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福祉医療分野の制度・施策動向ウォッチ
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月刊誌「WAM」
2025年12月1日
【月刊誌WAM】 2025.11掲載

2027(令和9)年から始まる「育成就労制度」の内容は

 2024(令和6)年6月に成立した入管法及び技能実習制度の一部改正法により、技能実習制度は「育成就労制度」となり、2027(令和9)年4月から施行されます。「特定技能制度及び育成就労制度の円滑な施行及び運用に向けた有識者懇談会」では、本人意向転籍の要件、転籍時の初期費用の補填の仕組み、監理支援機関の許可基準、育成就労制度において外国人が送出機関に支払う費用の上限等について検討してきました。具体的な運用を示す関係省令等については、パブリックコメントを経て、2025(令和7)年9月30日に公布されました。主な内容をみていきます。

 2024(令和6)年6月に成立した入管法及び技能実習制度の一部改正法により、技能実習制度は「育成就労制度」となり、2027(令和9)年4月から施行されます。「特定技能制度及び育成就労制度の円滑な施行及び運用に向けた有識者懇談会」では、本人意向転籍の要件、転籍時の初期費用の補填の仕組み、監理支援機関の許可基準、育成就労制度において外国人が送出機関に支払う費用の上限等について検討してきました。具体的な運用を示す関係省令等については、パブリックコメントを経て、2025(令和7)年9月30日に公布されました。主な内容をみていきます。

人権侵害や法違反の是正・改善に向けては

 国内のさまざまな産業分野で人手不足が深刻化するなか、技能実習制度・特定技能制度による外国人人材は、日本の経済社会の担い手となっている。一方で、1993(平成5)年に創設された技能実習制度については、原則として転籍ができないこと、監理団体による監理・支援が十分でない場合があること等が、人権侵害や法違反の背景・原因となっていることが以前から指摘されてきた。

 こうした状況を受け、2022(令和4)年11月からは外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議の下に「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」が設置され、議論を開始。2023(令和5)年11月にとりまとめられた最終報告書では、技能実習制度を「発展的に解消」し、「育成就労制度」とすることが求められた。

 2024(令和6)年6月には、入管法及び技能実習制度の一部改正法(出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律)が成立。2025(令和7)年2月からは、内閣官房・法務省・厚生労働省の連携で「特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議」が始まり、その下で「特定技能制度及び育成就労制度の円滑な施行及び運用に向けた有識者懇談会」(主に関係省令について議論)、「特定技能制度及び育成就労制度の技能評価に関する専門家会議」(主に試験の方針について議論)が始まった。

 また、並行して2025(令和7)年4月28日〜5月28日に育成就労制度に関する省令案等のパブリックコメントが行われ、その後省令および告示は2025(令和7)年9月30日に、政令は同年10月1日に公布された。育成就労制度の施行は、2027(令和9)年4月からとなっている。

育成就労制度で受け入れ可能な人数は

 関係省令等の主な内容をみてみよう。

 育成就労制度で受け入れ可能な外国人の数については、表1のとおりとなっている。

 なお、申請者の@技能および日本語能力の修得に係る実績、A育成就労を行わせる体制、B育成就労外国人の待遇、C出入国または労働に関する法令への違反、育成就労外国人の行方不明者の発生その他の問題の発生状況、D育成就労外国人からの相談に応じることその他の育成就労外国人に対する保護および支援の体制ならびに実施状況、E育成就労外国人と地域社会との共生に向けた取り組みの状況が高い水準を満たす場合は、受け入れ可能人数は表2のとおりとなる。

 さらに、前述の「申請者が高い水準を満たす」場合に加え、監理支援機関の@監理型育成就労の実施状況の監査その他の業務を行う体制および実施状況、A監理支援に係る監理型育成就労における技能および日本語能力の修得に係る実績、B出入国または労働に関する法令への違反、監理型育成就労外国人の行方不明者の発生その他の問題の発生状況、C監理型育成就労外国人からの相談に応じることその他の監理型育成就労外国人に対する保護および支援の体制ならびに実施状況、D監理型育成就労外国人と地域社会との共生に向けた取り組み状況が高い基準を満たし、かつ申請者の住所が「指定区域」の場合には、受け入れ可能人数は表3(3頁)のとおりとなる。

 「指定区域」とは、地方を中心とした地域で(表4)、都市部は原則として除外されている。この区域内での受け入れ人数枠を優遇することで、育成就労外国人が都市部の受け入れ機関に過度に集中することを防止することを目的としている。

