厚生労働省の社会保障審議会医療部会(部会長=遠藤久夫・学習院大学長)の第124回会合が2026年1月26日に開催され、改正医療法等の4月からの一部施行に向けて、「オンライン診療」の見直しにかかる省令事項等について議論が交わされた。
今般の医療法改正では、長らく解釈運用によって認められていたオンライン診療が、初めて医療法上の“定義”を得て(第2条の2)、基準が法定化され(第14条の3および第14条の4)、届出義務や指導・立入検査、是正命令、業務停止・閉鎖命令を含めた規律が整備されることになる(第8条、第24条の2、第25条、第29条)。また、公民館・郵便局・駅など人の集まる場所に医師非常駐の“オンライン診療専用スペース”を開設したり、専用車両を巡回させたりすることが、医療法上の事業として認められるようになる(=「オンライン診療受診施設」:略称は「オン診施設」)。それらの細部は省令・通知等で規定する設計となっていることから、施行に向けて、省令・通知等として「定めるべき内容」や「考え方・方向性」を厚生労働省事務局として整理し、この日の部会に議題に据えて、審議を求めた(図表@)。
資料1「オンライン診療について」p3
部会では広範な議論が展開されたが(後述)、結論としては、それぞれの意見の趣旨を適宜反映しながら省令および通知等の改正を行うことを前提に、厚生労働省案は了承された。
なお、部会の議論が反映された省令改正は4月1日付で施行され、その改正のポイントは3月27日付発出の医政局長通知=医政発0327第5号「医療法等の一部を改正する法律の一部の施行等について(オンライン診療関係)」に詳述されている。
※同通知中の別添3「チェックリスト」はこちら
→(医療機関向け)基準等遵守の確認をするためのチェックリスト
→(医療機関向け)患者に対して説明すべき内容のチェックリスト
→(オンライン診療受診施設向け)基準等遵守の確認をするためのチェックリスト
→(国民患者向け)基準等遵守の確認をするためのチェックリスト
「適切なオンライン診療」が提供されるよう“可視化”
この日、事務局が部会に示した「改正法の施行に向けて、政省令等で定める必要がある事項」は次のとおり。
(1)オンライン診療を実施する医療機関の届出
(2)オンライン診療受診施設の設置に係る届出等
(3)広告規制等
(4)オンライン診療基準、オンライン診療指針等
(5)医療機関の管理者の措置/オンライン診療受診施設の公表
(6)法令違反等への対応
(7)オンライン診療受診施設の利用に係る費用
(1)は、オンライン診療を実施する病院や診療所に対して、所在地の都道府県に「オンライン診療を実施している旨」の届出義務を課すもの(ただし、施行日(2026年4月1日)時点で既にオンライン診療を実施している医療機関は、2027年3月末までに届出すればよい)。
(2)は、新たに創設される“オンライン診療を受けるための専用の場”(オンライン診療受診施設)について、設置要件や設置時の届出事項を示すもの(診療所と比べて、簡素な要件・手続等で設置できるようになっている)。
(3)は、「オンライン診療」および「オンライン診療受診施設」を広告規制のなかに組み込み、「広告を行ってよい事項」を限定的に示すものとなっている。ただし、前提として、オンライン診療受診施設が「医療を提供するものではない」(オンラインでつながった医療機関こそが医療を提供する主体である)ことを、医療を受ける者が理解できる方法で明示しなければならないものとしている。
(4)は、現行で医政局長通知として発出されている「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(オンライン診療指針)のなかから、「最低限順守する事項」として規定されている内容をベースに、“強制力”を伴う厚生労働省令(医療法施行規則)としての規定を新設するもの(「オンライン診療を行う医療機関の施設/設備・人員」「患者がオンライン診療を受ける場所」「患者に対する説明」「患者急変時の体制確保」「その他に関する事項」などが規定される)。
(5)では、オンライン診療基準への適合が担保されるように、オンライン診療を行う医師の勤務先である「医療機関の管理者」や「オンライン診療受診施設の設置者」が講ずるべき措置を定めている。(医療機関の管理者が講ずるべき措置:担当医の知識・技術習得、提携するオンライン診療受診施設の基準適合状況の確認/確認できなかった場合の診療中止その他の措置)、
