令和8年度は、診療報酬改定のほか、介護報酬、障害福祉サービス等報酬の臨時改定が行われます。各改定のポイントをみていきます。
<診療報酬>
2年度にわたり段階的に改定率を設定
中央社会保険医療協議会(中医協)は2月13日、令和8年度の診療報酬改定案について了承し、上野厚生労働大臣に答申した。2026(令和8)年度の改定では、@物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取り巻く環境の変化への対応(重点課題)、A2040年頃を見据えた医療機関の機能の分化・連携と地域における医療の確保、地域包括ケアシステムの推進、B安心・安全で質の高い医療の推進、C効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上、の4つの基本方針のもと、改定率は全体で+3.09%(令和8年6月施行)となっている。なお、これは令和8年度および令和9年度の2年度平均(令和8年度+2.41%、令和9年度+3.77%)であり、賃金や物価が継続的に上昇することを見込んだもの。
+3.09%の内訳をみると、@賃上げ分+1.70%(2年度平均/令和8年度+1.23%、令和9年度+2.18%)、A物価対応分+0.76%(2年度平均/令和8年度+0.55%、令和9年度+0.97%)、B食費・光熱水費分+0.09%(入院時の食費基準額の引き上げ(40円/食)、光熱水費基準額の引き上げ(60円/日))、C令和6年度診療報酬改定以降の経営環境の悪化を踏まえた緊急対応分+0.44%(病院+0.40%、医科診療所+0.02%、歯科診療所+0.01%、保険薬局+0.01%)、D後発医薬品への置き換えの進展を踏まえた処方や調剤に係る評価の適正化、実態を踏まえた在宅医療・訪問看護関係の評価の適正化、長期処方・リフィル処方の取り組み強化等により効率化▲0.15%、E@〜Dを除く改定分+0.25%、となっている。
薬価等は▲0.87%で、内訳は薬価▲0.86%(令和8年4月施行)、材料価格▲0.01%(令和8年6月施行)となっている。主な改定項目は次の通り。
〈賃上げ・物価対応〉
●賃上げに向けた評価
令和8・9年度それぞれ+3.2%分(看護補助者・事務職員は5.7%)の賃上げに向け、ベースアップ評価料を見直し。また、夜勤職員の確保を行う観点から、夜勤手当に充てることを可能とする(図1、2参照)。
(例)外来・在宅ベースアップ評価料(T) 初診時 6点→17点※
入院ベースアップ評価料 1〜250点※
なお、令和6年度及び令和7年度において賃上げを実施している保険医療機関とそれ以外の保険医療機関を区別する観点から、入院基本料等に減算規定を新設する。
(例)急性期一般入院料1の場合 121点減算(1日あたり)
●物価対応に向けた評価
令和8・9年度の物価上昇に対応するため「物価対応料」を新設。
(例)(新)外来・在宅物価対応料初診時 2点※
(新)入院物価対応料急性期一般入院料1 58点※
※…令和9年度は2倍となる予定
●入院料等の見直し
経営環境の悪化を踏まえた対応や、医療機関等における賃上げ余力の回復・確保のため、入院料等を引き上げる。
(例)急性期一般入院料1 1688点→1874点
特定集中治療室管理料1 7日以内 1万4406点→1万4980点
地域包括ケア病棟入院料1 40日以内 2838点→2955点
〈急性期・高度急性期入院医療〉
●急性期病院一般入院基本料等の新設
地域ごとの急性期の病院機能を確保する観点から、病院の機能に着目し、体制整備も含めた入院料を新設。
急性期病院A一般入院料 1930点
急性期病院B一般入院料 1643点
●特定機能病院入院基本料の見直し
特定機能病院の承認基準変更を踏まえ、区分を見直す。
特定機能病院A入院基本料7対1入院基本料(一般病棟) 2146点
特定機能病院B入院基本料7対1入院基本料(一般病棟) 2136点
特定機能病院C入院基本料7対1入院基本料(一般病棟) 2016点
●急性期総合体制加算の新設
