合併のマッチング支援、顔合わせ調整等を実施
近年、社会福祉法人を取り巻く経営環境として、地域においては生産年齢人口の減少をはじめとする本格的な人口減少社会の到来、福祉ニーズの複雑化、多様化、地域社会の変化が進んでおり、社会福祉法人もこうした変化に応じた対応が求められている。
こうしたなか、社会福祉法人制度は、公益性と非営利性を確認・徹底するため、公益法人制度改革等を参考に2016(平成28)年に法改正が行われている。同改正では、@経営組織のカバナンスの強化(評議員会の必置化、一定規模以上の法人への会計監査人の導入等)、A事業運営の透明性(財務諸表・現況報告書・役員報酬基準等の公表に係る規定の整備等)、B財務規律の強化(適正かつ公正な支出管理・いわゆる内部留保の明確化・社会福祉充実残額の社会福祉事業等への計画的な再投資等)、C地域における公益的な取り組みを実施する責務、D所轄庁による指導監督の機能強化等が明確化された。
これにより必置化された評議員会では、運営に係る重要事項の議決機関として、理事、監事、会計監査人の選任・解任、報酬等の決議、定款の変更等のほか、合併の承認(吸収合併消滅法人、吸収合併存続法人、法人新設合併)も行うことが規定されている。なお、理事・評議員等は社会福祉法人と委任の関係にあり(社会福祉法第38条)、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負う。
その後、2020(令和2)年度には「社会福祉法人の事業展開に係るガイドライン」等が策定され、合併や事業譲渡等を円滑に進めるうえでの参考となっている。
また、2019(令和元)年度の「社会福祉法人の事業拡大等に関する調査研究事業」では、合併や事業譲渡等の「必要性を感じていない」という回答が55.5%(回答法人数=402)と半数を超えていた。しかし、近年の人材確保難や物価上昇、経営層の高齢化等、また小規模事業者ほど収益性・賃金水準・人手確保等が厳しい傾向にあり、事業承継・再編ニーズも増えていることから、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版」が2024(令和6)年6月21日に閣議決定された。この計画には、福祉医療機構による経営支援を進めることが記載されている。
こうした経緯を踏まえ、福祉医療機構では2025(令和7)年度から、「社会福祉法人合併支援業務」を開始している(図1)。
具体的には、合併を検討する社会福祉法人からのマッチング希望の相談・受付から、合併候補検討先の紹介と顔合わせの調整等までを行う(利用料は無料)。利用の流れは図2の通りとなっている。顔合わせ以降は、2法人間で合併に向けた交渉・協議を行うこととなる。
なお、合併相手として相手方を評価するための調査(デューデリジェンス)、相手方との交渉や合併にかかる契約締結等の事務、手続きについては、法人の責任において実施することとなる。法令上の合併の手続きは、図3のようになっている。
社会福祉法人合併支援の申請は、福祉医療機構のホームページから経営サポート→社会福祉合併支援に進み(図4)、「合併により吸収されることを検討している法人」と「吸収合併を検討している法人」でそれぞれ別のリンク先に進んで申請することとなる(図5)。申し込みは必ず法人の役職員が行う必要があり、役職員ではないコンサルティング会社等が代行して行うことはできない。福祉医療機構のホームページでは、同支援事業のQ&Aも公開している(別掲参照)ので、参考としたい。
なお、「合併により吸収されることを希望する法人(被吸収法人)」とは、自法人を別の法人に譲り渡すことを希望する(合併後に解散する)法人であり、事業譲渡については同事業の対象外となっている。
合併の目的は財務状況の安定、人材確保・育成等
社会福祉法人の合併等については、当然ながら所轄庁の認可が必要となるが、これまでの合併認可件数は、表1の通り、年間10〜20件程度で推移している。このうち、2019(令和元)年度から2022(令和4)年度までに合併の認可実績がある所轄庁数については、所轄庁アンケート調査(回答数=111団体/令和5年度社会福祉推進事業 社会福祉法人の事業譲渡等のあり方に関する調査研究事業)によると、36.9%(41自治体)が「合併認可実績あり」、63.1%(70自治体)が「合併認可実績なし」となっている。また、実績がある場合でも、多くても年に1回程度となっている。「相談されても明確な判断基準がなく、回答に困ることがある」等の回答もあり、所轄庁における指導内容は、合併の目標期日を踏まえ、いつ頃までにどのような書類を準備すればよいか、公告を出すのにどれくらいの時間を取る必要があるか等のスケジュールに関する助言、書類の書き方に関する助言が多くなっている。
なお、合併認可実績がある41自治体からは、58法人分の詳細について回答が得られ、合併の目的は「財務状況の安定のため(62.1%)」、「人材確保、育成のため(48.3%)」の回答割合が多くなっている(表2)。合併の原因は、「必要な人数の人材を採用できないため(24.1%)」、「経営者の高齢化、健康問題(22.4%)」、「コロナ禍以外の要因による収入減(19.0%)」、の回答割合が多くなっている(表3)。
事業を継続させ、地域の福祉インフラを維持するためには、合併等を検討することも必要な時代となっている。