に周知されておらず資格取得者も伸び悩んでいる現状に対し、具体的な方策が望まれる
こども家庭ソーシャルワーカー:
世帯の在り様やこどもをめぐる環境が複雑・多様化する中で、こども家庭福祉分野にかかわる相談援助職の資質向上を図るため、「ソーシャルワークの基礎」と「こども家庭福祉分野の専門性」を担保する趣旨で、令和4年児童福祉法改正に基づき、令和6年4月に創設された認定資格。一定の実務経験のある有資格者や現任者が、国の基準を満たす認定機関が認定した研修等を経て、取得できる。
結婚・出産・子育ての希望をかなえる少子化対策の推進
少子化対策推進の鍵として、妊婦健診の自己負担額や妊婦健診の費用など、低所得層の若者にとってハードルが高い点が挙げられ、負担軽減や無償化などの解決策が求められた。
○妊婦健診は自治体からの費用助成があるが、多くの妊婦の場合、助成金の範囲内に収まらず、自己負担が生じている。できるだけ経済的負担を求めないような体制整備が必要だ
○病院における妊婦健診の内容や費用について、さらに見える化を進めてほしい
○妊娠の確定診断に補助金が使えない現状がある。費用負担の軽減、できれば無償化を目指してもらいたい
若い世代の生きづらさを解消していく若者政策の推進
若い世代が、自分たちに役立つ制度の存在を理解しておらず、アクセスにつながっていない。生きづらさの解消方法を得られない若者たちへ向けた居場所づくりの大切さがさらに指摘された。
○若者自身がどんな支援が受けられるかを理解していない。大学に入り、社会人になっていずれ結婚、出産した場合に受けられる支援内容を知らないケースも多い。自分たちにはどういう権利があって、社会から応援してもらえるか、知るための場づくりが重要となる
○プレコンセプションケア(※)について長期にわたる総合的施策を行うのは、こども家庭庁がもっとも適している。包括的な性教育をきちんと行い、知識をきちんと持ったうえで妊娠、分娩に至るプロセスのベースをきちんとつくっていくことが重要だ
○中高生以降、大学生や青年期後期までを含め20?30代の若者の居場所がないのが問題。就職で困ったり、人間関係がこじれたり、学生生活で悩んだときの場づくりが大切。特に大学生や社会人の場合、広域的な支援が必要になる
○一方で居場所に行かない若者の意思も尊重しつつ、必要な施策を講じることも必要だ
プレコンセプションケア:
性や妊娠に関する正しい知識を身に付け、健康管理を行うよう促すことを指す。こどもを持ちたい人もそうでない人も、若いうちからの取り組みが大切である。
官民連携の取り組みの推進
子育てとの両立をきちんと行っていくために労働環境を整備することが、企業としての成熟度につながり、人材定着にもつながる。また、病児保育の利用しづらさに関しても指摘があった。
○企業がこどものためにできる最大の努力は、親の帰宅時間を早めること。そうすれば両立も楽に行えるはず
○地域に密着した企業が今後、子育て支援や若者支援のために何ができるのか、具体的なガイドラインを作成していくことが求められる
○病児保育の予約受付時間はたいてい当日の朝9時までだが、それまでに診断書を受領することは難しく、恩恵にあずかりにくい現状を知って改善してほしい
○障害児や医療的ケア児に関しては、来年度予算に盛り込まれている企業主導型保育・ベビーシッター利用者支援事業におけるベビーシッター券の補助を、成人するまで期間を広げてほしい
いまを生きるこどもの安心・安全の確保、こどもの権利擁護
性暴力について、声をあげにくい現実に目を向けた対策がさらに望まれる。さらに虐待防止の観点からショートステイ制度をもっと周知・充実させていく必要性が述べられた。
○今年12月より施行予定の「こども性暴力防止法」において、性暴力は個人の問題でなく、構造的に防ぐべき社会的リスクとして捉えた点、被害者の支援を点ではなく回復のプロセスとして捉えた点は大きく評価できる。ただ、虐待の中では最も発見されづらく声が上がりにくい側面があるので、ワンストップで性被害を止めていこうという仕組みがさらに求められる
○ショートステイ利用に関しては、利用料の負担が発生し、それが大きなハードルになっている。利用料の負担軽減や無償化等、改善していく必要がある
○こどもの安心・安全に防災の視点がないので、こどもの居場所の中に防災計画を入れてほしい
こどもの意見反映・社会参画、こども政策の基盤となる取り組みの推進
こどもまんなか社会を実現するにあたって、何よりも大切なことは、こどもや若者の意見を大切にすること。「こども若者★いけんぷらす」という取り組みも発足しており、継続的により多くの意見を吸い上げ、こども政策の根幹とすべきとした(図表A)。
○「こどもの意見聴取の機会」ということで、全てのこどもを対象とした意見聴取の仕組み(対象、方法、反映)を構築し、自治体レベルでもきめ細やかに実施できるよう、市民団体等と連携しながら進めていきたい
こども若者☆いけんぷらす(こども・若者意見反映推進事
業)概要資料
これら意見を参考にしつつ、「こどもまんなか実行計画2026」6月策定に向け、さらなる検討が深められていく予定だ。