利用者からみる使い勝手の良さと経営課題
平成18年4月の介護保険法改正にあわせ「小規模多機能居宅介護」が新設されました。当初はその事業イメージとオペレーションの想定がしにくいという理由から、平成18年には事業所数はわずか187事業所でした。その後事業所数は増加し、令和5年には5,523事業所にまで増えています。現在の事業所数は過去5年に遡ると、令和3年の5,614事業所をピークにして微増減の最中にいます。
今回は小規模多機能居宅介護の利用者視点からみる特徴と、事業特性からの経営課題を考えていきたいと思います。小規模多機能居宅介護の事業構造としては、従来から介護保険サービスにあった「訪問介護」、「通所介護」、「短期入所」のサービスを住み慣れた地域で包括的に提供していくという形式により、在宅での生活が継続できるよう支援するために創設されたサービス形態です。利用者は中重度を想定しています。
一見、在宅介護における理想的な事業に思われますが、デメリットとしては利用者からすると複数事業所の組み合わせサービスは成立しないことや居宅介護支援事業所が変更になり、慣れた担当ケアマネジャーからの変更が発生すること、事業所からすると包括的なサービス提供を求められるため、介護に投下する労働量が報酬に見あわない可能性などが含まれています。実際、在宅生活において介護サービスが必要になった場合には、訪問介護のみ、通所介護のみ、あるいは組みあわせて1週間のうち数日の介護サービスを利用するケアプランが多く、小規模多機能居宅介護の利用は、そこから少し介護量が増加したときに検討されることが多いようです。
そのため、要介護1、2でも介護量が区分支給限度額を上回りそうな利用者、あるいは要支援1、2であっても社会生活上、手厚い関わりを要する利用者も、小規模多機能居宅介護の対象利用者として地域包括支援センターや居宅介護支援事業所から紹介されるケースが少なくありません。その場合には事業所内の介護量が増えていくため、結果的に経営を圧迫していきます。
令和7年度厚生労働省介護事業経営概況調査結果によると、令和5年度決算では経常増減差率5.2%から令和6年度には6.0%と上昇しています。しかしながら、定員規模別での経常増減差率は違いが顕著に出ており、定員20人以下ではマイナス0.8%、一方26人以上では10.5%となっています。これは、費用のうち人件費率が大きく影響しています。人件費率は20人以下では72.6%であるのに対し、26人以上では62.4%まで下がっています。包括報酬である小規模多機能居宅介護は介護度が上がれば報酬は増え、下がれば報酬が下がります(要支援2(同一建物外)6,972単位、要介護5(同一建物外)2万7209単位)。つまり、軽介護度者の報酬単価の低さが、少人数だと経営上大きなインパクトとなって影響するといえます。
事業所職員の経営的視点
ここで必要な視点となるのが、「報酬と労働量の連動」という視点です。包括報酬である事業は、利用者に必要なサービスを必要な分提供することが最大の目的です。報酬がそれ相当に大きく設定されていれば問題になりませんが、介護報酬はそのように設計されていません。事業内で管理する最も簡便な方法は、利用者人数と職員配置人員のバランス(事業所ごとに固定費が異なるため事業所ごとに違いがあります)、平均介護度の管理を月次で管理することですが、過去の実績管理だけではなく、将来6カ月程度の見込みもあわせて管理していくことです。小規模多機能居宅介護の利用者は生活における包括的な介護の必要性の高まりからサービス利用に至っているケースが多く、結果として長期的に利用することになります。
つまり、過去の結果をみてから動きを取るのでは経営上の対応に遅れが生じるのです。職員の動きとしては、利用中止、新規受け入れのタイミングで介護度の高い利用者のご案内をする、または労働量の調整をして人件費を抑制していく必要があり、職員全員が日常業務とあわせて管理できている、または理解している状態が理想です。そのうえで超過勤務の管理や、人手に余裕がある場合には地域包括支援センター、居宅介護事業所、病院、介護老人保健施設などへの営業も強化していきます。なお、在宅復帰率が指標になる施設は、小規模多機能居宅介護との親和性が高い傾向にあります。
介護支援専門員の調整能力
オペレーションの効率化のキーマンとなる職種は、介護支援専門員です。介護支援専門員は利用者の生活を最優先にケアプランを作成することはもちろんですが、同時に事業所全体の職員の動きの最適化を考えたうえで、ケアプランの微調整を図り、利用者へ説明していく必要があります。例えば職員の移動時間の短縮を図り生産性をあげていくためには、Aさんの訪問時間を1時間ずらすことにより、新規利用のBさんの訪問につながり、結果として移動時間の短縮が生じ、生産性向上につながっていくなどの細かな調整を図るなどです。また、泊りの回数の調整を行い、限りある設備を最大限有効活用することも重要な調整の一つです。連続して泊りを利用される利用者がいるため、新規の泊り希望の利用者は受け入れをストップしている、といったことは、中重度利用者を受け入れられないことにつながるため、避けていかなくてはいけません。また、新設の加算の取得も急ぎ体制を整えていくことが望ましいでしょう。各事業所の加算の算定率が上昇すると、基本報酬に含まれていく可能性があります。とくに令和6年度介護報酬改定で新設された総合マネジメント体制強化加算T(図参照)の算定は、地域密着型サービスの基本姿勢の徹底につながる要件でもあり、事業所の地域に根差す活動が問われている内容になっています。要件のなかにはインフォーマルサービスの活用がうたわれており、職員の関わりだけではない利用者支援が求められています。現在は65%超の事業所が算定しています。算定に至っていない事業所においては積極的に算定していくことを推奨します。