2023(令和5)年の医療法改正により、医療法人の経営情報をデータベースとして整備し、分析結果を医療政策の理解のため国民に提供することとなっていますが、データベース情報を研究者等へ提供(第三者提供)する制度が、2026(令和8)年4月1日から始まります(全医療機関が対象)。具体的な内容について検討してきた「医療法人の経営情報のデータベースの在り方に関する検討会」では、本年8月26日に報告書をとりまとめました。その内容をみていきます。
第三者提供制度は2026(令和8)年4月1日から
我が国では、高齢人口の増加や医療の高度化などによって国民医療費が年々増加していることに加えて、今後、生産年齢人口の急激な減少への対応や医療資源の地域格差など医療制度上克服すべき課題がある。
医療を取り巻く課題に対応する政策を進めるためには、医療の置かれている現状と実態を表すために必要な情報を収集し、政策の企画・立案に活用するとともに、国民に対して丁寧に説明していくことが必要である。
地域医療の担い手である医療法人は、運営の透明性が求められており、その運営状況を明らかにすることにより医療が置かれている現状と実態についてわかりやすく情報提供することは、医療法人制度の趣旨とも反しない。
こうしたことから、政府方針等でも医療法人の経営情報の収集とデータベースの構築、国民への丁寧な説明が求められ、2023(令和5)年の医療法改正により、@医療法人の経営情報の収集およびデータベースの整備、A収集した情報を国民にわかりやすくなるよう属性等に応じてグルーピングした分析結果の公表、B医療法人に関するデータベースの情報を研究者等へ提供する制度の創設が行われている。
@、Aについては、すでに2023(令和5)年8月1日から施行されており、すべての医療法人が毎会計年度終了後に経営情報を都道府県知事に報告、医療法人の経営情報データベース(MCDB*1)に情報が蓄積され、政策への反映等が行われている(図参照)。収集する情報は、病院・診療所における収益、費用のほか、任意項目として職種別の給与(給料・賞与)・人数となっている(表1参照)。これらのデータは、すでに中央社会保険医療協議会(中医協)、社会保障審議会医療部会等の議論で活用されている。また、昨年度からは自治体からIDが配布され、オンラインで登録できる仕組みが構築されるなど、報告の利便性は高まっている。
Bについては、公布の日(2023(令和5)年5月19日)から3年以内の施行とされ、2024(令和6)年11月から「医療法人の経営情報データベースの在り方に関する検討会」で具体的な内容の検討を開始。2025(令和7)年8月に報告書がとりまとめられている。
同報告書では、「第三者提供制度の施行にあたっては、データベースが国民共有の財産として有効活用されるべきである一方、医療法人情報には、医療法人の競争上の利益を侵害するおそれのある情報や、いわゆる一人医師医療法人の医師給与等、特定の個人の収入等を容易に推知できる情報が含まれることに留意しなければならない」と指摘し、提供する情報の範囲を研究目的に照らして必要最小限の範囲に限定すること、提供先から特定の個人や医療法人等の識別につながる形での公表がなされないようにすること等、個人・法人の権利利益が侵害されない制度とすることを求めている。
なお、第三者提供制度は2026(令和8)年4月1日から開始予定となっている。
*1…Medical Corporation Financial Data Base System
提供方法は2つに分かれる
第三者提供制度は、@一般からの委託に応じて作成した統計を提供する仕組み(オーダーメード集計)と、Aデータベース上の医療法人情報そのものを研究者等に提供する仕組みの2つが医療法で規定されている。
@のオーダーメード集計については、先行事例として、統計法においても規定されており、MCDBの第三者提供の申請手続きもこれにならって定めることが示されている。ちなみに、統計法における二次利用(第三者提供)については、公的機関等や公的機関等との共同研究を行う場合以外の申請者は、原則オンサイトセンター*2にて情報提供を受けることとなっている(表2)。また、これまでの提供数は表3のとおりとなっている。
オーダーメード集計は集計結果を提供する仕組みのため、医療法人情報を提供する場合に比べデータ提供に伴うリスクは低いものの、集計方法によっては、特定の個人や医療法人等の識別につながる可能性がある。そのような再識別を防止するため、医療法人情報の最小集計単位をあらかじめ定めること、集計結果が最小集計単位を下回る場合には集計結果を非表示とするべき、と提言している。さらに、集計結果が特定の個人や医療法人等の識別につながることが申請時から見込まれる場合には、委託を受けないこととし、これらに適切に対応できる措置を、第三者提供に係るガイドライン・利用規約に定めることを求めている。
Aの医療法人情報の提供については、特定の商品・役務の広告・宣伝に利用するための調査等を除き、相当の公益性を有する調査、学術研究、分析を行う研究者等に提供するもので、研究目的がオーダーメード集計によって達成できる場合は、医療法人情報は原則として提供されない。また、データ提供にあたっては、あらかじめ社会保障審議会の意見を聴くことを義務づけている。
医療法人情報の提供を受ける者についての安全管理措置については、これも統計法の安全管理措置にならい、
● 組織的管理措置(取扱者の権限等の明確化、管理簿整備等)
● 人的管理措置(暴力団員等、不適切行為者等排除)
● 物理的管理措置(取扱区域特定、盗難防止、記録機器等廃棄等)
● 技術的管理措置(処理者限定、不正アクセス行為防止等)
● その他の管理措置(業務委託)
● 独立行政法人福祉医療機構におけるオンサイトセンターの設置
を定めることを求めている(表4参照)。さらに、不適切利用を把握する方法(苦情相談窓口の設置等)や不適切利用が生じた場合の対応・措置についても、統計法とNDB(匿名医療保険等関連情報データベース)の措置にならい、第三者提供に係るガイドライン等に定めることを求めている。
第三者提供に係る手数料等についても、統計法とNDBにならい、表5のように定められる予定となっている。
なお、診療報酬改定の基礎資料となる「医療経済実態調査」とMCDBでは医療機関の抽出数に差があり(表6)、中医協では、抽出数が多いMCDBについて改定を補完するものとすることが議論されるなど、MCDBはすでに医療法人の経営状況をより正確に政策に反映するためのツールとなっている。決算書提出の意義は大きいものとなっている。
*2…データの持ち出しができない仕組みや作業内容の監視システムなど、高度な情報安全性を備えることにより、その場所限りで機密性の高いデータの利活用を可能とする施設