現在、ケアマネジャー(介護支援専門員)資格は5年ごとの更新制となっており、経験に応じた研修(32時間以上〜88時間以上)を受けなければ、業務を継続できなくなります。更新研修の負担が重いことから、これを機に退職してしまうケースも少なくありません。ケアマネジャーが不足するなか、厚生労働省は、更新制の廃止を社会保障審議会介護保険部会で議論、この内容を含む社会福祉法等の一部改正法案を国会(第221回)に提出しています。なお、一定の研修の受講は義務として残しています。経緯と主な内容をみていきます。
ケアマネジャー資格の更新制の課題は
高齢化の進行に伴い医療ニーズの高い高齢者、認知症高齢者等が増加するなか、要介護者等からの相談に応じ、その心身の状況等に応じて適切な介護サービスを利用できるよう自治体やサービス提供事業者等との連絡調整を行うケアマネジャー(介護支援専門員)の役割の重要性は増大している。
一方で、ケアマネジャーの従事者数は、2018(平成30)年度をピークに横ばい・減少傾向にあり(図1)、近年のケアマネジャーの年齢構成等を踏まえると、10年以内には担い手が急激に減少していくことが見込まれることから、幅広い職種・資格等からの受験を促すこと、時間的・経済的に負担の大きい法定研修の見直し等が求められている。なお、法定研修のなかでも更新研修(5年ごと)については、ケアマネジャー資格の維持に必須の条件であり、受講しない場合、直ちに資格を失い、業務を行うことができなくなる仕組みとなっている。
法定研修にかかる時間は、対象者別に32時間以上〜88時間以上となっており(表1)、研修費用については地域医療介護総合確保基金の活用や、条件によっては雇用保険の教育訓練給付金の利用が可能ではあるものの、研修教材等の実費相当分や受講者の旅費・宿泊費は基本的に受講者が負担することとなっている。
研修費用の受講者負担についても都道府県によって差があり(3頁表2)、2倍以上の開きがある。なお、所属している法人からの受講料の補助*1については、「全額法人が負担している(51.2%)」、「一部法人が負担している(13.7%)」があわせて約65%である一方、「全額自分が負担している(34.0%)」人も3割以上存在している。
法定研修の実施方法は、同じ時間・場所に集まり講師から対面で受ける形式の集合研修と、Web会議システム等を利用し動画で受ける形式のオンライン研修があるが、法定研修の全課程・全科目においてオンラインで研修を実施した都道府県は22、全課程・全科目を対面で実施した都道府県は1(令和4年度時点*2)となっている。それぞれの形式にメリット・デメリットがあるが、時間的・経済的な負担がより重いのは、集合研修といえよう。
各種の調査・研究でも、法定研修について負担に感じることとしてあげられること(複数回答)として、「研修を1回1日でも休んだらその年に更新ができなくなること」(79.8%)、「受講料が高額であること」(68.4%)、「2回目以降の更新の場合、同じ内容を何回も受講しなくてはいけないこと」(54.4%)等が多くなっている(図2)。また、法定研修の時間数については「多い」が62.7%、「どちらかといえば多い」が27.3%等となっている。法定研修の意義については、「意義はあると思うが、資格更新の条件とすべきではないと思う」が59.5%と、最も多くなっている。
*1…令和4年度老人保健健康増進等事業「介護支援専門員の資質向上に資する研修等のあり方に関する調査研究事業」((株)日本総合研究所)より
*2…第1回ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会参考資料より
2027(令和9)年の秋ごろ以降に廃止へ
ケアマネジャー資格の更新制は、2005(平成17)年の介護保険法改正により法定化されたものであるが、当時より一段と少子高齢化が進み、深刻な人材不足が続いていること、また更新期限を機に退職してしまうケアマネジャーも少なくない状況から、2024(令和6)年4月から「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」で議論を開始。同年12月にとりまとめられた中間整理では、法定研修のあり方について「受講者の経済的・時間的負担が大きいということが課題。このため、ケアマネジャーの資質の確保・向上を前提としつつ、可能な限り経済的・時間的負担の軽減を図ることが適当。その際、更新研修については、利用者への支援に充当する時間の増加につなげる観点から大幅な負担軽減を図るとともに、あわせてそのあり方を検討」と示した。具体的には、@研修の質の確保・費用負担の軽減の観点から、全国統一的な実施が望ましい科目について、国レベルで一元的に作成する方策の検討、A都道府県は、研修の実施状況や受講者の満足度等の丁寧な把握に努めながら、地域の実情も踏まえつつ、真にケアマネジャーの資質の確保・向上につながる研修を実施。また、都道府県の研修向上委員会等について、あり方を検討、B研修受講に当たっての負担を軽減するため、オンライン受講の推進や分割受講の仕組みなど、柔軟な受講が行えるようにする方策を検討するとともに、地域医療介護総合確保基金の活用や教育訓練給付制度等の制度について、引き続き周知、という項目を掲げている。
この内容を踏まえ、社会保障審議会介護保険部会で制度の見直しが議論されてきた。2025(令和7)年12月25日に、同部会では「介護保険制度の見直しに関する意見」をとりまとめ、このなかでケアマネジャーの更新制・法定研修について「近年では、適切なケアマネジメント手法を法定研修に組み入れるなど、ケアマネジャーの専門性の向上に向けた取り組みが進んできたこと等を踏まえ、法定研修の受講を要件とした介護支援専門員証の有効期間の更新の仕組みは廃止(主任ケアマネジャーについても同様)とすることが適当。一方で、新たな知識と技能の習得に継続的に取り組んでいくことの重要性は変わるものではなく、引き続き定期的な受講を行うことが適当」と示した。これにより更新制と研修受講の紐づけがなくなり、研修を受講しないことで直ちに資格を失い、ケアマネジャーの業務ができなくなるという取扱いがなくなる効果が見込まれる。
なお、研修の受講方法については「分割して受講するなど、柔軟な受講ができる環境整備を行うとともに、可能な限り時間数を縮減することが適当」としている(図3)。
2026(令和8)年4月3日には、とりまとめの内容を含む「社会福祉法等の一部を改正する法律案」が国会(第221回)に提出された(6頁図4)。更新制の廃止は「公布後1年6月以内に政令で定める日」としている。法案が成立する時期にもよるが、現状では2027(令和9)年の秋ごろ以降となることが見込まれる。
法案では、更新制を廃止する一方、ケアマネジャーの資質の保持・向上を図るための研修を受けること、ケアマネジャーを雇用している事業者・施設に研修の受講機会の確保措置を義務化している。受講機会の確保措置をとっていない場合、都道府県からの勧告を受け、さらに期限内に従わなかった場合には公表されることとなる。
このほか、事業者・施設には、ケアマネジャーを業務に従事させたとき、あるいは従事しなくなったときには、ケアマネジャーの氏名を県に報告する必要がある。
■ この記事は月刊誌「WAM」2026年6月号に掲載されたものを一部変更して掲載しています。
月刊誌「WAM」最新号の購読をご希望の方は次のいずれかのリンクからお申込みください。