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月刊誌「WAM」
2026年2月2日
【月刊誌WAM】 2026.1掲載

新春座談会 今後の医療・介護・福祉サービスのあり方は

 「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会や社会保障審議会および各部会などでは、今後を見据えた医療・介護・福祉サービスのあり方が活発に議論されてきたところですが、今後の日本で求められる各サービスのあり方や法人経営、課題等について、有識者のみなさまに語っていただきました。

 「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会や社会保障審議会および各部会などでは、今後を見据えた医療・介護・福祉サービスのあり方が活発に議論されてきたところですが、今後の日本で求められる各サービスのあり方や法人経営、課題等について、有識者のみなさまに語っていただきました。

出席者(五十音順)
伊奈川 秀和 氏 国際医療福祉大学
医療福祉学部 医療福祉・マネジメント学科 学科長・教授
谷村 誠 氏 全国社会福祉協議会 全国社会福祉法人経営者協議会 副会長
社会福祉法人みかり会理事長
池端 幸彦 氏 日本慢性期医療協会副会長/医療法人池慶会池端病院理事長/
「2040年に向けたサービス提供体制のあり方」検討会構成員

医療と介護の「連携」の時代から「統合」していく時代に

伊奈川秀和氏
 本日は、新年を迎え「今後の医療・介護・福祉サービスのあり方は」と題し、医療・介護分野における専門家のお二人から、御見識を賜りたく存じます。昨年は「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会(以下、「2040年検討会」)でのとりまとめのほか、社会保障審議会の各部会等での議論が進められてきましたが、いろいろな動きを踏まえながら、法人経営の観点も含めて、お話をおうかがいできればと考えています。最初に、自己紹介をお願いいたします。

谷村誠氏
 全国社会福祉法人経営者協議会の副会長を務めております谷村と申します。どうぞよろしくお願いいたします。「2040年検討会」には、中間報告が出た後、昨年5月の保育、障害福祉も加えて検討する場面から私も加わらせていただきました。今日はそこも含めてお話しさせていただこうと思います。また、社会保障審議会福祉部会にも出席して発言させていただいています。
 私どもの法人の本部は、阪神淡路大震災の影響も受けた淡路島にあります。もともとは保育所のみを運営する法人でしたが、1993年にご縁をいただいて介護事業にも携わるようになりました。震災後、1998年に明石海峡大橋ができてからは、神戸と西宮市で保育・介護・障害福祉サービスの事業を運営しています。「2040年検討会」では、都市部(神戸市)、一般市(西宮市)、中山間・人口減少地域(淡路島)のすべてで事業を行っていることも踏まえながら議論をさせていただきました。

伊奈川氏
 淡路島と神戸は橋で地域をつないでいますが、保育から高齢者分野まで非常に幅広く、まさに福祉をつないで事業を運営されているということがよくわかりました。次に、池端副会長もいろいろと多角的に事業運営をされていると承知していますが、そうした点も含めてお聞かせください。

池端幸彦氏
 私を本日お招きいただいたのは、急性期ではない急性期の後のポスト・アキュート、サブ・アキュートを担う日本慢性期医療協会で20年近く役員をさせていただき、現在副会長を務めさせていただいていることと、福井県越前市という、本当にもう人口が少なくなってくる小さな自治体で、父が立ち上げた30床・1病棟しかない小さな病院を運営するなかで、慢性期医療に目覚めてなんとか生き長らえている、そういう法人を運営していることからだと思います。他の施設と連携をとりながら、少し介護も展開しています。介護といっても介護付き有料老人ホーム以外の施設系は持たず、在宅介護支援型の小さな病院です。さらに、母が始めた保育園を社会福祉法人として2カ所・定員300人規模で運営しています。
 また、昨年10月まで5年間、中医協の委員を務めていたこと、「2040年検討会」の委員も拝命していましたので、本日はこれらについてのお話もできればと思います。