総合入院体制加算と急性期充実体制加算を統合し、総合性と手術等の集積性をもつ拠点的な病院を評価する体系に見直す。
(新)急性期総合体制加算17日以内(1日につき) 530点
●特定集中治療室管理料等の見直し
ICU・HCUを有する医療機関の機能を踏まえ、救急搬送・全身麻酔に係る一定の病院実績を要件とする。
●多職種が病棟で協働する体制の評価
患者像にあわせた専門的な治療やケアを提供する観点から、看護職員、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士または臨床検査技師の協働を評価する。
(新)看護・多職種協働加算1(1日につき) 277点
(新)看護・多職種協働加算2(1日につき) 255点
〈包括期・慢性期入院医療〉
●地域包括医療病棟の見直し
高齢者の特性に配慮し、重症度、医療・看護必要度、平均在院日数、ADL低下割合等の基準を見直す。また、医療資源投入量の実態等を踏まえ、予定・緊急入院別、急性期病棟の併設の有無別に評価を行う。
地域包括医療病棟入院料3050点
→地域包括医療病棟入院料1
入院料1 3367点
入院料2 3267点
入院料3 3117点
●地域包括ケア病棟の見直し
在宅医療や協力対象施設への後方支援機能を高く評価する観点から、在宅患者支援病床初期加算の対象患者のうち、救急搬送された場合の評価対象を緊急入院した場合に拡大する。また、地域包括ケア病棟におけるリハ・栄養・口腔の一体的管理をさらに推進する観点から、加算を新設する。
(新)リハビリテーション・栄養・口腔連携加算(14日まで) 30点
●回復期リハビリテーション病棟の見直し
より質の高いリハビリテーションを推進する観点から、回復期リハビリテーション実績指数に係る要件を、従前はなかった入院料2・4にも導入する。また、入院料1を対象に、排尿自立支援、退院前訪問指導の実施割合を要件とする加算を新設する。
(新)回復期リハビリテーション強化体制加算(1日につき) 80点
●質の高い包括期入院医療の評価
・在宅医療・介護保険施設の後方支援等に一定の体制と実績を持つ医療機関に対する評価を新設する。
(新)包括期充実体制加算(14日まで) 80点
・生活に配慮した支援を強化する観点から、包括期入院医療を担う病棟での入退院支援加算1の評価を引き上げる。
入退院支援加算1(退院時1回)地域包括医療病棟入院料等の場合
700点→1000点
・身体的拘束最小化を管理者が組織的に行う場合の評価を新設する。
(新)身体的拘束最小化推進体制加算(1日につき) 40点
・入院患者の歯科治療を行う取り組みの評価を新設する。
(新)口腔管理連携加算(入院中1回) 600点
〈業務効率化・負担軽減等に向けた取り組み〉
●ICT等の活用による看護業務効率化・負担軽減
見守り、記録、医療従事者間の情報共有に関し、ICT機器等の活用により看護業務を軽減したうえで、適切に患者の看護を行うことができる体制がある場合は、1日に看護を行う看護職員の数等の基準について、1割以内の範囲で柔軟化する。
●医師事務作業補助体制加算の見直し
生成AI、音声入力システム、RPA、説明動画を組織的に活用する場合、医師事務作業補助者1人を最大1.3人として配置人数に算入できることとする。
〈人口の少ない地域・医師偏在対策等〉
●人口少数地域で医療提供機能を確保する評価の新設
・人口少数地域の外来・在宅医療の確保に係る支援と病状の急変等で緊急入院が必要な患者を受け入れる体制のある病院を評価。
(新)医療提供機能連携確保加算(入院初日) 600点
・当該病院が情報通信機器を用いて医学管理を行った場合を評価。
(新)医療提供機能連携確保加算(月1回) 50点
●診療科偏在対策の推進
・若手医師が減少し、医療提供体制の確保が必要とされている診療科について、当該診療科の医師を対象として勤務環境・処遇改善等を行う取り組みを評価。
(新)地域医療体制確保加算2(入院初日) 720点
・加えて、長時間高難度手術を実施する体制を整備し、外科医の勤務環境・処遇の改善を図ったうえで手術を行う場合を評価。
