通所リハビリテーションの経営改善に向けた視点
通所リハビリテーションは、在宅復帰や在宅生活を支える生活期リハビリテーションの拠点として重要な役割を担っています。しかし、医療依存度の高まりによる重度者への対応、送迎業務の負担増など、運営環境は年々厳しくなっています。
独立行政法人福祉医療機構(以下、「WAM」と言う。)の調査*では、2023年度の通所リハビリテーションに関連する介護老人保健施設の施設類型別赤字率は、基本型28.5%、加算型35.4%、在宅強化型31.3%、超強化型28.0%、その他型45.2%とされています。
前年より改善傾向はあるものの、一定の赤字リスクを抱えている状況は変わらず、経営改善は避けて通れない課題となっています。
利用率の低さがもたらす構造的な損失
通所リハビリテーションの経営でまず注目すべきは、利用率の低さです。
WAM調査によると、通所介護(通常規模型)の利用率が67.9%であるのに対し、通所リハビリテーション(基本型)は56.2%にとどまっています。1日当たりの利用者数は通所介護21.8人、通所リハビリテーション21.1人と大きな差はありませんが、定員の観点からみると状況は大きく異なります。通所リハビリテーションでは、約16.4人分の空きが生じており、スペースを十分に活用しきれていないことがわかります。
さらに、通所リハビリテーションは通所介護と比較すると高単価のサービスです。
利用者1人1日当たりの事業収益は、基本型で1万1022円、在宅強化型では1万1405円となっています。一方、通所介護の通常規模型は9,437円であり、単価の差は明確です(表)。
高単価であるにもかかわらず利用率が低いという状況は、収益機会の損失に直結します。仮に基本型の通所リハビリテーションにおいて、16.4人を追加して受け入れることができれば、1日当たり約18万760円の増収が見込まれます。
経営面での改善効果は極めて大きいといえます。
利用率を高めるための本質的な視点
利用率向上に向けて最も重要なのは、「通所リハビリテーションが果たす価値」を地域に正しく伝えることです。
利用者の多くはリハビリテーションを目的としていますが、理学療法士などが関わる個別リハビリテーションは約20分程度で終了します。それ以外の時間が、通所介護と大きく変わらないサービス提供となっている場合、利用者が求めている目的が十分に果たされていない可能性があります。
本来、通所リハビリテーションは、心身機能の維持回復と日常生活の自立支援を目的としたサービスです。視点を変えると、病気などにより、日常生活のなかで心身機能の低下や生活上の不便を実感したため、それを解決することを目的として利用していると考えられます。
このことから、インテークの時点で利用者が日常生活のなかで解決したいと考えている課題を丁寧に把握し、その課題に対して、個別のリハビリテーションだけではなく、サービスを利用している時間全体を活用して解決につながるサービスを提供することが重要です。例えば、余暇活動のなかに自宅動作の要素を取り入れるなど、生活に直結したプログラムを提供することで、利用者の満足度を高めることができます。
こうした取り組みが継続され、地域に対して積極的に発信されることで、通所リハビリテーションの役割や価値が明確に伝わり、新規利用者の獲得にもつながります。
介護職員の能力強化と組織体制
通所リハビリテーションは、急性期や回復期で実施される医療保険のリハビリテーションとは異なり、慢性期から生活期の方を支える役割が大きいという特徴があります。そのため、理学療法士等だけでなく、介護職員が利用者のQOL向上に深く関わることになります。
このことから、利用者が生活のどの部分に不便を感じているのかを聴きとるコミュニケーション力や傾聴力、余暇活動に自宅動作の要素を組み込む発想力、自宅の状況を積極的に確認できる行動力など、サービス提供時間の大半に関わっている介護職員の能力強化が行われることで、利用者の満足度向上につながります。
これらの能力は、相談員や介護支援専門員の関わりによるコミュニケーション支援、理学療法士などの専門職によるプログラム設計の助言、管理者による評価制度の整備によって育成することができます。
また、適切な評価によって職員が成長を実感できるようになることで、サービス全体の質が向上し、利用者満足にもつながります。
今後の改善に向けて
通所リハビリテーションは、利用率の改善とサービス価値の明確化によって、単体でも十分な収益を確保できる可能性をもつ事業です。
地域のリハビリテーションの拠点としての役割を再整理し、取り組みを積極的に発信することで、新規利用者の獲得につながります。また、職員育成に取り組むことで、利用者の目的にあった質の高いサービス提供が可能となり、経営改善にも良い影響をもたらします。
通所リハビリテーションの特性を踏まえながら、利用率向上、サービス価値の発信、職員育成という3つの視点を中心に今後の経営改善を進めていくことが重要です。
※ この記事は月刊誌「WAM」2026年1月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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