伊奈川氏
 ありがとうございます。早速ですが、本日のテーマの1つはやはり2040年問題です。つい最近まで2025年問題と言っていましたが、あっという間に2025年は来てしまいまして、2040年というのも決して遠い先ではないと感じるところです。まず現在の医療・介護が置かれた状況について、課題も含めておうかがいできればと思います。

谷村氏
 2025年問題は、団塊世代が75歳に到達することから、介護予防や医療と介護の連携という点が重視されていたと思います。2040年問題では、2035年に1000万人を超える85歳以上の方をターゲットに、認知症施策、急性期・入院を減らす介護と在宅医療、日常生活支援、身寄りのない独居高齢者の問題への対応等がより重視されると考えています。
 我々社会福祉法人の本業は、いわゆる地域においてセーフティネットの役割を担い続けること、日本の福祉ビジョンである地域共生社会の実現を主導していくことだと考えています。そのために必要な1つ目は、ソーシャルワーク機能の強化と、それを支える経営基盤の強化です。経営基盤の強化では、まずは自法人の経営課題に早期に気づくことが必要です。それが意外にできていない法人もいるので、その点の意識を高めていきたいと考えています。ただ、生産性の向上という言葉には、違和感があります。生産性の向上というのであれば、報酬を上げていただいたら向上するのですが、まずは業務効率化のためにICT、いわゆるテクノロジーの活用等を図らなければなりません。それからもう1つは、包括的な支援です。ケアワークの世界でいえば、世帯全体を支えていくという姿勢です。そのためには、事業の「多機能化」が不可欠であるといえるでしょう。また、経営基盤を強くするためには、介護・障害福祉・保育の制度のなかで、できることはやっていく「多角化」も大事だろうと考えています。そして、それでもなかなかうまくいかないようであれば、他の組織との連携・協働を図る。そのうえで、これは経営協が勧めているわけではありませんが、利用者の保護と職員を守るためには、いわゆる事業譲渡や合併という方策をとることも選択肢になるのだろうと考えています。
 本業である制度では対応できない課題に対するソーシャルワーク自体には、収支差額(利益)を生む仕組みはありませんので、ケアワーク(各制度・事業)のほうで利益をしっかり出していかなければならないのですが、報酬体系に大きな課題があり、なかなか難しいのが現実です。本来ならば、そこでしっかり利益を上げて、ソーシャルワークの実践をしなければならないと思います。具体的に言えば、生活困窮者の支援や就労支援などです。認定就労訓練事業や居住支援、また身寄りのない高齢者等への支援事業(通称:新たな事業)の制度化も進められています。新たな事業には入院・入所の手続き、死後事務等も担うものであり、モデル事業も行われて仕組みづくりが図られているところですが、日常生活自立支援事業を担ってきた社会福祉協議会だけではなく、社会福祉法人も実践していくべきだろうと思います。
 人材確保については、なかなか特効薬はありません。2040年検討会のとりまとめでは、人材確保のための地域のプラットフォームの充実が掲げられました。ただ、行政が主導しないとなかなか実効性が上がらないので、公的機関が参画することによって多様な取り組みができたり、養成施設なども加わることによって、初めて介護の仕事をする人からリカレント教育までが行えるのではないかと考えています。これはもう介護の問題だけではなく、保育や障害福祉にもすべて共通していることだと思いますので、プラットフォームを充実させていくというのは、地味ではありますが、着実に効果があるのではないかと思っています。
 それから、各法人が介護・障害福祉・保育など多岐にわたる事業を行っているなかで、保育がいちばんわかりやすいのですが、保育のニーズは少子化で減少してきており、そうしますと法人のなかで保育人材をどう活用するか、例えば、介護のほうで活躍してほしいと思った場合に一人多役としないと、中山間・人口減少地域などは、これから成り立っていかないだろうと思っています。そのハードルとなっているのが、処遇改善加算の仕組みがそれぞれの制度・分野で縦割りであることです。ここを改善していただければと思いますが、結構壁が高いなと実感しています。

