2025(令和7)年度までは、自治体の手上げ方式で提供されていた「こども誰でも通園制度」が、2026(令和8)年4月から全国で本格実施されています。これまで、新たに発生する業務(認可、確認、給付認定、給付費の支給等)に係る業務フローや参考様式が公表され、2026(令和8)年3月には、同制度の保育士向け研修資材も公表されました。実施する際のポイント、事業者の対応についてみていきます。
「保育の量の拡大」から「すべての子ども・子育て家庭を支援」へ
我が国における保育政策は、「保育の量の拡大」を目指し、2013(平成25)年度からの「待機児童解消加速化プラン」、2018(平成30)年度からの「子育て安心プラン」、2021(令和3)年度からの「新子育てプラン」で、待機児童対策を中心に行われてきた。これらの施策により、待機児童数の減少、過疎地域での保育所定員充足率の低下等がみられる結果となった。
これを受け、それまでの「保育の量の拡大」からの転換を図り、すべての子どもに適切な養育や健やかな成長・発達を保障していくことを求める「こども基本法」が2022(令和4)年4月に国会に提出、同年6月に可決・成立および公布され、2023(令和5)年4月から施行されている。
「こども誰でも通園制度」は、2024(令和6)年6月に成立した「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」により、月一定時間までの利用可能枠のなかで、就労要件を問わず時間単位等で柔軟に利用できる新たな通園給付として創設された。0歳6カ月から満3歳未満で保育所等に通っていない子どもが対象となっている。
実施に向けては、まず2024(令和6)年度に「制度の本格実施を見据えた試行的事業」が118自治体で行われた。2025(令和7)年度には法律上で制度化(地域子ども・子育て支援事業/自治体の判断において実施)、2026(令和8)年度に法律に基づく新たな給付制度(全自治体で実施)となった。なお、2025(令和7)年度は、231自治体(実施予定も含めると252自治体/2025年12月2日時点)で事業が開始されており、実施主体別では社会福祉法人と公立が同数で最も多くなっている(図1)。
大きく「余裕活用型」と「一般型」に分かれる
実施方法は、保育所等の空き定員の枠を活用して受け入れを行う「余裕活用型」と、定員を別に設け、在園児と合同または専用室を設けて受け入れを行う「一般型(在園児合同実施、専用室独立実施、独立施設実施)」に分かれている(図2)。
実施方法別のポイントは、次の通りとなっている。
〈余裕活用型〉
・ 保育所、認定こども園、家庭的保育事業等(居宅訪問型保育事業を除く。)を行う事業所において当該施設または事業を利用するこどもの数が定められた利用定員の総数に満たない場合において、当該利用定員数から当該利用こども数を除いた数以下の数の乳幼児を対象として実施が可能。
・ 余裕活用型乳児等通園支援事業においては、設備および職員の基準は、設備運営基準第25条の規定により、本体施設または事業所について定める基準に従う。
・ 乳児および1・2歳児の空き定員枠を活用して、本制度の対象となるこどもの受入れを行い、利用こども(こども誰でも通園制度を利用するこどものことをいう。以下同じ。)は、主に同年齢の在園児と同じクラスで過ごす。
・ 定員内での受け入れのため、各クラスの保育者による受け入れが基本となる。
・ 安全面に十分な配慮が必要なこととあわせて、空き定員の変動にあわせて、本制度の受入れ枠も増減することに留意(※)が必要。
※余裕活用型を利用しているこどもが、定員が埋まることで制度自体を利用できなくなることがないよう、1年を通じて空きが想定されている事業所で余裕活用型を実施したり、他施設での利用に適切につながることができるよう配慮したり、保護者へ事前に周知を行うことで理解を得たりすることが望ましい。また、同時に一般型の認可も受けることで、一年を通じて安定した受入れを行うことも考えられる。
〈一般型〉
●在園児合同実施の場合
・ こどもに関わる職員は、在園児の保育体制とは別に、設備運営基準第22条に則し、乳児おおむね3人に対して従事者1人、満1歳以上満3歳未満の幼児おおむね6人に対して従事者1人以上を配置する。なお、従事者の半数以上が保育士となること、配置する従事者が2人を下回らないことを遵守する必要がある。
・ 各室をはじめとした設備については、在園児とあわせた受け入れ人数に対して必要な面積を満たしている場合は兼ねることができる。
・ 専用室がある場合:受け入れは専用室で行い、基本的な生活や活動は在園児と合同で実施する。活動内容や時間帯、こどもの状況など実情に応じて、専用室を活用する。
・ 専用室がない場合:すべての時間帯を通じて、在園児とともに過ごすことが基本となる。
・ どちらの場合も、利用するこどもと在園児ともに無理なく過ごすことができるよう配慮することが必要。
●専用室独立実施の場合
・ 基本的に本制度の対象となるこども同士で過ごす形態となる。活動内容や時間帯によっては、実施事業所の実情に応じて在園児と一緒に過ごすことも可能。年齢の近いこどもとの関わりを通じてさまざまな人やものへの関心が広がるよう、在園児と交流する機会を積極的に設けたり、園庭や保育室などそれぞれの施設が有する、こどもの育ちに適した場で過ごす時間を位置づけたりするなど、それぞれの事業所の特性を生かして、柔軟に運営することが考えられる。
●独立施設実施の場合
・ こどもに関わる職員は、本制度の基準に則し、乳児おおむね3人に対して従事者1人、満1歳以上満3歳未満の幼児おおむね6人に対して従事者1人以上を配置する。なお、従事者の半数以上が保育士となること、配置する従事者が2人を下回らないことを遵守する必要がある。
・ 設備に関しては、設備運営基準に基づき市町村の条例で定められた基準を満たす必要がある。
・ 連携先を設けて、こどもの経験がより豊かになるよう工夫したり、フォローアップや緊急時の支援が受けられるよう、適切な運営体制の確保に努めたりすることが求められる。
利用パターンは「定期利用」と「柔軟利用」
