福祉医療経営情報
トップ

耐火木造による高齢者福祉施設づくりの最新情報


全6回に渡って、耐火木造を用いた高齢者福祉施設づくりについて お届けします。


<執筆>
金沢工業大学環境・建築学部建築デザイン学科 教授
A/E WORKS 代表理事 佐藤 考一

第6回:関連団体インタビュー


【聞き手】
金沢工業大学環境・建築学部建築デザイン学科 教授
A/E WORKS 代表理事 佐藤 考一

【話し手】
・一般社団法人日本木造住宅産業協会 技術開発部長 飯山 直久
・一般社団法人日本ツーバイフォー建築協会 技術部長 辻村 行雄

耐火木造を支える二つの関連団体


 これまで5回にわたって紹介してきたように、耐火木造は「軸組構法」と「ツーバイフォー構法」の二つの系統に分かれる。前者は「一般社団法人日本木造住宅産業協会(木住協)」、後者は「一般社団法人日本ツーバイフォー建築協会(2×4協会)」が技術導入の中心的な役割を果たしてきた。そこで両団体に対するグループインタビューを行って連載の最終回を締めくくることにした。

▲ 左から飯山氏、佐藤氏、辻村氏

耐火木造による高齢者福祉施設の現状


佐藤 耐火木造の実績は第1回目で紹介しましたが、高齢者福祉施設の建設動向に何か傾向はみられますか。
辻村(2×4協会) 都道府県別にみると、秋田が東京と並んで最も多く、岩手、宮城、大分が続きます。
飯山(木住協) 軸組では岡山が目立ちますね。
佐藤 有力なつくり手がいるんでしょうね。建物利用者の評判はいかがですか。
飯山 遮音性が心配でしたが、入居者のクレームはないようです。もちろんRC造の床に比べれば音は透過します。スタッフはRC造施設の勤務経験があったりするので、そうした違いを感じるそうですが、むしろ床の硬さが足腰に優しいという肯定的な評価をいただいています。
辻村 ツーバイフォーも同様ですが、室温がなんとなく暖かいという声も目立ちます。
佐藤 耐火木造は石膏ボードを重ね張りするので、居住性能も明らかに上がっているようですね。その一方で課題もあると思います。2012年頃には、耐火木造の構造計算適合性判定機関が見つからないという話を聞きました。
飯山 初めの頃はそうした状況もあったようですが、最近は収まってきていると思います。
辻村 高齢者施設に限りませんが、混構造になると厄介ですね。ある物件で1階がRC造で2階から5階を木造にしたところ、適合性判定機関との打ち合わせに同席し、ツーバイフォーの構造計画指針について説明することとなりました。
佐藤 耐火木造によって、(※1)ルート1を超えた検討も当たり前になり始めました。木造に関する構造設計技術の底上げが、現在直面している課題のようですね。

※1 … 異壁量計算という簡便法によって、大地震に対する検討を行う方法。この方法の場合は、構造計算適合性判定が必要になる。

耐火木造に関する技術的動向


佐藤 2014年8月には木造の耐火構造の技術基準(外壁と間仕切壁のみ)が告示されました。
飯山 告示関連の問い合わせは増えています。外壁を耐火構造にすれば準耐火建築物になるので、こうした建物から告示に例示された仕様が広がっていくと思います。
辻村 併用する場合でも、認定仕様の部分は2×4協会の講習を受けた耐火構造検査員が検査することにしています。平成7年に木造で初めて大臣認定を取得したとき、設計図書だけで耐火性能が確保できるのか、日本建築行政会議から注文がついて、自主検査の仕組みを作ったという経緯があるんです。
飯山 軸組ではそうした取り組みはしていません。大臣認定がツーバイフォーの2年後だったからか、そうした注文もありませんでした。
佐藤 どちらの構法も認定仕様と例示仕様を併用するのは差し支えないようですね。今後の見通しはいかがでしょうか。
飯山 告示をきっかけに事例が増えて、耐火木造向けのサッシ開発などが進むことを期待しています。(※2)参考納まり図をサッシメーカーと共に作って木住協のウェブサイトに載せたりしていますが、やはり使いやすいサッシの開発が望まれます。
辻村 外壁材の開発も期待しています。住宅用(※3)サイディングは低層向けなので、4階建てになると外部仕上げが限定されてしまいます。

※2 … 複数の作業者が関わるような部分の詳細図を納まり図と呼ぶ。
※3 …建物の外壁に使用する下見板の英語名。日本では幅450mmほどの外壁パネルを指すことが多い。

耐火木造をこなせる会社の探し方


佐藤 耐火木造の実績のある建設会社はまだまだ少ないと思います。
辻村 2年ほど前から、実績業者リスト(カナダ林産業審議会)や事例(当協会)をウェブサイトに公開しています(表1)。
飯山 木住協のウェブサイトには会員会社の検索ページがあって、耐火講習の有無でも検索できます。最近は会員以外の利用が6割を占めています。また実例集を2014年7月に発行していて、こちらには会員以外の建物も掲載されています(表2)。
辻村 先ほど耐火構造検査を紹介しましたが、この業務を委託できる会社もあります。2×4協会のサイトから検索できます。
佐藤 両協会とも情報発信に努めているようですね。そうしたサイトを利用する際はどのような点に留意すべきでしょうか。
飯山 工事業者選びには、信頼できる相手かどうかが最も重要ではないでしょうか。認定仕様に特別難しい内容があるわけではないので、講習会を受講して勉強すればきちんとした工事はできますよ。

画像拡大 画像拡大

施主の役割と専門家の役割


佐藤 一般に構造方式の選択は専門家に任されます。しかし、今回の取材によると、事業者が木造を要求したことから耐火木造施設が生まれています。
辻村 だから設計事務所も建設会社も勉強せざるを得ない。
飯山 個人住宅もそうです。「防火地域でも木造が建てられると聞いた」という問い合わせがあったので、耐火木造の存在を知ったという講習受講者も多い。
佐藤 施主の見識が建物の良し悪しを決めるという指摘もあります。耐火木造という技術が、よりよい施設を求める事業者を集めるきっかけになっているのかもしれませんね。
辻村 最近、平屋の耐火木造施設が現れました。建設費だけを考えると準耐火でも間に合いますが、定期的な避難訓練が不要になるという運営上の効果(※4)があるので、事業者が耐火建築物を求めたそうです。
佐藤 むしろそうした提案が建築の専門家から出て欲しいですね。耐火木造は工事費や工期の観点から注目され始めていますが、高性能木造という性格を持っています。耐火性能はレベルアップ項目の一つに過ぎないと考えた方が、可能性が開けてくるように思います。
(インタビュー実施:2015年1月9日)

※4 … 準耐火建築物の特別養護老人ホームでは、消防長の判断によって、平屋建てに対しても夜間の定期訓練が求められることが多い。しかし、耐火木造にした場合には「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」の第11条第1項第2号ロが求められることがなくなる。

※ この記事は月刊誌「WAM」平成27年3月号に掲載された記事を一部編集したものです。
月刊誌「WAM」最新号の購読をご希望の方は次のいずれかのリンクからお申込みください。