伊奈川氏
 ありがとうございました。生産性の向上という話がありましたが、やはり人あっての医療・福祉ということでありますし、またサービスの提供先もまた人であるということでありますので、やはり人が大事であるということと、あと賃金が大事ということなんだろうなと思って聞いておりました。そういう点では生産性あるいは効率化という点は、大きく分けた場合、ヒト・モノ・カネのうち、どちらかというとモノの部分かなと思いますので、それはまた後ほどお話を聞ければと思います。また、連携や協働については、谷村副会長の話をそのまま医療に置き換えると、かなり共通する部分があるかと思います。医療のほうでもよく協働や連携、あるいはタスクシェアが言われておりますので、そういった点も含めて池端副会長からお話をおうかがいします。

池端氏
 谷村副会長の話をお聞きしながら、医療に置き換えても同じ問題点があって、対策も同じようなことをやろうとしているなと感じました。地域包括ケアというのは住み慣れた地域で住み続けるということが前提になっているのですが、最近はそういう希望は減少してきていると思います。「便利なところで医療も介護も一体的に受けられるなら、どこでも行くよ」という話を聞くことも増えてきました。とくにこれから75歳になる世代は、スマホもパソコンも使えてある程度余力もある、そういう方々がどこでどう住みたいかということに、我々がどうマッチしていくかということは大きな問題だと思っています。
 もう一つは、病院と介護と福祉を混ぜた、いわゆるまちづくりに医療としてどう関われるのか。私が最近あちこちで言っているのは、医療と介護の連携の時代はもう終わって、むしろこれからは統合して、患者さん・利用者さんを中心において、医療も介護も福祉も一緒に手を携えてやっていく時代になってきたと思います。連携というのは、「後はよろしく」と言ってバトンを渡すのですが、もう医療・介護・福祉はバトンを渡すのではなく、一緒に考えなくてはなりません。
 人材についても、谷村副会長がおっしゃったように、保育士かつ介護福祉士かつ看護師といった人材でやっていくことが、人材難のなかで効率よく提供できるということになると思います。オランダでは、ビュートゾルフという、まさにプラットフォームで分野が近い資格はすべてもっているという人材がいますが、あのようなシステムが、これからの日本にも求められるのではないかと感じています。
 それから、2025年って何も起きなかったんですよね。なぜかというと、2025年は75歳以上人口のピークだったので、まだ元気な方も多いからです。これが2040年、85歳以上人口がピークを迎える時代になると、85歳以上の3人に2人が要介護状態になります。これは医療でも、病気が治ってももう自宅に帰せなくなったり、肺炎で1週間点滴をして寝かせきりにしていたら、もう動けなくなってしまいます。こういう方々をどうしようかというのが、2040年問題です。ここはまさに、本当に医療・介護・福祉がいかにコラボしていくか、という待ったなしの課題ではないかと考えています。そこに人材不足が重なり、支える世代も減ってくる、物価・賃金も上昇する、ということで、これは非常に難問です。コストとクオリティ(質)、アクセスをどう折り合いをつけるのか、ということが、これからの15年で問われます。
 さらに、我々提供者側の論理だけでなく、受け手側である国民がどう考えるか。しかも、おそらく答えは1つではないと思うんです。多様化した受け手側のニーズに、我々がどうあわせていけるのか、という点が大事なのではないかと考えています。

伊奈川氏
 2040年検討会の報告書のなかでも、「地域軸・時間軸」が示されていますが、人の移動についての前提も結構変わってくるのだろうと思います。なるべく便利でサービスのあるところに人は移っていきます。住民票の移動のデータをみますと、当然ながら若い人の移動は多いわけですが、実はある一定年齢以上の高齢者も意外と移動していますので、サービスをよくしていくことが、人が集まってくるということに関係してくるのかと思います。

