第257回介護給付費分科会(分科会長:岩村正彦・東京大学名誉教授)が5月25日に開催され、令和9年度介護報酬改定に向けたサービス別の議論が本格的にスタートした。この日は小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)3つの地域密着型サービスについて検討がなされた。
小規模多機能型居宅介護
小規模多機能型居宅介護は平成18(2006)年の創設以来、「通い」を中心として利用者の状態や希望に応じ、随時「訪問」や「泊まり」を組み合わせたサービスを提供し、住み慣れた在宅での生活を利用者が継続するための支援を行ってきた。認知症高齢者や独居高齢者にこのような柔軟なサービスを提供することで、たとえ中重度になっても施設という選択肢だけでなく、地域で暮らすための重要な受け皿となるべく期待値は高い。次期報酬改定においては適切な評価のあり方と普及に向けた検討が望まれる。
現状として、請求事業所数は従来ほぼ横ばいで推移しているが、直近3年は連続減少、受給者も令和3年をピークに減少している。収支差率は令和6年度、6.0%であった。利用者の状況は、要介護3?4が42.9%で、平均要介護度は2.4。世帯構成は独居が46%、日常生活自立度V以上の認知症高齢者の割合は約37%である。
事業運営において、人材確保や利用者確保が課題となっている。
報酬改定における論点としては、「1サービス提供体制の確保」「2中重度になっても在宅生活を支えるための小規模多機能型居宅介護の役割と評価」「3加算の整理」が示された。
このような現状を踏まえ、各委員から以下の意見が示された。
・新規事業所の立ち上げが少ないにも関わらず、介護事業経営実態調査では40.6%の小規模多機能型居宅介護事業所が赤字であり、利用者20人以上の登録でやっと黒字転換できる状況にある。事業の維持・継続が難しい。
・介護人材の確保やニーズとサービスのマッチングが課題で、市町村と都道府県が連携して整備を進めていくべき。
・本来、認知症の利用者や家族が在宅介護を続けるために希望が持てるサービスであるはずが、事業所も利用者も減少傾向にあるのはなぜか。利用したい人が減っているわけではなく、利用したくてもそれができない障壁があるからではないか。1つの原因として、小規模多機能型居宅介護を新たに利用する際にケアマネジャーを変更しなければならない点があげられる。
・定額報酬の中で、訪問は月何回まで、泊まりは何曜日だけといった事業所ルールがあり、また通いのための送迎が訪問扱いとなり、必要な生活支援が受けられないといった現場にとっての足かせがある。
看護小規模多機能型居宅介護
看護小規模多機能型居宅介護は、小規模多機能型居宅介護と訪問看護を組み合わせることで、退院後の利用者の在宅生活への移行や看取り期の支援対応などを行う。主治医との密接な連携のもと、医療行為も含めた多様なサービスを一体的に提供できる。
請求事業所数は年々増加しているものの、都道府県によりバラつきがあり、管内に事業所がない市町村は依然として1,265ヵ所、全体の7割近くを超える。利用者は要介護3以上の人が約6割を占めており、他のサービスと比較して要介護度の高い利用者を多く受け入れているのが特徴。直近の収支差率は6.5%で、第9期介護保険事業計画ではサービス量の見込みが増加すると予測される。
前回の令和6年度介護報酬改定では、柔軟なサービス利用の促進やサービス内容の明確化が実施されているが、現状、自治体からのニーズとして医療的ケアの多い療養者の在宅生活に関する継続的な支援が求められている。
令和9年度介護報酬改定に向けた論点として、「1サービスの安定的提供に関する体制づくり」「2加算の整理 」の2点が示されている。
各委員から示された意見は以下の通り。
・複雑な看護ニーズや医療ニーズを抱える人に対して、慣れ親しんだ在宅拠点の生活を基盤としつつ、訪問や泊まりなどのサービスを柔軟に利用できる包括的な支援であることは大きい。さらなる普及が求められる。
・医療的ケアに加えて夜間対応、緊急時対応、看取り対応もあり、職員の精神的かつ身体的負担が大きい。負担に見合った処遇や報酬の評価が必要。
・緊急ショートステイの報酬設定の見直しや機械浴に対応できない事業所が外部訪問入浴サービスを利用する際の評価が望まれる。
・事業所の開設支援や地域をまたいで利用しやすくするしくみづくりも課題になる。
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
グループホームは、認知症の高齢者に対し、共同生活住居で、家庭的な環境と地域住民との交流のもと、日常生活上の世話と機能訓練を行い、自立した生活が営めるようになることを目指している。
請求事業所数は、近年微増にとどまり、直近で14,233か所。受給者はおよそ22万人、平均要介護度2.64で要介護3以上の利用者が51%を占める。令和6年度の収支差率は4.9%。
グループホームに関する論点としては、「1医療ニーズへの対応強化と介護人材の有効活用」「2認知症基本法、基本計画を踏まえた地域連携の取り組みの推進や地域に開かれた拠点としての役割」「3加算の整理」の3点が示され、各委員から次のような意見が出された。
・協力医療機関との連携体制は着実に進んではいるもののいまだ道半ばである。連携に関して努力義務でなく義務化してはどうか。
・医療連携や看取りケアへの評価が必要ではないか。
・人材不足が深刻で、特に夜勤対応可能な職員の不足が目立ち現場は疲弊している。なかには管理者が夜勤を担っているケースもある。
・夜間支援体制加算については実効性のある見直しを望む。
・施設サービスにある補足給付がグループホームにはないため、低所得者にとって居住費や食費の負担が大きい現状がある。負担軽減のための方策を望む。
・ICT等の普及で、夜間におけるケアの効率化が進んでいる実態もあり、ICT等の条件を満たせば複数階でも3ユニット2名夜勤体制が可能かの点について、速やかな研究調査をお願いしたい。
・グループホームには以前より質の向上に向けた取り組みを評価する加算設定が乏しい。こういった取り組みを評価する加算が新たに必要ではないか。
地域密着型サービスの制度設計と加算の簡素化・整理について
本分科会では、地域密着型サービスの制度設計そのものについても、時代に即した見直しの必要性が示され、令和9年度介護報酬改定を機に整理が必要であると本質的見解を述べる委員が多い。意見は大きく次の2点に集約される。
・地域密着型サービス制定から20年が経過し、人口減少、介護人材不足も踏まえ、地域密着から広域管理への舵取りも大胆に検討すべきではないか。
・地域密着型サービスの参入状況に格差が拡大することで、利用者が自らの意思でサービスを選択できないという、介護保険本来の主旨から外れた現象が出てきており、危惧を覚え、方策を練る必要性を感じる。
また、各サービス共通の課題として加算の簡素化と整理があげられ、処遇改善加算等をはじめ、体制整備に関する加算は基本報酬への組み込みを行い、算定率の低いものは整理すべきという意見も示された。
本会議に引き続き各サービスに関する検討が開かれ、夏までをめどに議論が行われて、介護報酬改定の新たな方向性が示されていく。