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福祉医療分野の制度・施策動向ウォッチ
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2026年08月17日

【厚生労働省】令和8年度第1回入院・外来医療等の調査・評価分科会(令和8年5月14日)

高齢者救急や医療・介護連携の実態を調査へ
令和10年度診療報酬改定に向け2か年で検証

【今回の分科会のポイント】
・令和10年度診療報酬改定に向け、分科会と2つの作業グループで調査・分析を進める方針を確認
・令和8・9年度に、急性期から慢性期、外来医療まで8項目の調査を実施する案を了承
・高齢者救急では、介護保険施設からの緊急入院や下り搬送に加え、退院後の施設復帰まで把握すべきとの意見
・ICTやAI、人員配置の柔軟化について、業務効率だけでなく医療の質や安全への影響も検証する方針

 【今回の分科会のポイント】

・令和10年度診療報酬改定に向け、分科会と2つの作業グループで調査・分析を進める方針を確認

・令和8・9年度に、急性期から慢性期、外来医療まで8項目の調査を実施する案を了承

・高齢者救急では、介護保険施設からの緊急入院や下り搬送に加え、退院後の施設復帰まで把握すべきとの意見

・ICTやAI、人員配置の柔軟化について、業務効率だけでなく医療の質や安全への影響も検証する方針

令和10年度改定に向け分科会と作業グループで検討

 厚生労働省は令和8年5月14日、令和8年度「第1回 入院・外来医療等の調査・評価分科会」を開催し、令和10年度診療報酬改定に向けた検討方針と、令和8・9年度の調査項目、スケジュールについて議論した。

 同分科会では、診療報酬改定の答申書附帯意見に掲げられた事項等について、専門的・技術的な調査や検討を行う。今後は、「診療情報・指標等作業グループ」と「DPC/PDPS※等作業グループ」での分析と、入院・外来医療等の調査を並行して進める。DPC/PDPSについては、既存のDPCデータによる分析を基本とし、必要に応じて特別調査を実施する。


※DPC/PDPS
診断名や治療内容等で入院患者を分類する診断群分類(DPC:Diagnosis Procedure Combination)に基づき、入院医療費の一部を1日当たりの定額で算定する支払い方式のこと(PDPS:Per-Diem Payment System)

急性期から外来まで8項目の調査を実施

 事務局は、調査項目として、@急性期入院医療、A高度急性期入院医療、B包括期入院医療、C慢性期入院医療、D入院医療に関する共通事項、E外来医療、F賃上げに係る評価、G医療資源の少ない地域における保険医療機関の実態の8項目を提示した。

 このうち@〜Eは令和8・9年度の2か年で調査する。F賃上げに係る評価とG医療資源の少ない地域の実態は、令和9年度に調査する案である。賃上げの状況については、ベースアップ評価料などに関して医療機関から提出される「賃金改善実績報告書」を活用して把握する(図表)。


図表:令和8・9年度の主な調査項目

調査項目 令和8年度 令和9年度
@急性期入院医療
A高度急性期入院医療
B包括期入院医療
C慢性期入院医療
D入院医療に関する共通事項
E外来医療
F賃上げに係る評価
G医療資源の少ない地域の実態

※厚生労働省資料を基に作成。賃上げの状況は、賃金改善実績報告書等による把握も行う。

高齢者がどこから搬送されどこで受け止められたか

 福祉・介護分野との関係で注目されるのが、高齢者救急と医療・介護連携に関する調査である。

 急性期入院医療では、一次、二次、三次救急や専門救急、病院群輪番制への対応に加え、介護保険施設からの緊急入院、下り搬送、転院搬送の活用状況などを調べる。また、救急外来を受診した患者が、どのような経路をたどり、どのような状態で入院や転院に至ったかも調査する。

 下り搬送は、高度な救急医療を担う医療機関で一定の治療を終えた患者を、地域の医療機関へ転院搬送する仕組みである。救急医療機関への患者集中を緩和し、患者の状態に応じて地域の病院へつなぐ役割が期待されている。

介護保険施設との連携体制を検証 急変時から施設復帰までを把握

 包括期入院医療では、地域包括医療病棟、地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟などを対象に、高齢者救急の受入れや退院支援、地域で担っている役割を調べる。医療機関と介護保険施設のICTによる情報連携や、退院後の生活機能の自立に向けたリハビリテーションの体制も確認する。