職員の意識・知識・技術で対応することが必要

伊奈川氏
 医療、介護、福祉のどの分野でも偏在問題がありますが、集約化や資格をどうしていくべきなのか、お考えをおうかがいします。

谷村氏
 先ほども少し申し上げましたが、多様なニーズに包括的に対応できるということがキーワードだと思っています。例えば保育でいうと、お子さんの送迎時などに、保護者の方から「うちの父が認知症かも…」といった話を聞くことがあります。こうしたときに、「保育士だから介護のことはわからなくて」と言うのではなく、「よろしければ窓口につなぎましょうか」と言えるようにしなければならないと考えています。こうした対応は、まさに地域共生社会の実現につながると思いますが、各職員の意識と知識が必要です。一時期いわれていた福祉の資格の一本化、というのは難しくても、基本的な資格に、個々の専門的な内容を加えて履修するといった仕組みに変えたほうがよいのではないかと考えています。

池端氏
 いま谷村副会長がおっしゃった点については、意識と知識と技術が必要で、技術を磨くのはなかなか難しいけれども、意識と知識をある程度もっていると、「この場合はここに振るといい」というトリアージがまあまあできる、それが大事ということですね。私もそう思います。例えば地域包括支援センターで介護だけではなく、保育や障害、あるいは精神に関することはわからなくても、つなぐところがわかっていれば、ワンストップで受け入れることができる体制になるのではないかと思います。「うちは介護だから」、「うちは保育だから」、「うちは医療だから」というのではなく、100点満点ではなくても、意識と知識があるかないかでずいぶん違ってくると思います。
 私の病院の職員は120人足らずなのですが、そのうち30人くらいがケアマネジャーの資格をもっています。あの勉強をしておくと、看護師でも医師でも、ケアマネジメントも少しは理解できるんです。医療と介護の連携も、医療側が介護のことをまったく知らなかったら、言葉が通じないんですよね。逆に介護福祉士にも少し医療の知識をもってもらうだけで全然違ってきます。ある程度言語が共有できることで、対応のレベルはずっと上がるので、私はそういう取り組みを広げていきたいと思っています。共有言語がわかると多職種が1人の患者さん、1人の利用者に関わることができる。ここがすごく大事ではないかと思います。
 もう一つ、偏在に関しては、医療はとくに厳しい状況です。大都市、中都市、それ以外の全部に同じ高度急性期から慢性期、すべてアクセスも含めて均等にやろうというのは無理です。何かを諦めなくてはいけないとなると、中医協でも議論していますが、高度急性期はある程度集約化せざるを得ない、だいたい20〜30万人都市に高度急性期病院は1つか2つあればよい、それ以外のところは点在していればよい、ということが言われています。ただし、その高度急性期病院でも、東京にある高度急性期病院は手術だけやっていればよい、救急車だけ受け入れていればよい。しかし、当病院が位置する地方の10万都市程度のところの高度急性期では、高度急性期もやらなくてはいけないけれども在宅もやらなくてはならない。何でも屋にならなければいけない面があるので、医療も介護も3つの地域区分のなかで、少し提供の仕方を変えてもいいから、その地域にマッチしたものをやっていく。これでなんとか偏在を少し緩和するしかないと思います。
 行政は、全国津々浦々みんな同じようなサービスを提供しなくてはいけないと思っていることが多いですが、絶対できないことがわかった例が、能登半島地震です。北部のほうは寂れてしまって、医療も介護ももう一度立ち上げようとしましたが、無理でした。病院も3つあったのを1つに集約して能登空港の近くに新設を計画しているのですが、なかなか進まない。建物はできるし、利用者である高齢者は戻ってきたけれども、若い人(職員)が全然戻ってきません。そうなると、もうコンパクトシティのようにするしかないという問題に直面してきます。こうした問題を、住民と対話をしながら考えなくてはいけないのではないかと思います。病院も介護も、半径5キロ以内に欲しい、といっても無理だということを、やはり理解していただかなくてはならないと思います。

