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福祉医療分野の制度・施策動向ウォッチ
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2026年08月10日

【厚生労働省】第211回社会保障審議会医療保険部会(令和8年3月19日開催)

健康保険法等改正案を報告
OTC類似薬、金融所得、出産支援、高額療養費などが論点に

【今回の医療保険部会のポイント】
・OTC類似薬について「一部保険外療養」を創設し、薬剤費の一部を保険給付の対象外とする方針
・後期高齢者医療制度で、上場株式の配当等の金融所得を保険料や窓口負担割合に反映
・出産育児一時金に代わる新たな給付方式を導入し、標準的な出産費用の自己負担軽減を図る
・高額療養費制度では、長期療養者の家計への影響を考慮事項として法律上明確化
・医療機関の業務効率化・勤務環境改善を地域医療介護総合確保基金で支援

【今回の医療保険部会のポイント】

・OTC類似薬について「一部保険外療養」を創設し、薬剤費の一部を保険給付の対象外とする方針

・後期高齢者医療制度で、上場株式の配当等の金融所得を保険料や窓口負担割合に反映

・出産育児一時金に代わる新たな給付方式を導入し、標準的な出産費用の自己負担軽減を図る

・高額療養費制度では、長期療養者の家計への影響を考慮事項として法律上明確化

・医療機関の業務効率化・勤務環境改善を地域医療介護総合確保基金で支援

医療保険制度改革の法案を報告

 厚生労働省は、令和8年3月19日に第211回社会保障審議会医療保険部会(部会長:田辺国昭・東京大学大学院教授)を開催し、「健康保険法等の一部を改正する法律案について」を報告した。

健康保険法等の一部を改正する法律案について

【資料1】「健康保険法等の一部を改正する法律案について」2頁 p7

 法案は、医療保険制度の持続可能性を確保しつつ、現役世代を中心とした保険料負担の上昇を抑えることを目的に、給付と負担の見直しを行うもの。OTC類似薬の保険給付の見直し、後期高齢者医療制度における金融所得の勘案、妊娠・出産支援の強化、国民健康保険制度の見直し、高額療養費制度の考慮事項の明確化、医療機関の業務効率化・勤務環境改善支援など、幅広い改正項目が盛り込まれている。

 部会では、制度の公平性や持続可能性を評価する意見が出る一方、患者負担の増加、自治体や保険者の事務負担、妊婦や医療機関への影響、長期療養者への配慮などをめぐり、慎重な制度設計を求める声も相次いだ。

OTC類似薬※に「一部保険外療養」を創設

 大きな論点の一つが、OTC医薬品との代替性が高い医療用医薬品の取扱いである。厚生労働省は、医療用医薬品の給付を受ける患者と、OTC医薬品で対応している患者との公平性、現役世代を中心とした保険料負担上昇の抑制を理由に、新たに「一部保険外療養」を創設する方針を示した。

 対象は77成分、約1100品目を想定。鼻炎、胃痛・胸やけ、便秘、解熱・痛み止め、風邪症状、腰痛・肩こり、水虫、口内炎、皮膚のかゆみ・乾燥肌などに対応する薬剤が含まれる。特別の料金は対象薬剤の薬剤費の4分の1とされ、令和9年3月の施行を想定している。

 委員からは、制度の着実な施行を求める意見が出る一方、患者負担増への理解を得るため、対象薬剤を選ぶ理由や負担を求める根拠を、丁寧に説明すべきとの指摘もあった。高齢者や慢性疾患の患者では服薬管理が複雑になりやすく、安全性や受診行動への影響に十分配慮する必要があるとの意見も示された。


※OTC類似薬
医師が処方する医療用医薬品でありながら、薬局等で買える「OTC医薬品」と同等または類似の成分・効能を持つ薬です。どちらも軽度な症状に使われ、互いに代替可能な関係にあります。

後期高齢者医療で金融所得を反映

 後期高齢者医療制度では、上場株式の配当などの金融所得を保険料や窓口負担割合に反映する仕組みが盛り込まれた。現在は、金融所得を確定申告した場合は市町村が把握できる一方、源泉徴収のみで確定申告しない場合は把握できず、保険料や窓口負担割合への反映に差が生じている。