 また、地域包括ケア病棟を有する病院などの協力医療機関としての対応状況や、慢性期病棟における救急搬送、下り搬送の受入れ、在院日数、入退院支援なども調査する。

 介護保険施設には、入所者の急変時に相談や診療を求めることができる協力医療機関との連携体制の整備が求められている。今回の調査では、こうした連携が書面上の体制整備にとどまらず、医療機関への相談、救急搬送、入院の受入れ、退院後の施設への復帰まで実際に機能しているかが焦点となる。

ICTや多職種協働を検証 医療の質と安全も調査

 もう一つの柱が、業務効率化と人員配置の見直しが医療現場に与えた影響の検証である。

 令和8年度診療報酬改定では、多職種による病棟業務の分担や、ICT、AI、IoTを活用した業務効率化が評価された。看護職員の配置や専従要件についても、一部で柔軟化が図られている。

 調査では、こうした見直しが職員の業務負担や人材確保に与えた影響を確認する。あわせて、医療・看護の質や医療安全が保たれているかも検証する。

 身体的拘束の最小化も調査項目に含まれる。慢性期入院医療では、身体的拘束の最小化に向けた取組の実施状況を調べるほか、入院医療に関する共通事項として、病棟の種類を問わず身体的拘束の実施状況を把握する。

 このほか、入退院支援、面会制限、入院時の食事療養など、入院医療に共通する事項についても改定後の状況を調べる。

<委員からの主な意見>

○高齢者救急について、患者がどこから、どのような経路で搬送され、入院や転院に至ったのかを正確に把握すべきである。医療機関が今後担う機能や地域の医療提供体制の変化も捉え、新たな地域医療構想の検討に活用できる調査とする必要がある。

○ICTの活用や看護職員の配置基準の柔軟化については、業務効率や職員の負担だけでなく、医療・看護の質や医療安全への影響を客観的に検証すべきである。ICT導入に伴う初期投資や、国・都道府県の補助金の活用状況も把握する必要がある。

○身体的拘束の最小化については、実施件数だけでなく、患者の状態や病棟の状況を含めて実態を把握し、患者の尊厳や療養環境と医療安全の両立について議論できる調査とする必要がある。

○地域医療体制確保加算や外科医療確保特別加算など、医師や医療機能の集約を促す評価については、算定する医療機関だけでなく、周辺の医療機関や地域全体にどのような変化が生じたかを把握すべきである。

○DPCデータやNDB※など、既存データで把握できる項目は積極的に活用し、医療機関が調査票に重複して記入することを避けるべきである。調査票は、未算定の理由や連携上の課題など、現場への質問でなければ分からない事項に重点化する必要がある。

○外来医療の調査は回収率が十分でないため、回答していない医療機関の規模や類型を分析すべきである。小規模な医療機関の回答負担にも配慮し、調査票の簡素化やオンライン回答の活用を進める必要がある。

○賃上げについては、令和9年度の調査だけでなく、令和8年度の状況も確認すべきである。夜勤手当への活用状況や、活用できなかった場合の理由も把握する必要がある。

※NDB
医療保険のレセプト情報や特定健診等の情報を全国規模で収集・蓄積したデータベース。「National DataBase(ナショナルデータベース)」の略称

令和8年度調査は令和9年3月に、令和9年度調査は同年8月に結果報告

 令和8年度の調査は、7〜10月に調査票を作成・決定し、10〜12月に実施する。その後、令和9年1〜2月に集計・分析を行い、3月に結果を報告する予定である。

 令和9年度調査は、同年4〜5月に調査票を決定し、5〜7月に調査と集計を行い、8月に結果を報告するスケジュールが示された。

 今回の調査では、個別の診療報酬項目の算定状況だけでなく、改定によって地域の医療提供体制や患者の流れがどのように変わったかを捉えることが求められる。特に高齢者救急では、介護保険施設や在宅から救急医療機関に搬送された後、包括期・慢性期の病院や介護の場へどのようにつながったかを、一連の流れとして捉える必要がある。検討中の調査票が、医療と介護の接続をどこまで可視化できるものとなるかが注目される。


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