伊奈川氏
 そういう点から言いますと、今回の2040年検討会の報告では、大都市、地方都市のような一般市等、さらに中山間・人口減少地域と分けていますが、考え方によっては、人口の少ない地域というのは他の地域の先駆けでもあるので、そこで何とかできれば、まだ日本は元気になれるのかなという気がします。池端副会長は福井で、谷村副会長は淡路と神戸でみていて、その点いかがでしょうか。

谷村氏
 大都市ではありませんが、都市部の神戸もいずれ淡路のように人口が減少していくという課題は共通しています。早いか遅いかだけの問題です。中山間・人口減少地域における仕組みづくりでは、人員の配置基準や要件の弾力化など、いわゆる基準緩和が突破口として必要だろうと思います。それから、我々がやるべきことは、先ほどから出ていますが、福祉事業者間だけでなく異業種の企業、医療などとの連携のほか、包括的な支援ができるような体制を組むための多機能化だと思います。
 大都市については、多様な住まいに対応できるようにすること、複合的なニーズに応えることができる機能を持ちあわせること。そのためにはICT化やAIの活用はやっていかなければならない必須事項だと思います。
 報告のなかで興味深いのは、一般市等におけるサービスを確保するために近い将来に中山間・人口減少地域になることを見越して、早い段階から準備を進めましょうと書いてあることです。経営課題を見過ごしているということもあるなかで、近い将来に向けて経営の健康診断を行って、早い段階から手を打っていくことが必要だと考えています。社会福祉法人をみていて、ここ20年、そういうことをしっかり実践してきた法人と、そうでなかった法人とでは、結果的にいま、大きな差が出ていると感じています。

池端氏
 私の住んでいるところは、福井県の県庁所在地の福井市から南に20キロほど下った越前市というところですが、周辺の町や、さらに南の嶺南地域では過疎地域も多く、診療所の医師が高齢化してきており、数年後には誰もいなくなるというような状況も想定されています。後継者もおらず、町が医師を探しても、人口が少なくて経営の見込みも立たずなかなか来てくれません。ですので、医療へのアクセスの良さは諦め、代わりにオンライン診療や巡回診療車を回すなど、そういうことの検討を始めています。それでもどうしてもそこに住みたいという場合には、それを受け入れていただくという、少しドライな考え方をしなければならないことが、もうすでに起きているのが現状です。

「経営実態調査ありき」の報酬改定では立ち行かない

伊奈川氏
 次に、今後の医療・介護経営についてお聞かせいただければと思います。先ほど申し上げましたように、ヒト・モノ・カネのうち、とくにモノ・カネの部分かと思います。医療DX、介護DXなどでの効率化が求められている昨今ですが、経営的には大変な状況にありますね。

