【今回の検討会のポイント】
・令和9年度障害福祉サービス等報酬改定に向け、6〜8月に関係団体ヒアリングを実施
・障害福祉サービス事業者の指定に関するガイドライン案を提示
・共同生活援助(グループホーム)の管理者に「3年以上の実務経験」と管理者研修の修了を求める方針
・世話人や生活支援員などへの基礎的な研修も令和10年度から実施する方向
令和9年度報酬改定
6つの視点で関係団体からヒアリング
厚生労働省は令和8年6月5日、第156回社会保障審議会障害者部会を開催し、令和9年度障害福祉サービス等報酬改定の検討状況や、障害福祉サービスの質の確保について報告した。
令和9年度報酬改定については、4月28日に障害福祉サービス等報酬改定検討チームで検討を開始。6〜8月に計6回程度の関係団体ヒアリングを実施し、秋以降に各サービスやサービス横断的な論点を検討する。12月に報酬基準に関する基本的な考え方をまとめ、年明けに改定案を取りまとめる予定。
ヒアリングでは、制度の持続可能性、人材の確保・育成や業務効率化、経営状況や賃上げ・物価等への対応、地域のサービス提供体制、サービスの質、地域生活支援や重度化・高齢化への対応など、6つの視点を示した。障害福祉サービス等の総費用額が、令和6年度報酬改定後に12.1%増加していることなどを踏まえ、制度の持続可能性も論点となる。
このほか、障害者就労に係る雇用福祉横断検討会の設置についても報告され、雇用施策と福祉施策の役割分担や、就労継続支援、就労選択支援などのあり方を検討していくことが示された。
事業者指定の段階から
サービスの質を確保
障害福祉サービスの質の確保では、運営指導・監査のマニュアル案とともに、「障害福祉サービス事業者等の指定のガイドライン案」が示された。ガイドライン案は、指定権者が指定事務を行う際の望ましい指針や、質の向上に向けた取組事例、総量規制や意見申出制度の具体的な活用方法などを示すものである。
指定前の管理者面談や研修などの取組事例を示すほか、地域のサービス供給量が見込み量以上となる場合などに指定しないことができる「総量規制」についても運用方法を整理した。地域で不足している個別ニーズについては例外的な取り扱いを設け、必要なサービスまで参入できなくならないようにすることが望ましいとしている。
部会でも、重度障害者や強度行動障害のある人などを受け入れる事業者が総量規制によって排除されないよう求める意見があり、厚生労働省はそのような運用となるよう対応する考えを示した。
グループホーム管理者に
「3年以上の実務経験+研修」
サービスの質の確保対策の中でも、事業者への影響が大きいのが、共同生活援助(グループホーム)の管理者要件の見直しである。
現在、共同生活援助(グループホーム)の管理者には指定基準上の資格要件がない。厚生労働省は、共同生活援助(グループホーム)の質の確保を図るため、管理者の資格要件を新たに指定基準に位置づけ、令和9年4月から適用する案を示した。
資格要件は、指定障害福祉サービス事業所、指定相談支援事業所、指定障害者支援施設等の従業者として、3年以上、障害者の支援等に従事した経験があり、「共同生活援助管理者研修(仮称)」を修了していることである。実際に障害者への支援業務に従事していない管理者等は、実務経験には含まない(表)。
表:共同生活援助(グループホーム)の管理者の資格要件(案)
注:令和9年度から11年度は経過措置、令和12年度から本格施行
| 区分 |
3年以上の実務経験 |
管理者研修(※) |
経過措置 |
令和9年度前に開設した GHの既存管理者 |
不要 |
必要 |
令和9〜11年度中に研修を修了。 実務経験要件は、施行時点ですでに勤務している管理者には適用しない |
令和9年度以降に新規開設する GHの管理者 |
必要 |
必要 |
実務経験の経過措置なし。 研修は令和9〜11年度中に修了 |
[管理者の資格要件]指定障害福祉サービス事業所、指定相談支援事業所、指定障害者支援施設等で3年以上、障害者の支援等に従事した経験/共同生活援助管理者研修(仮称)を修了
資料:厚生労働省「第156回社会保障審議会障害者部会」、資料3「障害福祉サービスの質の確保について」16頁をもとに作成
経過措置と職員研修
管理者研修については、令和9年度から直ちに修了を求めるのではなく、令和9〜11年度の3年間を経過措置期間とする。一方、令和9年度以降に新たに開設する共同生活援助(グループホーム)については、3年以上の実務経験に経過措置を設けない。部会で救済措置の有無を問われた厚生労働省は、救済措置は考えておらず、実務経験のある管理者を確保する必要があるとの考えを示した。
また、世話人、生活支援員、夜間支援従事者など、障害者の支援に直接携わる職員についても、障害福祉に関する基礎的な研修を受講させるために必要な措置を事業者に義務づける方向で検討する。
令和8年度に教材・カリキュラムを開発し、令和9年度に運営基準を改正、令和10年度からの施行を予定しており、一定の経過措置期間も検討する。
<委員からの主な意見>
○ 報酬改定では、単純な収支差だけで判断せず、人材不足によって予定した職員を確保できず、人件費が抑えられているケースなども含め、経営実態をきめ細かく把握する必要がある。
○ 運営指導・監査では、書類や基準への適合だけでなく、利用者や家族への聞き取りなどを通じ、その声が事業所運営に反映されているか確認する仕組みが必要である。
○ グループホーム管理者等への資格要件の導入や直接支援職員向け研修を充実させる方向には賛成だが、不適切な運営には経営者の姿勢が影響している場合もあり、これだけで解決するものではない。
○ 管理者研修については、地域によって受講機会に差が生じないよう、十分な実施回数や定員、実施時期を確保する必要がある。
障害福祉サービスでは、多様な事業者の参入が進む中、サービスの質をどのように確保するかが重要な課題となっている。今回示された見直しは、事業者指定、運営指導・監査、人材育成を組み合わせ、事業開始前からサービス提供後まで、一連の仕組みとして質の確保を図ろうとするものである。
とりわけ共同生活援助(グループホーム)では、令和9年度から管理者に実務経験要件が導入される方向である。新規開設を予定する事業者にとっては、人材配置や開設準備にもかかわる見直しとなる。今後は、指定基準の改正や管理者研修の具体化が焦点となる。