令和9年3月公布予定の「3要領・指針」改定に向け、見直しの方向性を示すとりまとめ案が令和8年5月29日に示された。今改定は平成29年改定以来、10年ぶりに行われるもので、同会議は文部科学省、こども家庭庁合同で昨年11月より検討を重ねてきた。改定の骨子となるとりまとめ内容について、各委員による建設的議論が交わされた。
改定の柱として、資質・能力の育成に向けた
「遊びの深まり」の実現を盛り込む
「3要領・指針」と呼ばれる現行の「幼稚園教育要領」(学校教育法)、「保育所保育指針」(児童福祉法)、「幼保連携型こども園教育・保育要領」(就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律に基づく告示)と「小学校学習指導要領」には、育みたい資質・能力が系統的に示され、幼児教育と小学校教育の円滑な接続が明記されている。
それらの成果と課題を踏まえたうえで、今回の取りまとめ案では、改定の方向性の柱となる、「遊びの深まり」という文言を新たに盛り込んだ。幼児教育の質を向上するには、幼児教育にとっての「学び」である「遊び」のプロセスが資質・能力の育成に結びつくとし、「遊びの深まり」を実現することが不可欠だと記した。
そのためには、0歳から18歳までの「学び」を見通して、「学び」の連続性・一貫性を図るために必要な見直しを行う必要性がある。さらに言葉を用いて考える力、他者とかかわり協働する力、遊びのなかで多様な動きを行う体験の充実と身体感覚を育成することが重要であると示した。
指導・評価や養護における改善点
特別な配慮を必要とする乳幼児への指導にも言及
指導・評価については、施設類型にかかわらずすべての幼稚園・保育所・認定こども園において改善が図られるように、乳幼児理解に基づいた保育の評価が行われ、乳幼児の姿から、遊びの中の「学び」を見取る視点を持つことの重要性に触れられている。
また、保育所・認定こども園における養護の重要性を明確にするために、その位置づけや記載内容の整理が求められた。
特別な配慮を必要とする乳幼児に対して、「基礎的環境整備の充実」を促すとともに、「合理的配慮」が確実に行われるよう規定した。また外国人の乳幼児については、日常的なかかわりや言葉がけにおいて「日本語の力を育む視点」をもったうえで、それぞれのこどもの実態に合った指導を工夫するよう示唆した。
さらに、前回改定に引き続き幼児教育と小学校教育の円滑な接続の在り方、家庭や地域との連携支援の在り方についても言及している。
資料3 幼児教育WG・保育専門委員会 取りまとめ(案)p13.
各委員からの意見・検討事項は以下の通り。
@資質・能力の育成に向けた「遊びの深まり」について
○イベント的な遊びやその日限りの遊びのように、単発に活動して終わりとするのではなく、経験がつながって活動が発展するといった、遊びのサイクルが重要だ
○乳幼児の遊びの中で学びを見取る力を持つことは非常に重要であるが難しく、教育者における高い専門性の1つと考えられる。これを磨き続けていくことが今後いっそう求められる
○遊びの深まりの実現に向けて、各関係者が丁寧な対話を行うことも重要に
〇遊びというのはプロジェクト型保育で行うという話ではなく、日々の遊びが積み重なり、深まっていくという視点をもつことが必要
〇また、「遊びの深まり」に関して、事例集等で具体例を示し、「遊びの深まり」とは一体何なのかということをわかるようにすることが大切
〇乳幼児にとっての「学び」である「遊び」という部分に、「学び」イコール「遊び」ではなくて、「幼児自身の興味や関心に基づく自発的な」という文言等を補足して、教員主導のものとかではないようなことが必要
○こどもたちそれぞれの遊びの点と点がつながって面になるというイメージ。それが自ずと深まっていくことが重要だと考える。そして遊びの深まりこそが、豊かな学びにつながる。そのことをとりまとめの中で示したい
○遊びの深まりという視点から、さまざまなことを整理し、改めて見直すと理解・納得できることが多い。今回の小学校以降の学習指導要領の改定のキーワードにもなっている「好きを育み」というところにもつながる
○遊びの深まりから深い学びへつながるということを、小学校1年生の教師が理解する必要がある
【用語解説】プロジェクト型保育
プロジェクト型保育とは、こどもたちの日常の興味や「なぜ?」という疑問を起点に、みんなで調べ、体験し、学びを深める探究型の保育手法のこと。指示待ちではなく、自ら考え、行動する主体性や協同性を育む。
A指導・評価における改善点
○幼児教育、保育における評価とは、こどもに対して行うことではなく、保育がどうだったかを振り返ること、自らの保育を評価するという点を押さえておきたい
B養護の位置付けについて
○育ちのプロセスを踏まえて示されていくことが重要になる
C特別な配慮を必要とする乳幼児について
○多様性の包摂という概念を乳幼児期にどのように具現化していくのかという視点からの議論が、少々足りなかったと感じる
○とりまとめを読むと、あたかも特別な配慮が必要なこどもがいないことが普通で、いることは普通でないと理解される恐れがある。特別な配慮を必要とするこどもが園に在籍することは当たり前であることを前提に、経営や保育を考えていくことが重要であることを、盛り込んでいきたい
○あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働するといった文言をしっかり入れ込んでいきたい
D地域との連携支援について
○幼児教育施設の役割は、毎日、顔が見える関係のなかでこどもと接し、様子を見ることができる点が非常に大きい。虐待予防の観点からも重要だ
○園に最も近い市区町村が主体的な役割を果たし、都道府県がバックアップしていく体制が必要
○「3要領・指針」を正しく、丁寧に伝えていくのが幼児教育センターの役割。地域の実情に合わせて幼児教育センターの設置が進んでいくことを願う
今後も合同で審議を進め、令和9年3月の「3要領・指針」改定に向けて、検討が重ねられていく予定だ。