谷村氏
 先ほどは経営課題の早期発見と多機能化について申し上げましたが、どうしても立ち行かなくなった場合の次の手段としては、連携・協働があり、社会福祉連携推進法人制度などもあります。2040年検討会では、経営強化や合併・事業譲渡を進めやすくするために、社会福祉連携推進法人制度を活用できるようにしてはどうか、という意見を申し上げました。
 これまでは社会福祉法人の”しまい方“の整理ができていませんでした。社会福祉法人が事業を終える場合、国または社会福祉事業を行っている組織に移管ということになりますが、土地勘のない国に移管というのは現実的ではないので、選択肢の一つに、地方公共団体も入れたらよいのではないかと考えています。利用者保護の観点からその事業を継続すべきかどうかということも含めて、やはりわかるのは地元だからです。福祉部会での検討の際も、強く反対する意見はなかったので、今後この方向で進むのではないかと期待しているところです。
 それから、業務効率化による職場環境改善のためにも、テクノロジーの活用は必須であり、どんどん進めていくべきだと思います。また、タスクシェア・タスクシフトでは、コアの業務を専門性のある職員に集中させるため、業務を切り出し、有償ボランティアへ周辺業務を任せることが一部の自治体で行われています。有償ボランティアは高齢者が多く、フレイル予防も兼ねていることもあり、さらに進める必要があると思います。
 介護のICT化については、見守りセンサーやインカム、介護記録ソフトの導入等が進んできていますが、さまざまな文書、計画書、議事録等へのAI活用による事務の効率化もさらに進めていく必要があるでしょう。
 あとは、やはり根底から公的価格(報酬等)のあり方を見直していただかないと、事業全体が立ち行かなくなってきていると思います。都度の臨時的な対応では、もう無理です。保育は積み上げ方式で毎年改定される仕組みですが、介護、障害の報酬は包括方式で、経営実態調査ありきの体系で3年ごとの改定になっており、本当に経営が成り立たない仕組みです。いわゆる賃金や物価スライド型を取り入れ、毎年改定される仕組みにしないと、もたなくなってきています。

伊奈川氏
 ありがとうございます。お話をうかがっておりますと、包括方式の報酬というと、医療の診療報酬も思い浮かびますが、中医協(中央社会保険医療協議会)の委員も昨年10月まで務められた池端副会長は、いかがでしょうか。

池端氏
 医療の立場で言うと、2つあると思います。まず、自分たちがどういう努力をすればいいかということが1つ。それから、自分たちの努力だけではどうしようもないこと、医療も介護も公定価格ですので、国と国民に求めなくてはいけないこと、の2つがあると思っています。
 まず、自分たちができることは何かと考えると、これから2040年に向けて、それぞれの地域によって入院は増えるところ、減るところがありますが、外来はほとんど減っていきます。外来に通えなくなった方々が在宅にいるので、そこへアクセスする必要があります。これはもう診療所だけではなく、病院も在宅に対して何ができるかということを真剣に考えなければなりません。在宅や介護には関わりたくない、と言っているともう病院も生き残れない時代なのです。自分たちがやりたい医療ではなく求められる医療は何か、それを提供できるかということを真剣に考えるべきです。
 もう一つは、選択と集中です。私は実は外科医だったのですが、私に手術してほしいという人は、もう周りに誰もいません。求められているのは「家族を丸ごと診てほしい」ということです。それにこちらもあわせていかなければなりません。そういう意味での選択と集中です。高度急性期医療以外のところを自分たちで受けて、地域の病院あるいは介護施設とどう連携をしていくかということが大事になってきます。
 一方で、医療も介護もいま、本当に病んでいます。人件費がこれだけ上がって、なおかつ物価が賃金より上昇し、デフレ傾向からインフレになってしまうと、値段が決められた公定価格でやっている医療も介護も、経営努力だけではどう考えても無理なんですね。しかも診療報酬も介護報酬も、先ほど谷村副会長がおっしゃっていたように経営実態調査で、たかだか2〜3%利益があがっても、「まだ利益出ていますね」と言われてしまいます。一般企業の経営層の方に「利益が2〜3%だったらどうなるか」と聞くと、「それはもう役員全員、首が飛びます」と言うわけです。じゃあ、なんで医療と介護だけ「まだ利益出ているからいいでしょ!」と言えるのか。そんな対応だから、みんなどんどん地盤沈下するわけで、ここは本当に思い切った公定価格の引き上げ、やはり基本料、医療でいえば入院基本料、外来基本料を上げていただくことと、基準緩和しかないと思います。
 ただ、施設等の基準緩和をするときにやはり質をどう担保するかという問題があるので、質の担保のためには、ストラクチャーからプロセス、アウトカム評価をどうしていくかということを同時にやっていかないとうまくいかないと思います。

