第258回介護給付費分科会(分科会長:岩村正彦・東京大学名誉教授)が6月15日に開催された。当会議では前回に引き続き、令和9年度介護報酬改定に向け各サービスに関する内容を検討。この日は在宅における通いの場として重要な役割を果たす通所系サービス(通所介護・地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、療養通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護)について議論が交わされた。
通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護
通所介護・地域密着型通所介護(以下、地域密着型)は、在宅で生活する利用者が通う場で、機能訓練等を行い心身機能の維持を図ったり、家族の身体的・精神的負担を軽減するレスパイトの意味合いも兼ねたサービスである。請求事業所数は平成28(2016)年以降ほぼ横ばいで推移、利用者数は令和5(2023)年度より微増。収支差率は、通所介護が令和6(2024)年度決算で6.2%、地域密着型は6.3%であった。規模別事業者数の割合では、通常規模型の通所介護が約51%、地域密着型が約43%。規模別請求件数、請求単位数割合はともに通常規模型の通所介護が約6割を占める。
認知症対応型通所介護(以下認知症対応型)は通いの場であることは変わらないものの、利用者を認知症の人に特化し、社会的孤立を防ぎ生活機能を維持して在宅生活を支えることを目的とする小規模サービスである。請求事業所数は平成27(2017)年をピークに減少傾向、利用数も減少傾向にあり、収支差率は令和6年度決算で5.3%だった。類型別事業所数の割合が単独型で56.4%と多く、請求件数、請求単位数についても単独型が約6割を占める。
令和6年度介護報酬改定(前回改定)では、通所介護・地域密着型・認知症対応型いずれにおいても、入浴介助加算の見直しが行われ、介助技術の向上、在宅での自立した入浴を促進する観点から研修要件等が加わった。通所介護、地域密着型においては機能訓練指導員の配置要件の見直しが行われたほか、送迎については認知症対応型も含め、利便性の向上、運転専任職の人材不足に対応する観点から送迎先範囲の拡充、他の介護事業所、障害福祉サービス事業所の利用者との同乗を可能としている。
令和9年度介護報酬改定(今回改定)の論点として、「1 中重度者や認知症高齢者を含む利用者の生活機能を維持し、在宅生活を継続するための機能を担いながら幅広いニーズへの対応が求められるなか、利用者の状態に応じた機能向上や自立支援につながる質の高いサービスをどう提供するか」「2 算定率の低い加算や算定率の高い加算の整理」の2点が挙げられている。
上記3つのサービスに関し多くの建設的意見が交わされた。
〇中山間地域における送迎の負担にもかかわらず、送迎時間が評価されていない点が問題。中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算の算定率が低迷している原因と考えられるため、地域別算定状況をもとに詳細に分析し、中山間地域にサービス提供を行う事業者が取得しやすい加算に見直すべき。
〇要介護1・2の通所利用者を総合事業に移行することは反対だ。当該利用者は軽度者ではなく専門職の支援によって在宅生活を維持できる自立支援の最重要対象者である。この層への支援を弱めれば短期間の重度化、認知症の悪化を招き、国の施策とも逆行する。
〇入浴サービスにおける燃料費等の高騰による負担増は、事業所努力の限界を超えている。報酬上の配慮が必要だ。
〇利用者の生活機能維持・向上にあたりアセスメントや目標設定の重要性が指摘されているが、機能向上や自立支援の状況などアウトカムに関わるデータ提供があれば、より建設的な議論が可能となる。
療養通所介護
療養通所介護は、難病等の重度要介護者やがん末期の方など、サービス提供にあたって看護師の観察が必要な利用者に対して、入浴・排泄・食事等の介護、その他の日常生活上の世話や機能訓練を行うサービスである。請求事業所数は、全国に70か所程度と減少傾向で、利用者も減っているのが現状である。
前回改定では、利用者が医療ニーズを必要とする中重度者であって、包括報酬なので新たに利用する際の判断が難しいため、基本報酬に短期利用型の新区分となる短期利用療養通所介護費を設けた。さらに重度の利用者への安定的なサービス提供体制を担保するため、重度者ケア体制加算を創設している。今回改定においては、「1 医療と介護両方のニーズを持つ要介護者の生活を支えるサービスを安定的に提供するための体制構築」「2 算定率が低い加算の整理」が論点として挙がっており、以下の意見が示された。
〇利用者対看護職員または介護職員の体制が1.5対1と手厚く、難病等の重度者、がん末期の方、重症心身障害者の方を受け入れる重要な役割を発揮している。今後も引き続き利用者が療養介護を活用しながら地域・自宅での生活が継続できるように、さらに基本報酬の見直しや加算を適切に評価・拡充する必要がある。
通所リハビリテーション
