福祉医療経営情報
トップ

実践からみる地域包括ケアにおける

連携・機能分化


 全6回に渡って、実践例を盛り込みつつ、地域包括ケアにおける連携・機能分化についてお届けします。


<執筆>
特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長 藤井 将志 氏


第3回:地域包括医療を提供する医療機関と後方施設の連携

 前号では急性期後(ポストアキュート)の連携について、急性期病院との具体的な取り組みをご紹介しました。今回は高度急性期・救命救急を担う医療機関と、地域・在宅医療を提供する施設との中間にある、地域包括医療を提供する医療機関として、後方の施設との具体的な取り組みについてみていきます。

定期的な課題改善ミーティング

 診療報酬上「特別な関係」に該当する関連施設・法人をもっている医療機関は多いでしょう。筆者の所属する病院でも関連法人に社会福祉法人があり、特別養護老人ホームを中心に運営をしています。両法人を束ねる本部機能はなく、理事長は同一ですが管理体制は独立しています。こうした状況で課題となったのが、両組織の連携についてです。傍目からすると、連法人は連携ができているのではないか、と思われがちですが、少なくとも当院ではそうではなく、より密な連携が必要な状況でした。いろいろと話を聞いてみると、同じような課題を抱えているところも少なくないのではないかと感じています。
 まずは、根本的な問題が何なのかを探るところから始めました。病院の医師や看護師、施設の施設長や看護師、介護士にヒアリングを実施していきました。大きく分けて2つの課題があり、@組織間のコミュニケーションの問題、A医療と介護のあるべき姿の相違、です。@についてはよくあることです。まったく別の運営主体ですと、それなりに規律が働き、組織間の課題の共有はそれぞれの組織の指示命令系統に従い落とし込まれると思います。しかし、関連法人ということもあり、それぞれの現場で言いやすい人に”愚痴“レベルで課題共有が行われていました。「このあいだの○○さんの連絡はもっと早く欲しかった」「○○さんのご家族がこうして欲しいと言っていた」などといった会話が、現場の職員同士で思いつきのように行われていました。
 内容によっては組織の上層部に報告がされ、内容によってはまったく報告されないまま、うやむやになっていました。そのため、個々人の好き嫌いのような感情まで入り組んで、うまく解決したり・しなかったり、という状況になっていました。現場レベルでPDCAが回り解決していくことは非常に望ましい姿なのですが、やはり組織が異なる以上、しっかりとした指示命令系統に載せないとうまく回らないケースも出てきます。
 そこで、問題を上げる窓口を明確にし、それぞれリアルタイムに現場で課題共有をしても構わないが、必ず窓口に情報を集約し、組織として解決すべきことは組織として検討していくことを明示しました。軌道に乗るまで月に1回は窓口の職員と管理者を交えた情報交換の場を設け、必要に応じて組織に課題を持ち帰り、組織としてPDCAを回してもらうことにしました。

ワンランク上のチーム医療

 2つ目の課題であるA医療と介護のあるべき姿の相違、については非常に根の深い問題で、いまだ解決の方向性がみえたとは言い切れません。簡単に言うと「どこまでの医療を提供するのか」という問題です。このことについて、医療を提供することがミッションである病院のスタッフと、家としての施設で介護を提供することがミッションである施設のスタッフの考え方は違います。例えば、下剤について、施設ではできるだけ自然な形でケアをしたいので、薬を減らした方がいいと考え、下剤に頼らず水分補給により、排便を促すことを目指します。しかし、心不全など疾病によっては水分のとりすぎが致命的になることもあります。処方の指示をした医師にとっては、自分の指示に反対するのか?という疑念も湧いてしまいます。もしこうした相談が患者家族からされるのであればまだしも、施設の介護職員などが主導して提案されると、違和感を覚える医師や看護師も少なくないでしょう。
 ”チーム医療“という言葉が広まりだして久しく経ちますが、そろそろもうワンランク上のチーム医療が求められているのだと思います。これまでは病院のなかで医療者を中心としたチーム医療でしたが、今後は介護職や行政の職員、患者家族や在宅医療を支援する業者さんなど、より一般の住民側の人がチームに入ってきます。医療という共通の言語体系をもたないので、医療の常識が通用しない人たちです。こうした人たちも含めたチームを誰がどのようにまとめていくのか、大きな課題です。筆者もまだトライアンドエラーを繰り返しているところで、病院での毎週のカンファレンスに施設の職員に参加してもらったり、課題ケースを医局会で協議したり、勉強会を開いて知識を共有したりしています。

地域の施設との定例会議

 先の事例は関連組織との連携の具体例でしたが、まったく別法人の介護施設との連携についても取り組んでいます。入院患者の2割を占める隣町にある特養と、関連法人も含めて当院でもっていない介護老人保健施設を交えた情報交換会を毎月実施しています。情報交換の場としてよくあるのが、一同に会して各施設の状況の共有、といっても毎月の変化はあまりない、もしくは、せっかく集まるのだから勉強会やケーススタディをしよう、といった類のものではないでしょうか。もちろん、そうした会もやらないよりはやった方がいいのですが、より突っ込んだ内容を共有する場を設けたいと考えました(写真)。



 基本的には患者さん、利用者さんのための連携であることは確かなのですが、経営的なことを無視して、もしくはオブラートに包んで話をしても仕方ありません。連携したい症例は医療的に問題がなくなれば、やはり次には経営的に何らかの連携する必要性がある症例です。具体的には、医療区分や在院日数、介護度や在宅復帰、病床稼働率といった情報です。こうした理由で連携をするのはどうか、という意見もあるでしょうが、急性期も含めて、結局は政策誘導されているのですから、仕方ありません。究極的には急性期の病棟で一度顔見知りになった医療スタッフに最後まで診てもらうほうが、移動の手間もなく楽なのは当然ですが、現状の制度では難しいことです。
 このような経営的な情報も含めて、現在こうした状況なので、”この方“を受け入れてもらうことはできないか、という具体的な患者さん、利用者さんの名前で情報交換をしています。包み隠さずやり取りをしているので、短期間に相互のニーズも明確になりPDCAが回っていることもあります。

○ 急性期病院に送って2日程度で施設に戻されるのは医療度が高すぎるので病院でワンクッションおいてもらいたい

○ 褥瘡など皮膚トラブルがあるので皮膚科の医師に定期的に回診してもらいたい

○ 介護職の初任者研修を相互に協力しあって実施できないか

○ 入所時のスクリーニング検査の項目に認知症の診断を入れたいのだが対応できないか

などといった意見も、ざっくばらんに交わすことができています。そのほとんどは毎回進捗が確認され、少しずつ実現に向かっています。

※ この記事は月刊誌「WAM」平成28年6月号に掲載された記事を一部編集したものです。
月刊誌「WAM」最新号の購読をご希望の方は次のいずれかのリンクからお申込みください。