利用パターンは、定期利用(利用する事業所を限定して登録したり、利用する曜日や時間帯を固定するなど、特定の事業所を定期的に利用する形)と柔軟利用(利用する事業所、月、曜日や時間を固定せずに利用する形)が考えられるが、利用パターンの設定にあたっては、それぞれの特徴や留意点を念頭に、地域の状況等を踏まえ、自治体と相談のうえ、利用方法を選択したり、組み合わせて実施するか等を検討する。このほか、食事提供や親子通園を取り入れるかどうか、特別な支援(障害児、医療的ケア児等)が必要な場合の対応等についても検討する必要がある。なお、特別な支援が必要となるこどもや家庭の受け入れにあたっては、専門人材の確保や施設の環境整備等が求められる。また、予約や利用のキャンセルが行われた場合の対応についても定めておくことが必要となる。
こども誰でも通園制度の利用にあたっては、2025(令和7)年度から運用が開始された「つうえんポータル」を利用することが原則となっている(図3)。なお、つうえんポータルに関して、保護者が主体的に手続きを行うことに困難さがあるなど、こどもが制度を利用する機会を逸するおそれがある場合、市町村および事業者において、つうえんポータル上で代理予約を行うことも可能(利用実績のあるこどものみ)となっている。
なお、こども誰でも通園制度に従事する保育士以外の者は、職員向け研修を修了する必要がある。研修資材(動画・テキスト・習熟度チェックリスト)は、「乳児等通園支援事業(こども誰でも通園制度)の従事者への研修に関する調査研究」の実施者である三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社のホームページに掲載※1されている。
※1… https://www.murc.jp/library/survey_research_report/koukai_260306/
給付費の公定価格は
給付費の公定価格は、次の通りとなっている(要件等の詳細については「特定乳児等通園支援に要する費用の額の算定に関する基準の実施上の留意事項について」※2(令和8年4月1日/通知)参照)。
※2… https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/0afde15f-8760-4477-806a-ed72b6916696/73ef8dc8/20260406_policies_hoiku_daredemo-tsuen_76.pdf
〇基本単価
ア 0歳児の乳児等支援給付認定子ども:こども1人1時間あたり 1700円
イ 1・2歳児の乳児等支援給付認定子ども:こども1人1時間あたり 1400円
〇障害児加算
600円(ただし、医療的ケア児加算または要支援家庭こども加算をする場合には算定できない)
〇医療的ケア児加算
2500円(ただし、障害児加算または要支援家庭こども加算をする場合には医療的ケア児加算をすることはできない)
〇要支援家庭こども加算
600円(ただし、障害児加算または医療的ケア児加算をする場合には要支援家庭こども加算をすることはできない)
〇初回対応加算
ア 0歳児:1700円
イ 1・2歳児:1400円
〇生活困窮家庭等負担軽減加算(ア:生活保護法の被保護者、イ:ア以外の市町村民税世帯非課税者、ウ:市町村長が特に支援が必要と認めた世帯(ア、イを除く)
ア アの場合
@1時間当たり100円以上200円未満の減額を行った場合
1時間当たり 100円
A1時間当たり200円以上300円未満の減額を行った場合
1時間当たり 200円
B1時間当たり300円以上の減額を行った場合
1時間当たり 300円
イ イおよびウの場合
@1時間当たり100円以上200円未満の減額を行った場合
1時間当たり 100円
A1時間当たり200円以上の減額を行った場合
1時間当たり 200円
〇賃借料加算(事業者が、特定乳児等通園支援事業の用に供する建物を賃借し賃料を支払っている場合)200円
〇特別地域加算(離島、過疎地域等)300円
〇保護者支援面談加算(30分以上の実施、記録等)1回につき 1400円
こども家庭庁のホームページには、こども誰でも通園制度の公定価格に関するQ&A※3こども誰でも通園制度に関するQ&A※4(それぞれ随時更新)、こども誰でも通園制度の実施に関する手引き※5、事例集※6など、豊富に資料が掲載されている。実施を検討する際には、これらを活用したい。
※3… https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/0afde15f-8760-4477-806a-ed72b6916696/679c12ec/20260406_policies_hoiku_daredemo-tsuen_77.pdf
※4… https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/0afde15f-8760-4477-806a-ed72b6916696/31b7886a/20260406_policies_hoiku_daredemo-tsuen_79.pdf
※5… https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/0afde15f-8760-4477-806a-ed72b6916696/60fe9485/20260330_policies_hoiku_daredemo-tsuen_67.pdf
※6… https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/0afde15f-8760-4477-806a-ed72b6916696/9063d6fb/20250930_policies_hoiku_daredemo-tsuen_18.pdf
■ この記事は月刊誌「WAM」2026年5月号に掲載されたものを一部変更して掲載しています。
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