(オンライン診療受診施設設置者が公表するべき事項:「清潔かつ安全」「物理的に外部から隔離された空間」「情報セキュリティの確保」の基準に適合している旨をウェブサイトへの掲載等で公表)
(6)では、法令違反や運営が著しく適正を欠く(疑いがある)と認める場合の指導・立入検査の進め方に言及。オンライン診療を行う医療機関側の問題か、“場”(オンライン診療受診施設)の側の問題か、その両方かを切り分けたうえで、「原則、施設が所在する都道府県等が指導・立入検査等を行う」ものとしつつ、都道府県をまたいで実施されているオンライン診療については、都道府県間での連携が必要であるとした。
(7)は、オンライン診療受診施設が“受診場所を提供する対価”を、医療機関に対して請求するケースもあれば、利用患者に請求するケースも考えられる(様々な形態が想定される)として、いずれにしても適切な費用負担・額とし、患者にわかりやすく示すことを求めている。
厚生労働省の森光敬子医政局長は、これら一連の規制について、趣旨をこう説明した。
「今後の医療提供体制を考えるうえで、オンライン診療は重要。しかし、オンライン診療は現在、誰がどこでやっているのかが全く見えず、不適切な医療が行われている可能性があるものも散見される。そこで今般、医療法のなかに位置づけて、指針を基準に引き上げ、誰がどのような診療を行っているのかを行政として把握でき、不適切な場合には指導できる枠組みを設けることで、きちんとしたオンライン診療をご提供いただける環境を整えたい」
こうした方向性について、部会では「法律上にオンライン診療を定義したうえで、オンライン診療を行う医療機関を届出制とし、オンライン診療受診施設を明確化することで、無秩序に広がってしまうことへの抑えが効いたものと評価できる。通知レベルであった指針の、『最低限遵守すべき事項』が省令に規定されることで、都道府県あるいは保健所設置市に立入検査等の権限が備わったことも、評価できる」といった肯定的な受け止めが示されるとともに、「オンライン診療を適切に活用することで、医師不足の地域など、よりよい医療につなげられる可能性もある。法制上の位置づけを明確化し、適切に推進していくことは必要」など、医療提供体制の維持に向けた対応策として期待を寄せる意見が出された。
医療の「非営利原則」は維持されるのか?
予想もしないビジネスモデル、監視体制に万全を
一方で、懸念や注文が相次いだのが、新たに創設される「オンライン診療受診施設」である。そもそもオンライン診療受診施設をめぐっては、医療の非営利性を担保する“砦”となっていた「医療法第7条第7項」の対象外とされ、事実上、営利法人も自由に参入できる建付けとなっている。
参考:医療法第7条第7項
営利を目的として、病院、診療所又は助産所を開設しようとする者に対しては、第4項の規定にかかわらず、第1項の許可を与えないことができる。
加えて、この日に部会に示された事務局案では、設置者に「医療従事者であること」を求めず、設置者や責任者の常駐・専任も求めず(ただし連絡先を掲示して速やかに対応できる体制は必須)、以下5項目を届出することで設置可能とする方針が示された(それでも施設の類型としては、「医療提供施設」であるとの整理(上記図表@参照))。
@設置者の住所・氏名(あるいは法人名・主たる事務所所在地)、
A名称、設置場所(車両の場合には普段の駐車場所と巡回予定地区を想定)
B敷地の面積・平面図、建物の構造概要・平面図
C法人の場合には定款等
D設置年月日
届出事項のなかに、「連携する医療機関名」は含まれておらず、そのかわり通知において「患者の選択に資するため、連携医療機関の名称等を公表することが望ましい」と明示する、というのが厚生労働省事務局の説明であった(図表A)。
出典:資料1「オンライン診療について」,6P
