「みんなの食堂」のスタッフから昼食のおにぎりを受け取る武生高定時制の生徒たち(右)=福井県越前市の同校
子どもたちに無料で食事を提供する福井県越前市の「みんなの食堂」の実行委員会が、武生高定時制の校舎で月2回の出張運営を始めた。アルバイトと両立するなどしながら勉強に励む生徒たちに、昼食のおにぎりやスープを提供。子ども食堂の活動団体が校内に出向く取り組みは県内で珍しく、「学校生活の中にも、ほっとできる居場所をつくりたい」と生徒たちを温かく迎えている。
「みんなの食堂」は、同市平出1丁目の拠点施設で地域の子どもたちや保護者らに定期的に食事を提供。ボランティアによる小中学生への学習支援活動にも取り組んでいる。
支援の場を高校にも広げようと、同校に願い出て「おにぎり食堂」と銘打った出張運営を7月に開始。新型コロナウイルス禍による中断を経て10月から運営を本格化した。
元教員らスタッフが校内の多目的室で、さまざまな具材のおにぎりやスープ、果物を用意。午前の授業終了後や午後から登校の生徒たちが顔を見せ、同じ部屋で昼食の時間を楽しむ。2年の男子生徒は「普段はアルバイト代で昼ご飯を買っているけれど、食費に困ることがなければ安心できる」。1年生女子グループは「あったかい食事をみんなで食べられるのはうれしい」と笑顔を見せた。
同校定時制の在籍生徒は125人。3回目となった10月末の「おにぎり食堂」は約30人が利用した。為国順治教頭は「昼食を持ってきていないことがある生徒も一部にいて気になっていた。地域の団体に支えてもらえるのはありがたい」と歓迎する。
訪れる生徒の中には「みんなの食堂」の利用者もいる。市立の小中学校から県立や私立の高校へと進学した段階で、自治体による家庭への生活支援が届きにくくなる傾向が見受けられるという。
スタッフから「学校頑張ってね」「最近忙しいの?」と声を掛けられ、昼食がてらに日ごろの困りごとを相談する生徒も現れ始めた。実行委代表は「たとえ学校に来づらくなった子がいたとしても、『ここで待っているよ』という場所をつくりたい」と話している。