今後の展望と福祉医療機構への期待

伊奈川氏
 新年号ですので、改めまして今年の抱負や展望についてお聞きしたいと思います。あわせて、福祉医療機構への期待についてもお聞かせください。

谷村氏
 2040年検討会のとりまとめで整理したことを、実践していただく年だと考えています。これまで社会福祉法人は、介護・障害福祉・保育分野の事業、つまりケアワークを中心に行ってきたわけですが、それでは世の中の役に立つには足りないということで、制度外のことや地域支援等も行うようになってきました。これは、全国社会福祉法人経営青年会が将来的なビジョンとしても描いてきたことでもありますが、さらに孤独・孤立やひきこもりの方への支援など、課題解決型の地域づくり、まちづくりを実践していく年であればと思っています。さらに、行政が担っている分野での協働です。先ほど新たな事業の話もしましたが、こうしたものも社会福祉協議会だけではなく、我々も実践していくことが大事でしょう。さらに、災害への対応も含めてやっていければ、社会福祉法人の存在意義も示していけると思います。
 福祉医療機構への期待としては、昨年から始められた社会福祉法人の合併支援の事業です。ここは本当に大事な役割ではないでしょうか。M&A(合併・買収)を行う会社のダイレクトメールは、本当に毎月のように届きますが、かなり高額な料金がかかります。やはり公の信頼を得て委ねられるというのは福祉医療機構だと思います。客観的なお立場なので、デューデリジェンス(M&A取引において対象企業の財務・法務・人事等のリスクを事前に調査・分析するプロセス)まで踏み込んでの支援は難しいようですが、組織的に公認会計士協会や弁護士会などと連携することもできると思います。また、各都道府県の社会福祉法人経営者協議会につないでいただけると、実際に地元の行政とも話しあいながら課題解決に向けて動けると思います。この合併支援の機能をさらに強化していただき、我々も一緒にやっていければと考えています。

池端氏
 2026年は、医療に関しては新たな地域医療構想が始まり、それとともにかかりつけ医機能報告制度も本格的にスタートします。やはり自分の医療機関がどういう機能を担い、地域でどう役に立つかということを真剣に考えてマッチングしていかないと生き残れない時代が来ているので、変わることを恐れないでほしいと思います。私はいつも「チェンジ・オア・ダイ(変わるか、それとも座して死を待つか)」と言っているんですけれども、それぐらいのつもりで、迷ったら変えてみる。変えてだめだったら戻ればよいわけで、大抵、変えたらその先に見えてくるものがあります。
 それからもう一つ、私の好きな言葉で、福沢諭吉先生がおっしゃった「学者は国の奴雁(どがん)なり」という言葉があります。奴雁というのは、群れの雁が餌を食べている間、一羽が首を上げて周囲を警戒する見張り役の雁のことで、不意の難に備えて周囲に注意を払っているそうです。経営者は足元をどうしても見たくなるけれども、奴雁のように少し先を見て、2040年を見て経営を考えていただくとよいかと思います。
 最後に、福祉医療機構には素晴らしいデータの宝庫がありますから、そういうデータをぜひ生かしていただいて、我々にいろいろなアドバイスを、そしてその先には法人のマッチング支援等をぜひやっていただきたいと思います。また、市中銀行はいま医療法人に非常に冷たいので、福祉医療機構には医療・介護・福祉を守っていただく暖かい支援の融資を期待しています。

伊奈川氏
 ありがとうございました。今年は午年ですが、馬は前にしか進めないわけではなく後ろにも戻ることができるので、池端副会長がおっしゃっていたように、基本的には前に向かって進むけれども、うまくいかなかったら少し戻る、ということかなと思って聞いておりました。また、医療・介護・福祉で働いている人は900万人を超え、8人に1人という規模になっています。日本社会がよくなり、従事している方々の幸せにもつながる1年が始まることを期待しています。
 本日はお忙しいなかお集まりいただきまして、ありがとうございました。

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