こうした提案に対して部会では、まず営利企業が参入できる在り方に対して、「オンライン診療受診施設への営利企業の参入によって、今まで非営利性を堅持してきた医療提供体制全体に大きな影響が及ぶのではないか。何らかの制限が必要ではないか」との懸念が示され、厚生労働省に対して「今回、オンライン診療施設に営利企業の参入を認めることで、我々医療関係者が100年以上にわたって続けてきた“非営利の聖域”が崩れることになる。この事実に対してどう考えるのか?」と認識を問う質問も出された。これに対して厚生労働省事務局は「オンライン診療を提供する医療機関については、引き続き営利を目的としてはならないということになっているので、『非営利の原則』は維持されているものと考える。著しく不適切な運営がある場合、また、法令違反がある場合は、都道府県が立入検査をし、是正・勧告をしていくことになる」と回答した。
部会では、オンライン診療受診施設へのチェック体制を問う声も相次いだ。
●オンライン診療受診施設が営利目的で運営されることで、医療本体にまで疑義が起きることのないよう、チェック体制を万全に敷いて、国民に説明できる状況を担保していただきたい。
●今後、現時点では全く想定していないような様々なビジネスモデルが出てくることが想定される。監督する現場の負担は多大なものになるものと思われる。必要に応じて、指導・立入検査をはじめ適切な法執行が行われるように、体制強化への配慮が必要ではないか。
●指針が現場で遵守されているかの判断はどう行うのか?現在も、病院に対する監視体制に比べて、診療所は監視にあたる人員がいないということで、ほとんどなし崩しになっている。こうした状況のなかで、適切に運用される監視体制が構築できるのか?
これに対して厚生労働省事務局は「診療所は病院と違って、必ずしも全て1年の中で監視・立入検査ができているわけではない、今後、オンライン診療受診施設の実態も踏まえながら、都道府県とよく意見交換をして対応していきたい」とコメントした。
オンライン診療受診施設=“医療を行わない「医療提供施設」”
連携医療機関名、強制力なくとも「当たり前に公表を」
「医療を提供するものではない」と位置づけられているはずのオンライン診療受診施設が、「医療提供施設」として分類されていることへの疑義も呈された。これに対して、厚生労働省事務局は「オンライン診療受診施設自体が医療を行うわけではないが、『医療が提供されてくる場所』ではあるので、医療法上は“医療提供施設”として位置づけることとしている」と補足説明し、理解を求めた。それでも委員からは、「国民には難解」であるとして、わかりやすい説明を求める声が上がった。
また、オンライン診療受診施設の届出事項に「連携医療機関の名称」が含まれず、公表するかしないかが事業者の裁量に委ねられる建付けとなっていることについて、委員からは「責任ある運営のためにも、患者にとっての安心のためにも、連携医療機関名は最低限、届出がなされるべき項目ではないか?」と疑義が提起された。
これに対して厚生労働省事務局は「連携先医療機関が多数に上るオンライン診療受診施設も出てきて、それなりの頻度で医療機関が入れ替わることも想定される。そのたびに網羅的に連携医療機関を都道府県知事に届出するのでは事務が煩雑になるため、網羅的な届出事項にはせず、『名称公表が望ましい』という位置づけとした」と、理由を説明している。
ただ、この“望ましい”という表現に対しても、部会では「“望ましい”ではなく、義務づけとするべきではないか?」「規制によらずとも、当たり前のこととして連携医療機関名の公表がなされるよう、設置者に徹底していただきたい」といった注文が相次いだ。
これに対して厚生労働省事務局は「現在のところ『望ましい』としてあるが、通知の文言は工夫したい。可能な限り、すべての受診施設で公表していただけるような形で考えたい」と応じた。
このほか、オンライン診療受診施設に求められる「衛生・安全性、プライバシー、セキュリティー」といった条件が担保されるようにガイドラインによる定めを求める意見や、各施設が「チェックリスト」を用いて定期的に自己評価のうえ公表する仕組みの提案、オンライン診療受診施設のスタッフによって実施可能な行為/実施不可の行為の明示を求める意見、オンライン診療全般で「D to P with N」のケースにおいて看護師に求められる業務の整理や研修体制の拡充を求める意見などが出された。
参考:用語解説「D to P with N」
患者の同意の下、オンライン診療時に、患者は看護師等が側にいる状態で診療を受け、医師は診療の補助行為をその場で看護師等に指示することで、薬剤の処方にとどまらない治療行為等が看護師等を介して可能となるもの。