 法案では、金融機関等が税務署に提出している法定調書の情報を活用し、上場株式の配当等を後期高齢者医療制度の保険料算定や窓口負担割合の判定に反映する。施行は公布後5年以内とされ、法定調書データベースの構築や自治体システムの改修、金融機関でのマイナンバー付番などが必要になる。

 委員からは、負担能力に応じた負担を進める方向性を評価する声がある一方、後期高齢者だけを対象にすることへの疑問も示された。国保や被用者保険にも同様の課題があるとして、医療保険制度全体で公平性を検討すべきとの意見が出た。また、給付付き税額控除など、今後の税・社会保障制度の議論と整合性を取る必要性も指摘された。

出産支援は新たな給付方式へ

 妊娠・出産に対する支援では、出産育児一時金に代わる新たな給付方式を導入する。出産費用が年々上昇するなか、現行の現金給付では、支給額を引き上げても妊婦の負担軽減につながりにくいとして、保険診療以外の分娩対応について、国が分娩1件当たりの基本単価を定め、保険者から医療機関へ直接支払う仕組みとする。

 標準的な出産費用について妊婦の自己負担が生じないようにする一方、体制や役割に応じた加算も設定する。すべての妊婦に対する定額の現金給付も一部残し、施設が提供するサービス内容や費用に関する情報提供を義務付ける。妊婦健診についても、標準額の設定や見える化を進める。

 ただし、施設の選択により、当分の間、施設単位で現行の出産育児一時金制度を適用できる経過措置も設けられる。これに対して委員からは、妊婦にとって制度が分かりにくくなる、地域や施設による不公平につながるとして、移行期間は時限的なものとし、できるだけ速やかに新制度へ移行すべきとの意見が相次いだ。一方で、地域の周産期医療提供体制、とくに一次分娩施設の維持に配慮する必要があるとの指摘もあった。

高額療養費は長期療養者への配慮を明確化

 高額療養費制度については、支給要件などを政令で定める際に、長期療養者の家計への影響を適切に考慮することを法律上明確化する。

 背景には、高額療養費の支給額が、医療費全体を上回るペースで増えていることがある。厚生労働省は、制度を将来にわたって維持するには、医療保険制度改革全体の中で検討する必要があるとしたうえで、毎月治療を受ける長期療養者の家計への影響に配慮する考えを示した。

 委員からは、長期療養者の生活への影響を丁寧に把握し、慎重に議論を進めるべきとの意見が出た。また、レセプトデータと所得データを結び付けるなど、重い病気にかかった人の所得や医療支出、健康状態の変化を追えるデータ整備の必要性も指摘された。

医療機関の業務効率化も支援対象に

 医療機関の業務効率化・勤務環境改善に対しては、地域医療介護総合確保基金に新たな事業区分を設け、継続的に支援する。2040年に向け、医療従事者を安定的に確保し、質が高く効率的な医療提供体制を構築することが目的である。

 具体的には、業務効率化や勤務環境改善に積極的・計画的に取り組む病院を厚生労働大臣が認定する仕組みを設ける。都道府県の医療勤務環境改善支援センターについても、労務管理だけでなく、業務効率化に関する助言・指導を行うよう機能を強化する。医療法上の管理者責務、健康保険法上の保険医療機関の責務として、業務効率化・勤務環境改善に努めることも明確化する。

 委員からは、DX化には導入時の費用だけでなく、システムを使い続けるランニングコストもかかるとして、その支援を求める意見があった。

「公平性」と「納得感」をどう示すか

 今回の法案は、OTC類似薬、金融所得、出産費用、高額療養費、国保、協会けんぽなど、医療保険制度の幅広い領域に及ぶ。共通するキーワードは「公平性」と「持続可能性」である。

 一方で、患者負担の増加、自治体や保険者のシステム対応、妊婦や医療機関への影響、長期療養者への配慮など、実施に向けた課題も多い。部会では、国民に分かりやすく説明し、制度への信頼や納得感を高める広報の重要性も指摘された。


 法案の施行時期は項目ごとに異なる。OTC類似薬に関する一部保険外療養は公布後1年以内、金融所得の勘案は公布後5年以内、妊娠・出産支援は公布後2年以内、高額療養費制度の考慮事項明確化は令和8年8月1日とされている。


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