監理支援機関の要件は厳格化

 技能実習制度では、原則として転籍が認められていないことから、人権侵害や失踪の一因となっていたが、育成就労制度では、パワハラや暴力などの人権侵害を受けた場合等「やむを得ない事情」がある場合の転籍を認めるほか、一定の条件下での本人の意向による転籍も認められる。

 本人の意向による転籍制限期間については、業務内容等を踏まえて1年から2年までの範囲内で設定されている。介護分野については、転籍制限期間は2年となっている。2年を超える分野は「当該分野における直近の昇給率を基準に、昇給率を毎年設定・公表し、1年目から2年目にかけて当該昇給率で昇給する」とされているところ、介護分野では、育成就労外国人の就労可能な施設は公定価格である介護報酬等によって運営されているため、介護職員等処遇改善加算の取得等を要件としている。

 転籍にあたっては、日本語能力の試験に合格していることが求められており、介護分野ではA2相当となっている。

 介護分野がこのような内容とされたのは、継続した利用者のいる対人支援サービスであり、利用者との日常的なコミュニケーションを通じた日本語能力の向上や、継続的な実践による利用者との信頼関係の醸成が重要であり、さらに疾患や障害の理解、チームケアや他職種連携、利用者の自立支援や看取りなど、多様な状態像の変化に対応できる専門職としての知識や技術、倫理等の習得には一定の時間を要するためである。この期間は、育成就労外国人本人が将来的に特定技能1号に移行し、介護福祉士国家試験の合格を目指すうえでも必要となる。

 転籍の際は、外国人育成就労機構、監理支援機関、ハローワークなどの公的機関のいずれかを経由する必要があり、民間の職業紹介会社を通じた転籍は禁止されている。

 転籍先の主な要件としては、@本人希望による転籍者の割合が3分の1を超えないこと、A指定区域外(=都市部)の場合は、区域内からの転籍者の割合が6分の1を超えないこと、B優良基準に適合すること、C転籍者の取り次ぎおよび育成に係る費用を、転籍元の育成就労実施者に支払うこと、がある。

 なかでも、@、Aの転籍者数の上限については、表5のとおりとなっている。

 さらに、Cの転籍元への費用支払いについては、表5下段のとおりとなっている。

送出機関の手数料は「報酬月額の2倍を超えない」範囲に

 育成就労外国人を送り出す外国の送出機関については、制度の趣旨を理解していること、取り次ぐ外国人について素行が善良であることを確認していること、手数料その他の費用について算出基準を明確に定めてインターネット等で公表していること等が要件となっている。また、育成就労外国人が送出機関に支払う費用の額の基準として、「育成就労計画に記載された報酬の月額の2倍を超えないこととする」と示している。

 これは、国によって大きく異なる手数料(図参照)をできる限り抑え、帰国困難者や失踪を生み出さないことを趣旨としている。

監理支援機関の要件は厳格化

 技能実習制度での「監理団体」は、「監理支援団体」へと変わり、独立性のある組織となることが求められている。現在の監理団体は、監理支援機関の許可を取り直す必要がある。

 監理支援機関の要件は、@監理支援を行う監理型育成就労実施者の数が2以上であること、A常勤の役員または職員(監理支援の実務に従事する者)の数が、(a)実施者数÷8(その数が1未満である場合は1とする)、(b)育成就労外国人÷40(同)のどちらの数も超えていること、となっている。

 また、監理支援団体には、弁護士もしくは弁護士法人、社会保険労務士もしくは社会保険労務士法人、行政書士もしくは行政書士法人等の外部監査人を置くことが必要となる。外部監査人については、申請者や育成就労実施者、監理支援機関の役職員または過去5年以内にこれらの者であった場合等は、就任することはできない。さらに、外部監査は、3カ月に1回以上の頻度で行う必要がある。

 以上が関係省令の主な内容であるが、介護分野では、現行の技能実習での在留者数は2万65人(2024(令和6)年末時点)、特定技能での在留者数は1万549人(2025(令和7)年6月末)となっている。今後、事業者には、キャリアアップや将来の見通しも立つような育成を行うことで、さらなる人材定着を図ることが求められる。

 今号では、明治大学法学部教授(特定技能制度及び育成就労制度の円滑な施行及び運用に向けた有識者懇談会座長)の山川隆一氏に、育成就労制度の評価と課題、介護事業者へのアドバイス等をうかがった。


表1~3… 外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律施行規則より
表4… 外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律施行規則第十九条第二項第三号の規定に基づき法務大臣及び厚生労働大臣が定める区域(告示)より編集部で作成
表5… 第3回特定技能制度及び育成就労制度の円滑な施行及び運用に向けた有識者懇談会資料1及び外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律施行規則より編集部で作成

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