(新)外科医療確保特別加算所定点数の100分の15
〈外来医療の機能分化・強化等〉
●外来機能分化の推進
・特定機能病院等の外来診療料等の減算に係る逆紹介割合の基準を20%引き上げるとともに、直近1年以内に12回以上再診を行った患者を、新たに外来診療料の減算対象患者とする。
・診療所または200床未満の病院が、特定機能病院等から紹介を受けて初診を行う場合の評価を新設する。
(新)特定機能病院等紹介患者受入加算 60点
●生活習慣病管理料の見直し
・生活習慣病と関連の乏しい医学管理料等を包括外とする。
・簡素化の観点から療養計画書の患者署名を不要とする。
・糖尿病管理における眼科・歯科との連携を評価。
(新)眼科(歯科)医療機関連携強化加算 60点
・外来データに基づく、質の高い生活習慣病管理を評価。
(新)充実管理加算1/2/3 30/20/10点
●時間外対応体制加算の見直し
名称を変更するとともに、評価を引き上げる。
時間外対応加算1/2/3/4 5/4/3/1点
→時間外対応体制加算1/2/3/4 7/5/4/2点
〈質の高い在宅医療・訪問看護の推進〉
●在宅医療充実体制加算の新設
在宅緩和ケア充実診療所・病院加算について、重症患者の対応体制を有し、地域で在宅医療において積極的役割を担う医療機関をさらに評価する観点から、改変する。
在宅時総合医学管理料
(新)在宅医療充実体制加算(単一建物患者が1人の場合) 800点
●同一建物に居住する利用者への訪問看護の見直し
・同一建物に居住する利用者への訪問看護について、人数及び1月あたりの訪問日数に応じてきめ細やかな評価に見直す。
・高齢者向け住まい等に併設・隣接する訪問看護ステーションが行う、24時間体制で頻回に行う訪問看護を1日あたりで包括的に評価する項目を新設する。
(新)包括型訪問看護療養費(1日につき)1
20人未満ハ訪問看護時間90分以上 1万4010円
●質の高い訪問看護の評価
・地域と連携して精神科訪問看護を提供する訪問看護ステーションの評価を新設する。
(新)機能強化型訪問看護管理療養費4 9030円
〈重点的な対応が求められる分野〉
●救急医療
・夜間休日救急搬送医学管理料を改変し、救急外来医療を24時間提供する体制の評価を拡充する。
(新)救急外来医学管理料
1 救急搬送医学管理料1 800点
2 夜間休日救急医学管理料1 600点
・救急患者連携搬送料について、患者等搬送事業者等を活用した転院搬送や、下り搬送の受入側の評価を行う。
(新)救急患者連携搬送料1ロ(1) 1000点
(新)救急患者連携搬送料2イ 800点
●救急医療医療DX・オンライン診療
・医療DX関連施策の進捗等を踏まえ、医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算を廃止し、マイナ保険証の利用、電子処方箋、電子カルテ共有サービス、サイバーセキュリティ対策等に係る新たな評価を新設する。
(新)電子的診療情報連携体制整備加算初診時1/2/3 15点/9点/4点再診時2点
・D to P with Nについて、訪問看護と同時に実施できるようにするほか、訪問看護を同時に実施せずに患家に看護師等が訪問する場合の評価を新設する。また、訪問した看護師等が検査・処置等を実施する場合の評価を新設する。
(新)訪問看護遠隔診療補助料(1日につき) 265点
(新)看護師等遠隔診療検査実施料イ/ロ 100点/150点
(新)看護師等遠隔診療注射実施料 100点
(新)看護師等遠隔診療処置実施料イ/ロ 100点/150点
※D to P with N…患者の同意のもと、オンライン診療時に、患者は看護師等が側にいる状態で診療を受け、医師は診療の補助行為をその場で看護師等に指示すること。
■ この記事は月刊誌「WAM」2026年4月号に掲載されたものを一部変更して掲載しています。
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