【今回の障害者部会のポイント】
・令和8年度障害福祉サービス等報酬改定の内容を報告
・処遇改善加算の拡充と、臨時応急的な報酬見直しを説明
・中山間・人口減少地域への対応、身寄りのない障害者への相談支援を制度改正法案に盛り込む
・人材確保、就労支援の適正化、地域生活支援の質の確保などに委員から意見
障害保健福祉施策の動向を報告
令和8年度報酬改定などを説明
厚生労働省は令和8年4月24日、第155回社会保障審議会障害者部会(部会長:駒村康平・慶應義塾大学経済学部教授)を開催した。議題は、障害保健福祉施策の動向について。
会議では、事務局から、令和8年度障害福祉サービス等報酬改定、障害者総合支援法に関係する改正法案、第3期アルコール健康障害対策推進基本計画、障害保健福祉施策をめぐる状況について報告があり、その後、委員から意見が出された。本記事では令和8年度障害福祉サービス等報酬改定と障害者総合支援に関する制度改正法案、障害福祉施策をめぐる状況の3点についてまとめる。
処遇改善加算を拡充
臨時応急的な報酬見直しも実施
令和8年度障害福祉サービス等報酬改定では、処遇改善加算の拡充と臨時応急的な見直しが柱となる。改定事項は2月の障害福祉サービス等報酬改定検討チームで取りまとめられ、3月末に告示された。
処遇改善加算は、相談支援関係職員、サービス管理責任者、事務員、リハビリ職、調理員などを含め、すべての障害福祉従事者に対象を広げる。幅広く月1万円、率にして3.3%分の賃上げを実現するための措置で、令和8年6月に施行。生産性向上等に取り組む事業者への上乗せ措置や、計画相談支援、障害児相談支援、地域相談支援への処遇改善加算も新設する。
臨時応急的な見直しでは、就労移行支援体制加算について、一事業所で算定できる年間就職者数に定員数までの上限を設け、令和8年4月に施行。就労継続支援B型の基本報酬区分の基準見直しは、同年6月に施行される。就労継続支援B型、共同生活援助、児童発達支援、放課後等デイサービスの新規事業所を対象とする応急的な報酬単価の特例も、同年6月に施行。
制度改正法案も報告
人口減少地域と身寄りのない人への対応を強化
事務局は、障害者総合支援法関係の改正法案についても報告した。人口減少や担い手不足に対応し、質の高い福祉サービスの確保と安定した経営基盤の確立をめざす内容である。
障害福祉分野では、小規模市町村における分野横断的な相談支援や地域づくりの実施を促す事業を新設する。また、中山間・人口減少地域で柔軟にサービス基盤を維持できるよう、配置基準の弾力化や包括的な評価を可能とする特定地域サービスの創設も盛り込まれた。
さらに、頼れる身寄りがない障害者について、障害者相談支援事業の対象として明確化する。福祉人材の確保や生産性向上等を進めるため、都道府県単位の協議会設置に関する規定も盛り込まれた。
障害福祉施策をめぐる状況も提示
予算増と人材確保が課題に
障害福祉サービスの関係予算額は、平成25年度の0.9兆円から令和8年度には約2.3兆円へと2倍以上に増加した。利用者数や事業所数も増えており、特に障害児や精神障害者の利用の伸びが大きい。サービスの充実が進む一方、制度の持続可能性やサービスの質の確保が課題となる。
人材確保も引き続き大きな課題である。処遇改善により全産業との平均賃金差は縮小しているものの、なお差は残る。有効求人倍率も全職種より高い水準で推移している。
委員からも今後の対応に意見
処遇改善、質の担保、地域生活支援が焦点に
質疑では、報酬改定や制度改正案、今後の障害保健福祉施策をめぐり、意見が出された。
○処遇改善については、全産業との賃金格差がなお大きく、障害福祉分野の人材確保は極めて厳しいとして、抜本的な処遇改善を求める意見が相次いだ。
○臨時応急的な報酬見直しについては、不適切な運営を行う事業者への対応は必要としつつ、適切に運営している事業所に一律の影響が及ばないよう、慎重な検討を求める意見が出された。
○就労支援については、在宅利用の実態把握、不適切な事業者への対応、就労移行支援の再利用に関する自治体間の運用差、就労継続支援の対象者像の再整理などが論点となった。
○相談支援や地域生活支援については、利用者の意思を起点に、複数のサービスを生活としてつなぐ役割の重要性が指摘された。支援の量を増やすだけでなく、こども期から成人期までの一貫した支援や、意思決定支援、権利擁護の充実を求める意見もあった。
地域で暮らし続けるために
支援の量と質をどう確保するか
今回の部会では、令和8年度報酬改定や制度改正法案の報告を通じて、障害保健福祉施策をめぐる課題が改めて示された。
障害福祉サービスは量的に拡充してきた。一方で、人材不足、事業運営の持続可能性、サービスの適正な運営、地域差、相談支援の充実、障害特性に応じた支援の質の確保など、論点は複雑化している。今後は、本人の意思を中心に据えながら、地域で暮らし続けるための支援基盤を維持・強化していくことが、社会福祉法人等の運営においても重要となる。