通所リハビリテーションは、在宅における要介護者に対して、心身機能の維持回復をはかり、日常生活の自立を助けるためのリハビリテーションを行うサービスで、主として、病院や診療所、介護老人保健施設等で提供されている。請求事業所数は年々減少傾向にあり、通常規模型が86%を占める。利用者数は平成31(2019)年から令和4(2022)年にかけて減少したが、近年は増加傾向にある。要支援1・2は増加傾向にあるものの、要介護3〜5は減少傾向を示している。収支差率は令和6年度決算で2%だった。
前回改定では、医療機関のリハビリテーション計画書受け取りの義務化、退院後早期のリハビリテーション実施に向けた退院時情報連携の推進、リハビリテーション・口腔・栄養の一体的取り組みの推進、事業所規模別基本報酬の見直しが実施された。
サービス提供の状況は、利用頻度が要支援者で週2回以内利用(約97%)、重度者ほど1週間あたりの利用率が高い。また利用時間は要介護者においては6〜7時間が最多である。
今回改定における論点としては、「1 リハビリテーションの実施内容やリハビリテーションマネジメントの実施状況を踏まえたサービス提供体制の整備」「2 算定率が低い加算の検討」が挙げられた。
これらについて以下の意見が示された。
〇令和6年度改定の審議報告で今後の課題として「リハビリテーションにおけるアウトカム評価の在り方」が挙げられている。事業所の体制等を評価したストラクチャー評価やプロセス評価による加算が多い中で、LIFEのデータを活用したアウトカム評価について具体的な指標や評価方法を検討して算定要件に含めるべきだ。
短期入所生活介護
短期入所生活介護は、利用者が老人短期入所施設あるいは介護老人福祉施設に短期入所して、介護やその他の日常生活上の世話や機能訓練を受けることにより心身の機能の維持につながり、かつ家族の身体的及び精神的負担の軽減を図るサービスである、
請求事業所数は、平成30(2018)年以来ほぼ横ばいで推移。利用者数は平成31(2019)年以降減少を続け、令和4(2022)年にやや増えて以降再び横ばいを続ける。類型別事業所数の割合で見ると併設型・併設型ユニット型を併せて約8割を占める。収支差率は令和6年度は2.7%であった。
前回改定では、看取り連携体制加算の創設、長期利用(61日以降の)の適正化を図っている。当サービスに期待されている点は、家族介護者等の負担軽減が最も大きい。
現状として、人口規模が少ない地域においては、越冬入所、農作物収穫期の一時的入所など季節利用のニーズが高い傾向が見られる。利用者はひと月に3?5回利用する割合が高い一方で、121日以上利用する割合も5割以上だ。
今回改定の論点として、「1 サービスの機能・役割を踏まえつつ、利用者の多様なニーズに応じたサービス提供を行うための方策を練る」「2 算定率が低い加算と高い加算についての整理」が求められている。
各委員から次のような意見が出された。
〇前回改定で長期利用への適正化が行われたが、依然として利用数が多い実態がある。入所希望を持つ人の妨げにならないようにさらなる適正化や、利用促進に向けた見直しが必要では?
〇認知症関連加算の算定率が低いことが課題。家計が厳しく利用できない要介護認定者に対し、行政が補助するしくみが必要ではないか。
短期入所療養介護
短期入所療養介護は介護老人保健施設や有床診療所、診療所、介護医療院等で受けられるサービスで、利用者が可能な限り自宅において自立した日常生活が営めるように看護、医学的管理のもと介護や機能訓練、医療並びに日常生活上の世話を受けられる点が特長だ。
請求事業所数は令和2(2020)年から減少傾向であったが令和4(2022)年以降、増加傾向に転じている。利用者数も事業所数同様の推移をたどる。利用者の要介護度は3以上の人が約6割を占める。
前回改定において、医療ニーズのある利用者受け入れをさらに促進する観点から総合医学管理加算における算定条件や算定日数の上限の見直しが行われている。
今回改定における論点として、「1 在宅復帰、在宅療養支援を促進する観点・医療ニーズのある利用者の受け入れ対応を強化する観点、総合医学管理加算の在り方の観点からどう方策を練るか」「2 算定率が低い加算と高い加算についての整理」が求められている。
各委員からの意見は以下の通り。
〇レスパイトや緊急受け入れ、看取りを担う重要なサービスだが、不規則な入退所や夜間対応など、職員の負担が大きい。見守り機器等導入による負担軽減は重要だがそれを前提として人員緩和には慎重であるべき。緊急対応や安全確保の観点から、夜間の複数配置など実態を踏まえた適正な体制を評価する必要がある。
全体を通じて加算の整理が共通課題に
今回の議論で明らかになったのは、全体を通じて加算・減算の要件が年々複雑化して、利用する側もサービスを提供する側も理解がしづらくなった点である。ICT活用を積極的に進めても、人員配置の緩和に安易に直結させるべきではないこと、各種加算について加算率の高いものは向上的・標準的サービスと捉え基本報酬に相当する評価を行うなどの視点も示された。また、算定率の低い加算については、本来想定していた加算率との乖離やその要因を分析し、現場の実態も踏まえたうえで整理・見直しを行なっていく必要があるとされた。